JIM HALL Maniacs

since 2001/12/01

Jim HallとDerek Baileyの怪しい関係。

 2001年に、"Jim Hall & Basses"という新譜が発売された。 その中に、Abstract1,2,3,4というのがあるではないか!ライナーノーツに よれば、2,3,4は即興(Improvisation)とあるではないか。

 ちょっとまてよ、 そう言えば、"Jim Hall & Pat Methny"のアルバムにもImprovisationというのが No.1からNo.5まであるではないか。何だこりゃ!何だこりゃ!!何だこりゃ!!! とお思いのあなた、そうでないあなたも、家主の薀蓄にちょっとだけお付き合いください。

 1955年録音の"Chico Hamilton Quintet"のオリジナルライナーノーツに、グループへのインタ ヴューが載っており、そこで、Jim Hallは次の様に語っている。少々、長いが原文のまま 引用する。

 "Even in Bach's time improvisation was an important musical factor. Bach,himself, was renown for his powers of improvisation. Incidentally he wrote down lots of things he had improvised. I have strong feeling about this idea of there only being music and not differentiating between jazz and classical music. Because the basis of much of what we call classical music was improvisation too."

 さすが、クリーブランド音楽院を、斜めに出ただけの事はある。このアルバム"Chico Hamilton Quintet" に"FreeForm"(improvisation)というクレジットの曲がある。内容は、自然発生的な即興演奏 であろうが、事前にトーナルセンター(Keyもしくは調)は打ち合わせ済みと思われる。 即興演奏とは、感じられない程、普通のJazzに仕上がっている。

 又、20年後の"Jim Hall/Live!"のバックカバーに、Jim Hallのコメントで"Improvisation is----"と載って いた筈だが、アルバムが手元にないので正確な事は、言えない。記憶によると、その場、その場 の色んな要因の中で、お互いに触発しあって、即興演奏をするのが、大変楽しい。事前に予定調和 的に考えていたより、演奏内容が密度があり、満足のいく演奏ができた時は、最高だ。といった 、内容であった様な、気がする。といっても、通常のJazzの演奏される様式の上での話で 前記2枚のアルバムの"Abstract""Improvisation"とはちょっと、違うようである。
 ("Jim Hall/Live!"のコメント部分の情報をいただける方は、連絡をお待ちしております。)

 [追記] 福岡のギタリストYさんより、コメント部分の情報どころではなく、「Jim Hall/Live!」のアナログ盤の謹呈を して頂きました。有難うございます。左の写真が、内側の見開きで、バックカバーではなく、ここにありました、 "Improvisation"云々というコメントが!

”Improvisation is just a form of self-expression,and it's very gratifying to improvise in front of people. I feel I'm including them in what I'm doing,taking them someplace they might like to go and haven't been to before.”

 山口弘滋氏による邦盤ライナーの訳によると、「アドリヴは、自己表現の一形式であり、聴衆を前に してアドリヴをやるのは実に楽しい。自分のプレイで、聴衆が行きたいと思っているようなところ、 これまで一度も行ったことがないところに連れて行くような感じになれる。」ということです。 小生の記憶とは、少々ニュアンスが違いますが、大筋においてニアリィ・イコールということでご勘弁下さい!

 さて、そこでDerek Baileyの登場である。Derek Baileyって誰?と言う方に、彼の足跡を 簡単に紹介してみよう。

 1930年、イギリスのヨークシャー州シェフィールドに生まれる。14歳の時にギターを手に し、フラメンコからクラシックまでのあらゆるテクニックをほとんど独学で学ぶ。なんと、 Jim Hallと同じ年に生まれている。1950年初頭スタジオ・ミュージシャンとしてプロとなる。 そこで、"すべてのこと、あらゆるタイプの音楽をやった"のだった。1968年、あらゆるテキスト やスコアを排した完全にフリーな音楽<Free Improvisation>に生涯を、かける事を決意 する。以後、Solo、Duo、多人数の<Free Improvisation>を、レコード化、1978年に初来日。 自著に"即興-その自然と実際"があり、邦訳も工作舎から出版され、重版されている。 クラシックからインド音楽などの即興演奏の歴史を踏まえ、<Free Improvisation> の哲学的な意味合いについて、言及していたと思う。小生、知人にたのんで邦訳が出版される前に 原著を入手していた。どこかに、あるのだがなぁ?見つからなかった。

 Derek Baileyの生は、2回ほど見た。ヴォリュームペダルとGibson ES−175とアンプのみで極小の音量から、うるさくない大音量まで、メロディのかけらもなく、 ほとんどノイズなのだが、不思議な時空間を現出させ、まるで手品みたいで、大変興奮した。 あらゆる音楽をやったが故に、あらゆる音楽の面影が微塵もない前人未踏のサウンドを 現出できたのであろう。興味のある方は、自己責任の上、相当な覚悟の上で、聴いてみて ください。H.M.VにもTower Recordでも見かけます。投資したからには、1回であきらめず、 最低5回以上じっくりと、対峙してください。だんだん、よくなります。よくならない方は、 くれぐれも、小生が、積極的に、薦めたと思い違いしない様に!

 さて、Jim HallとDerek Baileyのどこが怪しいんだ!という事ですが、"Jim Hall & Pat Methny" のアルバムの前に、なんとPat MethnyはDerek Baileyと一緒にアルバムを発表している。又、Pat Methny の1996年の"QUARTET"というアルバムの3曲目"montevideo"は、Derek Baileyたちの集団即興 演奏と全く相似なサウンドである。そこで当然、"Jim Hall & Pat Methny"のImprovisationはDerek Bailey の方法論を踏まえてパフォマンスされたものと、妄想する。

 Jim Hallは、1990年前後から、教習本、教習Video等を数点発表している。Jazz Guitar Master Class Volume 2: Advanced Concepts - Self Expression (1994 リットー・ミュージック)中で、生徒である井上智氏に対して、やおら、自分のギター の弦を緩めてデチューンした上で、即興でモチーフを作り、展開してみろと指示し、サンプル を演奏し始める。これは、まさにDerek Baileyの常套手口である。Derek Baileyの生で、 弦を緩め、又、リアルタイムパフォーマンスの最中に、断線した弦を張替え、その事を そのまま<Free Improvisation>にしてしまった事を、小生は目撃している。

 このアイディアが、Derek Baileyのパクリなのか、Jim Hall独自の発想なのかはどうでも いい事である。それよりも、Jim Hall Jazzpar Quartet(1998)のなかの、"パープル・ヘイズ" (もちろん、ジミ・ヘンの曲、弦楽4重奏と演奏している。)では、見事に弦を緩めてパフォー マンスしている。まさに、よくやる、おっと失礼、脱帽ものです。他の、大御所のギタリスト や、若手のステレオタイプ化したギタリストがやるか!

 さて、実際にJim HallとDerek Baileyが接見したかどうかは、知る由もない。 World Wideに活躍し、特に欧州では、ギターセミナーを開催する御大である。 Derek Baileyの存在に無知である訳がない。どうも怪しいと、妄想が果てしなく沸いてくる 今日この頃である。

 [追記]  NY在住のジャズ・ギタリスト井上 智氏より、JHM掲示板に下記の様な書き込みを頂きました。 小生の妄想は、当たらずとも、多少はかすっていたことが、判明しました。有難う御座いました。

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デレク・ベイリー 投稿者:井上 智  投稿日: 4月 3日(水)14時56分18秒
Ron Cater とのDuo 興味深く読みました。これらは全て名盤ですね!私も良く聞いてます。 この前Jim Hallと話す機会があり、このサイトの存在を伝えました。 Maniacsという言葉が気に入ったようでサイトの名を聞いて笑っておりました。 お尋ねのデレク・ベイリーに関しては 「彼のImprovisationの本は持っているけど個人的にはまだ会ったことない」 ということです。
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(2002,01,12.)