ドックフードの話 by ZL2PGJ鶴田さん

 ペットフードとは何だ? と言いますと。 家庭で飼われる小型の動物に与える餌を総称してペットフードといいます。 家畜に与える餌と思ってはいけません。 家畜とは牛馬羊豚の類です。 まぁ要するに、皆さんにおなじみの盲導犬等の特殊な例外を除き、家庭の庭先や室内で、特に利益を生み出すわけでもなく、ただ、ぼーっとしているだけで家族の平安をもたらすと言う、重要な業務に携わっている動物を言います。 金魚なんかに与える餌もペットフードの一種です。

 ここでは、犬に与えるペットフードについてお話しましょう。 わたしはねぇ、ペットフード缶詰の工場にもいたんですよ。 まず、ペットフードは人間様が食べない、もしくは食べても沢山は売れない部分を利用して作ります。 内臓肉がほとんどですね。 肝臓なんかレバーペーストにするったって、限度がありますから、残りますし、胃袋なんかもね、モツなべいくら食べても、そうそう食べきれるもんじゃない。 で残ります。 肺や腸や食道に気管、こんなのも食べる人はいないから残ります。 横隔膜の付け根の肉はソーセージにすると美味しいですが、使う量は知れていますからね、残ります。 というわけで、そう言う内蔵肉からペットフードはできます。 内臓肉で売れて困るのはウインナーの皮にする羊の腸くらいなもんです。

 まぁ、たいていそういう内臓の肉は余ってますから、原料として値段が安い、おまけに捨てるには産業廃棄物でお金がかかるけど、製品にしてしまえば、利益を生み出します。 と言うわけで、ペットフード工場の傍にはたいてい大きな肉処理工場や、魚処理場があるんですね。 経営が同じ場所もかなりありますね。 ここまで聞いて、そろそろゾーッとしてきました?

 さて、「まぁ、うちのかわいいタローちゃんに、そんな屑ばかりなんてとんでもない。 ちゃんとしたロースや腿で作ってもらわなきゃ」という人 いますか? 馬鹿言っちゃいけない、一缶千円近い犬缶買う人がいますかね?  我が家で飼ってたシェパードなんて一日あれを2、3缶喰うんですよ、旦那の昼飯より高い犬飯があっていいもんですか! それにね、牧草だけで育つNZの牛と違ってね、アメリカや日本の牛は穀物を食べて育つんです。 これはね本来人間の口に入る物を、お金の力で金持ちの国がもぎ取って使っているんです。 世の中には貧乏な国がとうもろこしの粉を食べている人も居ますが、その粉がなかなか買えない。 なぜなら霜降りの牛作るのに金持ちの国が買って牛にやってしまうから。 人間が満足に穀物を食えない状況もあるのに、いくらかわいいからって、そんな上等な肉を犬猫にやっていいものですか!

 よくね、日本のペットマニアのホームページを見ると、どこどこの餌は皮膚病になるとか、アレルギーになるとか、死んだ動物の肉を使って危ないとか、病気の肉を使っているだとか、まぁ色々書いてあります。 大笑いです。 まずね、死んだ肉を使っている。。 当たり前です。 動物を殺してその肉を戴いているのです。 缶詰の中で肉が踊っていたら気持ちが悪いや。

 次がね、病気の肉を使っている。 30年前40年前の昔の日本はともかく昨今は、そんな話は、もはや伝説ですね。 私の知っている限り、動物を屠殺するときは、次のような段取りです。 まず屠殺前に外見検査をして、病気っぽい、怪我してるっぽい動物は食肉用屠殺場には入れません。 つぎに電気か炭酸ガスで気を失ってもらいます。 電気やガスで殺すと思っている人が意外と多いのですが、この段階では気を失っているだけです。 気を失った動物の後ろ足を引っ張り上げ、逆さずりにして、頚動脈を切って、出血多量で死んでもらうのが食肉用動物の屠殺です。 牛は額にピストルのような道具を当てて、脳みそを打ち壊して、脳死にさせてから、頚動脈を切ります。  血を出さないと、肉が臭くて食べれないし、肉の痛みも早いのです。 山で取った、イノシシや鹿などの肉が臭いのは大抵、この血を出す工程が、うまくできてないからです。

 さて、このあと、ぶら下がった状態でおなかを縦に切ります。 こうすると内臓が良く見れるのですね、そして、獣医さんが一頭ずつ、内臓の健康検査をします。 何千頭も殺すと、獣医さんは一人では足りません。 国によっては、ひとつの屠殺場に農務省の公務員の獣医師が、何人も常駐して検査しています。 獣医さんがこれは食用に向きません と判断すると、廃棄用肉の保存室にうつされ、大抵焼却されてしまいます。

 この、病気の肉の中で、まぁ使えそうなものをペットフード用にまわそうかな?なんて思っている人が昔は居たそうですが。 今は無いです。 理由は簡単、そんな、出たり出なかったりする、「使えそうかなぁ、でも病気だしねぇ」、の動物の肉を保管するための部屋をつくり、衛生管理の為に、全く別の従業員が処理に従事する経費を考えたら、捨てた方がずっと安いのです。 家庭の台所で、「あら、この肉少し痛んでるかしらね、でも、まぁ食べるのお父さんだから大丈夫でしょう。もったいないし」 というレベルじゃないんですね。 人件費や設備費と言う概念でみれば、そんな肉は捨てたほうが、トータルで見れば安いのですよ。

 ここいらへんが、理解されてないなぁと、日本のペットキチガイの人の言う事を聞くと感じます。 さて、検査が終わったら内臓は取り外されて、内臓専用ラインへ送られます。 ここで再度検査があって、異常品は捨てられます。 で、部分ごとに仕分けされて、モツなべ用とかペットフード用とか化粧品の原料用とか、まぁ色々なお客さんに出荷されるわけです。

 さて、ペットフード缶詰の工場では、これらの肉をまたまた検査してですね。 大抵凍らせてしまいます。 なぜかというと、四季で栄養成分が変化するので、平均した栄養価の製品を作るためには、いろんな時期の肉を混ぜないといけないからなんですね。 で、冷凍庫から、ちょうどいい組み合わせの肉を出して溶かして、つかうのです。 結構気を使っているでしょ。 犬も猫もそれぞれ、必要なミネラルやビタミンがいろいろありますからそれを足します。 とうもろこしの粉や、ゼリーなんかも、栄養の調整や、缶から出しやすくするのに、足します。 缶に安定して詰めるために水も足します。 この、缶に上手に安定して、いつも同じ量を、空気を混ぜずに詰めるというところが、缶詰生産の勘所でしてね。 失敗すると殺菌不良や重量不足で、製品にならない。

 ときどき、やすく増量するために、粉を足していると思っている人がいますが、大違い、へたすりゃ粉のほうが内臓肉より高いこともあるんだから。 まぁ、安いペットフードは水を混ぜる量が多いのは確かですね。 何処のとは言わないけど、日本の某スーパーで売っているあれは、かなり水っぽいですなぁ。

 で、こうして作ったペットフード缶詰は日本に輸入されるのです。 日本ではドッグフード缶詰は作っていません。 採算が合わないからです。 ニュージーランド、オーストラリア、が2大生産地です。 アメリカもあります。 キャットフード缶詰は高級品を日本国内で作っています。 安い奴はタイ、フィリピン、アメリカンサモア、カリブなどで生産していますね。


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