Leica M models

Leica M4

 今年(2004年)はM3発売50周年ということで、「M3の復刻版が出るのではないか」などといろいろうわさが流れています。確かにM3は画期的なカメラでしたが、さらに使い勝手、デザインを検討した結果、登場したのがM4です。「M3からM2、そしてM4でM型ライカはひとつの完成形に到達した」、とも言われる所以です。

 M3、M2と比べたM4の特徴の主なものを挙げると、
・フィルムの装填を簡単にするため、ラピッド・ローディング装置が最初から組み入れられた。
・フィルム巻き戻しをM3,M2のノブからクランク式に変更した。この結果迅速な巻き戻しが可能となった
・レンズマウントの周りまで伸びていた軍艦部カバーのエプロンがなくなり、すっきりしたデザインとなった
・フィルム巻上げレバーにプラスチックの指かけがついた
・ファインダーはM2と同様だが135mmのフレームをいれた
・ストロボ接点が特殊なタイプからドイツ式普通のタイプに変更になった

といったところでしょうか。その他、M2まではクラシックな雰囲気のあったセルフタイマー、視野枠切り替えレバーなどが直線的なモダンなデザインになった点も指摘できます。

 要は、M4はM2のマイナーバージョンアップといって良いほどM2までの経験を踏まえて欠点を改良してきたモデルです。その分完成度は高く、その垢抜けたスタイルに加え、「M型の完成形」と言われるのもうなずけます。

 使い勝手の点で一番大きな改良はフィルム装填がたやすくなった点でしょう。M4が出た頃の広告などをみると、手袋をしたままでフィルムを装填する写真が載せられていて、ライツとしてもこの点をセールスポイントとして強調していたことが伺えます。実際、M2までのあとづけラピッドローディングシステムと違い、花びら型のスプールにフィルム先端を差し込むだけで確実に巻き上がる仕掛けは、今のカメラから見ればなんと言うことのないものですが、バルナックライカからM型を通じて使ってくるとおのずとその利点が実感できます。

 また、クランクによる巻き戻しもニコンなどはM3の後を追うように投入したS2からすでにクランクになっていたことを考えると、遅きに失した登場かもしれません。しかしM型ライカのすでに完成されたボディに大型のノブを加えるにはライツもいろいろ考えたのでしょう、結局ファインダー横側を斜めに削り落とす形でこれを実現しています。当然中にはギアが2枚加わるわけですが、ライツの製造技術は内部機械の複雑さを感じさせないすばらしい出来です。なお、この「斜めについたクランク」のためにライカメーターもその仕様変更をおこないます。これはM2までに対応のライカメーターのスイッチがクランクと干渉するためでM4からはライカメーターもMR4となりメーター上部のスライドスイッチに変更されました。

 ファインダーはM2とほとんど同じものですが、新たに135mmのブライトフレームが加わりました。流石に135mmのピントあわせは苦しいのですが、f4.0以上であれば何とかなるとの判断があった由です。その一方で、M3後期から導入された距離計部分にあった「焦点深度ノッチ」は廃止されています。流石にあれはあんまり使いにくいということになったのでしょう。
 巻き上げればーについたプラスチックの「指かけ」はその後M5以降も採用されますが、M3、M2の金属削りだしのレバーよりも指かかりがよく、巻き上げやすくなっていると思います。

 M4は1967年から9年間にわたり約58000台が作られたといわれていますが、その間、2年間の生産停止をはさみカナダで生産が再開されるといった変わった経緯があります。これは、その間に発売されたM5の評判がわるく、M4再発売の声にライツが押された、とされていますが、一方でこの間にライツ社の経営が傾き始めたことと無関係ではないようです。M5のプロトタイプにはM4との刻印があり、本来であればM5がM4として発売されていたかもしれないことを考えるとなんとも皮肉な結果です。

 実際、M4後期モデルあたりからだんだんライツのよさが失われていき、コストダウンによるカメラのつくりも徐々に影響を受けていきました。したがって、ライツの伝統の作りがのこっており、使い勝手もいいライカ、となるとこのM4しかない、というのが「M4ベストライカ」説の全貌です。確かに、M4以降のM型ライカはM4のマイナーバージョンアップに過ぎない、ともいえるラインアップになっています。やはり一度ピークを迎えたものは後は下降線をたどるだけなのでしょうか。

 さて、このM4を手に入れた経緯は、別ページの「ビエーヴルの中古カメラ市」をお読みの方はうすうすお気づきの通り、「自家中毒型購入症候群」とでもいえるものです(笑)。最初のうちはせっかくなのであの美しいブラックペイントを安く手に入れよう、などと考えて中古市の会場を何度も行き来しているうちに、価格感覚が麻痺し、ブラックよりは流石にずいぶん割安感のある普通のM4クロームを買ってしまうことになりました。

 「ベスト・オブ・M型ライカ」であるM4は、ずいぶん愛用者が多かったようで、カメラ市に出てくるボディもかなりの数がありました。大抵はクロームメッキが擦り切れるほど使い込まれていたり、あちこちにあたりがあったりするもので大体相場的には600ユーロ程度。日本で買うのよりちょっと割安感があります。あまりよれよれにすれていないボディというのはなかなか見つかりません。もっともミントに近いボディは日本に比べればかなり安い感じがします。

 ロッテルダムから来たという業者。ビエーヴルの中古市会場の入り口に近いところでパラソルを広げていました。見ると珍しいものは余りありませんが、なかなかきれいなM型を数台とレンズなどを並べています。価格はちょっと高め・・・だけど程度はほかの店より絶対良いよ、と自分で言っている通り、なかなかきれいなボディが並んでいます。黒いM4を探すのに疲れていたので、まずM3あたりから見せてもらって、2台あったM4のうちの価格はちょっと安いけれど、程度の良い方を値切って購入しました。「あなたこれで写真撮るの?それともコレクション?」と鋭いところを衝かれたのですが、その場では「そりゃ、写真撮るのに決まってるでしょ!」と言い切ったものの、ちょっともったいない感じもしてきました。

 119万台のボディ。流石にこのぐらいの番号になるとファインダーはM2のものではなく、改良されたものになっています。画像でもわかるとおり、ほとんど使用した形跡がなく、かなり程度のいいボディです。マウントのLシールも鮮やかに残っており、おそらくはずっと仕舞い込まれていたかもしれません。ストラップアイレットには傷ひとつなく、かすかにメーターをつけた後がうっすら軍艦部に残っている程度です。ファインダーはクリアーですが、巻上げがやや油切れ。使い倒すにはOHする必要がありますが、あまりにきれいなボディなのでこれからどうするか、思案中です。新品で買ったM5TTLはあちこちペイントもはげ、少し傷もついてきましたが・・・うーん