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海がきこえるUアイがあるから 氷室冴子 1999/06/30 徳間書店 文庫 恋愛小説

月刊「アニメージュ」(徳間書店刊)1990年二月号から1992年一月号まで連載された小説「海がきこえる」の続編。1995年に徳間書店から単行本で出版された書き下ろしの文庫版です。
僕は、単行本が出版された当時、この本を手にしています。会社帰りの本屋さんで(表紙のイラストに釣られつつ)文庫版には掲載されていない、単行本版あとがきを読んだのです。つまり、立ち読みしたのですが、この単行本版あとがきは、文庫版の解説でテレビドラマの脚本家岡田惠和が触れているとおり、作家氷室冴子がこの二編をして、出世作と為し得た、その突破口について触れたものです。また、突破口を見つける前の著者が、常套手段として用いた小説家へのアプローチにも触れられていた記憶があります。物語の書き手に興味を覚えた方には、是非単行本を買って読まれることをお勧めします。

物語は、東京の大学に進学した主人公「杜崎択」が、同じく東京で生活を始めた同郷の友人や、新しく知り合う級友、先輩らと共に過ごす最初の夏から冬までを描いています。そして、この続編は恋愛小説です。
男である僕は、「手に負えない女の子」に対する主人公「杜崎拓」や、同じ大学の先輩「田坂浩一」の振る舞いにリアリティを感じるのですが、同時に感じるのは、僕が、彼らのように「手を焼かせる女の子」を支えつつ、尚かつ愛情まで育むほどの懐の深さを持った男ではなかったと言うことです。なんだか、身も蓋も無い感想ですが、そんな、杜崎拓や、田坂浩一を羨望の眼差しで眺めながら、僕はこの小説を読みました。
小説の中で、杜崎拓が「高価なプレゼントを喜ぶ女性」を目の当たりにして「こんなプレゼントを揃えられる男が勝つのだな。」と言う意味のことをつぶやきますが、僕がその場にいたら「それは、違う。君のように、女性を受け止める事が出来る男が勝つのだ。」と拓君に教えてあげるところでしょう。実際、僕の同級生に、このタイプの男がいるのですが、可愛い奥さんをゲットして、現在は可愛い二児の父親です。完全に僕の負けです。あぁ。
と、言うところで「女性の立場に立って」この小説を読んだらどうなるのだろうか。と考えてみます。おそらく「わたしの彼には、こんなに包容力がない!」とか、「こんな男、わたしの周囲には一人も居ないわ!」となるのかなぁ。と思う。
ここまで考えが及ぶと、この小説に登場する男が、女性にとっての理想像であることが思われます。そして、そうまでしても愛情を育みたくなる女性も、また男性にとっては理想像なんだろうな。と思います。その意味では、いい男といい女(しかも二十歳前後のヤング(笑))の恋愛ファンタジーが楽しめた小説でした、が……。

それは、ともかく、成人を目前に控えた杜崎拓が考える「なぜ人は争うのだろうか。」や、「愛がある、とはどういうことか。」にしきりにうなずいてしまう僕でありました。

2000年4月28日

僕の氷室冴子読書は、この本と、続編の二冊だけですが、High Hat ALEXのえれなさんが詳しいので、こちらをどうぞ。
2000年4月29日
No.243


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