Mighty Little Olympus

憧れのオリンパス...

 まだカメラなんて父親の使っていたコニカC35がすべてだった頃、燦然と輝いていた小さな一眼レフがオリンパスのOMシリーズでした。すでにOM2もスポットプログラムになっていた頃だと思います。

 以来、何度かOMシリーズを買いそうになっては見送ってきましたが、2001年も押し詰まった頃、ある方からOMボディを手放すという話しを聞き、M型ライカとの交換が成立しました。はじめてOMにあこがれてからほぼ25年、ようやく手にしたOMシリーズです。

 しかし、悲しいことにオリンパスは2002年3月末をもって現行機種であるOM−3TiとOM−4Tiの生産中止を発表しました。72年の登場以来30年にわたったOMシリーズにとうとう終止符を打ち、35mm銀塩一眼レフ市場から撤退することとなりました。(なお、一部のレンズ、アクセサリーは2003年まで引きつづき提供されるようです)
 ようやく手にした2台のOMシリーズ。大事に使ってやろうと思っています。


Olympus OM-1

 オリンパスのOMシリーズは1972年に「宇宙からバクテリアまで」をキャッチフレーズに登場した一眼レフシステムの中核をなすボディです。発売当初、M−1とされていましたが、フォトキナで当時のライツ社から「ライカM1があるのでM1は困る」と抗議を受けたため、OM−1とモデル名を変えて発売されたのは有名な話しです。最近何点か出版されたオリンパス関係のカメラ本を見てみると、設計者の米谷美久氏は「争いごとを避けるオリンパスの伝統から、即座に名前の変更を決めた」と語っておられます。もちろん、アルファベット一文字に著作権も意匠登録もないのでライツの申し入れは言いがかりに過ぎないのは明らかですが。クイックリターンミラーの特許問題でかなりこじれたアサヒペンタックスやニコンだったらどのような対応をしたのでしょうか、ちょっと気になるところではあります。(とはいえ、ニコンはその初期に、「ツアイスイコンと紛らわしい」との判断から、輸出モデルにはボディにもニッコールと名前を付けていました。ニッコール銘のニコンFがバカ高いのはそのせいです)

 ともあれ、このオリンパスM−1は、ライツの「いちゃもん」が付いてからOM−1に変更されますが、それまで完成していたロット、約5000台のM−1についてはそのまま市場に出回り、以来30年を経て珍品として普通のOM−1の2〜3倍の値札をつけているのは周知の事実です。(なお、このM−1、ブラックペイントボディが存在するかが一時話題となりましたが、ごく少数が報道関係者などに配布されたようですね。)このオリンパスMシリーズ、設計者の米谷氏によれば「英語でも、何語でも正しく発音されるアルファベット一文字である」ことからMシリーズとなったとのことですが、ご自身が別のインタビューでは「米谷(まいたに)のM」であることを認めていらっしゃいます。「オリンパスの米谷のカメラなのでOM−1」というわけです。

 さて、このOM−1、米谷氏によれば当時の一眼レフの3悪「でかい、重い、やかましい」を追放することから設計をはじめた、とされています。その結果、大きさで3割、重さでほぼ半分の小さなボディが出来上がり、20もの騒音防止機構を組み込んだため、やわらかいシャッター音を持った一眼レフとなりました。それまで世界最小を謳っていたアサヒペンタックスはそれこそ「社命をかけて」小型一眼レフの開発に乗り出し、なんとその名もほとんど同じペンタックスMシリーズを展開します。完全機械式シャッターを組み込んだOM−1に対してはMX、AEを組み込んだOM−2に対してはMEと言った具合です。
<p> 実際、OM−1とMXを比べてみると、ごくわずかにボディのサイズはMXの方が小さく、あっぱれ名誉挽回となったのですが、OM−1のボディに沈み込んだペンタプリズムの影響か、スタイル的にはOM−1の方が小さいような印象を受けます。これはちょっとかわいそうなのですが、やはりオリジナルの方にものの精神は宿る、という怪しげな法則を再確認するような感じになったわけです。

 スペック的にはOM−1は当時多く作られていたメカニカルシャッターの一眼レフと大きくかわるところはありません。しかし、実際に手にしてみると米谷氏の掲げた一眼レフの3悪追放が見事に達成され、小型で大変ハンドリングのいいカメラであることに気がつきます。小型化のためにシャッター制御のガバナーをミラーボックス下におき、シャッター速度変更ダイアルはレンズマウントと同軸にし、交換レンズ先頭にある絞りダイアルを含めると、絞り、シャッター速度、ピントというカメラ制御の中心部分がレンズマウントに配置されており、左手だけでコントロールできるようになっています。このため、右手はフィルム巻き上げとシャッターを押すという2つの動作しか担っていません。この分業体制は、普通の一眼レフからOMシリーズに持ち変えた場合に戸惑うことがありますが、ごく一部の廉価モデルを除き、すべてのOMボディで共通の操作性を達成しており、見事というほかありません。

 その上、必然的に大型になったシャッターダイアルをはじめ、巻き上げレバー、巻き戻しクランク等、人の手が触る部分についてはボディの小型化に反し大型のパーツが使われており、すぐれた操作性を実現しています。もっとも、通常であればシャッター速度ダイアルがある位置にはASA感度設定ダイアルがあり、最初はこれをシャッター速度ダイアルと勘違いすることもありますが、きちんとメカニカルロックがかかっており、簡単にこのダイアルが動かない設計になっているのはさすがです。このダイアルのサイズは、中に露出計メーター本体を格納するためにこうなったものであり、必ずしもこの大きさが必要であったわけではなさそうです。(ま、露出計を組み込むという必要性はあったのですが・・・)

 露出計自体はファインダー内左側にアナログメーターが示される、定点合致式です。大変みやすく、露出のずれも1/2段単位で確認することも可能で、感度も十分です。しかし、発売当初より指摘されている点は、ファインダープリズムを大きくとったあまり、アイピースからの逆入光がかなり多いことです。これを防ぐにはアイピースにしっかりアイカップをつけるか、測光するときに目とアイピースの間をなるべく離さないようにするしか方法がありません。

 その他、「小型化したら結果的にライカIIIfとほぼ同じサイズになってしまった」というコンパクトなボディを特徴づけるのは、「デルタカット」と呼ばれる「角の切り落とし」がボディの両端をはじめ、ペンたプリズムカバー、巻き上げレバーと言ったところに用いられている上、そのコンパクトなペンタプリズムのシルエットを守るためか、アクセサリーシューは取り外しできるというこだわりの設計です。

 1秒から1/1000秒までの横走り布幕のシャッターは発売当時の段階でも、ニコンF2が1/2000を達成していたことを考えると、すでに時代遅れの感がありますが、カメラの高さを下げるために通常シャッター幕をひっぱるリボンを特殊な糸に変更した点(これはペンタックスMXも同じで、LXまで引き継がれています)が斬新ですし、ショックを吸収するためにエアーダンパーを設ける念の入れ様です。しかも、なんとそれ以降のOMシリーズにも採用されなかったミラーアップ機構を備えています。もちろん、ニコンのFシリーズのように、ミラーの振動を避けるといった理由に加え、レトロフォーカスタイプのレンズを発売していたメーカーならまだしも、OMシリーズにはミラーアップしないと使えないレンズはないのにもかかわらず「宇宙からバクテリアまで」を撮影するため「だけ」にこの機能を組み込んだオリンパスは立派です。もちろん、マウント、ミラーともに大型ですべてのレンズでミラー切れが起こらないように配慮されている点はいうまでもありません。

 また、ペンタプリズムの下側を削り、フレネルレンズの代わりをさせることにより、全体の高さを下げている点も後発のペンタックスMXにも踏襲されています。さらに視野率も97%と中級一眼レフではトップクラスの高倍率です。(もっとも、私のように眼鏡をかけていると必ずしも観やすいわけではありません。視度補正レンズの厄介になっていますが、現行のオリンパス純正はアイカップを兼ねた大型のものでスマートなOM−1にはいささか似合わないので、ペンタックスのものを使っています(笑))

 さてこのOMシリーズ、中学生時代にあこがれたのはクロームのOM2/SPでしたが、その後、何度も手にする機会がありながらとうとう手にしなかったのは一眼レフはFE2でニコンにはまり、そうこうしているうちにクラカメ、しかもライカにはまってしまいとても別のSLRシステムをそろえる元気がなかったことと、「いつでも買えるものは後回し」との悪い癖のためです。さらに言えば、中古カメラ市場に並んでいるOMシリーズ、すでにあこがれのOM2はAEが経年変化で怪しくなっていますし、OM1、OM2ともに悪名高きペンタプリズムの蒸着剥離があまりにも多かったためです。

 プリズムの銀メッキがはがれるこの現象は、メッキの質もさることながらショックを吸収するために使われたモルトが溶ける影響を受けるためとの説明がされています。もちろん再蒸着して修理する手もあるのですが、コスト的な(2万円のカメラを5万円もかけて修理するか)問題もありなかなか手が出しにくい存在ではあるのです。(もっとも、最近ではこの再蒸着もかなり手軽に出来るようになっているようですし、OM10のプリズムを乗せ変えてくれるところもあるそうです)

 そんなOMシリーズを手にしたのは2001年の暮れ。ある知り合いが「友人がオリンパスを手放したがっているけど欲しくない?」という話しを持ってきてからです。よくよく話しを聞いているとM型ライカを買うためにオリンパスを手放すとのこと。ちょうど最近あまり使っていなかったM2(またしてもM2です(笑))をどうしようか考えていたところなので、渡りに船とばかりに賛成し、物々交換が成立しました。

 受け取ったOM−1のボディは大切に使われてきたのでしょう、角がきれいにすれて下の真鍮が顔を出しています。もとより使い込まれたカメラが大好きなのでこれは大歓迎です。「ブラックボディは擦れたのがいい」、FE2を買うときの友人のアドバイスがそのまま自分のカメラ選びの基準になってしまっています。

 ともあれ、スローですこしミラーの戻りが悪いのと、レンズの付け根にあるシャッター速度ダイアルがやや重いのでオリンパスのサービスセンターに持ち込むことにしました。カウンターで対応していただいた方は、何度かシャッターを切ってから「うーん、私も昔これ修理していましたが、ダンパーが弱っているのでこういうのは側板を交換しないと・・・パーツがないですね。」とおっしゃるが、そこを何とか、と頼み込んで修理をお願いする。もう30年前のカメラなのでパーツがないのは仕方がないが、メカニカルなのでエアーダンパーだって調整で何とかなるはずだ、と思ったのでそれをその通りお伝えすると「やってみますが、またすぐだめになるかも知れませんよ。でもいいカメラですからねー。」と懐かしそうにご覧になっていた。「むしろこっちの方が・・・」と同時に持ち込んだほとんどジャンクのOM1nをご覧になっている。「もしダメならこのジャンクからパーツを移してもらっていいんですけど」と言うと「いや、部品の乗せ変えはやっていないのですよ」と悲しいお答えでした。ま、いざとなると自分でやるしかないかもしれません。

 ともあれ何とか引き受けていただき、年末の休暇をはさんで待つこと2週間、無事修理が上がってきたOM1、巻上げが少々かさつくところはOMシリーズの伝統なのである程度しかたがないかもしれないが、バルナックライカとほぼ同じサイズのボディは大変使いやすく、レンズの根元のシャッター速度ダイアルもセンターがちょうど1/30が来るようにセットされているので、少し慣れるといちいちファインダーから目を離さずにシャッター速度が確認できるのは便利です。
 手にすっぽり収まる使いやすい一眼レフカメラとして登場したOMシリーズ。ちょうど登場30周年の今年、オリンパスから生産打ち切りが発表されましたが、ようやく手にした中学生時代の憧れのカメラ。手にしたとたんに現役を引退してしまい、本当に残念です。



Olympus OM-4Ti

 さて、オリンパスよりOMシリーズの打ち切りが正式に発表されたため、待望のOM5はついに出ないことが決定的になりました。このため、OM4-Tiは最後のOMとなったわけです。OMシリーズの展開を見ると、機械式シャッターの奇数シリーズ(OM−1、OM3)と電子制御シャッターとAE、そしてダイレクト測光を取り入れた偶数シリーズ(OM−2、OM−4)の2つに大きく分けられます。このうち、電子制御を取り入れた偶数シリーズの最後(といっても細かいバリエーションを飛ばせばOM−2とOm−4の2機種なのですが)を飾るのがこのOM-4Tiです。

 もととなったOM−4は、1984年に発売され、1/2000までの電子制御横走りの布幕シャッターを搭載した一眼レフで、大きな特徴としてはOM−2から導入されたダイレクト測光に加え、マルチスポット測光を取り入れたことが挙げられます。これはスイッチの切り替えによって、シャッター幕にランダムに印刷された白い模様を測光する中央重点測光(むしろ平均測光に近いのですが)から一瞬でスポット測光に切り替わり、ファインダー中央のスプリットプリズムとほぼ同じ範囲を測光するようになるものです。またメモリー演算ができ、8点までのスポット測光の平均値から最適な露出を算出する、マルチスポットモードを備えています。さらに、ハイライト、シャドーをそれらしく写しこむ為、スポット測光した後にこれらのハイライト、シャドーボタンを押すことにより、画面のハイライト/シャドー部分を入力でき、それに従った露出を決定することも出来ます。

 このマルチスポット機能は、評価測光に対しオリンパスの出した一つの回答であり、カメラが自動的に撮影シーンを判定して露光値を決定する評価測光にくらべ、撮影者がスポット測光を繰り返すことによって最適な露出条件を見出すための補助としての機能といえます。しかしながら、8点ものスポット測光を行った結果、最初の平均測光により求めた露出値と全く変わらない結果となることも多く、使い方を誤るとまさに宝の持ち腐れ、となる点、注意が必要です。

 完全電子制御のカメラですから、電池がないと動作しませんが、いざというときはバルブと1/60でシャッターが切れるのでちょっと安心です。かつて、OM−4は電池の持ちが悪く、これを使っている方からはこの非常用シャッターに御世話になった話しなどを聞いたこともあるのですが、OM-4Tiからはこの電源周りが大きく改善され、電池の持ちが普通になったといわれています。また、Tiモデルは最初、シャンパンゴールドに近い「白チタン」ボディが生産されましたが、90年以降はブラックのボディとして登場しています。もっとも、これはチタンの金属色にいきなりブラックの塗装をしているので剥げてくるとしたから白いチタンの地金が出てくるようで、使い込むと真鍮の出てきたオリジナルのOM−4と違っているのははげはげのカメラが好きな私としては少し残念です。もっとも、塗装はかなり丈夫なようではありますが、コツンと当ててしまうと意外と下地のチタンが出てくることもありそうです。(もっとも、これはオリンパスの塗装がどうの、という問題ではなく、私のヘキサーRFなどでも同じようになっています。)

 使い勝手は、マルチスポット機能を除けばほとんどOM−1と変わるところはありません。もっとも絞り優先AEを搭載しているのと、シャッター速度が1/2000と一段余裕があることから来る使い勝手のよさはあります。いずれにしても、OM1と同じ大きさのボディにこれらの電子機能を組み込んだのは立派です。ストロボ制御も純正のストロボを使えばスーパーFP発光という、連続発光により全シャッター速度でストロボが同調します。

 OM−1とOM−4Tiを同時に使っても特に違和感がないのはさすがです。マルチスポットメーターを備えたOM−4の方はファインダー下側にLCDでシャッター速度がバー表示されますが、このバーを、絞り、シャッター速度を調整して中心に合わせることにより適正露出を確保します。これはOM−1で採用されているアナログメーターの指針を定点にあわせるのと実質的に同じ動作です。マルチスポット測光の測光値はバーの上に小さく示されるドットであらわされ、比較的わかりやすい表示です。強いて言えば、LCDの表示がやや暗い点が指摘できますが、これは返ってファインダー像を見る際に邪魔にならないという配慮だと思われます。

 さらにファインダーには視度補正機構が組み入れられており大変便利ですが、その反面、ファインダー中心部をまっすぐに見ないとややひずみが大きくなってしまいます。OM−1などと比べるとホットシューが固定式になり大きく、また扁平になったペンタプリズム部ですが、やはりこのスペースに視度補正機構を組み込むのにはやや無理があったようです。

 そのほかの点では大きな不自由は感じませんが、強いて言えばISO感度セットが一度に動かせないのはちょっと不便です。最大2段づつしか変更できないのはどう考えても不自然です。

 ともあれ別売のグリップをつけると握り心地も格段にアップしてとても使いやすいカメラです。OMシリーズの打ち切りが重ね重ねも惜しいと感じさせる、使い勝手のよいコンパクトな一眼レフです。せめてこれまでのOMシリーズがそうだったように、末永いサービス体制だけは維持していただきたいと思います。



to Point and Shoot