Step.7 フライ・ローテーション

あるフライで釣れない場合、どこかで見切りをつけてフライを変えていくことになります。が、ただ単に釣れないから交換するのと、交換することによってより多くの情報を取得し、釣れるフライを見つけだす糧にするのとでは雲泥の差があります。フライ・ローテーションとは、もちろん後者の方法のことです。

Point.1 ローテーションの前に

羽化(ハッチ)の状況がある程度わかっており、いくつかの虫が捕食されているだろう、と推測可能な場合は、当然その虫を意識しながらローテーションを考えていきます。しかし、複数の虫の間での優先順位をどうするか、あるいは羽化のステージ間では何から優先していくか、などを決めていかなくてはなりません。

それ以前に羽化の状況がちょっと予測できないぞ、なんて時には、フライボックスの中のどのフライから試して行けばいいか、相当迷うことになります。そこで、いくつかのルールを決めておいて、それに従って優先順位(試す順番)をつけていくと素早く、簡単にローテーションを組み立てていくことができます。

ちょっと前に「魚は効率よく餌を摂ろうとする」ということを書きましたが、ここからルールをひとつ、導き出しましょう。小さい餌よりも大きい餌の方が効率が良いことは明らかです。ということは、大きいフライの方が好んで口にされる可能性も高いことになります。また、大きいフライは人間からも見やすく、ドラッグもかかりにくいのでその分有利でもあります。大きさに関するルールは「大きいフライから使う」にしましょう。

大きさの次は色を考えて見ましょう。日本の渓流で見られる虫の多くは濃い色、暗い色をしています。カゲロウなんかは明るい色をしているものも多いじゃないか、と思う方もいらっしゃるでしょうが、例えばフローティング・ニンフはどうでしょう。明るい色のカゲロウであってもニンフは褐色をしていることが多いようです。ということで色に関するルールは「濃い色から使う」です。

浮き方はどうでしょうか。ストマックを採るとわかりますが、水中での捕食物は相当多いものです。7、8割は水中で食べている、と考えても間違いではないと思います。であれば、より水中に近い浮き方をするフライが有効ですし、実際にそういう流れ方をするのは羽化に失敗したりして食べやすい(バルナブル)個体がほとんどです。

しかし、そういう浮き方をするフライは視認性が良くありません。フライが良く見えないと、ドリフトが上手くいっているかどうかわかりませんし、魚が水面を割らずにフライを吸い取っていってアタリを見逃してしまうこともあります。しっかり浮いていても魚が反応することも結構あるわけですから、ここはドリフト優先、見やすさ優先で「高く浮くフライから使う」というルールにしておきましょう。

Point.2 パイロット・フライの役割

ローテーションの最初に使うフライをパイロット・フライといいます。このフライの主な役割は、実は魚を釣ることではありません。魚がいるかどうか、水面を捕食範囲に入れているかどうか、活性が高いか低いか、プレッシャーが高いか低いか、セレクティブになっているかどうか、などを判断するためのフライです。ですから「反応がない」「見切られた」なんて時の方がパイロットの役割をまっとうしている、といえます。

個人的には、パイロットで釣れてそのまま釣れ続けるような状況が好きですけどね。

写真、アダムス、茶とグリズリーの二色のハックルを用いた伝統的フライ
アダムス

さて、釣ることよりも魚の反応を引き出すことに主眼をおいた場合、どんなフライが有効かを考えてみましょう。まずは魚にフライを見つけてもらうことが最も重要になると思います。見切られてもいいわけですからイミテーション性は低くてもかまいません。それよりもアピール性の高いフライが有効です。例えばスタンダード・フライ、パラシュート、エルクヘアカディスなど、比較的大きくて目立つライト・パターンを作るもの、ある程度のボリュームを感じさせるもの、複数の虫や羽化のステージをラフにイミテートするものがパイロット・フライには向いています。

写真、エルクヘアカディス、エルクの上毛でトビケラを模した伝統的フライ
エルクヘアカディス

色は、ある程度羽化が読めれば、その中で最も大きな虫の色に合わせればいいのですが、よくわからないときは中間的な色、濃い目のグレイやオリーブなどが無難でしょう。あるいは色のルールを使って茶色やピーコックをボディに使ったものを選んでもいいでしょう。

サイズも羽化次第ですが、早期は#16、盛期以降は#14あたりならば羽化が期待できるサイズ、です。まとめてみると、例えばアダムズ・パラシュート#14というのはパイロット・フライの条件を高レベルで満足しています。このフライをパイロットにしている方は相当いらっしゃると思いますが、それは決して偶然ではないのです。

Point.3 セカンド・フライ

さて、パイロットでは反応がない、見切られた、などというときに最初のフライ交換が発生します。2番目に使うフライは、パイロットで得られた情報を加味して選ぶわけですが一般にはサイズを落とす、という選択を奨める本などが多いようです。

が、私自身の経験からいうと、まずはサイズ・アップを試すことをお奨めします。大きさのルールでも述べたように魚は大きい餌に弱いはずです。フライを食べているものにあわせる、というよりも大きさで目を眩ませる、という感じなのですが、これが意外と効きます。また、より見やすくなったことでドラッグ回避がしやすくなって釣れる、という効果も軽視できません。

また、色を変えるのもいい手です。この場合は思い切って反対側の色に変えましょう。黒っぽいフライを使っていたら白っぽいものに変えます。大きく変えることで色に対する選択性(セレクティブかどうか)があるかどうか、あるとすればそれは暗い色と明るい色のどちらを好んでいるか、などを判断できます。

2本目はパイロットとあわせて状況判断するのためのフライ、くらいに考えてローテーションを組み立てるといいでしょう。

Point.4 ローテーションの進め方

パイロット、セカンドである程度の状況判断ができたら、そこから釣れる可能性が高いであろうフライを導き出します。

サイズを上げても反応しなかったのであれば、かなり神経質になっているのかも知れません。羽化を意識したフライの選択が必要になり、マッチング・ザ・ハッチに近い考え方をしていけばチャンスが生まれると思います。虫が絞り込めればまずはサイズと色を合わせること、そして浮き方もパイロットのような派手なものよりも控えめでイミテーション性の高いものをチョイスしてください。

写真、CDCダン、CDCをウィングにし、カゲロウを模した繊細なフライ
CDCダン

全然羽化が掴めない、とか、ちょっと虫は苦手という場合は、まずはパイロットよりもサイズをひとつかふたつ、落としてみましょう。それでもダメならサイズはパイロットと同じだけどイミテーション性の高いパターン、例えばカゲロウであればCDCダンやソラックスダンを試し、それもダメならパターンは同じでサイズを落とします。

写真、スペント・ダン、羽根を広げた状態で水に捕われて流されていくカゲロウの亜成虫を模したフライ
スペント・ダン

まだまだダメなら今度は浮き方(というか羽化のステージ)を変えてみます。パターンはスティルボーン(これ死語かもね)とかクリップルなどと呼ばれる羽化に失敗した状態を模したもの、例えばスパークルダンやトビケラであればX-カディスなどがいいでしょう。あるいはスペント・スピナーやDD(溺れたダン)などの羽根が水平に開いて流されるものなども効果的です。

そんなにパターンを持っていないよ、という方もいるかも知れませんね。そういう場合はフライの浮かせ方を積極的に変えてみましょう。パラシュートでも水面にきっちり浮いているときと、ボディが完全に水面下に沈んでいる場合とではまるで違うフライのように効果に差がでることがあります。他のパターンでもボディだけ水面下に入れる方法は、先の羽化に失敗した個体などをラフにですがイミテートすることができます。

水生昆虫の生態に関する知識があれば、ローテーションを考えるときに非常に大きな助けになります。またそれがどういうフライを巻けばいいか、ということにつながりタイイングにも反映されます。オフシーズンの暇つぶしとして、水生昆虫に関する本などを読むのも後々大きな力になります。

最後にひとこと

何となく書き出したこの文章、結局完成までに1年以上かかってしまいました。あらためて筆力(キーボード力?)のなさを痛感しました。もっと図や写真を使ってわかりやすくしたかったのですが、これまた企画倒れというかほとんどできなかったし。

改めて読み返すと、常識というかありきたりのことしか書いてねーな、とあきれちゃったりします。が、その一方で魚の生態を軸にそれなりにまとまってるかな、とも思います。この文書がドライフライで釣りたい方の一助になることを願いつつ、とりあえずオシマイです。

それでは、良い釣りを!!

渓流のドライ フライフィッシング - Dry Fly Manias Association  / Yanma ,2001.3.23