(作家の山本文緒さんと、秘書の方も交えて文芸専修室でインタビューが行われました)

 

まずは学生時代についてお聞きしていきたいのですが、
山本さんは神奈川大学経済学部を卒業されていらっしゃるんですね。

山 本
文緒さん

(以下敬称略)
はい、出てますね。

 

最初に経済学部と聞いたときに少し意外な気がしたのですが
その頃はま だ文学に携わろうという気持ちはなかったのでしょうか?

山 本

はい、ゼロです。すみません。
  いえいえ(笑)大学ではどのようなことを学ばれていたのでしょうか?
山 本 何も(笑)。何も勉強してないですね。
  では、授業はどちらかというと出ないほうだったんですか?

山 本

授業は出なかったです。
胸張ってどうするって感じですが(笑)

  サークルを中心に生活されていたのですか?
山 本

そうですね。隠してもしょうがないので言いますが、落語研究会に入っていたので、
神奈川大学経済学部を出たというよりは、落語研究会を卒業しまし た。
早稲田で落語をしたこともありますよ。神奈川大学の落研はもうなくなって しまったのですが、
早稲田にはまだ生き残っていますか?

  はい。ライブなどもしているようです。

山 本

ライブ? ライブって(笑)。せめて寄席とか言って。うちの落研は師弟関係というか、
わりと体育会に近いものがありましたね。行事などもちゃんとあ って、厳しくて。
まぁ体育会と違うところは、体力ではなくお酒の力を借りてってところですね(笑)

  その落語研究会には、どういうきっかけで入られたのでしょうか?
山 本 えっと、まぁ一年生の・・・(笑)
秘書の方

(以下、秘書)
私は真実を知ってます。

山 本 じゃあ、真実を(笑)
秘 書 かっこいい先輩に勧誘されたからです。
山 本 あぁ、そうさ(笑)本当にそうです。
  (笑)それがきっかけで、四年間続けられたわけですよね。

山 本

そうですね、始業式のときってたくさん勧誘があるじゃないですか、
その 人が一番かっこよかったので。

  学生時代、本はお読みになっていましたか?
山 本 いいえ。ほとんど読まなかったですね、本当に。
  では、いちばん本を読んでいたときはいつごろでしょうか?
山 本 今(笑)
  学生のころ、サークル活動以外でされていたことはありましたか?

山 本

うーんと、アルバイト。いろいろなことをしました。
社会に出て普通に就職したらいろいろな職種につけないので。
なるべく短期バイトをやろうとしてました。

  派遣バイトなどですか?

山 本

いいえ、おばちゃんのころにはそういうのなかったので(笑)
適当に近所の喫茶店とか、居酒屋とか、ティッシュも配ったし、思いつく限りを。

  バイトの経験などは今、活かされていらっしゃいますか?
山 本 あ、もうそれは今ごろになって助かってます。
  『恋愛中毒』の主人公もバイトをしていますが、あれもご自身の経験からだったんですか?

山 本

お弁当屋さんはないかな。
  在学中は小説を書いていましたか?
山 本 いや、ほんとにその発想すらもなかったです
  将来の理想はありましたか?

山 本

全然(笑)就職して、普通のOLになって・・・。
まぁ私の世代は、腰かけOLみたいなものが幅をきかせていた時代だったので。

  そのときはバブルのころですよね。
山 本 そうですね、バブルの終わりくらいでした。
  仕事はどのようなことをされていたんでしょうか?

山 本

証券系の財団法人を。かんたんにいうと、証券取引所の子会社みたいなところだったんですけど、
まぁ半分お役所のような感じで、定年までいてもいいような会社でした。
一生つとめる気でいましたし。営利団体じゃなかったので、
ガツガツしてなくてそんなに残業もないですし。定時で帰れる日が多かったので、
お給料をもらえばそれはそれでわりきって。あとは自分の時間もたくさん取れましたし。

  少女小説を書かれていたころは会社づとめと小説の執筆を両立されていたと伺ったのですが、
やはり大変でしたか?

山 本

そうですね、大変は大変でしたけど、若くて体力もあったし、お金になったし。楽しかったですよ。
  コバルト・ノベル大賞には、どういうきっかけで応募されたのですか?

山 本

まぁ、あちこちで言ってるんですけど、副業がほしかったんです。
横浜の実家から毎日通っていたので、満員電車がつらくてつらくて。
会社のそばにとにかく引っ越したかったんですが、そんなにお給料良くなかったので。
それこそ新卒の給料は十二万円台だったかな。
まぁ、さすがにもっともらっていた人もいたんですが。
それでは東京で一人暮らしはできないので、なにか元手のかからない副業を探してて。

  元手のかからない副業は他にもあったとは思うんですが。
山 本

学生のころは本よりも楽しいことがいっぱいあったんですけど、
つとめだしてからのほうが本を読んでたんです。それで、若い世代というか、
ちょうど吉本ばななさんがデビューなさったころで、わりと自分が思っていた文学というものより、
もうちょっと身近になってきた、という感じがしたので。

  変わってきた時期だったわけですね。
山 本 そうです。
  コバルト・ノベル大賞佳作を受賞されるまでには、どのくらい小説を書かれていたんですか?

山 本

(そっと人差し指を立てる)
  えっ? 一回目で受賞されたんですか?
山 本 先輩のかたには首をしめられるんですけど(笑)
  もともと向いておられたということでしょうか。
山 本

まぁ、運も良かったとは思います。ちょうど少女小説というジャンルが作家不足だったので、
今だったら取れなかったと思うんですけど、とにかく新しい作家がほしい、というころでした。