「作家」という職業は、なってみるのと、なるまでに思い描いていたものとはギャップがありましたか?

山 本

最初が一般文芸じゃなく、いわゆる少女小説というジャンルだったので、
文壇の外にある世界だったんですね。だからそのときはあまりなにも感じず、
そんなものかなと思ってました。で、一般文芸に移って、こんなにも食べられない
ものなのかと(笑)小説だけで生活できているかたは、日本に百人いないんじゃ

  一般文芸に移る時に、そのまま仕事と両立しようという意識はなかったんですか?

山 本

結婚が(コバルトの仕事を始めるのと)同時だったので、
会社と小説と結婚と三つ重なってしまったんですね。
基礎体力がないので、どれかやめようと思っているうちに、
うっかり会社をやめてしまいました(笑)

 

実際に小説家としてやっていこうと志されたのは、小説を書きはじめてから
三年目くらいだとお聞きしましたが、その時のお気持ちをお聞かせください。

山 本

まぁだめでもともとなんだし、行けるとこまで行こうと。わりとシンプルな気持ちで。

  金銭面だけを見ますと、少女小説のほうがお金としては稼いでいたんですよね。

山 本

ええ、もちろん。お金の話ばかりするようなんですけど、文章、特に純文学を
やっているかたはお金の話をするのを嫌う傾向があるんですが、私はそれはちがうなあ
と思います。長い目で見て、どちらが細く長く食べていけるかなと思ったときに、
やはり少女小説じゃなくて一般文芸だと。

  小説の執筆について伺いたいのですが、題材はどうされているんでしょうか?

山 本

うーんと、とりあえずはネタ帳があるんで。そうですね、人の話を聞いて、
それをおもしろいと思ったらメモっておいて。
それは作家さんによってほんとにさまざまなんですけど。私はわりとメモをしておいて、
しめきりが来たときや、一冊本を書くときにそれを使ったりとかですね。

  ネタ帳に書いてあるものを、そのまま使うことも多いんですか?

山 本

それは分量によりますね。十枚とか百枚とかだとそのまま使ったり、
長編の場合はそれをいくつか使ったり。

  身近な題材が多いですよね。読者としては入りこみやすいというか

山 本

身近な話しか書けないということです(笑)
壮大なお話は、他に書くかたがいくらでもいらっしゃるので。

  誰かをモデルにして書くことはありますか?
山 本

名前をもらうことはありますけど、そういうときはぜったい中身はその人にしないですね。
これは他の作家さんも同じだと思うんですけど、何人かの人格や特徴をミックスしたりとか。

 

小説やエッセイの中で女友だちがけっこう重要な位置を占めていると思うのですが、
山本さんご自身は、女友だちという存在をどう受けとめていらっしゃるのですか?

山 本

女友だちは、夫婦や恋人と同じくらい、永遠の命題でむずかしいと思います。
だいぶ上手につきあえるように、やっとなってきたという感じです。

 

山本さんのペンネームの「山本」という部分も、「友人の名前から借りた」と書かれていましたね。・・・
下の「文緒」という部分は、どのようにしてつけられたのでしょうか?

山 本

私、少女まんがが大好きだったので、『おいしい関係』などを描かれている
槇村さとるさんの短編まんがの、主人公の名前から拝借させていただきました。

  かわいらしいお名前ですよね。
山 本

中性さを出したかったのはあります。

  学生時代にまんがをよく読まれていたそうですが、いつごろから読んでいましたか?

山 本

幼稚園くらいでしょうか。幸い、まんがは許してくれる家だったので。
しかも、「りぼん」を毎月、あ、今はないかもしれないですけど、
むかしは本屋さんが本を届けてくれたので。大学生ぐらいの時は四十代、
五十代になったら読まなくなるだろうな、と漠然と思っていたのですが、
たぶん一生読むと思います。そのくらい、まんがの水準が上がってきているのでしょう。

  まんがもおもしろいですよね。

山 本

「まんがも」じゃなくて、「まんがのほうが」おもしろい(笑)
  そうですか(笑)まんがからインスピレーションを受けることもありますか?

山 本

多いですね、本当に。
  少女小説を書こうという段階で、まんが家になりたいと思うことはなかったのですか?

山 本

投稿作を描こうとしたんですけど、やっぱり最後まで描けなくて。
まんが家になった知りあいの作家さんは、最初から下手なりにでも、ちゃんと描けちゃうんですよ。
それで、自分には才能がないんだとわかって、まんが家になろうという意識は、
捨てたというわけでもないですけど、「あ、できないな」ってすぐ終わっちゃいましたね。

  もともと物語をつくることはお好きだったんですか?
山 本

日記とか手紙は好きでしたけど、物語というものは・・・。
あ、でも小学生の時は少し、四コマまんがを友だちとつくったりとかしてました。

  日記を書くことは、小説を書くこととつながっていますか?

山 本

むかしの文士のかたはたぶん、自分が死んだあとに公開されて、
本になることを前提に書いていたと思うんですけど、私は見られると困るくらい書きなぐってて、
漢字も書けなかったり(笑)。似てるけど違う漢字とか(笑)
だから、直接的には小説つながっていないと思うんですけど、「むかつく」とか
「あの人正しいかもしれないけど、気にいらない」というような、
生の感情を長年ぶつけてきたことは良かったと思います。

 

山本さんのサイトにも公開用の日記を書かれていますが、
それはやはりおさえめに書いてらっしゃるんですか?

山 本

そうですね。ネットおそるべしですから、どのくらいの人が見ているかわかりませんし。
まぁ嘘は書いてないですよ(笑)