戦後のアマチュア無線史(13):春日無線のトリオ9R4の係累。

 「悲しい色やね!」じゃないけど、♪そんなことまでワカランヨウニナッタンカア、、、.」である。トリオの戦後初の通信型受信機、9R-42Jが昭和30年8月に発売されたと知ったかぶりに書いて有る本がある。歴史や地理の先生は「見てきたような嘘を吐く」ので油断がならないが、、、最近は、実際にも行けるので地理の先生は、此の難を免れるようになったけど。此の記事には、2つの嘘がある。

 1.戦後始めて通信型受信機が発売されたのではない。既にその前に菊水電波、三田無線、富士製作所等からいくつもの通信型受信機が市販されていた。寧ろ春日無線は後発、ダイヤル面もdelicaに近いデザイン、いずれもハリクラフター社のコピー的であった。菊水のモノは「おとなしくても何故か横行」ダイヤル型。ずっと後に9R59も横行するが。

 2.春日無線工業(株)トリオの初めの型は、9R4 と言うST管9球の4バンド受信機だからそう名付けられていた。9R-42Jではない、これは随分後の型です。バリコンはごくありふれの3連バリコンだったから。2年ほどして2セクションの3連バリコンが発売され、GT管も出回ってきたので、バージョンとして、4バンド用のコイルパックも2セクションバリコン用のKR-42を発売同時に 9R-42と言うST/GT両用で2セクションバリコン使用型を発売した。更に数年後ミニチュア管時代が到来して、バリコンも小型化し受信機も小型化できるので、筐体もリニューして、ミニチュア管専用2セクションバリコ ン使用のニューモデルが9R-42Jであった。これだけのサフィックスが付く命名に就いてはそれなりの変遷を経たモノだと直ぐに気付いて欲しいモノです。これが最初にありきとは大嘘です。調べてもいないと言える。

 丁度此の 9R4 の発売の前後にTX-1と言う、これこそ業界初という送信機用のキット(と言うには一寸烏滸がましいが)が発売された。水晶発振、クラップ発振回路共用+バッファー段+終段出力までの、いわば、CW用の3.5/7メガ送信装置で、変調機及び電源は推薦回路図だけ。当時初心者は2級のみ、CWはなくA3でHFでは3.5/7メガだけ、と言うことで、一寸A3の送信機用キットとは言えないキットであったが、VFO用コイルバリコンを含む、コイルは高周波チョークに至るまで、バリコンもそれぞれ、そして、807用のタイトソケットと807用の袴付きのシャーシーと、チジミ焼付塗装バニヤーダイヤルと、Ig/Ip切り替え可能なメーター付きのチジミ塗装の全面パネルがキットになっていて、初心者が、ラジオ付き電蓄を2台作る程度の部品集めと作る労苦を厭わねば一応A3の送信装置を作れないことはないと言うことで結構売れたようです。これで、3.5/7メガの送信装置の定番は終段807を6V6のPP(プッシュプル)でプレ−トスクリーン同時変調するという、此のキットの推薦回路図に決まり定番となった感がありました。

 丁度そのころ、無線局開局申請書と工事設計書を書いていた私は、やはり此の推薦回路にして提出。1954年12月17日付で,JA4HL(玉野市)の予備免許が降りたので、早速此のキットとオプションの真空管キットそして部品表を作成して推薦回路の電源部及び変調部の全ての部品とシャーシーとパネルをCQ出版社の当時の代理店、高槻無線に発注しました。予備免許の次の日に送金したと思います。然し、不運にも、それから1週間後の年の暮れ、高槻無線は不渡りを出して倒産した旨の情報が、7メガで流れました。倒産前の受注分は3月までに納入しますと言う注文請書が年賀状代わりに来てホッとしましたが、納品は2月始めだったと思います。真空管キットは代品だらけ、肝腎の807の代品は1624でした。1625なら807の12.6vバージョンですが、1624はCQ誌の11月号付録CD-ROMにある如く、2.5V2Aの直熱管バージョンでした。オッタマゲマシタがただ、電源トランスも、2.5v2Aセンタータップ付きの巻き線があるモノに置き換えてあり、多少の良心はかいま見えました。兎に角推薦回路図に近い3.5/7メガ用のA3用10W出力の送信機は、作れました。

 世上TX-1はTX-88のバラキットだったというのも真っ赤な嘘。見ていない人の当てづっぽう。更にTX88の前に9R4に続いては、9R42よりも前に、高1中2型受信機の高周波段のゲインを足すプリセレクター(HAM語でS9!er)ミニチュア管の6BA6-6BA62本のSignamax SM-1と言う9R4と同じフェース背丈の並べて使うのが発売されている。(!註:後年CQ誌には誤ってR9'erと紹介されたが、Rは5迄で、R9はない。Q5’erと混同して間違ったモノだろう。いずれこれも発売されるが1965年より早くはない)TX-88が出現するには未だ数年掛かる、ましてや昭和31年にTX-88Aが出たなどは、嘘もいいところ。タイガイニセエ、と言いたい。


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