1000円トランシーバ製作記

2006年1月


私が所属するJARL QRPクラブでは、会員が1000円以内の費用で製作したアマチュア無線用機器を2005年のハムフェアの会場で展示することになりました。当初の条件は、(1)アマチュア無線用機器一般ではなくトランシーバを作ること(2)現在一般的に入手できる部品を使用する(3)手持ち部品であっても標準的な価格を積算すること(ただしペットボトルなど日用品ごみのリサイクルは0円とする)――というものでした。これではハードルが高すぎるということで、議論の結果、(1)トランシーバに限らず、アクセサリーでも何でもよい(2)部品の入手ルートは問わず、その実際の入手価格を計上する(3)ケース代などを含めると費用がかさむので、回路構成部品の入手原価だけで1000円以内とし、実際の総費用は別に表示する――ということになりました。

 

これが私の出品したトランジスタを43個使った7MHzSSBトランシーバです。ハムフェア会場でご覧いただいた方もいらっしゃると思います。肝心の回路構成部品代は982円、ただし総費用は約5000円かかっています。

実は、これの製作の追い込みに入った頃、本業がQRLLになってしまい、最後は2晩ほど無理やり徹夜して仕上げて出品しました。そのため、ダイヤル目盛りがまだ記入されていなかったりします。挙げ句の果てには、あとで分かったことですが、大事な電源ラインのハンダ付けをうっかり2〜3本忘れたままというようなずさんな仕上がりでした。hi

 

これは内部の様子です。機構的に一味違ったものにしようと、糸かけ式の横行きダイヤルを採用しました。糸かけダイヤル用のプーリーや糸は秋葉原の国際ラジオや櫻屋でも手に入るようですが、手作りしてみました。バリコン用プーリーは、樹脂製の「鶏ガラスープ」のボトルの口部分とフタ。小さいプーリーは3mmネジ用の金属カラーと大きめのワッシャをハンダ付けして作りました。糸は、ポリエステルのボタン付け用糸です。

ハムフェア会場で配布した説明資料はこちらです。

 

トランシーバの回路はIFを10MHzに取ったシングルスーパー構成です。コストを切り詰めるためと、これまた従来発表されている回路と一味違ったものにするため、「CA3028もどき」の自家製ICを中心にして回路を組んでみました。

写真右のキャンタイプのICがオリジナルのCA3028と同等のLM3028BH(JA9TTT/1かとうさんTNX)で、同左が8ピンのICソケット上に組んだ「CA3028もどき」です。詳しくは関連ページをご覧ください。

 

本家CA3028の等価回路図を掲げます。「もどき」では、3個のトランジスタに2SC1815GRを使い、抵抗はE3系列で済ませるために、4.7kΩ、2.2kΩ、470Ωに変更しています。動作を比較した限り、ほとんどピンコンパチに動作するようでした。

 

halflatticefilte_type6.jpgもうひとつ「違い」を出してみたのは、フィルタです。現在、自作ではラダー型が一般的ですが、本機ではハーフラティス型4段としてみました。8個の水晶はすべて10.000MHzと同一の周波数で、うち4個に直列にコンデンサを入れ、所望の帯域幅を得ています。写真はバラックテスト時のものです。

ハーフラティス型フィルタの自作についての情報は関連ページをご覧ください。

 

type6varsp20k.gifこれがハーフラティス4段フィルタの通過特性例です。二つのトレースを重ねてありますが、幅の広い方がSSB用、狭い方がCW用を測定したものです。スカートが若干広いですが、通過帯域外減衰量は100dB以上取れています。

基板上に実際に組んだものでは、4個の水晶と直列に挿入するコンデンサを33pFとしたときに6dBBW2.52kHz、60dBBW7.03kHz(SF2.8)、150pFとしたときに6dBBW650Hz、60dBBW2.65kHz(SF4.1)というような特性になりました。SSBタイプとしたときのキャリアポイントは20dB落ちの周波数で9.99586MHzとなりました。

 

3028trx_rxcircuitschema回路図ですが、まず受信部から。クリックするとピクセル等倍の画像が開きます。

製作後4カ月以上たってから描いているので、実物と異なっている部分もあるかもしれません。あくまで参考程度にとどめてください。

「3028MDK」という表示のICは、上述の通り2SC1815GRを3個使った自家製です。その他の回路も含め、基本的にメーカー製ICは1個も使わず、すべて2SC1815GRと2SA1015GRで構成しています。これは、これら2種類のトランジスタが秋月で200個600円で買えたからです。位相トランスなどに使用しているフェライトビーズも、秋月で1000個3000円で売られていたものです(現在は品切れ)。さらに水晶も、ヤフオクで約16000個の水晶を約16000円で、つまり単価約1円で入手したものを使用しています。

また、今回は回路構成部品代をケチるために、同調回路にFCZコイルなどの可変インダクタを使用せず、マイクロインダクタで済ませてしまったりするなど、結構乱暴なこともしています。こういう点もあまりむやみに真似しない方がよろしいと思います。hi

 

3028trx_txcircuitschema続いて、送信部の回路図です。

2SC1815GR×6パラプッシュプルのリニアアンプが圧巻です。hi これは、秋月で同Trが安いというので、掲示板上でJR3KBU芦刈さんらと連携して実験を繰り返してきたものです。当所3パラぐらいから始めて、6パラに行き着きました。アイドリングは100mA程度流しています。出力は7MHzでは1Wを超えますが、現状では近接スプリアス等がちょっと心もとないので、1Wに抑えています。関連ページもご覧ください。

また、ドライバ段に受信IFアンプと同じ「もどき」によるゲインコントロール付きカスコードアンプを使用しており、40dB程度の範囲でスムースに出力を制御することができます。

コスト削減のため、水晶フィルタはダイオードスイッチなしで送信・受信共用にしてしまっています。多少のロスは生じているかもしれませんが、目をつむっています。

なお、本文や回路図は、誤り訂正等の事情により予告なく修正される場合が(特にアップ直後は)しばしばあります。

 

さて、このようにして一応の完成を見たのですが、いったいこのトランシーバはどの程度実用的なのか?という疑問を持たれたことと思います。率直にいって、実用性はあまりないというのが結論です。hihi

まず、送受信周波数の安定度については、LC式VFOながら、発振周波数を3MHzと低くとっているため、かなり安定度は高いです。7MHzのSSBの交信をしばらくワッチしていても、QRHは感じません。糸かけダイヤルの減速比もまずまずです。

問題は受信感度です。普通の通信用受信機と比較して20dB程度落ちるようです。その原因は、そもそものゲインが足りないのか、どこかでロスしているのか、それとも誤配線があるのか、現時点では深く追及していないので不明です。hi

送信については、出力レベルも含めて、QRP機としては及第点だと思いますが、7MHzのSSBで1Wというパワーではなかなかつらそうです。CW機なら十分なパワーですが。

CA3028もどきでトランシーバを作るという試みについては、今後もさらに探求を続けていきたいと思います。これまで自作に広く使用されてきたDBMやIFアンプ用のICが製造中止などで入手困難になっていますが、2SC1815や2SA1015といった汎用トランジスタが入手できる限りは、この方法はひとつのサバイバルの手段として有益だと思っています。

本稿がQRP無線機を自作される方々に何らかの参考となれば幸いです。

 

関連ページ

CA3028ピンコンパチもどきを作る

Poor man's TRXを考える(フィルタ編)

Poor man's TRXを考える(PA)