かって、「芦屋エスペラント会」があった...


Kion mi skribis? (3)


La Revuo Orienta (2015) 5月号 21頁

Briĝo kun veneno (Ronald Cecil GATES)

津田 昌夫


 ピザを六片に切って、いつもの四人での昼食会。「この前、仲間が話してくれたジョークを思い出した」と、大学の警備員のトムソン。しばらく沈黙が続き、彼が笑いを押し殺していると、彼の妻のドロテアが「わたしたちに話してくれないの?」と催促。「なあに、公衆トイレに入った男の話だ。ズボンを下ろして座ると、隣のブースから『サルートン! どうだい』と言う声。少しためらったが『ありがとう。元気さ』と答えると、『今なにしてる?』と、聞くんだ。『君とおなじようにここで座っているよ。』と返事すると、しばらくして『君のところへ行ってもいいかい?』と言うんだ。『いま、ちょっと忙しいんだ』と応じると、その声の主が言うんだ、『後で電話するよ。どこかの馬鹿が、隣りのブースで、おれの言ったことにいちいち返事するんだ』」... トムソン夫妻、エリス警部とその妻アメリアさんの四人の大笑いがそのあと長く続いたのは言うまでもない。

 これは、オーストラリアの作家、ゲイツさんのエリス警部シリーズ第5作目で、トムソンが繰り出すいつもの他愛もないジョークの一つ。発行は2014年だ。シリーズ物が楽しいのは、映画『寅さん』を考えれば良く分かる。寅さんやサクラさん、タコ社長や博さん、おいちゃんやおばちゃんなど、作品が増えるごとに、おなじみの人たちの魅力が増してくる。ダンゴ屋さん、裏の印刷工場、江戸川や帝釈天などの風景もおなじみに。この作品で言えば、エリス警部夫婦と警備員夫婦、トムソンが警備する架空の地方都市Longvaloの、川で二分されるほどの広大な敷地を持つ大学、警備員詰め所などの様子がシリーズが進むにしたがってだんだんはっきりしてくる。トムソンのジョークはいつものことだが、ゲイツさんがいつも登場する四人を上手く書き分けているとは言いがたい。この作品でも、読んでいてすぐ分かるのだが、二ヶ所にわたって、二人の奥様がたの名前を取り違えている。似たように良妻の二人を書き分けるのが難しいからなのだろう。

 ブリッジ・クラブに20人ほどの会員が集まり、さあ、ゲーム開始だというところで、コーヒーを口にしたクラブの会長が突然倒れ、毒殺されたことが分かる。たまたまこの会の会員であるアメリアさんも目撃した... エリス警部たちと対等に読者も謎解きに参加できるといった正統な推理ものではない。シリーズ初期の作品では、「えっ、12月が夏? あっ、そうか、ここは南半球だ」などと思ったものだが、この第5作では月や季節の名前がいっさい記載されない。大学構内が洪水の被害にあうのだが、何月かの記述がない。ゲイツさんが、北半球の読者が圧倒的に多いことを意識したのだと思う。「インスタント・コーヒー」「ティー・バッグ」「電子レンジ」「T-シャツ」「シートベルト」「電気ポット」など、日常用語がふんだんに出てくるし、「ダイヤ・クラブ・スペード・ハート、切り札、ソリテア」などトランプ用語も覚えられる。ゲイツさんのエスペラント文は英語に慣れた人なら読み易いだろう。エスペラントの初心者に絶好の読み物である。


(resumo) En la kvina en serio da (rekomendindaj) krimnoveloj por komencantoj,
la aŭtoro ankaŭ ĉi-foje ridigas nin per du ŝercoj.