神仙 苺山人
半村良師匠が、色紙などに書かれた句をご紹介いたします。


北風に 身の上ばなし 吹きちぎれ  (「あまったれ」より)
いもむしゃこおろころ ひょうたんぽっくりこ  (「いもむし」より)
評判を 風呂敷にいれ 小間物屋  (「役たたず」より)
声よりは つゆの香で呼ぶ 夜鷹蕎麦  (「くろうと」より)
御隠居は 妾の咳に はみ出され  (「くろうと」より)
貧をして 渡る世間に 杖の音  (「ぐず」より)
玉砂利が 月に供うる 団子かな  (「どぶどろ」より平吉)
かぶと虫 蟻に引かるる 最後かな  (「どぶどろ」より炭屋の音さん)
来てみれば 木場のはずれの 枯野かな  (「どぶどろ」より平吉)
手をとって 人のさだめを 見るさだめ  (「どぶどろ」より日光斎)
 
T蒿悽愴
 
天下布文
 
血の謎 肉の夢

される身になって ヨイショは ていねいに
 
凩や 思ひ出ばなし 吹きちぎれ
桔梗散って 残りの菊の ふてぶてし
梅散って 垣根に下駄を 乾してをり
能登路来て 月に平家の 噂聞く
凩や 君も春には 去る人か
雨やどり 思案の果ての 濡れ鼠
深川は時雨 あの子の 蛇の目傘
陰口を 置いて客去る 夜寒かな
影だけが やってくる夜の 赫い月
星月夜 小便の音 けたたまし
 
名月や 高井の松と富ヶ岡
来てみれば 木場のはずれの 枯野かな
なまくらは 重ねておいて 三ツに切り
うなされて 覚めればさっと 蚊帳が裂け
月と芦 浮いたばかりの 土左衛門
 
石蹴って 悔い蹴り切れぬ 寒の道
春風や みんなやさしく してくれる
春の闇 これが女と いうものか
姑の 墓にどくだみ 咲いており
産み育て そむかれ皺に なって死に
朝顔や きのうの老いと けさの花
朝顔や あすの蕾と けさの花
うつろな瞳して 鬼灯を鳴らす子は
よその子に飴やる女 薄化粧
 
からつゆの 単衣に暑き 句会也
冷奴 崩れ崩れて おから也
割箸の ささくれ取って 冷奴
縁日の帰り 小さき川開き
ぬかるみの 愚痴を花散る 小路にて
病む猫に いささか暑し 凪の磯
病む犬に いささか暑し 凪の磯
鳴く犬を なだめて秋の 旅支度
ひっそりと 二百十日の蛙かな
 
冗談で 生まれたついでに 生きている
 
いざ酔はむ 死ぬ迄の日々 吾に在り
夏去りて まだ死ぬ理由なし 酒を飲む

栖をば明日は尋ねむ 郭公の 夜半に啼く聲 ほど遠からじ


と月十日と 五十年生きて 病気三日で 墓の中
 
百ころび 九十九おき 墓ひとつ
    
 
人の世は 風吹くものぞ 凩も荒れての後の 梅桜哉
 
嘘かまことか まことが嘘か まことに嘘なら 嘘は嘘




更新2016.7.17



続 半村良のお客になる会
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