札掛、DAISUKI!(2002.10.12)

Xデイとなった10月12日、我々取材班注1はヤビツ峠を慎重に飛ばしていた。ある大物フライマン注2とコンタクトするためである。9時前に丹沢ホームに到着、彼の姿はない。そう、彼はいつもゆっくりと登場するのである。大物だけに重役出勤らしい。

注1:我々じゃなくてひとりだし、取材班でもないし。っていうか、何のパロディかわかる人がどれだけいることやら・・・

注2:背が高い、つまりデカイ、よって大物。

待っていてもしょうがない。昼食は丹沢ホーム、と決まっているのでそこで合流できる可能性は高い。それまでに状況をチェックしておくのも我々取材班の役目である。全てが釣り人ではないが、駐車する場所に困るくらいの車がある。当然、川にはフライマンの姿がそこかしこに見られる。そう、超ハイ・プレッシャーの釣りが予想されるのだ。

写真、静かな河畔の森の影には鹿さんがいた

ホーム前から川に入り、目ぼしいポイントにフライを入れていく・・・何の反応もない。活性が低いのか、プレッシャーのせいなのか。さらに予想外の減水が取材班を苦しめる。そう、ポイントが少ないのである。何の手がかりも得られぬまま、刻々と時間だけが過ぎていく。

やむなく取材班は堰堤を越えて初心者用プールへと向かった。ここは水深がありニジマスも放流されている。難易度は高いがサイト・フィッシングもできるのでまったく釣れない、ということはない。いわばお助けポイントなのだが・・・

なんということだ。我々の目に飛び込んできたのは、土砂で埋まって瀬と化してしまった、初心者用プールの無残な姿。これはいったいどういうことだ。先日の台風の影響なのか。これはやばい。番組注3の成立すら危ぶまれる、緊急事態である。

注3:番組って何だよ。

確実と思われた初心者用プールをあきらめ、さらに上流を目指す。下流ほどではないが木々の間に見え隠れする先行者。そして水辺の石に残る生々しい複数の足跡。一級ポイントは全て叩かれているに違いない。ドライではなくニンフをチョイスしている人の多さも、反応の悪さをものがたっている。

どうする、取材班。このままでは番組が成り立たない。

ハッチもライズもないことから活性はあまり高くないと予想される。水深のある良さそうなポイントをニンフで丹念に探るのがセオリーだが、すでにその手は使われてしまっている可能性が高い。

それならば、ドライでもニンフでも攻めにくい水深と流速のある筋、のすぐ脇にある流速の遅い部分を狙ってみるのも手だ。イワナは流速のある筋の下に潜んでいるが、そこを直接狙うのはニンフでも不可能。そこでその脇にドライをしつこく流し、食い気を誘ってからより緩い部分をトレースすることで食わせる間を作るのだ。これは自然渓流でも通用するテクニックなので、覚えておいて損はない。

写真、いかつい顔のイワナさん

落ち込みに挟まれた、流速は落ちているが波立っていているポイントを発見。#16エルクヘア・カディスをキャストする。5回、10回とフライを流す。そしてついに水面が割れた。待望のファースト・ヒット。大きくはない、20cmほどのイワナだが、はたしてこれが攻略の糸口となるのか。

続いて巻き返しのポイントを発見。フライを細かく操作して反転流から流芯脇へ、流芯脇から反転流へと回していく。流芯脇を流すことで流芯下の魚にアピールし誘い出していく。数回転させたら反転流からさらに分かれ出る、食べやすそうな流れへとフライを誘導し、ナチュラルにドリフトさせて食わせの間を作る

写真、上の堰堤で釣ったイワナさん

誘いのドリフトと食わせのドリフトで流す筋を変えるのがコツだ。そして狙い通りにヒット、これは大きそうだ。25cmのイワナである。これはパターン成立か。

同じようなポイントで二尾のイワナをヒット。間違いない、文句なしのパターン成立である。堰堤下でも26cmのイワナを引きずり出した。ここで昼食を取るため取材班はホームへと向かう。

ホームの前で彼を発見。大物フライマン、札掛マスターの異名をとるだぁいすけ氏である。カレーを食べながら午後の作戦会議。取材班の見つけたパターンを伝えると「うむ、ご苦労であった。後はまかせたまえ」注4、何という自信に満ちた言葉だろうか。我々取材班にも安心した空気が広がる。

注4:嘘です。だぁいすけさんはこんな横柄なことはいいません。

写真、良型を手にご満悦の札掛マスター

午後は最下流から釣りあがる。が、しかし。先行者が多くてポイントに入れない。しばらく岸を歩き、ようやく空いているポイントを見つける。十分な大場所なので必ず魚はいるはずだ。セオリー通りにヒラキから丁寧に攻めていくだぁいすけ氏。しかし午後になってより高くなったプレッシャーは、簡単には魚を釣らせてくれない。

落ち込みの近くまで進んできただぁいすけ氏をじっと見守る取材班。そして彼の竿が曲がった。ヒットだ。あわてて駆け寄る取材班。ネットの中には25cmを超えると思われるイワナが収まっていた。これで取材成立である。我々取材班もほっとした。そこで、取材をそっちのけで釣りに熱中したのである。

写真、ライズしていたヤマメさん。根性で釣りました

基本的なパターンは崩さずに、途中でライズを見つけたらしつこく狙い、木の枝が張り出した下は迷わずサイド・キャストでフライを放り込み、暗くなるまでに数尾のイワナと二尾のヤマメを手にすることができた。やっぱり僕たちは札掛、DAISUKI!なのである。

渓流のドライ フライフィッシング - Dry Fly Manias Association  / Yanma,2002.10.12