ダビング・ボディ

ボリュームのあるボディを表現するには、ダビング材を使う方法がよく使われます。この方法の特徴は、ダビング材の性状によってボディの浮力を変えられること、また太さの調整が容易であること、ボディ内部に空隙があるため抱気性*1透過性*2があることです。

*1 抱気性
水生昆虫は羽化するときにガスを利用して浮き上がる。そのイミテーションとして抱気性はニンフイマージャー系のフライでは重要な要素のひとつである。
*2 透過性
水生昆虫のボディは若干だが中が透けて見えることが多い。ボディの外側に透明感や茫洋感を持たせると中が透ける感じを表現できる。

ダビング材として使用されるマテリアルは、ファーアンダー・ファー)、植物繊維、化学繊維などです。ファーと植物繊維は一般に繊維が細く、繊維間に空気を含みやすいのでボディを浮かせるフライに向いています。ただし、繊維自体が吸水しますので一度浮力が失われると回復させにくい面もあります。化学繊維は繊維が太く、繊維間に水が入りやすいのでボディを沈ませるフライに向いています。水に濡れても色調が変化しにくく、繊維自体や配合でキラメキ感を出すなど表現のバリエーションが多い利点もあります。フライに合わせて材質を選ぶといいでしょう。

私はダビングのしやすさや強引に沈ませた時にボディに気泡を纏いやすい、などの点でラビットまたはハーアンダー・ファーを主要素材としたダビング材を使います。主にHARELINE DUBBIN社の'Hareline Fur Dubbin'を使いますが、アンダー・ファーガード・ヘアを混入したもので、巻きやすく、また巻いた時に生物っぽい感じがよく出るダビング材です。

写真、ダビング材をスレッドにつける

通常ウィングの取り付けが終わった段階でスレッドテール側へ戻っています。ここからダビング・ボディの作成を始めます。まずはスレッドダビング材を縒りつけます。適量をスレッドに付着させ、左手で軽く縒っていきます。

最近のスレッドはワックス加工済みですので通常は必要ありませんが、化学繊維のダビング材でスレッドに付着しにくい場合や、よりフワッとしたボディにするためごくごく軽く縒りつける場合にはダビング・ワックススレッドに塗り、ダビング材を軽く叩くようにスレッドに押し付けてダビングします(タッチ・ダビングという技法です)。

写真、ダビング材を縒りつけていく

ここで硬く縒りつければ細く硬く締まり、抱気性や透過性の低いボディになります。逆に柔らかく縒りつければやや太く、柔らかく、抱気性や透過性の高いボディになります。作りたいフライに合わせて縒りつけ具合を変えるといいでしょう。

写真、ダビング材を縒りつけ終えた状態

一般的なドライフライのボディとしてはやや柔らかく縒りつけるといいでしょう。また、縒りつけ始めはできるだけ細くし、徐々に太くなるように縒りつけると実際のカゲロウのようにテール側が細くソラックスに向かって太くなる傾き(テーパー)を持ったボディが作れます。

写真、ボディに巻きつけ終えたところ

後はアイに向かって巻きつけていくだけです。この時、どの程度巻きつけるかは作りたいボディのテーパーや太さによって変わりますので、慣れるまでは一気に巻かないで数回巻きつけたら形状を確認するといいでしょう。写真はスタンダード・フライですので、ウィングの後ろにハックルを巻くための空間を残して巻き終わりになります。

写真、はみ出したファーをハサミで刈り取って完成

巻き終わった時点では、余分なファーがあちこちからはみ出していますので、これをハサミで刈り取ります。1、2mmほど残して刈り取ると水面に刺さってドラッグがかかりにくくなり、また茫洋感のあるボディになりますので、ラフにざざっと刈っちゃう程度の方が良いようです。

写真、スパークルダンのダビング・ボディ

コンパラダンやスパークルダンの場合は、テールからアイまで一気にダビング・ボディを形成して、アイの後ろでフィニッシュすれば完成です。このとき、ウィングの前後にやや多くスレッドを回してやるとソラックスにボリュームが出て、よりリアルなダンらしいシルエットになります。

渓流のドライ フライフィッシング - Dry Fly Manias Association  / Yanma