かって、「芦屋エスペラント会」があった...


Kion mi skribis? (5)


La Movado  (2015) 7月号 5頁

エスペラントの本の森に、素敵なお話を求めて(三)

津田 昌夫


 (先輩)「わたしがRodinさんの素敵なお話に出会った、"Kiam miestis la plej felicxa en lavivo?"のような、変則的なアンソロジーはいくつかあるのですが、初心者のあなたの場合は、それらのうちの"Vojagxoen E-lando"がよいと思います。第一章は、クラブ・エスペラント・ランドの新年最初の例会です。冒頭は、ザメンホフさんのBorovkoへの手紙として有名な、エスペラント誕生についての文章です。それで思い出すのですが、わたしがエスペラントを"Launuakursolibro"の前身に当たる"Lateksto unua"で勉強していた時、教科書特有の基本文法、基本単語を覚えさせるための堅苦しい文章ばかりが出てくるのにうんざりして、講習会の期間中ずっと、そもそもザメンホフはどんな文章を書いていたのだろうと、わたしはずっと気になっていました。講習会が終わった時に、講師にザメンホフが書いたものが読みたいと申し出たところ、講師から渡されたのは城戸崎益敏さんの"ZamenhofaLegolibro"という小冊子でした。「裸の王様」、聖書や『寡婦マルタ』の抜粋、世界大会の祝賀演説などが入っているのですが、かっちりした、正調の、しかし、古めかしいエスペラント文にがっかりしたことを覚えています。とにかく読みにくかった。ザメンホフさんの性格そのものなのでしょうか。入門講座で使われるテキストに少なからず不満があったものだから、わたしは、エスペラントを学びたいと思い立った人に、いきなり長谷川テルの詩、'Du pomojperditaj'や、サン=テクジュ・ペリの"Laetaprinco"でエスペラントを手ほどきしたら、エスペラント・ファンは増えるはずだと、後に考え、実践することになったのですが。でも、昨日届いた『モバード』の新刊・新着欄にあった、峰芳隆さんが編集された"Ekzercojde Zamenhof"なら、当時のわたしは満足したかも知れません」

(後輩)「ところで、先輩は講習会のあと、どのように勉強されたのですか?」

「わたしが講習会を終え、身を入れてエスペラントに取組むようになったのは、といってもサラリーマン生活の息抜きとしてですが、いまから40年ほど前のことですから、もちろん、インターネットも携帯電話もない時代です。手に入るエスペラントの本はたいていが薄っぺらな小冊子で、ザラ紙に印刷されたもの。印字も小さいものばかり。でも、まだ若くて老眼とは無縁だったので、通勤の阪急電車の中でも読んだりしました。一度、隣に座っていた人から「それは英語ではないですね?」と言われたことがあります。別れ際に、いつもカバンに入れていたエスペラントのパンフを渡しました。エスペランティストはお節介なんですね」

「音の教材は利用できたのですか?」

78回転レコードで、リンガフォンから出されているものがあるということを、高嶺の花と聞いたことがありました。いまなら、さしずめ、6枚組のDVD

"Esperanto:Pasporto al la tuta mondo"でしょうか。当時はまだオープン・リールの磁気テープを使った、ソニーの小型の録音機が現れはじめたころでした。ポーランドの放送局から、短波で、エスペラント放送が毎日あるということは知られていたので、ソニーの短波も聴けるトランジスタ・ラジオを買って、アンテナを精一杯伸ばして、放送時間に合わせて耳を済ましたのですが、雑音ばかりでがっかりしたことを覚えています。この頃は、ソニーが全盛期だったのですね。わたしが短い夏休みを利用して、サラリーマンの身で初めてエスペラント世界大会へ行ったのは、1988年のロッテルダムでの大会。小型のテレコと短波専用の受信機を持って行き、夜、ホテルでなんとかポーランド放送を受信したいといろいろ試みたのですが、この時も上手くいきませんでした。今なら、インターネットで簡単に、このあこがれのポーランド放送を聞くことが出来ます。でもね、教材がいくらあっても聞く時間がなければ意味がないのです。こんなことに、当時は全く気がつかなかった... そんなわけで、わたしには読みにくいということで、ザメンホフさんのものはあきらめ、一方、その頃、手に入ったフォルジュさんの本でエスペラント文がすらすら読めると分かり、シリーズ全冊"Abismoj","Saltego trans jarmiloj", "Mr. Tot acxetismilokulojn", "La verda raketo","Miaverda breviero"を揃え、読みふけりました。緑色の布地模様の表紙で統一されたこの小型のシリーズ本、何年か前、関西大会の古本コーナーで400円という値段をつけて安売りされていたのを見て、可愛そうになって買い足しました」


 (つづく)