かって、「芦屋エスペラント会」があった...


Kion mi skribis? (4)


La Movado  (2015) 6月号 7頁

エスペラントの本の森に、素敵なお話を求めて(二)

津田 昌夫


 (後輩)「例会での輪読だけでは実力がつかない、だから、まずは本を読みなさいとおっしゃるのですね。しかし、どんな風に、どんな物を読んだら良いのでしょう?」

(先輩)「早いうちに、自分の好みの作家や作品を見つけることです。見つかったら、例会の輪読会のような、週に二、三時間、数ページなどということではなく、集中的に好きなだけ好きな時間に、思う存分エスペラントに浸ることです。」

「どうやって、その好きな作家やら作品やらを見つけるのですか?」

「エスペラントの本屋さんは、豊中の関西エスペラント連盟(KLEG)の事務所か、東京の日本エスペラント協会にしかありません。それで、連盟や協会が毎年発行するエスペラント図書カタログで探すことになります。装丁が気に入った、挿絵が素敵、活字が大きいといったことも本を読む動機になりますから、実物を見る機会があったら是非そうされると良いので、その機会をのがさないようにしたいですね。それには毎年開かれる日本エスペラント大会か関西大会に参加して、会場にある本屋さんを訪ねことです。しかし、それもちょっと大変ですね。これはKLEGが毎年出しているカタログです。講習会終了記念としてあなたに進呈します」

「ありがとうございます。でも、いきなりここから探せと言われても...」

「それはそうですね。自分好みの本を見つけ、本を読むことでエスペラントを独習するというやり方に、二つの方法があるとわたしは考えています。一つ目は、アンソロジーをまず読み、その中から、気に入った作家や作品を見つける、というやり方です。二つ目は、面白い長編小説を読むことです」

「そのアンソロジーって、いったいどんな物がありますか?」

「古くは、'Fundamenta Krestomatio',新しいところで'Trezoro(1)(2)'や'Nova    EsperantaKrestomatio'があります。でも、わたしのお薦めは、そんな正統的なものでなくて、コルケルさんの'Vojaĝo en E-lando'や、ちょっと古いのですが、シラジさんとロセッティーさんが編集した'33raknotoj',あるいは、新しいところでハンヅリックさんの編集による、彼の友人たち、世界各地の、現役の、老若合わせて30人の作家が、お気に入りの自作を紹介している'Mondoj'です。さらに変則的だと思うのですが、わたしは、最近、ジュリア・ジクモンドさんが編集した'Kiam  mi  estis la plej feliĉa en la vivo?'も、アンソロジーの一種だなあと思いながら読みました。これらのアンソロジーの変種のほうが、部厚くてハードカヴァーの正統的なものに比べ、自分に合ったエスペラント文の書き手を探す、より手っ取り早い方法だとわたしは思います。'Kiam mi ...?'は、世界中のエスペランティストに、自分が人生で一番幸せに思ったときはいつだったか、を書いてもらったものを集めたもので、結婚したとき、子供が生まれたときなどの話が多いのですが、わたしがこの本で初めて知ったSen Rodinさんの書いたものは、そのエスペラント文が読みやすいばかりでなく、何よりその「幸せ」が抜群でした。それは、「学校内での盗み」にまつわるお話で、貧しい女教師の財布から10万リラ札が盗まれたのを、老教師の名案で、だれも傷つくことなく見事に解決されるばかりでなく、おまけまでついてきたというものです。『やったぁ! 人間ってなんて素敵だ』と、Rodinさんと同じように「幸せ」な気分になりましたね。早速、カタログで彼の作品集を探し、'Bildoj pri norda lando kaj aliaj rakontoj'を手に入ました。彼の別の短編集、'Nu, kaj do?'に、その一番幸せに思ったときの話が、全くの同文で'La    ŝtelo-manao'という題の短編小説として掲載されています。Rodinさんはよほどこの話が気に入っているんだ、と思いました。余談ですが、この'Nu, kaj do?'は、わたしが自分のホーム・ページに 'Kiam mi ...?'の読書メモを載せたところ、峰芳隆さんがKLEGでは扱っていないが...、とことわってわたしに贈ってくださったものです。期待にたがわず、この本には先ほどの話の他にも、ルーマニアの都市、クルージュをこよなく愛することになってしまった話など、沢山の素敵なお話が詰まっていました。おまけに、この本、アート紙で文字の印刷もくっきり、変形A5版で愛書家にはたまらない作りです」            (つづく)