JIM HALL Maniacs

since 2001/12/01

PianoとのDuoコラボレーション

 J.Hは,下記のPianoとのDuoのアルバム4枚に参加している。

 ・Undercurrent/Bill Evans・Jim hall (United Artist 1962)
 ・Intermodulation/Bill Evans・Jim hall (Verve 1966)
 ・First Edition/George Shearing Jim Hall (Concord 1981)
 ・Power Of Three/Michel Petrucciani (Bluenote 1986) うち4曲

 そのほかに、アルバムではないが、下記のアルバムに1曲のみPianoとのDuoがある。

 ・Commitment/with Tommy Flanagan "My One And Only Love" (Horizon 1976)
 ・Panorama/with Kenny Barron "Something To Wish For" (Telarc 1996)

 大体、そもそも、PianoとGuiterのDuoをやろうというアイデアは、誰が発案したのか? 1962年以前に、PianoとGuiterのDuoなどという変態的編成のアルバムはない。ジミー・ジェフリー 師匠の基本コンセプト「ジャズ・ミュージシャンは、リズム隊(普通ドラムス、ベース、それとコード楽器 の1セットのこと)がいなくても、テンポ・キープは各自めいめいがきっちりとやるべきである。」を 踏襲し、拡大解釈したJ.Hなのであろうか?

 PianoとGuiterのDuoのアルバムを録音して、発売するということは、その当時としては、革新的で実験的なことであったのではないだろうか? 結果的にはBill Evansの名前があったから実現できたのではないかと思われる。J.Hが他の無名のピアニスト と提案したのでは、受付られていなかったであろう。それでは、Bill EvansがJ.H以外のギタリストとDuoの アルバムを発案して残していただろうか?否である。PianoとGuiterのDuoは、J.HとBill Evansの太くて赤い 糸があったから、実現しているフォーマットではないかと考える。 

 Jazz評論家の悠雅彦氏によると、Undercurrent、Intermodulationのそれぞれの録音の時期は、Bill Evans はフリーな状態で、新しいコンセプトやフォームを模索していた時期であると言う。 スコット・ラファロ逝去後、Undercurrentを録音、チャック・イスラエルとの4年間のトリオ演奏に移行する間であったり、 様々な方向をトリオフォーマット以外に手探りしていたが、Intermodulation録音の半年後、 エディ・ゴメスとの新生トリオが、誕生したりとか。ここらへんの事情について、 「Bill Evans Trio蘇生に関するJHの触媒効果」とでも命名したい様な気になってくる。

 Undercurrentの急速調の"My Funny Valentine"では、J.Hのハーモナイズド・ベースラインがかっこよくて インパクトがあります。そのほかの曲は、少々耽美的で、アルバムのまとまりとしては、Intermodulation の方が、小生は好きです。

 1981年に、1919年生まれの全盲のピアニストの巨匠George ShearingとDuoのアルバム制作。 当時Shearingが62歳、J.Hは51歳、現在(2002年)から約20年前。

 ShearingとJ.Hは、1960年代中期にロンドンで、Shearingの飛び入りで少しだけギグをやったこと があったらしい。

 録音当時、ShearingはベースとのDuoでクラブ・サーキットをやっており、もともと、ギタープレイヤー、 バイブラフォン等とのコラボレーションを好んでいた事もあって、問題は全然無かったみたいだ。この、 アルバムの制作の言いだしっぺが誰なのかは不明。丁度、ShearingもConcordと契約していたし、J.Hも 契約中だった。言いだしっぺは、ShearingかJ.Hか、カール・ジェファーソンか、誰でしょう?

 Shearingは"To Antonio Carlos Jobim""To Tommy Flanagan"という、オリジナルを提供、気品のある 小品・佳作である。J.Hの方は、"Without Words""Careful"というオリジナル2曲を提供。このうち、"Careful" という曲はdouble-diminished scaleに基づいたちょっとエキセントリックな曲です。トニック4小節、サブ ドミナント4小節、トニック4小節、ドミナント2小節、トニック2小節の合計16小節の曲で、12小節のブルース に似ていて、間違わないように"Careful"というタイトルにしたそうです。

 1958年ジミー・ジェフリーのバンドに 在籍中に作曲、ジェフリーがテナーで吹いていたそうだが、アルバムレコーディングはなしか? ゲイリー・バートンの"Something's Coming"(1963)が初出か? "Soft Winds"という曲をご存知の方は、"Soft Winds"のコード・スケールをdouble-diminished scale にしたものという把握の仕方もあります。
[追記] JHM NTさんの情報により、ジミー・ジェフリーのアルバムが"Careful"の初出である事が判明しました。 Jimmy Giuffre with Jim Hall(GIANTS OF JAZZ CD53252 1998)というコンピレーション・アルバムに収録されています。 オリジナル・アルバムは、"The Easy Way/Jimmy Giuffre"(Verve 8337 1960)で、現在入手不能と思われる。

 このアルバムでは、この"Careful"が非常に面白い出来上がりです。ホットになる、シンコペーションで しのぎあう、細かいラインの絡みもやる、まあ、Shearingもいくときにゃ行きますねぇ!しかも楽譜なし。 後で、盲人用の楽譜を送ったとか。耳と、double-diminished scaleという情報とで素晴らしいインター・プレイが展開されている。お聞きでない方 は、是非一聴あれ!

 1986年のThe Montreux Jazz Festivalに、Michel PetruccianiとWayne Shorterとの変態的編成にて ステージに挑む。しかし、何でWayne Shorterなんだろうね? その内、4曲は、Michel PetruccianiとJ.HのDuoのパフォーマンスであった。

 この、記録はビデオにても発売されており、CDとは曲順が違うのです。

 ・CDの曲順 *にWayne Shorterが入ってTrioでの演奏。
1)Limbo * 2)Careful 3)Morning Blues * 4)Waltz New  5)Beautiful Love 6)In A Sentimental Mood  7)Bimini *

 ・Videoの曲順 *にWayne Shorterが入ってTrioでの演奏。
1)Beautiful Love 2)In A Sentimental Mood  3)Careful 4)Waltz New 5)Limbo * 6)Morning Blues * 7)Bimini *

 これは、Videoの曲順が当日の曲順であり、最初にMichel PetruccianiとJ.HのDuoが4曲あり、 Wayne Shorterが入ってTrioで3曲演奏があったと見た方がよろしい。 CDはバランスを考慮して入れ替えてあります。Videoをお持ちでない方、 Videoの曲順にダビングして聞きなおしてみると、もう、一度楽しめます。

 J.HはPetruccianiとの演奏を、楽しんでいたのではないかと思われます。Petruccianiは、どちらかと言えば、 Bil Evans派であり、その昔のUndercurrent、Intermodulationを思い起こしたのではないでしょうか? ここでも、Carefulを演奏、こちらの演奏も大変面白いパフォーマンスとなっています。是非一聴あれ!

 Videoをお持ちの方、小生が好きな場面があります。再度、確認してみてください。それは、こういう場面です。 Duoの1曲目、Beautiful LoveでJHのイントロでテーマが始まり、アドリブが始まります。アドリブが 終わってコンピング状態でPetruccianiと1コーラスやり取りの後、Petruccianiのアドリブになります。 このとき、聴衆は、拍手のタイミングが合わず、そのままやり過ごします。Petruccianiのアドリブが 解かりやすい形で終わり、聴衆から拍手が起こります。その時、J.HとPetruccianiは次の流れとしての 4Barsの交互アドリブへ移行中で、JHが先行している最中でした。 その時にJ.Hがアップになって、次のアドリブをしながら、聴衆のラグによって遅れた拍手に反応しているのです。 温和な相好でPetruccianiのアドリブに対する拍手を喜んでいるのです。いやぁ、いいですねぇ! これは、CDを何回聴いても聴こえてきません。

 Power Of Threeの前年、PetruccianiはVillage VanguardにてLiveを行っている。その際、J.H が客演し、Waltz New を演奏している。(ライヴ・アット・ビレッジ・バンガード/ミシェル・ ペトルチアーニ パイオニア Video) 他に、録画日は不明だが、PetruccianiとJ.HのDuoで "My Funny Valentine"のパフォーマンスが、「ジャズ・ギターの軌跡Vol.3」(リットー・ミュージック) で見られます。

(2002,04,07.)