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本物の温泉

最終更新日:2012年2月12日

「天然温泉」の怪

地表に自然に湧き出た新鮮な源泉に何も足さずにそのままはいるのが本来の温泉である。かつては、これが常識だったためあえて「天然温泉」ということはなかった。

温度が高すぎる場合にもできるだけ水を加えずに、湯畑などで適温までさます工夫がされている。草津温泉などでは湯もみが行われている。

「天然温泉」の反対語は「人工温泉」なのだろうか。わざわざ「天然温泉」と称している温泉の方が逆に疑わしいという皮肉な現象が起きている。温泉法にも問題がある。

自然湧出と汲み上げ

自然に湧出した泉源のすぐそばに浴槽があるのが理想である。

地中奥深く高圧のところでできた温泉が地上に湧出すると、圧力の差により炭酸ガスなどの成分が逃げ出してしまう。また、鉄などの成分は空気に触れると酸化するし、硫黄などは沈澱したりする。風呂場が源泉に近いほど温泉の新鮮さが保たれる。

地下深くボーリングして地下水を汲み上げて「天然温泉」と称しているものが、都市部を中心に増えている。

湯量不足と循環式

源泉の湧出量に見合った大きさの風呂に、かけ流し(オーバーフロー)のお湯であるのが望ましい。

かつては一軒宿は別にして、かつては外湯=湯元で入浴し宿には風呂がないのが普通であったが、近年は源泉からの分湯で各旅館に内湯が造られるようになってきた。ホテルや旅館が乱立し、競うようにして大きな風呂を造ると当然湯量が不足してくる。新しくできた温泉ほど、湧出量に比較して風呂を大きくし豪華な施設で客を呼ぼうとする傾向にあるようだ。

湧出量が少ないのを補うためには、水道水などを加えて加熱してしのぐしかない。さらに、水道代や燃料費を節約するために、一度使ったお湯を循環させて何度も使い回することになる。今や循環式の方が多数派で8割程度ではないかとも言われている。 「源泉かけ流し」が注目されるようになってきたため、「循環かけ流し」「加水加温かけ流し」など紛らわしい表示もみられるようになってきた。

殺菌

循環式の場合には、殺菌のために塩素が加えられるが、身体への悪影響が心配される。加える塩素の量の基準や管理がどうなっているのかも気になるところである。管理が悪いとレジオネラ菌が繁殖して肺炎を起こすこともある。死亡事故も起きていて新聞などでたびたび報道されている。

また、毎日お湯を取り替えて掃除するのが一般の常識であるが、それも行われていないところが多いようである。これは、循環式の風呂だけの問題ではない。

残念な実態

温泉は、2002年度で全国に約2万2000施設ある。業界団体の日本温泉協会によると、源泉の温度を入浴可能な温度にする加温や、湯量を確保するための加水のほか、浴槽内の湯を濾過〔ろか〕・消毒して循環させ、再利用している施設がほとんどという。 この項は2003年8月の朝日新聞の記事などを参考にしている。

公取委も問題視

「天然温泉100%、源泉100%」とパンフレットで宣伝しながら、実際には水を加えたり沸かしなおしたりする温泉施設の多いことが、2003年公正取引委員会の調査でわかった。温泉ブームの中、公取委は「不当表示につながるおそれがある」として、業界団体に表示の改善を促している。

公取委が、のべ2400施設について、温泉広告の表示実態を調べた結果、約1割にあたる217件で「源泉100%」「天然温泉100%」と強調した表示が見られたが、加温や加水、循環装置による再利用について表示したケースはほとんどなかった。

利用者の期待

公取委が実施した消費者アンケートによると、利用したい温泉は「源泉100%」が5割超、次いで「天然温泉100%」が約3割で高い人気を示した。「循環式」と答えたのは、わずかに0.3%だった。

「源泉100%」「天然温泉100%」という言葉には明確な定義はないが、「源泉100%」という表示については5割近くの人が、「天然温泉」では約3割が「加温や再利用などのない源泉をそのまま使う温泉」と受け止めていた。

昔からの有名温泉地で

歴史ある「天然温泉」なのに残念な例がある。

2004年には、週刊誌の報道をきっかけに利用者を偽る行為が次々に発覚した。

日本温泉協会の動き

最近は日本温泉協会のりっぱな「天然温泉」のプレートをよくみかけるが、これは「自然湧出の温泉を使っている施設」だというのに過ぎなく、源泉を何倍に薄めようがかかげることができる。

2002年1月に東京新聞で、「日本温泉協会がミシュラン方式の五つ星制度を導入する」との報道があった。
その後6月の総会で決定したのにも関わらず、不透明な形で消えてしまった。

2003年5月から、一部モデル施設で、5項目3段階表示を掲げることになった。情報公開の第一歩ではあるものの、表示内容は極めて分かりにくい。

望まれる情報公開

環境省の改正温泉法施行規則が施行され、「加水、加温、浴槽の循環・ろ過、入浴剤・消毒の有無と理由」について掲示することが求められるようになった。  しかし、加水している割合は書かなくてもいいのでたとえ源泉率が1%でも通用してしまう。  改正温泉法施行規則施行(2005年)

最低限次のことを利用客に明らかにして欲しい。

循環方式の風呂でも管理がいきとどいていて、それを承知の上で利用しているのであれば問題ない。情報が十分に公開されていて、それに基づき利用者が自分の判断で選ぶことができるようになることが望まれる。

これからは温泉も本物指向になっていくであろう。「本物の温泉」を売り物にするか、料理や設備で勝負するか、いずれにせよ中途半端な「温泉」は淘汰されるであろう。

本物の温泉を求めて

情報公開がまだ不十分である以上、本物の温泉かどうかは自分でよく調べるしかない。本物の温泉にこだわったガイドブックや雑誌などが見受けられるようになってきた。またウェブ・サイトの情報も参考になる。

宿に尋ねる

「おたくは源泉かけ流しの風呂ですが、それとも循環式の風呂ですか」ときいてみるのが一番よい。金を払って利用する客の立場としては当然の質問で、決して失礼にはあたらない。質問への応対によっても宿の良し悪しを推定できる。

チェックポイント

いずれも決定的なものではないし例外もあるが、自分で判断する目安にはなるであろう。

掲示

浴槽

温泉地