かって、「芦屋エスペラント会」があった...


Kion mi skribis? (11)


La Movado  (2016) 1月号 8頁
エスペラントの本の森に、素敵なお話を求めて(九)


津田 昌夫(愛知)


(先輩)「それで、エスペラント・オリジナルの推理小説ですが、お話しが素敵なのはIEM社が黒い背表紙で出している一連の本の中の、セルジョ・エルゴさんによる、額に垂れてくる髪をかき上げる癖があるクラメル警部もののうちの一つ'Ŝia lasta poŝtkarto'が、現代の若者たちの風俗も描いていてお奨めです。おなじく、シリーズ物で、エド・マクベインの『87分署』シリーズほどはたくさん続いてはいませんが、6作目が最近出版された、ゲイツさんのロベルト・エリス刑事ものもあります。こちらは舞台が欧米でなくて、オーストラリアなのが異色で、会話も滑らか。そこそこに楽しめます。古くは、'Gerda malaperis'のクロード・ピロンさんによる'Ĉu vi kuiras ĉine?'などの'Ĉu...?'シリーズがあります。ピロンさんの推理ものはわたしにはどれも少しも面白くないのですが、カラル探偵と奥様のジョーヤ、甥のステファーノが協力して謎を解くという設定で、易しくて素敵なエスペラントの会話を楽しむことができます」

(後輩)「漫画もあるとか?」

「ええ。一番のお奨めは、わたしがエスペラントをやらなかったら、絶対に読まなかった、あるいは、知ることがなかった漫画、ベルギーのエルジェさんによる『タンタン』 シリーズです。何年か前、スピルバーグ監督によってアニメ映画『ユニコーン号の秘密』が公開されたので、日本でもタンタンは良く知られるようになったと思います。それを、エスペラントで、ハードカヴァーで大判のカラー絵本として読めるのですから、タンタン・ファンはエスペラントを勉強すべきです。'La krabo kun oraj pinĉiloj''La nigra insulo'それに、一番新しいところで'La templo de l'oro'が手にはいります。これは全頁アート紙で、いっそう愛蔵本の趣があり、本好きにはたまりません。日本からは『はだしのゲン』 や手塚治虫の 『火の鳥』がエスペラントで出版されていますが、クール・ジャパンを売り出すために、宮崎アニメなど、エスペラント化したら世界中のエスペランティストが喜んでくれると思いますね」

「パソコンで、いくらでも音の教材が聞けるとおっしゃいましたね。CDや映像のコンテンツはありますか?」

「もちろん。わたしの一押しは、CD二枚組みの'Ĉu vi parolas esperante?'です。もういまや教材としては古いものになってしまった感はありますが、アンドレ・ぺティンさんのお話作りの上手さや、出演者のアナウンサーたちのきれいな発音が魅力です。登場人物のバルバーラさんは、その声の美しさからどんな美人かと思わせます。バルバーラさんの友だちのダヌータさんは、声から判断して、いまでもポーランド放送でご活躍のバルバーラ・ペイトリチャックさんだと思います。後半にポーランド放送のリポーターとして登場するのは、これも声から分かるのですが作者のぺティンさんです。このCDは、語学教材であるばかりでなく、片思いの恋物語でもあり、ポーランド観光案内として、さらには、アウシュビッツも語られるので、反戦ものとしても聞くことが出来ます。一方、パソコンで聞けるポーランド放送は、時事ニュースが聞ける点で、すぐれた教材といえます。フィクションよりも、ノン・フィクションが好きな人には絶対にお奨めです。もう一つの素敵なCD教材は、キャサリン・コバッチさんの'Ĉu vi aŭdis, ke ...?'です。コバッチさんは世界大会の初心者教室で大活躍。頼もしい存在です。テキストには練習問題もついています。映像でエスペラントをとお考えなら、DVDで出ている、'Pasportoal la tutamondo'があります。わたしが2002年にサンフランシスコ大学のエスペラント夏季講習会(NASK)に参加したとき、最終課を収録中で、スタジオ見学がある、との案内が掲示板に出ていました。サンフランシスコ周辺のエスペランティストが、講習会の期間中にわたしたち受講生の世話をしに何度も会場へやって来ました。その連中が'Pasporto'に出ているので、この教材にはわたしは愛着があります。ああ、もう12時ですね。では、続きはレストランでビールでも飲みながら... まずはお気に入りの本を選んで、エスペラントに没頭してください。ザメンホフさんが願うように、《Obstine antaŭen! La nepoj vin benos, se vi pacience eltenos.》をモットーに」

(おわり)