1月6日午後11時帰宅

 

珍しく留守電のランプが点滅していた。

 

「ショウショウオマチクダサイ…イッケン…ピー。もしもしー、誰でしょうー。…オレさ、カオリンのことすげー好きなんだよねぇ………ピー。ゴゴ9ジ32フンデス」

 

何ごと?

 

 

 

 

 

「で、何? あの留守電は?」

「聞いてくれよ〜。オレ、女の子にフラれちゃたよ〜」

「それがカオリンなわけ?」

「そう! カオリン〜、大好きなのに〜」

「あぁ、ハイハイ。んで?」

「今日ね、カオリンとデートしたの。カオリンね、15歳で高校生なの。んで、すっごいおっぱい大きくてね、胸の谷間とかバーって格好で、ミニスカートで座ったらパンツ見えるような感じで、Eカップだったの。」

「はぁ、この糞ロリコンは。って、今日その娘と初対面? 何で知り合ったん? またチャットか?(注1)」

「今度はね、H"のおしゃべりチャット。」

「ふーん、んで可愛かったん?」

「それがーさー。カオリンさ、レイちゃんそっくりだったんだよねぇ(注2) そんなカワイイ子が来ると思ってなくてさぁ、まいったよぉ」

「あぁ、レイちゃんね。それはそれは。」

「それでカラオケとか行ってさ、ボックスでチューとかしたのよ? そしたらさ、別れた後に、『今日は楽しかった。』とかメール入っててさ。これはイケんじゃん? とか思ったわけよ。そしたらさ、ついさっき『やっぱりもう二人きりで会うのは止めます。ヒビキさんがそんなに軽い人だとは思いませんでした。』って…。あ、俺ヒビキって名前にしてるんだけどさ。」

「あー、まー、初対面だしなー。15歳だし、犯罪だし。」

「まぁ15歳はちょっとと思ったんだけどさー。お前は絶対ダメだろ。年上好きだし。」

「そうなー、15歳なー、ちょっと気持ち悪いっすね。ロリコンっすね。」

「つーかチューするだろ? レイちゃんそっくりなんだぜ?」

「いや、レイちゃん知らないし。」

「E カップだぜ? バーって見えてんのよ? そりゃもむだろぉ?」

「ってか、もんだんかい。」

「ちょっと触わっただけだけどさー。ミニスカートで見えてんのよ? まぁ上手く本を載せて隠されたけどさ。」

「あぁ、そりゃヤリマすネー。しかた無いですねー。」

「声とかもさ、クリーミーマミみたいな可愛い声でさぁ。」

「ク、くりぃみぃまみぃ?」

「知ってるだろ。クリーミーマミ。マジでさー、可愛くてさー、クリーミーマミだぜ? モーニングコーヒー飲もう♪」

「歌っすか? それ?」

「そりゃ歌わせるだろ? クリーミーマミ歌ったりしたのによぉ」

「そのチャットってのはアニメチャットかなんか?」

「いや、違うんだけどさ。チューするじゃん。」

「そりゃ、アレですよ。チューで止めたからですよ! ヤッとけば良かったんですよ!」

「はぁ、何いってんの? チューでもダメだったんだぜ?」

「甘いっすよ。言葉の裏を読まなくちゃ。相当可愛いんだろ? んで結構遊んでんだろ、その子は。ならチューでやめるってのはさ、『はぁ、キスで終わりって、舐めてんの? 文字どおり。あぁそれとも何? 私にはその魅力ってのが無いと?』って思ってんだよ。このインポヤロー。」

「あぁ、そんなことして会えなくなったりしたらどーすんだよ!」

「しなくても会えなくなってんじゃん。」

「まぁそうなんだけど…」

「だったらヤッといたほうが良いジャン。」

「だってバイトあるとか言ってたし…」

「バイトなんてサボらせればいいんですよ。そんなことを気にしている時点でその子とは釣り合ってないんです。君はヤッとくべきだったんです。そっからスタートです。女性に最高の幸せを与えようとするその気概を持ちましょう。その気持ちが好きってことだとさ。あぁ、ほら、体に語り掛けろ、刻み込め、教えてあげるんだ、自分の気持ちを。体の相性が良いってことは他の相性も良いってことです。」

「まぁ、俺ちんこふてーしな。」

「…もちろん、言葉巧みにお前を間違った方向に誘導しているだけで、ホントは初対面でキスとかするお前のイイカゲンさが悪いんだけどな。」

「なんだよ! じゃどーすれば良かったんだよ!」

「お前は好きだからキスしちゃったとか言うけれどさ、話聞くとその子って結構派手な格好してたんだろ? お前それでさ、『こいつ軽そうだな。』とか『キスぐらい大丈夫だろ。』とか『ヤレんじゃねーの?』とか思っただろ?」

「ま、まー、だってしょうがねーじゃん。」

「そういう事を考える人間のキスがどれだけその子を傷つけるか分かる? その時点でお前はその子に関らないほうがいいんだよ。」

「それでも好きになっちゃんったんだよ!」

「その子もそんな性格じゃ、今まで決行アブナイ目に遭ってるんじゃ無いの? もうそゆの割り切っているのかもしれないけど、初対面からナレナレしいお前みたいなタイプは嫌悪感しか抱かないだろ。きっと。」

「ボックスでヤラれたことがあるとか言ってた。」

「それって、お前、釘刺されてんじゃん? 変なことしないでねって。」

「だからしなかったじゃん。」

「キスもダメだと思います。」

「でも結構いい雰囲気だったんだぜ。楽しかったって言ったのにさぁ」

「きっと後で彼氏とかに会うの止めろって言われたんだろーね。」

「彼氏なんていねーよ。」

「まぁ多分他のチャット仲間の男だろうね。そりゅ止めとけって言うよな。絶対に。」

「カオリンのことを本気で好きなんだよ?」

「なんで今日のお前はカワイイキャラなんだよ。そだね、この後3年くらい口説き続ければ、落とせるんじゃ無いですか。誠意を見せ続ければね。」

「そうかなぁ。ディズニーランド行きたかったのに。今日逢わなければよかったぁ。」

「今、その子にメール送っただろ?」

「え! なんでわかるん? 送った送った。たった今、なんでわかるん?」

「いや、勘で。」

「あん、なんだよ! 見てるのか? どっかから見てるのか? おい! ドコにいるんだ!」

「まぁまぁ、フフフ、気にしなさんな。なんて書いたん?」

「今日はゴメンナサイ。とんでもないことをしました。後悔して泣いてしまいました。もうしません。でも僕はカオリンのことが好きなので、一緒にディズニーランドに行きましょう。カオリンのこと大好きです。」

「うぜーなこのストーカーは。」

「グッとくるだろ?」

「ううん。恐い。ディズニーランド行く予定だったんだ。その前に一回会っとこうって、そんな感じ?」

「そうそう」

「ディズニーランドならな、それなりにムードもあるからキスしたしホーンテッドマンションではめたりしても行けたかもな!」

「そうだよ! お化け屋敷とかききそうなタイプだったもん! ホント、逢わなければよかた!」

「まぁどのみち無駄だったんだよ!ケケッケ!」

「でもさー、結構良い感じだったんだぜ。だきぬいぐるみのウサぴょんとか一緒に見て、可愛いねーって盛り上がったりさー」

「抱き枕を見ながら、巨乳を揉みしだくこととか想像して卑らしい顔をしていたことでしょうなぁ」

「別れてから、カッコイイ服とか買っちゃったよ。ハハ…、やっぱブサイクはどう着飾ってもダメだな。」

「アハハッハ! ダメだなー! ダメだよなぁ! ハハ…ダメだよ。ホント。ダメだ…」

「カオリンの為に他の子を切ったんだぜー」

「あはははは! マジだよ! こいつマジだよ!」

「付き合ってた子にさ、告白だよ。『オレさ、忙しい忙しいとか言ってたけどさ、ホントは女の子と遊んでたんだよね。お前と付き合い始めてからも20人とデートしてんだよ。』(注3)って言って別れたよ。」

「最低だね。ホント。死ね。好きな娘が出来た、じゃなくて浮気告白かよ。彼女なんだって?」

「なんとなく分かってた。そう言う人だと思ってたし、勝手にすれば。」

「って言われたの?」

「って言われた。」

「ふーん、でもお前にフラれるなんて彼女にとっては人生の汚点だよね。まぁお前と付き合ったと言う事点で取り返しはつかないけど。」

「まぁ俺みたいなクズとは別れたほうが幸せだって。」

「って言うかお前ほどのクズは知り合わないほうが幸せだよ。」

「それでもちゃんとしようと思ったんじゃん。そんだけカオリンのことが好きだったんだよ。」

「ハッ! ざーんねーんでしたー。」

プルルル

「あ、ガシャ。ツーツーツー」

「…ぷっ」

 

(注1)チャットか?−皆さんご無沙汰しておりました。カンチ君です。別に音信不通になったわけでも、大人しくなったわけでもなく、最近の彼が何をしていたかって言うと、チャットで女の子をひかっけたりしてました。なんてお約束通りな奴だろう。そこでのハンドルはヒビキ。どこかのチャットでヒビキくんにであったら虐めてあげよう。と言っても礼儀や常識、ルールや遠慮とは無縁の人間なので、どこでも煙たがられているはずですから、気に病むことはありません。

(注2)レイちゃん−アヤナミレイじゃありません。カンチ君の昔の彼女です。まだまだ引きずってますが、だからどうって事でもないです。カンチ君と付き合えるほどの被虐嗜好の女の子。

(注3)20人−20人と付き合っているわけじゃないのでカンチガイしませぬよう。成功率も性交率も低い、あれ? …性交率に至っては0でした。まぁ基本的には実際に会うとガッカリタイプなのでしかたないねぇ。これをもって自分をモテると思うのは良い性格をしていると思う。むしろ積極的に付き合いたく無いタイプなのだが、会えて彼を評価しようとすると「面白い人」となる。この場合の面白い人はまったく誉め言葉では無いことに気づいてほしい。しかし、彼の行動力は見習うべきかと常々思っているしだい。

2時間後…

「ダメだったよ〜」

「ダメでしたか〜」

「なんか最後は二人で泣いちゃったよ。」

「そうですか。青春ですね。」

「なんか、お前の言う通りだったよ。」

「は?」

「軽い女だと思われてショックだったって。」

「あぁ、そんな事言われたんだ。」

「それならその時に言えっての。」

「まぁ逆ギレされても恐いからねぇ。お前ヤバそうだし。」

「なんかよー、カオリンがすげー信頼している奴がいるんだって。そいつに相談したら絶対に止めとけとか言われたんだってよ。ムカツカね?」

「アハハハ、お決まりのパターンだね。そりゃ誰だって止めとけ言うに決まっているつの。つーかその男の位置にならなくっちゃ話にならないよな。」

「まぁダメだと思ってたんだよね。」

「まぁそのツラじゃねぇ。」

「俺カッコイイつの。ビジュアル系だっつの。ヒビキって呼ばれてんのよ?」

「誰よ、ヒビキって? 呼ばれてるって、ハンドルだろ? 呼ばせてるんじゃん。」

「なんとなくカッコイイだろ? で、さ、カオリンにさ、ヒビキって本名でしょ? って聞かれたから、「もちろん本名だよ!」って答えちゃってさ。」

「お前は一昔前のマンガくんか?」

「つーか自分を偽りたくなるじゃん? チャットてそんなもんだろ?」

「お前みてーなのが…。そりゃカオリンと付き合う資格ねーよ。」

「ヒビキってさ、氷々樹って書くんだけどさ、カッコイイだろ?」

「だから?」

「氷々樹って名前で麻布に住んでるんだぜ? カッコヨクね?」

「麻布?」

「麻布に住んでることにしてたんだよ。」

「いつから上板橋は麻布になったの?」

「いいじゃねーか。」

「いくないと思います。って麻布で一人暮らしって事になってんの?」

「いや、親は貿易会社の社長でアメリカに行っているって事になってる。」

「はぁあ? 貿易会社? 社長? なんで埼玉のラーメン屋のオヤジが麻布の貿易会社になんの?」

「麻布の9LDKに住んでいることにした。」

「家に行きたいとか言われたら。」

「家族会議だって言った。」

「つーかダメじゃん。お前、ただのひやかしじゃん。」

「つーかさ、しょうがないじゃん。そこさ、なんか若い人ばっかりでさ、22歳とか言ったら相手されないかもしれないじゃん。だから18歳って言ったんだけどさ」

「あ? 年令偽ってんの? あーもー救えねー。それでなんて言ったの?」

「なんてって?」

「ウソついてたことを知ったカオリンはどう言ったか、と聞いているの。」

「いや、言ってねーっつの。言えるかよ!」

「どうするつもりだったんだよ! マジで口説いたんじゃ無いのかよ! ダメに決まってんじゃん!」

「いろいろ考えたつの! 上板橋に兄貴が住んでるからーとか言ってさ。」

「実家は無理だから、兄貴の家に来てーってか。だからってあの部屋はとても社長の息子の家じゃないぞ。つーかその貧乏面からどうにかしないと…」

「タイヘンだったつの。年令ウソついたんだけどさ、その前に動物占いとかで黒ヒョウって言ってあったからさ、昭和56年で黒ヒョウになる誕生日探したりさー」

「うわー、劇的に泥沼ですね。君は小学生か? 『オレんちドラクエの7があるんだぜー、じゃ見せてみろよー、うーん今親戚のお兄ちゃんが来てるからー』って小学生か? そんなウソついても意味ないじゃん。」

「カッコ付けたかったんだよ!」

「カッコイイか? つーかそんなウソついてもチャットとかだと意味無いだろ? 別に金持ち探してるわけじゃ無いだろーし。お前さ、慶応だとか麻布だとかいろいろウソついてるけどそれでモテたことあんの?」

「いや、まったく。」

「ダメじゃん。」

「ダメだよ。カオリンもウソつかれつの絶対に嫌とか言ってたから、やっぱダメだったんだよ。」

「それは疑われていたんじゃない?」

「そうじゃなくて、前に付き合ってた男が住んでいるところとかウソだったんだってよ。」

「それは…そんなのと付き合うその子の性格のが…心配だねぇ。」

「もうウソつくの止めるわ…」

「あー、お前はそんなウソまで付いてたのに、他の子切ったの? あ、まさか他の子にも!」

「え、あ、」

 

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