| / | *メニューの 「獺祭メモ帳」 の項へ | / | 「獺祭メモ帳 目次」 へ |
●11● 「刺史」って?
| 三國志 魏書 卷三十 東夷伝 倭人 女王國より以北には、特に一大率を置き、諸國を検察せしむ。(諸國)これを畏憚す。常に伊都國に治す。國中において刺史の如きあり。 |
この 「刺史」 もちゃんとした説明なしに訳されてしまうことが多いですね。
中国の行政単位からはじめましょう。
まず全体を示す 「中国」 という概念があります。 漢(前漢) の時代からこの 中国 を、「郡」 や 「県」 といった地方行政単位にわけて統治することが行われるようになりました。 これを 「郡県制」 といい、 漢 以降の王朝でも、この制度はおおむね受け継がれることとなります。 魏志倭人伝にも 「郡より倭に至るには・・・」 と冒頭に 郡(帯方郡) のことが出てきますね。
さて、 後漢 の時代では地方行政単位のなかで最も大きな単位は 「州」 で、以下の十三州がありました。
| 1 | 司隷 | (しれい) | 首都洛陽を含む特別行政区 |
| 2 | 豫州 | (よしゅう) | |
| 3 | 冀州 | (きしゅう) | |
| 4 | 州 |
(えんしゅう) | |
| 5 | 徐州 | (じょしゅう) | |
| 6 | 青州 | (せいしゅう) | |
| 7 | 荊州 | (けいしゅう) | |
| 8 | 揚州 | (ようしゅう) | |
| 9 | 益州 | (えきしゅう) | |
| 10 | 涼州 | (りょうしゅう) | |
| 11 | 并州 | (へいしゅう) | |
| 12 | 幽州 | (ゆうしゅう) | |
| 13 | 交州 | (こうしゅう) |
もともと、この 「州」 には長官はなく、ただ 司隷 のみは別格で 司隷校尉 という首都圏長官がおかれました。 したがって実質的な行政単位では、もっとも大きい単位が 「郡」 ということになります。 「郡」 には長官がおかれ、これを 「太守」 と言います。 一つの 「州」 には平均して八つの 「郡」 があり、これら 「州」 に属する複数の 「郡」 の行政を監察する役目の役職があり、それがここにいう 「刺史」 なのです。 「刺史」 は給料も安く、地位も低いものであったようですが、 「郡太守」 の部下というわけではなく、皇帝に直属していました。
「諸国はこれをおそれている。 (一大率は)常に伊都国に駐在して仕事をしている。 中国における刺史のようなものである。」 というにはこうした背景があります。
さらに 「郡」 の下には 「県」 がおかれ、おおきく重要な 「県」 には 「県令 (けんれい)」、小さな 「県」 には 「県長 (けんちょう)」 という長官が置かれます。
後漢 の時代までは以上のようであったのですが、やがて 三国時代 になると 「州」 には 「州牧」 という長官が置かれるようになり、まれに格下の 「州刺史」 が任命されることもありました。 しかしこの場合の 「州刺史」 は本来の監察官という性格にくわえ 「州」 の長官であり行政官でもある性格を濃くしていきます。
さて、これらの 「県令」 も 「県長」 も 「郡太守」 の部下ではなく皇帝に直属しており、また 「郡太守」 も 「州牧」 の部下ではなく、やはり皇帝に直属していました。 このように皇帝はすべての行政官を自らに直属させることにより権力の集中をはかっていたのでした。