Leica M models


M型ライカと私
Meine Leica und Ich

 1925年に登場したライカは小型精密カメラとして急速に普及します。そして30年代には「ライカと私ーMeine Leica und Ich」というタイトルで写真集すら出版されます。それほどライカは受け入れられたのでしょう。

 当時のライカはもちろんオスカー・バルナックが設計したスクリューマウントのいわゆるバルナックライカですが、その発展形であるM型ライカは私のメインの機材です。出張先での記録など大事な撮影の時には露出計の入っているM5を、普段のお散歩のお供にはM2を、ステージ写真、ポートレートなどを頼まれたときにはM3を中心に使っています。また、去年売り出されたM6TTLブラックペイントモデルも手に入れ、漆黒のペイントの下からはやく黄金色に輝く真鍮の地金が出ないかと、ヒマさえあればセーム革でごしごし磨いたりしています。

 最近はスクリューマウントのライカをつかうことも多くなりましたが、なんと言ってもM型のクリアーで見やすいファインダーは魅力です。行きつけの飲み屋で酔っぱらっていてもちゃんとピントの合った写真が撮れるのはM型ライカだけだったりします。

 スムーズな操作感、ずしりと、しっかりと手にくる重さが何ともいえないカメラ達です。


ライカ M3

Body #107**** SS ライカM3
 ライカといえばM3と言われるほどライカを代表するライカです。(←何のこっちゃ)とはいえ、「M3でなければライカではない!」などというつもりはありませんが、その気持ちもわからないではないほどのすばらしい仕上げのカメラです。

 最近のクラシックカメラブームで東京のカメラ店では10万円を切るような安いボディはほとんど見かけなくなりました。私のM3はキズだらけの107万台、私と同じ1963年生まれです。もう数年前になりますがNYに出張した折りに購入しました。当時の価格で9万円ぐらいだったと記憶しています。ボディに大きな当たり等はないのですが、グッタペルカが一部欠けていたり、巻き上げがほんの少し重かったりと、総合的な程度は中級品の下と行ったところでしょうか。

  54年のフォトキナで初めて登場したライカM3は、それまでのバルナックライカの欠点をほぼすべて解決したモデルでした。M3の登場により当時ライカコピー機を大量に生産していた日本のカメラメーカーは方向転換を余儀なくされ、以後は一眼レフカメラの生産に力を入れていった、と言われています。

 ちなみにM3とのモデル名の由来には様々な説があります。たとえばファインダーに3つのブライトフレーム(messucher)を組み込んであるのでM3とした、などと言われています。ある雑誌にM3発売当時の取り扱い説明書の復刻が付録としてついていましたが、この取扱説明書の裏表紙には、"More Rapid, More Convenient, More Reliable"とあり、ここからM3(すなわち「3つのMore」とつけたという説もあります。本当のところはわかりませんが、いずれにしてもこのM3から始まってM型ライカはもう50年近く続いていることになります。(2005年2月注記:この記事を書いた時にはまだ50周年は迎えていませんでしたが、2004年にM型ライカは誕生以来50周年を迎えました。当初、M3が復刻されるのではないか、との噂もありましたが、残念ながらかつてのライツ社も今はなく、高価な記念モデルが出されるにとどまりました。密かに復刻M3を期待していたカメラファンは多かったと思いますが、残念です。)

 実際、必ずしも見やすいとはいえないファインダーと距離計、高速と低速の2つに分かれ、回転するシャッターダイアル、フィルム装填の不自由さ、レンズ交換を簡単にしたバヨネットマウントの採用など、バルナックライカで使い勝手が悪いとされた点がことごとく解決されています。それでも数々の新機能を取り入れたため、バルナック型にくらべボディも大きくなり、このことが旧来のライカユーザーに嫌われたとされています。(このため、ライツ社はM3発表後改めてバルナック型のIIIgを発売しました。このIIIg型、フィルム巻き取りスプールやシャッター機構など随所にM3と同じ部品が使われているのみならず、ファインダーには50mmと90mmのブライトフレームが現れるようになっています。)

Leica M3+Summicron 35/f2.0(8elements)
Leica M3 + Summicron 35mm/f2.0(めがね付き・八枚玉)

 M3を語るときに必ず言及されるのがそのファインダーです。ほとんど等倍(0.91倍)のファインダーはパララックスがほぼ100%補正されている上、ファインダーフレームは対象物に張り付いたように見えます。特に高価なプリズムブロックを惜しげもなく投入し、対物窓、距離計窓、再考窓から取り入れられる光は互いに直角に曲げられアイピースに届く仕掛けになっており、これはM2以降のモデルでは再び採用されることのなかった、金のかかった距離計/ファインダーです。このことをさして時には「コストを度外視したつくりのファインダー」などと言われることすらあるようです。実際はM3投入によりライツは当時の競争相手を一気に引き離したわけですから、そのようなことはあろうはずがありません。)

 M3には50mmのほか、90mmと135mmのブライトフレームが内蔵されており、レンズを交換することによりレンズの焦点距離にふさわしいフレームが自動的に現れます。また、ファインダー倍率が高いので90mm、135mmといった望遠レンズを使うときにもピント精度が高く他のM型ライカより使いやすいといえます。ライカM3のファインダー倍率はほぼ等倍とも言える0.91倍ですが、この高倍率はその後採用されることはありませんでした。M6TTLモデルではファインダー倍率がそれぞれ0.58,0.72.0.85倍のモデルが発売されていますが、ついにM3と同等のものは出ていません。また、M3発売40周年を記念して1994年にM6のボディにM3の軍艦部を乗せたようなM6Jモデルが1640台発売されますが、このモデルもM3と同等のファインダー倍率は採用しませんでした。

 なお、M3の初期型モデルでは、カメラに向かって右側のファインダーフレーム切り替えレバーが省略されていましたが、後のモデルはこのレバーを操作することによりレンズを交換しなくても装着しているレンズとは異なった焦点距離のファインダーフレームを確認することができるようになりました。この視野枠切り替えレバーは、ライツの説明によれば、「レンズを交換せずとも他のレンズの画角がわかるので便利。」という側面もありますが、ライカメーターを載せたときに、その測光範囲がほぼ90mmレンズのフレーミングと一致することから、ライカメーターがどこの露出を計っているのかを知るためには中々便利です。

 しかし、M3が登場した50年代とは違い、50mmより35mmさらには28mmといった広角レンズが標準的に使われるようになってきた現在、35mmのフレームがないのは少し痛いところです。実際、M3を購入する際には、この35mm枠がファインダーに出るかどうかがかなり大きな問題となって頭を悩ませることになります。(この辺の心の葛藤はM2のページを参照してください)ズミクロン、ズミルックスあるいはズマロンのレンズにはM3用にファインダーフレームを変換する光学系(いわゆる「メガネ付き」)のものもありますが、ルックスはなかなかかっこいいとはいえ、重く、「メガネ」も狂いやすいので必ずしも使いやすいわけではありません。またこのめがねをつけることにより、折角のクリアーなファインダーがフレアっぽくなってしまうのは残念です。

 M3は22万台近くが生産されたとされています。そのため、細部には様々な改良が施されいていきます。

 まず、シャッター速度の系列が国際系列(1/2、1/5、1/10、1/25、1/50、1/75、1/100、1/200、1/500、1/1000)から倍数系列(1/2、1/4、1/8、1/15、1/30、1/60、1/125、1/250、1/500、1/1000)に変更されました。このため、連動する露出計(Mメータ)も2種類用意されることになりました。

 そのほか2回巻き上げから1回巻き上げへの変更、ストラップ取り付けアイレットの変更、フィルムプレッシャープレートがガラスから金属板に変更、取り付けねじの数等々細かな改良がなされ、多くのバリエーションが存在します。特に後期のモデルではM2で取り入れられた改良点(シャッターブレーキの改良、ファインダー距離計部分に被写界深度確認用のノッチがつく)などの改良が取り入れられています。更に外からはわかりませんが、随所にコストダウンへの対応でしょうか、小さな改良が多く見られます。

 私のボディもこの後期型に属し、初期型に比べシャッター音が少々やかましく、またファインダーにもノッチがあります。しかしながら、このファインダーのノッチ、所有のM2、M3ともについていますが、実際の撮影で使ったことはありません。太い方のノッチ(f=16時の焦点深度)はともかく、細い方だとほとんど目を細めないとはたして距離計の二重像のずれがその範囲に収まっているかどうかは判別できません。また、これらのノッチはいずれも50mmレンズを装着した時の被写界深度ですから、他のレンズをつけた場合には役に立ちません。はっきり言ってしまうと私はこのノッチのメリットは全く感じていないのでノッチの分距離計二重像が広がった方が使いやすいと思っています。ライツ社もそのように考えたのでしょうか、M4以降のモデルにはこのファインダーのノッチは見られません。

ライカM3の気分

 初めて買ったライカがM2だったのは別のページで書いたとおりだが、いろいろライカに関する本などを読んでいるとやはりM3が気になってくる。曰く「後継機をもたない孤高のライカ」「最高のファインダー」「コストを無視した造り」等々...やっぱりM3が欲しくなってしまった。

 確かにM3は他のモデルとは別格のライカである。やはりそれまでのスクリューマウントを捨て、ファインダーを大幅に改造した最初のモデルであるからそれを作ったライツの意気込みは並大抵のものではなかったのも当然である。そのライツ社の意気込みがすべて注がれたモデルがM3である。

 M3の中でも初期型、おおざっぱに言えば2回巻き上げ、大陸系シャッターのモデルは特にシャッター音が静かである。これは後期型になって幕速があがったのかブレーキが改造されたためか少々にぎやかになっているモデルと比べてみれば明らかである。M2と同じシャッターが組み込まれている後期モデルになればなるほどこのシャッター音が大きくなるのは、ライツ社といえども生産性をあげ、物理的な性能を上げるためにはシャッター音など大した問題ではないと考えたためなのであろうか。

 いずれにしてもライカM3は他のモデルとはひと味もふた味も違うモデルであると言っても過言ではない。とはいえM3とM2の違いはファインダーだけでボディは全く同じはずで、きちんと整備された固体であれば巻上げの感触、シャッター音などはほとんど差がないはずである。そうはいってもM3がいいとなるとどうしても欲しくなるが人情だ。

 そのM3を手に入れたのはまたしても出張中のニューヨークである。その前にパリでも探したのだが、適当なモデルはなく、そのかわりにM5に倒れてしまったのは別のページに書いたとおりである。

 さて、ニューヨークのカメラ店は通信販売で有名な数店をのぞけば、ほとんどがマンハッタンの南の方に集中しており、17丁目あたりがまあ東京で言えば新宿のような感じでカメラを扱う店が集まっているのだ。もっともこれは新品の話で、中古、特にライカを扱うような店はマンハッタン中にちらほらと散在しているので、短期間でライカをあさろうというのはかなりの重労働なのである。その上、ニューヨークのカメラ店はよく引越しをする。去年あった場所をたずねていってももはや移転した後、はなはだしきはマンハッタンの外に移転してしまう店もある。だから出かける前には新しい電話帳で住所をチェックするのが肝要だ。

 一番南にあるのがウォールストリートカメラ。これは文字通りウォール街にあるカメラ店で、雑然としたショーケースの中にはクラシックカメラもちらほらある。ここで「M3あります?」と訊いたところ、「いいのはみんな東京に行ってしまったよ」とニベもない返事であった。かろうじて一台あったM3は距離計連動コロの戻りがわるい。お値段は900ドルくらいだった...などと思い出をずっとつづっていってもいいのだけれど、結局さる場所でM3を入手し、帰国してから手にしたある本を読んでいてびっくりした。

 クラカメファンならおなじみの、毎年毎日新聞社からでる「カメラ読本」。これの95年号に「雨の日はライカでも探しに...」とK氏がマンハッタンでのライカ探しの記事を投稿されている。なんと、K氏がマンハッタンをさまよわれたあと、ほとんど一週間もしないうちに順番はバラバラだけどほとんど同じコースを私がさまよったことになる。これには驚いた。もちろんK氏とはいまだに面識もないが、きっとマンハッタン中のカメラ屋もなんで日本人ばかり立て続けにM3を探しているのか、驚いたに違いない。

 結局K氏は2回目の巡回でM3を手に入れられるのだが、その中の記述にカメラの量販店ADORAMAでのやりとりが書かれている。詳しくは本文を読んでいただきたいがおおよそこんな内容だ。

 「ライカM3ありますか?」と尋ねると店員が木の梯子に登って一台のM3を目の前に出してきた。「これにはオリジナルの箱がついている」と店員はしきりに強調するが、紙の箱などもらっても仕方ない。ともあれチェックすると107万台のM3でグッタペルカがはがれた後をマジックで補修してある。ファインダーはきれいだが、巻き上げがどうも少々粘るような感じなので決めかねた。お値段は$1150。

 結局箱のいらないK氏は別のカメラ屋に向かうのだ。

 それから数日後、私がこの店を訪れ同じように上の方の棚からM3をおろしてもらう。「オリジナルの箱」は確かにあった。が、M3専用の箱というよりむしろMなら何でも入る箱のようで「M○」の○の部分にシールが貼ってありマジックで「3」と書いてある。まあ程度は程々だけど元箱としての価値は?である。メカをチェックするがK氏の書いているとおりである。ファインダーはクリア。しかし巻き上げがかすかに粘る。パチンと戻るレバーの勢いが少々足りない感じ。うーん、ちょっと高いけど手が届きそうなM3のなかではベストである。まあいいか。

 レバーの具合を指摘して「これなんぼになるの?」と尋ねると少々引いてくれる。が、まだ下がりそうだ。あれこれあれこれ30分ばかりも交渉してついに「保証はいらんからもうちょっとまけてぇなぁ」とやるとしばらく考え込んでかなり引いた額を示してきた。$850。$300も値引きしたということはこれはなかなか売れないのでこのあたりできれいさっぱり売り払いたいらしい、と見当をつけさらに最後の交渉である。「キャッシュで払うのでもう一声。」とやるとさすがにこれは渋そうである。またああだこうだといってとうとう$800まで下げさせた。これぐらいが限界であろう。さっと店員と握手してお金をはらう。レシートを見ると「final sale, no refund, no exchange」と書いてありご丁寧にもアンダーラインまで引いてあった。

 グッタペルカが少々貧弱とはいえ気になるほどではなく、ほぼ等倍のすばらしいファインダーに感心しつつ、50mmのスナップ、望遠をつけてポートレート、舞台写真などにはM3で決まりである。とくに、50mm、あるいは90mmとのバランスは最高でお散歩ライカとしてはもう言うことがないのだ。巻き上げレバーの戻りがちょっとは気になるが、それでもライカのフィーリングは十分楽しめる。スナップには35mmの枠がないのはちょっと不便だけど、逆に「世の中すべてを50mmで撮るのだ!」と、潔くわりきって連れ出すのがM3を使うときの気分なのである。もっともしばらくしてメガネ付きのズミクロン35mmも手に入れてしまうのだが、さすがにこの組み合わせをグアテマラのジャングルにつれていく気がしなかったのとM5がドイツで入院中だったので一度は売り飛ばしてしまったM2に復帰してしまった話は別のページに書く予定である。

 さてこのM3、ずっと快調に動いてたがときどき巻き上げレバーが引っかかるようになり、ついにはレバーが戻らなくなった。先日銀座のSにオーバーホールをお願いしたがその顛末は次回に...


ライカM3のオーバーホール

 M3をオーバーホールに出したのはそろそろ夏休みも終わりに近づいたある土曜日。丁度9月の中古カメラ市にむけて、各カメラ屋が仕入れに忙しい頃である。さて、どこの店に出すか、これが一番悩ましいところである。ライカの修理代金なんて基準があってないようなものなのだ。大体の相場観というのはあるけれど。

 前回M5をOHに出したL社に訊いてみると5万5千円から。但し修理は全部日本でできるのでドイツ送りはなし、とのこと。ついでに銀座でも一番高い値段を付けているKにも電話して訊いてみるが、ここは「店外品は修理しません」とのこと。M2を持ち込んだことのあるWでもよかったのだけれど、まあここはいつも世話になっているSにする事にして電話で値段を確認すると3万5千円から、とのこと。有名な日暮里とかはちょっと手許不如意のため今回はチェックせず。3年ほど前に訊いたところでは4万円くらいだったと思う。いずれにしても今回はマツモトキヨシのビルの8Fに出すことにしたのであった。職場から近いので出すにしても取りに行くにしても銀座界隈が一番便利なのである。あと、やはり信用の出来るお店を一軒作っておくと何かのときに無理が利いたりして便利だ。もっともそうなるためにはかなりの額をつぎ込まなければならないのだけれど。

 症状を簡単に説明する。以前から少し巻き上げレバーの戻りが悪かったこと、シャッターボタンの戻りも少し重かったこと。で、オーバーホールをお願いする。実はこのボディ、アメリカで買ってからしばらくしてスローシャッターが油ぎれの兆候を示したので一度入院させたことがあるのだ。このときはかの木村先生が懇意にしていたこれまた銀座のSである。シャッターを調整、クリーニングしてもらったがレバーが重いのはそのままであった。もちろんお値段もお安く1万数千円だったけど。この頃はプライヴェートでいろいろあった時期なのであまり覚えていない。ライカどころではなかったのだ。

 さて、当初は「一週間から10日」といわれていた修理期間だったがやはり中古市の準備で忙しいのか、なかなかあがってこない。ようやく3週間目に電話したらできていたのだ。普段はこのお店、かなり修理が早い。やはり自分の所に修理専門の人を2人抱えているからか、修理は丁寧な上、時間もそれほどかからない。

 修理伝票をみると、「オーバーホール、各部点検、調整」のほかに「シャッターブレーキ部品を一部交換」「太陽マークを追加」とあって、丸い、小さな白いプラスチックの部品が張り付けてあった。これがシャッターのブレーキらしい。よく見ると傷だらけだし一部欠けている。どうやら巻き上げレバーの不調はこの部品のかけらがどこかに引っかかっていたようだ。まあこの部品はいろいろ調べてみるとよく欠けるらしいので何かのはずみで欠けてしまったようだ。本来前回修理に出したときに交換してもらっておけば今回の事故は防げたかもしれないけれど、それはあとから言っても仕方のないことだ。

 「太陽マーク」とは裏蓋のフィルムインジケーターの中央に張ってある赤と黒で白黒、カラー、バルブの絵の書いたプレートのことである。もちろんおんぼろライカなのでそんな部品は欠損していたのだ。こんなものなくったって写真をとるのには一向にさしさわりがないものの、何度も中古市で買おうと思っていたのだけれどこれだけで1500円くらいするので買っていなかったのである。

 もちろん各部分の動きもなめらかになっていた。レバーもスムーズになったしシャッターボタンの戻りもよくなった。またシャッターダイアルも軽くなったし、何よりもシャッター音が小さくなっている。これは以前ちょっと日記に書いたことがあるけれど、これまでテンションを少し下げ気味にして静かにしていたのだが、ちゃんと調整した上で音もある程度静かになっているのでうれしい。ライカ、とくにM3についてはそのシャッター音が静かなのが人気の一つだけれど、シャッター音というのはシャッターテンションを下げていけばいくらでも静かになるものだ。ただし、シャッター速度をきちんと確保した上で音を下げるのはやはり大変なのだろう。特にライカに限らず古いカメラで高速シャッターの精度を確保するためにはある程度シャッターテンションをあげることが必要なのでそのあたりのバランスをどうするかが修理の時の大きなポイントだ。

 驚いたことに、底蓋を引っかけるフックの周りのグッタペルカが欠けていたのが修復されている。また、あちこち小さく欠けていたのもそれとなく修理されていたのである。これって結構面倒な作業なので、そこまで面倒をみてくれた修理の方に感謝である。

 すっかりきれいになって調子を取り戻したライカM3。久しぶりにクロームメッキの古いズミクロン50mmをつけてご満悦である。ちなみに修理代金の方は税込み3万1500円であった。


2台目のライカM3とそのオーバーホール

 去年(99年)の暮れ、パリに出張した際にまたM3を買ってしまった。このあたりの経緯は99年12月の日記を御覧いただくとして、このM3、外見はなかなかきれいなのだけれど、どうもかすかにファインダーが曇っているし、ブライトフレームにも少し汚れがあります。また、巻き上げは調子いいのだが、このすぐ上に書いたオーバーホールから上がったばかりのM3比べるとこちらもかすかに重い感じがする。ただ、このM3は95万台、59年製である。前期型の特徴も一部のこしつつ、後期型の改良部分も随所に現れたモデル。50年代最後から60年代前半くらいまではライツ社の絶頂期なので最初期のライカM3と比べてもなかなかすばらしい出来だとおもわれる。

 主な特徴をならべると、シャッター速度は既に倍数系列になっており、また、もちろん巻き上げもシングルストローク。またファインダーの距離計にはM2で導入された焦点深度確認用のノッチがついている。この辺は後期型の仕様である。一方、ネックストラップをつけるアイレットは通称「犬の耳」といわれる、三角形のしっかりしたタイプ。また、フィルム巻き戻し切り替えレバーも長めのタイプ。巻き上げはラチェットの入っていないタイプ。これは後期型になると巻き上げ機構にラチェットが入るので、レバーを一杯に巻き上げて戻す際にチリチリとラチェットの音がするが、このモデルは全く静かにすっとレバーが戻ります。この差は使ってみると結構大きく、ライカの使い勝手を形容していわれる、「絹のような」使い心地が実感できる。

 まあ、なんの変哲もないモデルといえばそれまでだが、ほとんど外観にはスレがない。おそらくケースに入れて大切に使っていたものとおもわれる。アイレットにストラップをつけた形跡はなく、M3とかM2によく見られる、シャッターレバーを勢いよく放してシャッターダイアルにぶつかったときにできるキズも皆無だ。軍艦部にはごくごくかすかなすりきず。これはライカメータのキズと言うよりも、前面とのエッジ部分なのでケースからのスレのようである。スレといえば底蓋の一部につよくクロームメッキがこすれて光っている部分があるがこれもケースのスレだとおもわれる。

 このM3が4300FF。当時のレートで約7万円と大変お買い得だったのだ。まあ、M3は既に一台所有しているのであえて買わなくてもよかったのだけれど、この辺の心の葛藤というか逡巡(?)は上の日記でお読みいただくとして、やっぱり安いものには安い理由がある。実はこのM3、フィルムレールの周りの塗装が少しただれているのだ。もちろん実用上全く問題ないのだけれど、やはりフィルムが走るレールの近辺ということもあり気になるものだ。この塗装がただれてしまう現象、実はM型ライカには多く見られるのだけれど、原因はフィルムを入れっぱなしにして放置していたため、フィルムからガスがでてこれが塗装を犯してしまったというのが原因といわれている。この現象、内部が塗装されていても、塗料の質が違うのかバルナックライカには見られず、ツヤのある焼き付け塗装をしてあるM型に特有の現象なのです。また、ファインダーの汚れもこのフィルムからのガスが原因ではないかと考えられる。

 ともあれ、外観はすばらしくきれいなので7万円という価格ははっきり言ってお買い得だ。というわけで、お店の知り合いのおじいさんが「そのM3はわしがオーバーホールしたんじゃ」と言っていたこともあり、結構ハッピーなお買い物だった。(もっとも、そのオーバーホールの技術がどこまでか、というのは?なのだけれど)

 しかし、ファインダーの曇りはやはりちょっと気になるし、せっかく概観はきれいなボディなので考えた末オーバーホールする事にした。お店はいつものスキヤカメラ。去年からM3、DIIIとオーバーホールをおねがいしていて、その仕事ぶりには安心できる。まあこれだけ貢げば多少サービスもいいわけだけれども。

 で、お願いして待つこと10日。オーバーホールが上がってくる。珍しく見積もりより高い4万円。うーん、ちょっと痛いけれど、話を聞くとファインダーをバラバラに分解して磨き直した、とのことで手間を考えるとまあ仕方がないか、といったところ。「結構大変だったと修理のものが言ってましたよ。でもまあ、きれいなボディだからお金をかける価値は十分ありますね」とのこと。「外国で買ったのだけど、いくらだと思います?」と訪ねてみると「うーん、15万円くらい?」「いや、その半分」という会話をして機能も絶好調に戻ったM3を引き取ってきた。

 前から持っていたM3と比べると、全然きれいで使うのが惜しくなってしまう。7万円+4万円で結局11万円かかったけれど、日本で買うとひょっとすると倍近くの値段がするかもしれないので、あまり外に持ち出さず、空シャッター専門のボディになってしまっている。M3のシャッター音は...という話しは、それはそれで楽しいのだけれど、はっきり行ってしまうと、多少シャッター音がどうのと言ったところで撮れる写真に差が出るわけはない。それでもやはり仕事を終え返ってきてくつろぎながらM3のシャッター音を楽しむ、というのはマニアでなくってもなかなか乙なものではある。

ライカM3の取扱説明書


 この間パリに出張したときに、ボーマルシェ通りのその名もLa Maison du LeicaでまたもやM3を買ってしまった。このあたりのお話は上に書いたとおりだけれど、何しろパリのカメラ屋で2時間近く他の常連客とライカの話しをしているのできっと「変な日本人」と思われたに違いない。店を出ようとすると「ちょっと待って」といいながら木の箱をなにやらごそごそやっている。で、「ちょっと早いけどクリスマスプレゼント」ということでもらったのがライカM3のオリジナルの取扱説明書である。

ところが御覧の通りこれはフランス語版。裏側をみるとどうやら1954年、M3が発表になったときのもののようだ。(どうでも言い話だが、ドイツ語ではライカは女性名詞だから、Die Leicaとなるが、外来語になるフランス語ではライカは男性名詞なのでLe Leicaなのである。嗚呼紛らわしい。ちなみに目の前に座っているスペイン語の権威によるとスペイン語ではaで終わる単語は女性名詞!と決まっているそうなのでライカはまたしても女性になるらしい。)

 体裁は最近ライカムックなんかに付いてくるドイツ語版と全く同じだが、ちょっと変わっているのは小冊子がPhotographier avec le Leica M3, Mode d'emploi detailleとなっていて、いわば「詳細取扱説明書」となっている。これに4つおりのカバーみたいなのが被さっていて、このカバーを開くと裏側にMode d'emploi abrege つまり「簡約取扱説明書」となっているのだ。御覧の通り、M3ボディの正面と背面からの写真があり、それぞれ各部の名称と役割が左側の緑の枠の中に解説してある。本文の方はA.ボディの取り扱い(詳細をみると、巻き上げ、ピントの合わせ方、シャッターの切り方などとなっている)、B.レンズの交換、C.フィルムの装填、D.フィルムの取り出し、となっていてとりあえずこれだけ読めば何とか使えるようになっている。

 この「簡易」説明書が付いているのはフランス語版だけなのだろうか?何となくせっかちなフランス語版だけにこの「簡易」説明書が付いているような気がするのだがどうなんだろう...ちなみに、本体の説明書の中身はおそらく共通で、御覧の通りである。

 これをじっくり読めば今度パリでライカ話をやるときにもフランス語はばっちり...になるかもしれない。ははは。

18/01/00追記:
 いろいろな方からこの「簡易説明書」は他の語版にも付いているとのご指摘を受けました。従って上の文章はちょっとおかしいですが、あのとき思ったことが書いてあるのでそのままにしておきます。ご指摘どうもありがとうございました。