かって、「芦屋エスペラント会」があった...

Iam estis Aŝija E-Societo...


 

La viro el la pasinteco (255)


仮題 『過去に生きる男』

Jurian Modest
著者 ジュリアン・モデスト



(14.8cmx20.9cmx0.7cm  107頁、 Dokumenta E-centro 社,  クロアチア、 2015年)

Unu vorte: モデスト節を23編も楽しめる。中には首を傾げたくなるものもあるが...

各短編の日本語訳とそのあらすじ:

・過去に生きる男
ノルウェーでの外交官生活を終えてソフィアへ戻った父は寡黙になってしまった。ほどなく離婚。祖母に育てられたわたし(Drago)は金持ちの男と再婚した母に引きとられ、父とも疎遠となり、いまや大学生になり、思いたって父親探しの旅に出る。父は、人里はなれた山村で木彫をして暮らしていた...


・愛
五年生のわたし(Madlen) は、賃借人の、わたしより三年上級のハンサムでズポーツマンのSpiridono に恋している。母から「愛はすばらしい」の一言を聞きたくて、メモで知らせる。母は諭すどころか、銀の指輪をした左手でわたしの頭を引っぱたいた... なぜ?

・イローナ
Monato に載って、例会で使用したもの。ふたたび読み通してもやはり美しい、懐かしいブダペシュトの夜! こちらの方が巻等を飾るにふさわしい?

・飛ぶ
ぼく(Bobo) は夏の別荘の入口の階段に座ったまま黙りこくっている。おばさんが心配して話しかけてくるが、こんなことを話しても信じてもらえないだろう。じつは、昨日、親友の、パイロットにあこがれていた Rad が鳥のように両手を広げ空を飛んで行ってしまったのを見たんだ...

・手品師
Dobrin は高校生の頃、サーカスの魅力に魅せられ、手伝いをしながらサーカスの一団についてまわる生活を始めた。兵隊になり、地方の娘と結婚して家庭をもったことがるが、二年と続かなかった。ふたたび元のサーカスに入ったが、なぜかトルコへの巡業に入れてもらえず、それからはいろいろな職を転々と変えた。いま、山峡の小さな駅舎で、なだれの雪を取り除くあいだ、足止めを食っている人たちを見ていると日常の生活にに縛られて生きる哀れ集団に思えてきて、リュックから棒を取り出し、お手玉をはじめた。目を顰める人もいるが、退屈していた人々は喝采をしてくれた。隣に座っていた少女の腕時計も見つけてやった。その時、男の子が来て、「魔法使いのおじさん、ぼくのお母さんを見つけて」と、...

・五つの微笑を持つ少年
微笑みはひとつだけと思っていたが、わたしは五つも持つ男の子に会った。五つ目はわたしを見たときのほほえみ。この子となら世界の果てまでついていってもいい。父と母が離婚してから、母は微笑を忘れてしまった。父が残していった大きな家でまったく微笑むことを忘れてしまって、弁護士の仕事に打ち込んでいる母。母に笑顔を、とその子を家に招待することにした...

・新しい顔
もう何年もたつが、あの女性のことを思い出すと心が痛む。山で猟犬に襲われ失神状態で病院へ担ぎ込まれ、わたしが手術をしたのだ。彼女の顔はすっかり変わってしまったと同時に、記憶も失ってしまっていた。本当に彼女は記憶をなくしたのか?

・雌狼
Nona は両親が残してくれた家を売った。その日、最後の夜をその家のベッドで過ごすと、両親たちの魂が家に入っているのを感じた... Nona は良心の勧めで金持ちのおじの Bogdan の秘書になったが、彼の意図が見え見えで、みずから両親の反対を押し切って仕事を辞め、Bogdan の運転手をしていた Todor と結婚したが、Milena を授かっただけで、退屈な日々が訪れるだけで不満がつのった。その夫もガンで亡くなり、初めて Milena を一人で育てるという責任を果たすことで生きがいを感じることができた。Milena は大学生となり、わたしと同じように勇敢な雌狼になることだろう。

・金メダル
窓を激しく雨が打つ。Katja は昔は有名なスポーツウーマン。しかし、いまは居間から食堂へ行くにも苦労する。玄関で音がする。出てみると教え子の Vergil が雨にぬれて立っている。金メダルを返しに来たのだという。酒と金におぼれ、挙句の果てには犯罪にも手をそめ、刑務所暮らしをしていたのだという...

・罪
Bogomil は運転を急がなかった。気の重い、仕事が待っていた。しなくても良かったのだが、することに決めたのだ。彼の父は貧しい教師。彼が大学に進みたいと父に言ったとき、父は学問を身につけても仕方がない、叔父のように仕立て屋になって金持ちになったほうが良いと、叔父を紹介した。父をがっかりさせたくないばかりで、彼は叔父の元でテイラーとしての修行を積んだ。いま、建築家になって、世話になった叔父を訪ねようとしていた...

・ピアノ
Anton はその女性を夕暮れ時の繁華街で見かけるのはこれで三度目。どこかで見た覚えがあったが思い出せない。あとをつけると彼女はダンスホールへ入っていって姿を消した。やむなく椅子に座ってどこであったのか考えていると、ピアノの前にその女性が現れ、誰も聞いていない、酔っ払いを相手にピアノを弾き始めた。そうだ、彼女はあのサンドラだ...
サンドラは彼の家族に自分のピアノを預け、ウィーン・フィルでの演奏へと旅立ったのだった。

・Vaska の夢
Vaska は喫茶店のウェートレス。いつもむかえの建物から出てきて彼女に冗談を言い、コーヒーを飲んで行く金持ちの美男子が、いつかデートに誘ってくれるものと信じている。だって、彼女のおばさんがコーヒー占いで占ってくれたんだ。

・サプライズ
Andrej を寂しさが苦しめる。何年か前に離婚し、両親はもう亡くなっているし、兄弟はなし、親戚も近くにはいない。Tina とはたまたま知り合いになった。学生時代からの友だちのイワンの誕生会に、フランスの高級ワインを持って出かけたときに。二三日後で、町で Tina に会い、会釈だけにするつもりが Tina から近づいて話しかけてきた。今では彼女なしでは生活できない。ある朝、友人で警察官のアレクサンドロから携帯に電話がかかってきた...

・夢を贈る男
ある五月の朝、庭でおばあさんと妹と遊んでいると、黒い長いマントを着た、みすぼらしい男が入ってきた。物売りではなさそうで、自分は夢を贈りたいという。私はおばあさんを介して、夢を贈ってほしいと伝える。男は「よろしい。わたしが君の目を見つめるから、君は美しくて、お金では買えないものを望みなさい」と言った。それ以来、わたしは微笑みながら眠りにつき、微笑みながら目ざめる。

・ミナ
もう皆が休暇を切り上げて町へ帰るというのに、Mina は帰ろうとしない。冬の静けさも悪くはないと思っている。隣の別荘の Kalojan は幼馴染。今は、病弱の Nadja の介護で忙しい。子どもの頃、Nina は Kalojan と一緒に、夏の休みに野山を駆け回ったものだった...

・ノラ
Nora はどうなってしまったんだろう。しばらく前からじっと遠くを見つめ、Rosen とほとんど口をきかなくなってしまった。浮気をしているわけもない。Rosen が何か気の障ることを行ったりしたりしたわけでもなさそうだった。思い切って「今年の夏は海外旅行にでも出かけようか?」と話しかけてみる。驚いたことに Nora は「あの子が毎晩やってくる。もう大きくなって、お母さんと一緒にいたいと言ってる。あの子は病院で死んではいないの。誰かが盗んだんだわ」と言う...
…モデストさんにしては珍しくアンハピー・エンディング! 首を傾げたくなる。

・ラップランド行き無料切符
この小さな町に、気の触れた人がだんだん増えてきた。一人は若い婦人で、「わたしの一番すばらしい時期は今世紀初めだった」とだれかれにと叫ばなかったら、誰も狂人とは気がつかなかっただろう。もう一人は、60歳か70歳の老人で、ブランデーの匂いをたえずさせ、レストランからレストランを渡り歩き金をせびる。最近、一人の若者が大通りに現れ、カラーの紙切れを配りながら、「ラップランド行きの旅行切符を上げる。ラップランドへ行ってアヴォン・フロストさんに会いなさい」と笑いながら大声で叫び始めた。子どもたちには人気者だ。クリスマスが近づいていて、忙しそうにしている人も、その若者の笑顔を見て心が和む。しかし、クリスマス前のこの日曜日、菓子屋から放り出されてから、その若者がこの町からいなくなってしまった。街は静かになり、にぎやかさも消えてしまった。

・リナと贈り物
あの話はいつ頃のことだったのだろう。たしか春か夏の初めの頃だ。リナはその数年前からダニエルの生活の一部となった。彼女は仕事を終えると午後いつも彼のところにやって来た。外国の企業に勤めていて、彼より三つ年下だ...。秋の初めの秋の夕方、リナを抱きしめながら、「結婚しよう。贈り物を上げるよ」「赤ちゃんだ」「喜んで受け取るわ」「わたしも贈り物があるの」「どんな」「会社から首都で働くようにいわれているの。一緒に行きましょう。どお?」「そんな贈り物はわたしはいらない」...

・不必要な言語
ドナおばさんは今夜は寝苦しい。明日、娘夫婦のレナとステファンが住むシカゴへ5歳になる孫のデメトロに会いに行くのだ。孫のためにブルガリアの絵本も買った。プラハ経由でやっとたどり着いたシカゴ空港で、しかし、孫は何も話さない。ブルガリア語がわからないのだ。「お母さん、なぜ、デメトロにハンガリー語を必要なの? いま、若者はみなブルガリアを出て、外国で仕事を探すわ」

・話すことの奇蹟
18歳になった Jana は、母に都会へ出て働くと告げる。母も、その母も同じようにして生きてきたのだ。新聞切れ端で見つけた町から遠く離れた病院の雑役婦として働き始めた。ある日、若い医師に「声が美しい」と言われる。黙々と働いていたので不思議に思う。「毎日、5号室にいる若者に本を読んでやってくれ」 彼女は、町で若者からもらった、モデストさんの "Mara stelo"を読み聞かせる。そして、ある日、若者が昏睡から醒める!

・アニ
Ani は母を何も知らない。父と父の母とずっといっしょに暮らしている。母のことを父に聞きたいのだが、聞くとしかられそうなので聞けずにいる。小学生の頃、Ani の母は putino で男と一緒に逃げたとからかわれ、そのことを話と父がいじめっ子に対して激怒したことがある。それ以来、ますます、母のことは聞かないことにしてきた。大学生になり、大好きな Ljudmil と婚約式をすることになり、母を呼ぶ決心をし、父に伝える。父はあの時と同じように、息も止まり、蒼白になる...

・アコーディオン
父に頼まれ、雨の中、車で Kalojan は町のはずれのあばら家へつれてゆく。中から老人が出てくる。父は新聞で見た、アコーディオンを買いたいという。もうほとんどお金もないので、アコーディオンを売るのだという。80ユーロと言うのに、100ユーロでと父。弾けもしないアコーディオンをどうするのだ、と問う息子に、父は、「どこかのストリート・ミュージサyンにでもやるよ。あの老人は昔わたしが小学校で初めて教えてもらった教師だ。もしわたしがお金を渡したら、彼は誇りと自尊心でから受け取らないだろう」

・わたしの目を貸してあげます。
Darin は、店の片隅に立ちつくすその男を良く見かけた...(Monato で読んで、金岡さんともう一度例会で読んだ!)