Folding 35mm Cameras


...コンパクトなクラシックカメラたち..

 やっぱりカメラにあれこれ機能を詰め込むとどうしても大きくなってしまいます。で、どこまでシンプルにできるか、どこまでコンパクトにできるか、というのはカメラが高級耐久消費財だったクラカメの世界でも大事な視点です。ライカ、レチナを見るまでもなく、廉価版モデルの中には距離計をはずしたシンプルなモデルがありますし、それ以外でもすばらしいレンズを搭載したかつてのコンパクトカメラたちです。(でもずしりと重いです)

ローライ35S

Rollei 35S with Sonnar 40mm/f2.8
 コンパクトカメラがなんだ!APSがなんだ!
 1960年代にドイツで作られたローライ35シリーズはふつうの35mmフィルムを使ってきわめてコンパクトにまとまっています。(キャノンのAPSカメラ、IXYなどと厚さはともかく大きさはほとんど変わりません)しかもレンズはツアイス設計、シャッターはコンパー、連動露出計はゴッセンとドイツカメラ界の最高峰をぎりぎりの大きさに押し込んでおり、登場当初このカメラは鮮烈なデビューを果たしたこと想像に難くありません。当初、テッサー40mm/f3.5付きで発売され、好評のためレンズを開放値3.5のテッサーから2.8のゾナーに高速化した35Sが発売されました。

 ローライ35は当初ドイツで製造され、レンズヘッドにはCarl Zeissの文字が入っていましたが、後に製造がシンガポールに移り、Tessar Made by Rollei なる表記になってしまいます。このためもあり、ドイツ製のモデルの方が人気がありますが、どうやらドイツ製のモデルの方がシンガポール製に比べ数にして倍ほど作られた様です。なお、ローライ35Sについてはごく少数の試作品をのぞいてすべてシンガポール生産となっています。レンズには Rollei-HFTとオレンジの文字でコーティング名が入っています。ちなみにこのHFTとはHigh Fidelity Transparentの略だといわれており、コーティングの質の高さを誇っています。

 ゾナーレンズの描写はシャープで現代的な写りが楽しめます。実は距離計がないのでピントが目測というか山勘になってしまうので明るいレンズは結構厳しいところがあるのですが、40mmという焦点距離でかなり救われています。目測ということでなかなか出番がないカメラですが、実際には目測でもピントをはずすことはそう多くありません。むしろ自分で責任をもっておおよその距離を割り出し、少しレンズを絞り目にして撮影するので、ピンぼけ自体は距離計連動カメラと変わらないかむしろ少ないくらいの成果に驚かされることもあります。

 サイズの割にずしりと重く、小さいボディにいろいろ詰め込んだ結果、巻き上げレバーが左にきているのが不便といえば不便ですが、手にずしりとくる本物のカメラを使っている気分は十分楽しめます。そのためかどうか、最近中古カメラ市でもかなりの人気のようで特に女性の間で人気が高いようです(残念ながら私は女性がこのカメラを使っているところを見たことがありません。きっときれいな人がもつと似合うでしょうね)。

 また、ローライ35シリーズはいずれもレンズが沈胴となっておりきわめてコンパクトです。レンズを沈胴させるにはシャッターをチャージしてからシャッターボタンの横にあるボタンを押しながらレンズをひねって沈胴させます。つまり携帯時には必ずシャッターがチャージされている訳で少々気になります。CDSを用いた露出計にはスイッチがなく、使用していないときには電池の消耗を防ぐためにケースに収納するべきでしょう。こうすればCDSの抵抗値があがり、ほとんど電流が流れなくなりますのでほぼスイッチを切ったのとほぼ同じになります。

 ただ、このカメラ、サイズの制約からか、電池を交換するためにはフィルムを取り出さねばなりません。というのも電池室はフィルムチェンバーの奥にあるためで、CR9の水銀電池一個が使われています。さらに、写真でははずしていますが、このレンズにフィルターをつけると純正のキャップがつかなくなるのはちょっと問題でしょう。(コダックのフィルムケースのふたが一応代用になりますが、やっぱりみっともないです。)

 ちなみに、フードもありますがこれはラバーフードで、その効果はともかくとして、折角の金属感あふれるボディにつけるのにはすこしさびしい感じがしています。もっとも、そういうことを感じる方も多いようで、京都のクラカメ屋さんが金属製のフードを作成、販売していますがちょっと高価なこともあり、購入するには至っていません。

 今(2003年)から数年前になりますが、ドイツにおいてローライが破綻、一旦韓国資本が入ってちょっと変わった形のコンパクトカメラを発売していましたが業績は一向に回復せず、結局ローライはドイツ資本として再出発します。駒村商会が随分てこ入れしたといわれていますが、その駒村商会がローライの代理店となってから、新たなローライフレックスシリーズがスタートしたり、コシナのベッサRをOEM化したローライ35RFがでたりしました。

 一連の「再生産品」の中には高価だったローライフレックス用ストラップなどの他にローライ35シリーズ用アクセサリも含まれています。テッサ-40mm/3.5、ゾナー40mm/2.8用の金属(アルミ?)製丸型フードやレンズキャップ、純正フィルターが入手できるようになりました。なかでも普段使っているとどうしてもいたんでくるあのストラップも首から下げる長めのものと、リストストラップがそれぞれ発売になっています。

 あとは生産中止になったMR9を使用する電池室を改造してくれるサービスでもあれば完璧なのでしょうけれど、これは関東カメラサービス発売のアダプターを使えば解決します。

 かくして、ローライ35シリーズは21世紀になってもスナップカメラとして十分活用できる体制が整っています。ただ、最近はきれいなボディが減っているのが気になるところです・・・

   

Voigtlaender Vito II

 フォクトレンダーはモーツアルトが生まれた年に設立された世界でも最も古い光学機器メーカーです。

 同社の製造したカメラはユニークで独創的な機構をもったものが多く、とくにあのプランジャーの押し込みで巻上げとシャッターチャージを同時に行う、ヴィテッサなどは機械好きなカメラファンだと一度は使ってみたくなるカメラだと思います。

 しかしながらフォクトレンダー製のカメラは、その複雑な機械機構もありデリケートで、しかも壊れると修理が大変というカメラマニア泣かせのところがあります。その一方でノクトン、ウルトロン、スコパー、ヘリアーなどすばらしいレンズを搭載したカメラも多く本当に迷ってしまうカメラたちです。

 さて、ヴィトーシリーズはフォクトレンダー社が戦前より生産した35mmフィルムを使用するレンズシャッター式カメラです。基本的に距離計をもたず、目測式のコンパクトなボディである上に蛇腹を用いた折畳式なので折りたたむと大変コンパクトにポケットにもすっぽり入ってしまいます。

 ヴィトーシリーズは戦前に生産されたI型、戦後生産されたII型、連動距離計を組み込み大型化したIII型に大きく分けられます。時代とともに、I型からIII型まで生産されますが、III型を除き基本的なボディ設計は同じです。もっとも、時代が下がるにつれて使い勝手がよくなるとともに、機能の追加によりボディ(特に軍艦部)が大きくなってしまい、当初のコンパクトさが薄れる結果となっています。

 初代のヴィトーI型が生産されたのは1939年で、これはその数年前に登場し大変なヒットとなった小型コンパクトカメラ、コダックレチナの対抗機種として市場に投入されたようです。その直後、第二次大戦に突入したこともあり、結果的にヴィトーI型は戦前にフォクトレンダー社が生産した唯一の35mmカメラとなりました。

 戦後、軍艦部のデザインを改め、細部に変更を加えたII型が投入されますがボディ機構は大きな変更はなく、搭載されるレンズがコーティングされ、更にはカラー対応のために再設計されます。更にIIa型ではファインダーの視野率を上げるとともに軍艦部が少し分厚くなりますが、なかなかスマートなデザインになります。

 IIa型までのヴィトーの特徴は、軍艦部中央に位置する素通しファインダー、蛇腹による折り畳みレンズ、ノブによる巻き上げ・巻き戻し、前玉回転式によるピント合わせとすこぶるシンプルな構成です。レンズは戦後コーティングされ、設計が変更されますが4枚玉のスコパー50mm/f3.5。かのトロニエ博士が設計したといわれる素晴らしい切れのあるレンズです。(但し、III型についてはこれまた銘玉といわれる、ウルトロン50mm/f2.0が付いており、価格もぐんと高くなっています。スタイルからすればどちらかというとヴィトーよりもプロミネントに近い印象を受けます。これは軍艦部の距離計、ファインダー窓の並びがプロミネントと同じだからです。)

 わたしのヴィトーはII型、戦後1950年から生産が始まったモデルです。とはいえ、戦前に発売されたヴィトーI型からの変更点はほとんどなく、ファインダー周辺の軍艦部がやや厚くなった以外は外見上の変更はほとんど有りません。ノブによる巻き上げはその直径が大きいこともあり、レバー式巻き上げのような速写性はともかく、大変スムーズな使い勝手です。特筆すべきは巻き戻しで、巻き上げノブと同じ大型のノブが使われていることもあり、クラシックカメラの中でも大変使い勝手がよくなっています。バルナック型はいうに及ばず、M4でクランク式が導入される以前のM型ライカをはじめ、ヴィトーが対抗しようとしたレチナなど同時代のカメラの巻き戻しノブが多かれ少なかれ小さく、フィルム巻き戻しにかなりの時間を要することと比べると格段に操作性が高くなっています。(なお、IIa型ではレバー式の巻き上げ、及びポップアップする巻き戻しノブに変更されています)因みに、フィルムを巻き戻すには、巻き上げノブ背面ファインダー横にあるレバーを押し上げて巻き戻しノブを回します。(ボディ底面にあるスプロケット解除用のボタンに似たボタンは前蓋を開くときに押すボタンです。)

 なお、ヴィトーII型の前期までは巻き止め装置がローラー式ですが、II型の後期からはスプロケット式の巻き止め装置に変更されます。従って、ヴィトーをテストするときはこのローラー又はスプロケットを回転させないとシャッターをチャージしてもシャッターは切れませんので注意が必要です。

 ファインダーは素通しの小さなファインダーですが意外と見やすく、特に不自由を感じることはありません。また、ファインダーの位置が軍艦部のほぼ中央、レンズの真上ということもありパララックスも少なくなるという利点も有ります。(IIa型はファインダー等倍となりますが、軍艦部が更に厚くなります)ファインダーの部分をまたぐような形でアクセサリーシューが取り付けられますが、これは軍艦部に傷を付けやすいのみならず、単にクリップで挟んでいるだけなので小型ストロボなどをつけると知らない間にずれてしまうことが多くあります。(これはあまり好評ではなかったようで後にシューは軍艦部に固定されます)

 レンズは戦前のスコパーにコーティングしたカラースコパー50mm/f3.5。トロニエ博士がカラーフィルムに対応するためにスコパーを設計し直したとされる素晴らしい切れのあるレンズです。3群4枚のテッサータイプ。ピントは前玉回転式目測なので近距離でのピント合わせは慎重に行う必要がありますが、それを差し引いてもかっちりした写りの素晴らしいレンズです。

 シャッターはプロンター、コンパーラピッドなど様々なレンズシャッターが組み込まれているようですが、私のモデルはシンクロ付きのプロンターSV。もちろんセルフコッキングではないので、巻き上げたあといちいちチャージする必要があります。しかし、ヴィトーを構えてみると左手の小指でこのチャージレバーを簡単に押し上げることが出来、巻き上げともどもファインダーから目を離すことなく撮影準備が整います。レンズシャッターということもあり、大変ショックがすくなく動作音もほとんどしないカメラです。目測なのと、もちろん露出計などは入っていないシンプルなカメラですが、レンズを絞り目にして使えばたいした問題でなく、またネガフィルムの広いラチチュードを考えるとなにも考えずにスナップできます。ふらふらご近所のお散歩にはお手軽なお供となっています。


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