ビエーヴルのカメラ市 (Foire a la Photo de Bievre)

 毎年6月の第一日曜日にパリの郊外にあるビエーヴルで開催される中古カメラ市は「世界最大」と言われています。今年(2004年)は6月6日に開催されました。せっかく近くに住んでいる(といっても隣の国ですが・・・)ので、出かけてきました。ビエーヴルには世界最古の写真博物館もあり、渓谷が美しいので有名な街です(が、結局カメラ市にしか行きませんでした)。
 なお、この中古カメラ市(Foire a la Photo de Bievre)は地元のカメラクラブ(Photoclub de Paris-val-de-Bievre)が主催して行われ、このカメラクラブのサイトで詳細がわかります。

ビエーヴルへの行き方
 パリからのアクセス方法は、車で行く場合以外は電車で出かけることになります。大勢の人でにぎわいますので、駐車場は中古市の会場から少し離れたところに設けられており、バスでピストン輸送が行われているようです。
 電車の場合、ビエーヴルはRER(パリ地方高速鉄道網)C線が通っており、パリ市内からだとオーステルリッツ駅から延々乗っていくか、あるいは同じRERのB線Massy-Palaiseau駅で先ほどのC線に乗り換えることになります。ただ、この乗り換え、同じRERといっても方やフランス国鉄(SNCF)経営のC線とパリ交通公社(RATP)運営のB線でプラットフォームが離れているため、ちょっと歩くことになります。まあ、C線の直通は1時間に一本なのに対し、B線は本数も多く、急行だとパリ市内から Massy-Palaiseau 駅までは10分少々です。ただ、そこからビエーヴルまでは2駅ほどですが、1時間に2本ぐらいしか電車がありません。
 パリの鉄道は乗りなれるととても便利ですが、メトロ、RERともに路線が複雑なので変なところに行かないように注意が必要です。路線図はこちらを参照してください。

 中古カメラ市自体は日曜日の朝から夕方までなのですが、実際は金曜日ぐらいから準備に入ることもあり金、土、日の3日にわたって行われているようです。とはいえメインは日曜日なので前の日にブリュッセルからタリスに乗ってパリで一泊し、気合を入れて7時半ごろホテルを出ました・・・ホテル近所のリュクサンブール駅は日曜日の早朝、ほとんど人がいませんでした。
 10数分で乗換駅に到着。ビエーヴル方面へ乗り換えようとするとカメラ市に向かう人がそれでも3,40人。乗り継ぎの20分間何もすることがありません。ようやく来た電車にみんな乗り込み、2駅先のビエーヴルでほとんど全員が降りました。

カメラ市会場へ
 カメラ市はビエーヴルの市役所前広場で行われます。駅から徒歩10分少々ですがちょっとした坂道になっています。道順は・・・みんなそっちのほうにぞろぞろと歩いて行くのですぐわかります(笑)

 緑の多い中、小さな市庁舎と消防署、郵便局などがこじんまり集まっているビエーヴルの中心に所狭しとカメラのブースが出ています。「世界最大」は言いすぎかもしれませんが、「ヨーロッパ最大」というのはいえるかもしれません。

 ともあれ、広場一帯を警察が封鎖してカメラ市一色になるさまは壮観です。9時から開始のはずの中古市でしたが・・・到着した8時25分にはもうかなりの人だかりです。以前は徹夜組みもいたとかという話も聞きますが、それほどでもないようです。

中古カメラ市の様子
 ビエーヴルの市の特徴は、カメラだけでなく写真に関する市も同時に開かれているところでしょう。広場の上(北側)1/3のテントは自分の作品を売る写真家たちもおおくブースを出しており、さながら青空ギャラリーの感があります。

 また、野外での中古市なのでキャンピングカーあるいはきちんとしたテントを建てている店が大半である中で、芝生にシートを引いて自分のカメラを2,3台並べている人などさまざまです。来場者の中にも「XXXのカメラ売ります、○○ユーロ」などと書いたプレートを下げている人もいます。ハイキングかカメラ市かわからないような渾然とした様子もまた、この市ならなのかもしれません。今年はお天気に恵まれ、汗ばむような陽気でした。売るほうも買うほうもビールを片手にわいわいやっていて、日本の中古カメラ市で一時見られた、殺気立った商品の奪い合いのような光景は見られません。

カメラの種類
 流石に「世界最大」と歌うだけあって、およそカメラと名のつくものでないものはない、といっても良いほど何でもあります。実用本位の10ユーロぐらいのコンパクトカメラから、果ては新品同様のライカM4ブラックペイント、はては新品のニコンD70まで・・・ただ、ヨーロッパの中古カメラ市の特徴かも知れませんが、いわゆるアンティークものが多いこと。アンティークとは100年ぐらい前のものですから、真鍮の鏡胴も美しいマホガニー製の組み立て暗箱やステレオ写真を観るためのビューアーまでところ狭しと並んでいます。見ているだけでも十分楽しいですがやはりあれこれと手を出すことになります。

 その際の注意点というか、当たり前の話ですが大抵の店ではクレジットカード決済ができません。何しろテントで営業しているのでニコニコ現金払いが大前提なのです。もっともそのお陰か、ネットショップでは必要となる「ヨーロッパ在住の方は税金をはらってね」の税金分が安くなっているような感じです。

 日本でも有名になっているヨーロッパの中古カメラ屋を一気に回れるのはとても便利ですが、ついついいろんなものに目が行ってしまいます。ひとしきりやり取りして名刺を渡されてはじめて「あ、あなたのところからインターネットでカメラ買ったよ!だからこれ負けといて・・・」などということもこういった中古カメラ市のメリットでしょう。

 さて、今回は特に何かが欲しかったわけではない・・・というのはいつも中古カメラ市に行くときのいいわけですが、しっかり事前に銀行から普段はめったに見ない100ユーロ紙幣をごっそりおろしておきました。ちなみに市役所広場のすぐ近くにはPTT(郵便局)、反対側の街側には銀行が2軒ぐらいあります。しかし、郵便局のほうには外からアクセスできるキャッシュディスペンサーはありません。(フランスのPTTが発行するカードしか使えませんが、このカードがVISAと提携しているのでVISAカードを入れれば現金が引き出せます。)銀行のほうも片一方は閉まっていて、もう一方のキャッシュディスペンサーには長蛇の列です。中には商品の取り置きを頼んで銀行に走る人もいるようで、洋の東西を問わずみんな考えることは同じですね。ちなみにもちろん日本のデパートでやる中古カメラ市のように信販会社のブースがあるなんてこともありません(笑)

 ライカM4ブラックペイント・・・・を買わざるの記

 M3は日本においてきたのだけれど、M5とM6を持っているとやっぱりM4が気になります。どうせなら2000台くらいしか作られていないブラックペイントが欲しい・・・こういうところなら安いのではないか、と思ってひそかに銀行からお金を引きおろして来ました。

 まずは人ごみをかき分けて会場を一回り。大体どこに何があるか見当をつけます。そのためにちょっと早めに来ているので・・・日本のバイヤーの方でもいらっしゃらない限り、そんなに早くM4が売れてしまうこともなさそうです。

 ぶらぶらしているとカメラではなく、ちょっと調子のよさそうな蓄音機発見。普通のモデルだけれどほとんどミントといって良いほどきれいです。サウンドボックスのマイカに傷ひとつなく・・・自分でも気がつかないうちに価格交渉していました。400ユーロというのを250まで値切ったところで・・・「こんなもの買ったらどうやってもって帰るか?」という現実的問題にようやく気がつき、「ごめんね、またね」ということになりました。ちょっと惜しかったです。

 そんなことをしているうちにずいぶん混雑がひどくなってきました。ライカをそれなりにおいている店はやはりそんなに多くなく、数軒です。会場を綿密に2回ほど回ればどこに何があって、というのは見当がつきます。

 あるお店でぼろぼろのM4BPにBPズミクロンがついたのが3000ユーロ!というのを発見。早速見せてもらおうとすると、「レンズは別だからね。レンズ3600ユーロよ」「なに、それって相場からぜんぜん安くないじゃん。程度悪いし」ということでご辞退しました。M3オリーブなどもあったなぁ。こちらはさらに天文学的なお値段です。

 オランダのおじさんがやっている店にはM4BPが2台!しかも一台は第一ロットのM4−Mだ。うーん、良いではないか。お値段は4200ユーロともう一方の普通のM4BPが3900ユーロ。M4−Mのほうが程度が良いけれどもう一方はかなりぼろ。でもねぇM4−M、裏蓋がオリジナルではないのよ、普通のM4BPのほうもちょっとあちこちさびが出てるし・・・などとあーだ、こーだ喋っていると向うも少しは値段を下げてきた。いったん「またね」といって別の店に寄る。

 別のお店。さらにボロのM4BPは2800ユーロ。ただこれ、すぐにOHしないと使えないほどガタガタ。
しきりに「オリジナルコンディション」などといっているけれど、こちらもあんまり買いたいという気が起こらない。
 
 さて、ライカ出生の地、ウエッツラーからの出店ももちろんありました。きれいなM4BPはここにあった。値段を聴くと無愛想なでっかいドイツ人が「あんた本当に買うの?」みたいな顔してぼそぼそ値段を言う。「負けてよ」といったら「ダメ」だって。おいおい。ここにはいろいろ面白いものがあって、中にはズミクロンのカットモデルもあったけれど、レンズ半分じゃ写真も撮れないよ、ということでパス。そういえば別の店に400ユーロ!見たいな値段がついたM4があったので見せてもらったら・・・なんとアトラッペだった。しかも部品があちこちむしりとられている。あれ、きれいだったら飾りに良いかもしれない・・・。

 最初のオランダ人のところに行って「2500ユーロだったら買うよ!」というと、流石に渋そうな顔してM4BPなら3200ユーロ、M4−MBPのほうは3500でどうだ?」と言って来る。そりゃ、あんた、最初の値段が滅茶苦茶でっせ、という証明みたいなものだけれどほとんど一気に1000ユーロも引くのはちょっとねぇ。さっきこちらがチェックしているのを心配そうに見ていたっけね。

 結局2時間近くかけてぜーんぶのM4BPをチェックしたけれど(それ以外もあれこれチェックはしました・・・)、やっぱりほとんどOHが必要なのと程度も今ひとつだったのでちょっとためらってしまった。お陰で大散財は免れたのでした。(おしまい)