爺怪説:電波望遠鏡概史(3) 電波天文台時代到来

 戦勝国イギリスは戦いに勝ったモノの、ひどい打撃を受けていた。 その中の予算を工面して、ジョドレルバンクに、電波天文台と名の付けられるだけのモノを世界の先頭を切って1957年建設完工したのは大英帝国のプライドを掛けたモノでした。 たとえその電波望遠鏡のパラボラやそれを支えて回転上下させるU字形の鉄の支持枠や回転制御装置がドイツ戦艦解体スクラップから又電波の受信解析装置は電波兵器からの粋を集めての流用であろうとも、世界の先頭を切って、思い道理の対象からの地球外電波をかなりの確かさを持って、追従することが出来たのですから。

 これを知って、後に続いたのが大戦で漁夫の利に近かったオーストラリヤが後を追って、1964年にグリン・バンクに、パークス電波天文台を開業しました。 直径43m。 後に日本が野辺山に設計建設することになるパラボラとほぼ同じ直径でした。 但しパラボラは鉄枠に金網張り。 完成して試験運転中に、そうとは気付かず思わぬ成果を拾っています。 戦前、何処からともなく、ジャンスキーらのアンテナが拾っていた、出所不明の雷ノイズに近いモノがどうやら木星のそれらしいことを事のついでに記録していたのでした。 グリンバンクの本来の目的は、もっともっと英国のジョドレルバンクのパラボラが届かない短い波長の電波を捉えたいという目標がありましたから、試験運転中の木星電波が、ジャンスキーらの電波と同じモノであったかの同定は決定的なまでの追求はなされませんでしたが、木星からはとても広い周波数帯に広がって、特徴的な雷放電調のとても強いノイズがあることを記録していたのでした。

 此のジョドレルバンクが及ばないほどの、、、と言う目標は、惜しくも叶いませんでした。 その反省点は此の後の世界中の建設中も含めての他のパラボラの設計指針に直ぐ活かされて行くのですが、それらは、

(1)波長が短くなればなるほど、又パラボラ径が大きくなればなるほど、
   鏡面精度が厳密に保たれねばならない、事。
(2)鏡面精度は、仰角俯角によるパラボラ自重によっても大きく変化し、    同時にパラボラの支持体鉄鋼物の構造強度と剛性度によっても歪んだり、    目的角度からの偏向が起こること。

などの反省点が示されたのでした。 このことがよく吟味されていないグリン・バンクのパラボラは単なる大きな鉄の塊に過ぎないとまで、自己懺悔してあったとか。 このことは、敗戦国ドイツが首都ボンの近くに建設中だった、世界一を目指す直径100mの大パラボラの設計変更補強を強要します。

 1967年補強と設計変更工事を終わった、可動型最大の此のボンの直径100mの大パラボラは最高精度を示しますが、以降、時間の経過とともに起こる精度の低下がどの部分の手直し補強で補正できるのかのノウハウが確立できないジレンマに陥ります。 サッカーグラウンドの10倍もあるパラボラ面積の、鏡面精度維持がいかに難しい仕事かを実証しただけで、遂に此のジレンマからは抜け出せなかったのでした。

 しかしこのこと自体、日本の野辺山に建設予定で進められているプロジェクトにはいい結果をもたらしたのです。 日本では旧来、学問的には地位は高いが、モノづくりに余り知識のない先生共が発言力が強く、おまけにドイツは盟邦と思っている老先生たちだから、大艦巨砲主義にも似てドイツの100mを抜きたがったのですが、突然黙らざるを得なくなる。 それじゃあ、実際にそんな大きな鉄鋼構造物の、実際の設計の権威や、材料力学の権威の話に耳を傾けてみようと地道な勉強会に入って、老先生たちがはぐれていったのでした。 橋桁でさえ、100mの桁長では随分の撓みを許容すればこそ、自重自体を支えられるのだ、と言う説明で、100mパラボラを言う人は一人も居なくなったという。 学際の大切さを思うべし。 大艦巨砲主義の虚しさかくの如しだった様です。 結局、産学懸命の努力の限界目標を、グリンバンクの直径43mと言うことにして、大きさで世界一になれない分、何か際だった特徴を此の野辺山パラボラに背負わせたい、と言うことになって、到来電波のスペクトル解析という新しい技術手法が野辺山パラボラ建設の究極の目標にされたのでした。

 到来するのはパラボラに受かった幅広の周波数範囲の電波です。 これを丁度光をプリズムに通して、七色の光に分けるように分光できないかという研究が産学協同で進められ、アメリカと日本でそれぞれ、20数分別できていたのを、一挙に144に分別できそうになっていたのでした。 これを野辺山では更に14400チャンネルに分別すべく、松下通信工業が躍起となって、超ヘテロダイン方式に取り組んでいたのでした。 一方、仰角俯角、振り回し、に自重や制動慣性負荷から来る捻れ撓み、つまり静力学だけでなく動力学的材料力学、それも殆どが実験式的設計計算に挑んでいる集団がありました。 他に、パラボラ面の鏡面精度を保つための複数の集団などが、此のプロジェクトのために日夜苦労を重ねて未踏分野に問題点の発見と処理に心血を注いだのです。 1000を越える、問題点は、その後コンピューター処理されて、今日、その点検と保守、精度矯正維持マニュアルになって、ボンの轍を踏まない野辺山のパラボラの精度の宝物になったのですが、これらは当時若い三菱グループの新進気鋭の設計エンジニヤたちの努力のたまものといえるでしょう。 建設も急ぐが、その準備段階での注力がそれよりも大事、縁の下の力持ちがどんなに大切か学界の先生方もこのたびほど痛感したことはなかったようでした。

 噺は戦後直ぐの1950年頃にさかのぼりますが、宇宙論が盛んとなって、アインシュタインの重力方程式の解法議論がかまびすしくなり、その方程式の宇宙項が、邪魔だの不要だの、いや要るがもっと違った複雑項だろうとか、侃々諤々。 ここに、G・ガモフ現れて宇宙の膨張の始まりに、無限小の大きさで、無限大一寸前の有限にして莫大なエネルギー塊があって、爆発的に10のマイナス33乗秒以下の極短時間で一挙に全エネルギーを解放したとすれば、宇宙の膨張も宇宙項も一挙に説明できる解が存在する可能性があろう、と発言*する。 いまでは当たり前の”ビッグ・バン”理論だが当時としては破天荒の爆弾発言であったのだ。 25年後に、日本で京大の新進気鋭の学徒、佐藤文隆博士が富松彰教授のもとで、此のアインシュタインの重力方程式を「何も足さない何も引かない」で見事に解いて、ビッグバンがあり得たことを理論付けたのですが。

 お話はチョイと戻って、海の向こう、1960年代に、パラボラアンテナの精度保持が難しければ、何も無理して四角四面に、いやまん丸く、360度の放物面をいつも考えなきゃええじゃないかと、放物面の極一部分と焦点を結ぶ関係位置の精度確保を重視したホーン型のアンテナが、開発され実用化が始まりました。 電波望遠鏡にも使われて、ベル研究所で1967年ホーン型電波望遠鏡で、摂氏マイナス270度の放射いわゆる3度Kの放射が発見されています。

 しかしこの頃の電波望遠鏡研究結果によって、今後の宇宙科学に必要な電波望遠鏡は、もうVHF/UHFでは波長が長すぎ、ぐっとひどく超低温な宇宙科学しか測れないことが判明、日本の電波望遠鏡計画に更なる新進学徒の参加とミリ波への指向が駆け足に行われたのでした。 どうせ初物の苦労なら45m鏡のミリ波での設計方針が確定したのでした。 そしてほぼ同時に1971年夏建設地も野辺山に確定したのです。 設計内作に7年を要し現地建設が、1978年から、そして1983年に試運転徐々に本格稼働。 使いながらソフトも整備していったのでした。 そしてすばらしい成果が次々に世界を驚かせたわけです。

 

爺怪説:電波望遠鏡概史(4)径45mミリ波野辺山鏡の活躍

 斯うして、電波天文学が宇宙科学展開を主導する時代が来てパラボラもミリ波で使われることになり、アバウトな精度では、何もモノが言えない時代に突入してしまったのでした。 45m径のミリ波電波望遠鏡は、何もそんな辺鄙なところへ作らいでもと言う中年以上の先生の意見は排除され、厳寒の空結構ですよと言う若い意見に押し切られて、野辺山に建設が確定した1971年仕事は開始された。 マイクロ波を使うことになって、スペクトル分光は、光に近づいて却ってやりやすいかもと言われたが、パラボラの精度は2桁も精密に加工されねばならなくなった。 三菱電気通信機部が設計からプロキュアメント加工調整まで一貫してマネージして、仕上げ精度を保証することになったが、此のプロジェクトには、作り上げた構築物の静置精度だけではなく、パラボラが運転されてどんな仰角を向こうが、45m径の98%以上の面積のパラボラのミリ波に対する精度を保つことを保証せよというのでありました。 自重で歪むし、回転角度に、ブレーキの際の慣性動歪み、これらがあらゆる角度の時に、すべての部品・部材にどういう力学的変位を及ぼすかが、判らなければ対策が立てられないわけで、その設計は困難を極めた。 実際野辺山での工事が開始できたのは7年後の1978年であったそうだ。

 ホンのたとえですが、45mの鋼材が、夏晴れた日に、日向で、70度になるとする。 一天俄にかき曇り、夕立が来て30度に冷えたとき、朝の25度からどの程度伸縮するかだけでも概算してみて下さい。 それがミリ波の波長に比べてどんな大きさかという事を。 同じ向きでこれです。 45m径のお椀が上向いたり横向いたりしたときの自重による歪みをどう処理する仕掛けを何処にどう仕込むか、考えただけでも宇宙科学より難しい問題なのでした。

 たとえばミリ波の波長を2mmとすると、電波の山と山、谷と谷を合わせて保つためには受波面の精度は波長の少なくとも、1/10以下でなくてはならない。 0.2mm 以下、つまり、文庫本の紙2枚分の厚さより小さくなくてはならないし、正確な回転放物面を0.2mm以上歪ませてはならないのです。 それも直径45mの全面についてです。 この為に考案されたのが、「パラボラがどちらを向こうが、自重変形が、同じ焦点を向いた回転放物面に変形するなら許容出来る」則を守らせることで解決に向かった。 後に此の則をホモロガス変形則設計法と呼ばれる此の方法は現在、多くの首振り大型パラボラの設計の常套手段となっている。 材料の選択には3年の月日が費やされて、もっとも熱変形に強い一部にアルミ繊維を使ったカーボンファイバーパネルが、特別に製造され、研磨された。 仕上げには、アルミペイントが塗装された。

 スペクトル分光法もミリ波になったこと、又レーザー光が応用できる時代になったことで、電通研で始めて、松下技研と共同研究中だった、新機軸の「音響工学型電波分光器」が初めて実用されることになったのだった。 原理自身は物理をかじった人には難しいモノじゃない。 宇宙到来ミリ波を増幅してから、これを超音波に変換、二酸化テルルの結晶に送り込み、結晶を表面弾性波振動させ、これにルビー色レーザーを照射すると、超音波波長の起こす各派面が回折作用を起こし、レーザー光は電波の違う波長ごとに少しずつ違う方向に反射される。 斯うして、電波のスペクトルがレーザー光のスペクトルパターンになって現れる。 45m電波望遠鏡にミリ波の電波分光をさせることを決めていたのが此の開発された新機軸とマッチして、大成功の結果をもたらすことになった。

 ミリ波を1万6千余の電波に分割したスペクトルを取る事になったのでしたがなんと此の波長域に、銀河の暗いところ、つまり暗黒ガス雲の波長に当たっていたので、宇宙化学の大発展に資するという、望外の大成果に繋がったのでした。 地球上では安定には存在し得ない多くの有機物、たとえば逆酢酸、逆アルデヒド、又一酸化珪素などが暗黒ガス雲や星間物質として検出同定されるようになるのでした。 地上でも存在できるモノも勿論検出されたモノおありますが、たとえばモノメチールアミン等も。 こんなモノが宇宙にあるとは誰も予言していなかったのでした。逆にお寿司のお酢の酢酸は宇宙中探しても存在しないのでした。

 これらは45m径のパラボラのミリ波にとっては主題ではなくて脇の副効果だと言っていいのかも知れません。 次章に述べる更に分解能に優れる、VLAの働きと相まって、星の誕生の経過を解明する重要な画像を此の精度正しいパラボラは沢山描くことになるのです。

 

爺怪説:電波望遠鏡概史(5) 協力こそ発展のかなめ。

 ちょっと脱線。 パピーにしては面白くないと!、、、。 噺がマジすぎ?あっそう!

 それでって事でもないけど、最近は、昔の教訓が逆解されていっぱしなんですって?たとえば♪情けは人のためならず」ってえのは、情けを掛けて上げることはその掛けられた人のためにならないので、新入社員にはお局様はつらく当たるべきである。 と言うことだそうで。 、、、定年退職してからアルバイトで別の会社に勤めていたら、ある日そこのお局様が、お茶汲み場の床にペタ座りして落ち込んでいるのでどうしたのと声を掛けたら昼休みに読んだ本で「情けは人のためならず」の本当の意味を読んで、此の6年間新人に思いっきりきつく当たってきたことをどうすればいいか途方に暮れて、もう会社を辞めなきゃならんですよねと泣きついてきたのです。 「おまえさんの知ってる、昔の教訓てえのはそれだけなの? 世の中にはそういうときに為になったり役に立ったりすることわざや言葉がまだまだいっぱいあるのだから、今日から直ぐその手の本を片っ端から読んで、自分の行動を改めたらいい。 直ぐにはみんなに判ってもらえないけどきっといつかはみんな判ってくれるはずだよ。」と言っておきました。 そのあと暫くして私はその会社を首になりました。 3回目のお正月の彼女からの年賀状に、あのとき会社を辞めなくて、とても良かった、初心に返ったのが良かったのでしょうか。 いま、上司からも新入社員からも、一番信頼されるようになったようです、毎日が勉強です。 有り難うございましたと。 そう、もしそこで辞めていれば、「やっとあのひどい馬鹿お局が止めていきよったわ。 ヤレヤレ」と最低不評の儘だったでしょうね。 「過ちて改むるに憚る勿かれ。」なかなか実行しがたい立場があります。 曲がりなり我を通す人もいます。 品性の問題でしょう。

 我が国の電波天文学に45m径のミリ波電波望遠鏡プロジェクトには、斯うした立場大事之丞先生や、横車押之助老教授も、口を挟まなかったのが此の大成功、大活躍を生み出したのでした。 噺を少しだけスイッチバックさせます。 グリンバンクのパラボラは、何故か、なまくらで、反省だけは立派で世界中にいい教訓を残したわけですが、ボンの100mパラボラは既に完成間近でしたしその反省を取り入れようとしても兎に角大きすぎたのでした。 大きいことはいいことだとも言いますが、モノには限度があると言うことでしょう。 ベル研究所のホーンアンテナは、精度保持の複雑さをパラボラの放物面を全面使うことを避けることで軽減して、3.度kの放射が宇宙のすべての方向から来ることを実測してこれこそG・ガモフが予言したビッグバンの名残だと実証したのでした。

 未だ他にグリンバンクやボンの100mの教訓を活かしたモノが作られました。 プエルトリコのアレシボに、カルスト地形を利用して、固定の300m径のパラボラがほぼ天頂を向けてワイヤーロープで金網を引っ張って球面を作り出す形式で、建設されたのですが、毒を喰らわば皿まででボンの三倍径にしても固定、しかしどうせ金網ならと、ワイヤーロープの張り方で、焦点を動かすと言う離れ業が取り入れられました。 日本で、計画の段階から、色々案を練っていかにして精度を出し且つ保つかに知恵のありったけを絞り尽くしている間に、世界では、精度を避けて通る案が練られ且つさっさと建設されていたのでした。 アレシボの300mは固定だが径は大きい。 これ以上大きくても固定では、天のある方向の一日に一度ずつ観測するっきゃない。 勿論、これら観測データの処理には、早くからコンピューターのお世話になっていたわけで、コンピューターあっての電波望遠鏡だったのです。

 そこで世に知られた、三角法の基線をナガークして分解能を上げる手法。 径の程々のパラボラをある距離を離して基線上に配置し、2方向出来れば三方向に配置した同方向を向いたパラボラで同時に観測することで、とても大きなパラボラの分解能を代行させるVLA干渉型(very large array)望遠鏡があちこちで建設されるようになりました。 第1号は、イギリスライルのケンブリッジの1マイル望遠鏡。 第2番が、オランダのウエスタンボーグの2マイル14台のパラボラ配置。 そして、アメリカニューメキシコ・ソコロ高原の直径40キロの円内に、Y字型に25m径のパラボラを27基配置した極め付きのVLAが作られました。 野辺山にも、ミリ波45m径パラボラの他に、ミリ波用10m径のパラボラ5基を、東西南北十字型に配置した、30基のプラットホームに各500m長のレールを敷いてどのプラットホームにでも配置できるようにした5素子ミリ波干渉計が追加発注された。 つまりミリ波・合成超望遠鏡であります。 合成すると超精密なピントの電波写真が撮れるという代物なのです。 これらはコンビを組んで、宇宙の温度の低くて、光天体望遠鏡ではよくわからない星の生まれる前のガス状の星の卵時代のガスの回転や吹き出す状態など非常に克明な画像を示し、45m鏡とも組み合わせたり、さらに波長の長い諸外国の電波望遠鏡の画像にはめ込んだりして、研究はトントン拍子に進み、星の誕生のあらましの経過が世界中の電波望遠鏡の一致協力によって解明されていったのでした。 例の、宇宙有機物質の、科学の研究は、ミリ波観測精度を誇る野辺山45mの独壇場ですが、ただ、どの有機物質がドンなミリ波長で振動するのかの研究は世界中の科学者が、手分けして根気よく実験し計算し、既に、ン千種類の仮想有機物まで計算がされるようになっているそうです。 その内、星間物質として確認された分子は1984年現在既に70種類以上で、此の分野では国境も、派閥もなく国際間協力は極当たり前、そんな気風のようですね。 そりゃそうでしょう、宇宙が一つであるように、宇宙科学に対しては地球も地球人も一丸にならなければ、星がカンラカラカラと笑い転げることでしょう。 参考までに、次章に1984年までに確認された物質名と確認されたミリ波周波数の表を掲げておきましょう。

 

爺怪説:電波望遠鏡概史(6)星間分子に笑われない無線マナーを

 野辺山の、45m完成前にも我が国では三鷹天文台の敷地内の6mパラボラ、が、改良に改良を重ねて、24チャンネルの電波分光を誇り、更に、野辺山の16000チャンネル用の「音響光工学型電波分光器」の基礎実験を行っていました。 アメリカでもソコロ高原の40kmVLA25m径X27基は突然作ったわけではなく、光学天文最大の基地アリゾナ州ツーソンの南東2100m標高のキットピークにおいて、11m径3基による、全自動遠隔操作、観測制御データ整理、放物面修正メインテナンスも自動というシステムの完成後、初めて建設されたのでした。 このほかイギリス・ドイツ・フランスもそれぞれ10m前後径の3基によるVLA干渉観測設備をそれぞれ建設しています。 これらはいずれも野辺山のミリ波には及ばず、分解能では10倍でも、星間分子雲の、つまり、星の王子様のガス雲の外周までの観測を得意とします。 野辺山は、その精度と、ミリ波によって、更にその中の、星が形成されつつあるガス雲の激しい渦や噴出ビームを検知しうるのです。 特にそのガスの構成成分の検出が得意というわけです。

 今私の手元にあるのは書籍ですが、おそらくその方面のwebでは最新の公開されうるデータの開示がなされているモノと思料されます。 ミリ波まで、取り扱うお仕事やハムの方、参考になさっていただきたいモノです。 こんなミリ波の電波出したのは自分が世界で初めてだなど思ったら百何十億年も前からそんな電波はずっと出してきた、星の玉子さまからカンラカラカラと笑われてしまいます。 お気をつけ遊ばせ。

 しかるが故に、何処にも発給されていないはずの、ミリ波の分野も、電監によってその免許が厳しく審査されて初めて許可になるのです。 丁度、戦前から、ジャンスキーのアンテナが地球外外来ノイズを捉えた研究に敬意を表して、当該周波数範囲の使用を原則禁止にしてきたことを踏襲したわけでした。 現在は判りませんが、1984年で既に野辺山のミリ波干渉計の受信ミリ波上限は200GHzだったようですから。

 参考までにその「ホシマブンコ」こと、星の玉子さんたちがいつもお使いの「周波数の一端」をお目に掛けておきましょう。 ホシマブンコさんに限らず、有機分子の振動は、その結合構造によって複雑で、構造単位の組み合わせの数ほどの周波数の数を発しているので、どのチャンネルもいっぱいでしょうが、存在の有無を判定する主たる周波のみの記述にとどめます。 分子式や分子名でそんなのは聞いたこと無いと思われるモノは多分地球上では安定に存在しない物質かも知れません。

 又これらがすべて、野辺山45m鏡が初めて観測したモノでは無く、電波望遠鏡がこれらのモノを捕まえ始めた1950年頃からの研究成果の集積です。 更に、ここで23Aギガでリストされるアンモニアは、もう40年近くも前、原子時計が作り出されたときは238Aメガの振動が使われたことでよく知られています。

 


電波で観測される星間分子:(1984年6月)**
分子式分子名周波数(GHz)*
CHメチリジン2.335
CNシアンラジカル113.491
CO一酸化炭素115.271
CS一硫化炭素48.991
NO一酸化窒素150.547
NS硫化窒素115.572
OHヒドロキシルラジカル1.667
SO一酸化硫黄86.094
SiO一酸化珪素86.243
SiS硫化珪素90.772
H2O水蒸気22.235
CCHエチニールラジカル87.317
HCNシアン化水素88.632
HNCイソシアン化水素90.664
HCOホルミルラジカル86.671
HCO'ホルミルイオン89.189
HOC'イソホルミルイオン89.487
HN2'アジニールイオン93.174
HNOニトロキシル81.447
H2S硫化水素168.763
HCS'チオフォルミルイオン128.021
OCS硫化カルボニル97.301
SO2二酸化硫黄(亜硫酸ガス)104.029
SiC2シラシクロプロピン94.245
NH3アンモニア23.694
HCHOホルムアルデヒド4.830
HNCOイソシアン酸87.925
HCHSチオフォルムアルデヒド104.617
CCCNシアノエチニールラジカル98.940
CCCO一酸化三炭素48.108
HNCSイソチオシアン酸129.013
CH2NHメチレンイミン5.290
CH2COケテン100.095
NH2CNシアナミド80.505
HCOOH蟻酸85.927
CCCCHブタジニールラジカル28.532
HCCCNシアノアセチレン81.881
CH3OHメチルアルコール36.169
CH3CNシアン化メチル110.381
NH2CHOフォルムアミド1.539
CH3SHメチールメルカプタン101.139
CH3NH3メチルアミン73.044
CH3CCHメチルアセチレン102.548
CH3CHOアセトアルデヒド79.150
CH2CHCNシアン化ビニール1.372
H(CC)2CNシアノジアセチレン23.964
HCOOCH3蟻酸メチル(逆(酢酸)文中)100.482
CH3CH2OHエチルアルコール90.118
CH3OCH3ジメチールエーテル86.224
CH3CH2CNシアン化エチル105.469
H(CC)3CNシアノトリアセチレン24.816
H(CC)4CNシアノテトラアセチレン14.526
H(CC)5CNシアノペンタアセチレン23.698

 

*注)観測される代表的な周波数を示した。
  勿論多くの分子は他にも色々な周波数のスペクトル線が観測されている。

**注)表の出典:新潮社刊(1985.9)新潮文庫「星と宇宙の科学」佐藤文隆・海部宣男共著


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