かって、「芦屋エスペラント会」があった...


Kion mi skribis? (10)


La Movado  (2015) 12月号 7頁
エスペラントの本の森に、素敵なお話を求めて(八)


津田 昌夫(愛知)


(先輩)「もし、パソコンでインターネットを楽しまれているのでしたら、プロバイダーが提供するホーム・ページのアドレスを入手して、ご自分のサイトを作ってください。そして、公開するしないは別にして、読んだ本のメモをそこに残すのです。わたしは、UEAの会長をされたこともあり、神戸大学にも来られていて、阪神大震災も経験された、李種永(Lee Chong-Yeong) さんに、タンペレでの世界大会で、「入門講座を開いても若い人が集まらない」とぼやいたところ、「これからはインターネットの時代。若い人はエスペラント会などに入らずに、エスペラントを独習するだろうから、ネットで募集することも考えたら」と提案されました。それで定年後に、市の無料市民講座、『ホームページ(HP)の作り方』に通って、作り方を覚えました。日本中で一番訪問者が少ないそのHPは、いまや、自分用の読書メモを取っておくことが主になってしまって... 。でも、それが200冊を越えるようになると、HPを作っておいて本当に良かったとつくづく思います。ひところは、読むスピードにHP作りが追いつかなくて、タイトルと表紙写真のみなどというページもあったのですが、いまはHPに上げないと次の本に手を出さないようにしています。そのために、読みながら本の余白に気がついたことを鉛筆で書きとめておいて、読み終えてHPを作る段階で、余白のメモを見ながら書き込みをしています」

(後輩)「HPの効果はあるのですか?」

「春・秋の講習会や、エスペラントの本に関する問い合わせなどが、年に一、二回あります。当市は人口が少ないから満足すべきと思います。さて、本をたくさん読んだら、世界エスペラント大会に参加されると面白いと思います。わたしは、大会で目にした、辞書の編纂で有名な言語学者で、デニムのジーパンが良く似合うジョン・ウエルズさんとか、シェークスピアの翻訳などがあり、オークションの司会で弁舌さわやかなハンフリー・トンキンさん、会話本で名の知れた太っちょのポール・グビンズさん、痩せぎすで慎ましやかなアンナ・ローウェンシュタインさんや初心者にも誠実に応対されるスポメンカ・スティメッツさんらの物腰を思い浮かべながら、その人たちの著作を読むことが出来ます。エスペラントの世界はとても狭いのです。それだけ家庭的と言えるかも知れません。世界大会では 'unu homa familio' を実感できます。矛盾していますが、この居心地のよさが大きな組織になると薄れてしまうのなら、エスペランティストは増えないほうが良いな、などと思ったりします。いろいろな国のそのような知識人たちと一堂に会することが出来る世界大会って、素敵だとは思いませんか?」

「そうですね。問題は言葉の垣根があるかないかなのですね」

「そうそう、わたしには、家宝というべきエスペラントの本があります。つくばへの3年間の転勤を終えて、1992年にふたたび神戸へ戻ったのですが、復帰した初めての例会で、英国紳士然とした長老の由里忠勝さんをはじめ、会員の皆さんの大歓迎を受けました。その時、由里さんから《もう手元に二、三冊しか残っていないのだけど》とプレゼントされた二冊の本がその家宝の一つです。出口王仁三郎にエスペラントを手ほどきされたという由里さんが書かれた、『模範エスペラント会話 (1926年)』と、『Frazlibro de Interparolado Esperanta (実用エスペラント会話)(1923年)』です。大正年間にこれだけの本を出された由里さんの力量と熱意に脱帽です。これらの本と隣り合わせに並べてある、由里さんが序文を書かれている 『エス和作歌辞典(第三版:1933年)』 がもう一つの家宝です。和歌を覚えて、その上でエスペラントの単語を覚えるという二重の手間を、初学者はするはず、と考えた著者の出口王仁三郎の超人感覚に、恐れ入ります。たしか、関西大会の古本市で見つけたのだろうと思うのですが。中原脩司さんのローマ字のサイン入りで、中原蔵書の朱印があります。さて、これらの家宝に 《なんでも鑑定団》 はいくらの値をつける? なんてね」

「二束三文の部類ですよ、きっと。ところで、エスペラントの本の森には推理ものも沢山あるとか?」

「もちろん。エスペラント・オリジナルのも、翻訳ものもね。相対的にエスペラント界に面白い本が多いのは、自分たちの国の素敵な作品を世界中に知ってもらいたいと、どの国のエスペランティストも考えるからでしょうね。スウェーデンの マルティン・ベック シリーズの 『ロゼアンナ』 、フランスの 『メグレ警視もの』、イギリスの 『シャーロック・ホームズもの』 などがそうです」
(つづく)