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史記 卷六 秦始皇本紀第六 始皇帝三十七年 九月 (抜粋4)


(原文)

 九月 葬始皇山 始皇初即位 穿治山 及并天下 天下徒送詣七十餘萬人 穿三泉 下銅而致槨 宮觀百官奇器珍怪徙臧滿之
 令匠作機弩矢 有所穿近者輒射之 以水銀爲百川江河大海 機相灌輸 上具天文 下具地理 以人魚膏爲燭度不滅者久之

 二世曰 先帝后宮非有子者 出焉不宜 皆令從死 死者甚
 葬既已下 或言 工匠爲機 臧皆知之 臧重即泄 大事畢 已臧 閉中羨 下外羨門 盡閉工匠臧者 無復出者 樹草木以象山


(読み下し)

 九月、始皇を(りざん)に葬る。始皇初めて即位して(りざん)を穿治す。天下を并(あわ)せるに及び、天下の徒七十餘萬人を送詣して三泉を穿ち、銅を下に槨を致す。宮・觀、百官、奇器、珍怪、臧(ぞう)を徙し之を滿たす。
 匠に機弩矢
(きどし)を作らしめ、穿ちて近づく者有れば輒(すなわ)ち之を射る。水銀を以ちて百川・江河・大海と爲し、機もて相い灌輸(かんゆ)す。上は天文を具(そな)え、下は地理を具(そな)う。人魚の膏を以ちて燭と爲し、久しく之を滅せざるに度る。

 二世曰く、「先帝の后宮に子有らざる者は、出
(いだ)すは宜(よろ)しからず。皆從いて死なしめん」と。死ぬ者甚だ(おお)し。
 既に葬り已に下す。 或は言う、「工匠機を爲し、臧皆之を知る。臧は重く
即ち泄(も)れなば大事畢(おわ)る」と。 已に臧し、中に羨(せん)を閉ざし、外に羨門を下ろして、盡く工匠の臧せる者を閉ざして復た出ずる者無し。 樹、草木を以ちて山を象(かたど)る。


(意訳)

  九月、始皇帝を(りざん)に葬った。始皇帝は即位してすぐに(りざん)に深い穴を掘ったが、天下を統一すると、天下の人々(あるいは「罪人」か)七十餘萬人を山に送り、地下深くの水脈に達するまで掘削させ、下に銅を敷いて槨(墳墓の中で棺を収める空間。またはその囲い)を設けた。さらに宮殿や望楼、多くの役人(たちの席)、珍奇な器物、珍しい不思議な物などを運び込ませここを充満させた。
 工匠に機械じかけの弩矢
(ゆみや)を作らせ、穴を掘ってここに近づく者があれば、これを自動的に射つようにしかけた。水銀で多くの川、入江、大河、大海をつくり、機械じかけで自動的にこれを満たすようにした。上には天の星辰を配し、下は地上の地形そのままを配した。人魚の膏(あぶら)をもって燭(あかり)にし、いつまでも消えないように工夫した。

 二世皇帝
(=胡亥/こがい)が言うには、「先帝の後宮の者で子供がない者を後宮から出すのはよろしくない。皆殉死させよ」と言った。そこで大勢の人が死んだ。
 埋葬が終ると、或る者が言うには、「工匠は機械を作り、埋蔵の様子を皆よく知っております。埋蔵のことはたいへん重要なことなので、これが世に伝わると大事は終ってしまいます」と言った。そこで先帝の棺を下ろして埋葬し終わると、中の羨
(『羨道』。墳墓の入り口から、棺を納める玄室に至るまでの道。またはそこに設けた門)を閉ざし、外の羨門を下ろして、埋蔵に関係した工匠を盡く閉じ込めたので再び外に出られた者は無かった。樹や草木を植えて山のようによそおった。

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