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当ハリニックで自然妊娠した方の紹介でお見えになった39歳女性。一年ほど人工授精をしましたが妊娠にいたらなかった為、東京で評判の高い不妊専門クリニックに転院。不妊検査の結果は異常はなく、ご主人も精子に問題になるような所見はなし。そのクリニックでは2回採卵出来たものの、2回とも卵胞の中に卵がなかったとのことです。
月経周期は28日で生理時に下腹部が痛くなるとのこと。便通は正常で気になる症状は頻繁に起きる目眩ぐらい。不妊の方にみられがちな冷え、花粉症等のアレルギー性疾患はなく、既往歴に特記するようなこともありません。
脈診(五臓脈診)をしますと、左右ともに石脈。ホルモン値に異常はないのでこの石脈は卵巣と脳下垂体との間のシステムに何らかの支障をきたしていることを示唆しています。
腹診をしますと、腹力は中程度。胃の処がしこっており、右側にガスの貯留が認められます。また、鼠径部上方に手を触れると身をよじってくすぐったがります。これは生理痛がある方によくみられる反応です。
脈診から足の少陰腎経・太谿穴と上陰谷穴(塚原私穴)を補い、下陰谷穴(塚原私穴)を瀉しました。また、腹診から、足の陽明胃経・足の三里穴を補い、右側だけ足の太陰脾経・陰陵泉穴を瀉しました。
鼠径部のくすぐったがるのは足の厥陰肝経が関与しています。虚と捉えて処置したいところですが、不妊症の場合は直接補うわけにはいきません。そこで上陰谷穴の上方にある足の厥陰肝経・陰包穴を瀉しました。
月経周期に関与しているのは足の太陰脾経です。そこで太白穴を補い、左側の箕門穴を瀉しました。
目眩は手の少陽三焦経か手の太陽小腸経が関与するのですが、腹診から手の太陽小腸経が関与していると察せられます。そこで肩貞穴を補いました。
さらに、基礎体温が順調に推移するように手の太陰肺経・侠白穴と太淵穴を補いました。
左
側 |
補 |
足の少陰腎経・太谿穴、上陰谷穴、
足の陽明胃経・足の三里穴、
足の太陰脾経・太白穴、
手の太陽小腸経・肩貞穴、
手の太陰肺経・侠白穴、太淵穴 |
| 瀉 |
足の少陰腎経・下陰谷穴、
足の厥陰肝経・陰包穴、
足の太陰脾経・箕門穴 |
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右
側 |
補 |
足の少陰腎経・太谿穴、上陰谷穴、
足の陽明胃経・足の三里穴、
足の太陰脾経・太白穴、
手の太陽小腸経・肩貞穴、
手の太陰肺経・侠白穴、太淵穴 |
| 瀉 |
足の少陰腎経・下陰谷穴、
足の太陰脾経・陰陵泉穴、
足の厥陰肝経・陰包穴 |
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生理日から6日目。脈状は左右ともに石脈。「生理痛がなく、とても楽でした」とのこと。頻繁にあった目眩は初診時の治療以降一度も発症していません。 |
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生理日から17日目。脈状は左右ともに石脈。3日前に採卵しましたが、卵胞は空だったとのこと。
かなり落ち込んでいる様子でしたので「脳下垂体と卵巣の連携が上手くいくようになれば卵が採れるようになりますよ」とお伝えすると、「どうしてその様なことが分かるのですか?」との質問。
「不妊症に於いて視床下部・脳下垂体と卵巣の連携が上手くいかない場合、脈状は“石脈”を呈します。体のバランスが改善して妊娠する準備が整うと“石脈”から他の脈状に変わるのです。これまでの経過、お腹の状態から2ヶ月から遅くても3ヶ月先には結果が出ると思いますよ」とお答えしました。 |
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生理日から3日目。経血量は昨日までは多かったものの、今日は少な目とのこと。脈状は右側が代脈で左側が石脈。脳下垂体と卵巣の連携が改善しつつあるようです。 |
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生理日から14日目に採卵し、その2日後に移植(day3胚移植)したとのこと。移植は2日前になります。
脈状は左右ともに毛脈。これは脳下垂体と卵巣の間のシステムが順調に活動している証です。また、腹診をしてみますと、子宮反応点の気が充実していることが診てとれます。この状態であれば着床の準備が整っていると推測されるのでその旨をお伝えしました。 |
この2週間後、「順調に経過しています」とのお電話を頂き、それからさらに20日後に、「心音が確認できました」と、ご報告を頂きました。
この方の場合、左右ともに石脈を呈していました。卵巣・子宮に何らかの異常があるわけではなく、視床下部・脳下垂体と卵巣との間の連携に問題があっただけなので、鍼灸治療でこの連携が上手くいくように経脈の調整をした結果、妊娠に至ったと言えます。 |