視力 A、B、C、D について

−区分表示と板書−

やまむら眼科医院 山村 敏明

学校で視力検査を行うようになったのは・・・
明治21年 (1888年) にはすでに視力検査が導入されていました.
学校医はいつから・・・
明治31年 (1898年)、世界に先駆けて、学校医制度が創設されました. 今でも、日本だけのとてもユニークな制度です.
戦前は・・・
第2次世界大戦前、富国強兵政策・トラコーマの蔓延などの時代背景から、近視とトラコーマ対策が眼科学校保健の中心でした.
視力「A、B、C、D」表示はいつから・・・
昭和33年 (1958年) に制定された学校保健法に従って、毎年、定期健康診断が行われていますが、現在の視力測定法は平成4年 (1992年) の文部省 (現文部科学省)体育局長通知によるものです.
視力表示とその意義について・・・
  実際の検査では、1視標は3秒程度提示します。パッチリと目(瞼)を開けて視力検査を受けるように指導します。遮蔽した他眼を圧迫しないようにして検査をします。通知書の( )の中に書かれた数値は、所持眼鏡やコンタクトレンズでの矯正視力のことです.

視力 0.7ということは・・・
座席がどこにあっても、板書(黒板にかかれた文字)が読める視力です。裸眼0.7以上(または、矯正0.7以上)であれば、板書は見えていると考えます。
視力 0.3未満ということは・・・
最前席に座っていても、「大板書」の判読困難な視力です。「大板書」とは、10cm径の文字です。因みに、「小板書」は、5cm径です。小学校3年生までは、授業中のほとんどが「大板書」で書かれるそうです。


読書能力と視力・・・
 板書が見える・見えないという視機能のお話ではありません。
 外国では、学童の学習能力の中で、特に読書力と視力との関連性?をめぐり様々な調査がなされてきました。残念ながら(幸いにも?!)、日本では、この方面の研究はとても少なかったようです。

 前世紀 (20世紀) のはじめに、屈折異常は、知能との関連性があるという論文がいくつか発表されました。遠視眼の児童の平均IQは低く、近視眼ではIQがより高かったというものです。その後、言語を使わないIQ検査を行うと、両者には有意差がなかったので、この見解は否定され、さらに、
1984年、アメリカ最大の眼科学会AAOは、米国小児眼科斜視学会とともに、屈折異常を有する児童の中の学習障害児の頻度は、屈折異常を有しない児童中のそれと同じであり、また、眼鏡装用や視力トレーニングで学習能力が改善するという証拠はないとの勧告も行いました。

 いかにもアメリカらしい、学歴至上主義、過熱する「視力 *****」産業・論争が想像されます。
 一方、今なお、この勧告に異を唱える研究者がいます。
 Grisham ら(文献1)は、「読み書き」能力の「読む」力に関して、1932−1980年に発表された多くの医学論文を引用し、以下のように述べています。
「学習能力と視力」については、外国では盛んに論議されたようですが、日本では、「知能」に関してではなく、「視力は回復する・回復しない」のお話をよく耳にします。

 まもなく、新学期です。ご不明の点は、眼科医と充分ご相談下さいますようお願いいたします。
 
 参考文献

   1) Grisham JD,他: Refractive error and the reading process: 
                      A literature analysis. J Am Optom Assoc 
                      1986;57(1)44-55.          
以 上

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