JIM HALL Maniacs

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JH リーダーアルバム2,3作目

 1作目のりーダーアルバムJazz Guiter (1957)から、約12年ぶりに2枚目のアルバムが発売された。 1969年ということで、J.Hの1960年代(30歳〜40歳)の最後にあたる年であった。

 It's Nice To Be With You/Jim Hall In Berlin (MPS 1969)

 1960年代の前半は、Sony Rollins(1961-1962),Art Farmer (1962-64),Paul Desmond (1959-65)や その他のギグ、レコーディングをこなし、ハード・バッパーでない身の施しを見せてくれた。但し、 一時体調を崩したが回復し、結婚後NYに定住、テレビのオーケストラの仕事をやりながら、 スポットの仕事もこなしていた。その、スポット仕事のなかに”ベルリン・ジャズ・フェスティバル” への出演があった。その際、ドイツのジャズ評論家Joacim E. Berendt氏に気に入られ、この2枚目の アルバムが氏のプロデュースによって、作成された。

 Joacim E. Berendt氏は、J.Hに対して、Bill Evansの”Conversations With Mysell(1963)”の様に 多重録音をしては、どうかと、提案した。J.Hは、考えた事もない提案だったが、すぐに熱中して、リズム 隊付きで、”My Funny Valentine”を、そして、ギターだけの多重録音”Young Ones,For Debra””In A Sentimental Mood” を仕上げた。

 このとき、娘のDebraは、13歳。ん??????。深く考えないように!この”Young Ones,For Debra” が素晴らしい出来上がりです。多重録音だが、不自然なリズムの流れがなく、あたかも、同時に対話しているかの ような出来栄えです。ジャケットの写真は、J.H親父が、フランクフルトを、娘のYoung Onesに食べさせて 入るところ。後ろの売店のおばさんが、非常に気にはなりますが!

 このJ.Hのリーダー2作目ですが、アルバムとしてストーリ性があり、その時代の他のギタリストのアルバムに 比較して、そのサウンドは、相当先行している様に思います。最初の”Up Up And Away”は、今でも、新鮮に 聴こえる。開放弦を上手に使った、オープンなヴォイッシング。アンプの性能が向上したのか、60年代初めの 音色のばらつきが安定、ダークでメロウな音色。決して多くを語り過ぎない、ミニマルでスマートな 語り口。J.Hのワン・アンド・オンリーな世界が、自己のリーダー・アルバムの中に凝集している。 これは、60年代前半に、サイドメンとしては、実現できなかったものが熟成したのかもしれない。

 さて、アルバムのタイトル・チューン”It's Nice To Be With You”は、奥さんのJane Herbertの 作曲。Joacim E. Berendt氏は、冗談で”It's Only a Peper Moon”に似ていないか?と原盤ライナーで 指摘している。J.Hも”It's Only a Peper Moon”に似たフレーズを演奏している。 このアルバムのサブ・タイトルは、Jim Hall In Berlin Featuring Jane Herbert and Debra Hallの 含みが、伝わってきませんか?

 次は、3作目です。

 Where Would I Be?/Jim Hall (Milestone 1971)

 このアルバムのタイトル・チューンも作曲は奥さんのJane Herbertです。 2枚続けて奥さんの曲がタイトル・チューンというのも、もしかしたら、Jazz史上初めて?かどうかは 定かではありませんが、2曲目の哀愁のあるボサノバ調の曲です。 他に、”Goobye,My Love”というかわいらしい曲も提供している。

 このアルバムの最初の曲”Simple Samba”が、大変好きだ。Airto Moreiraのパーカッションから 前奏が始まって、J.Hがメロを♪ミファソーー、ファミファ(階名です)♪と入るところが、 何ともいえない。脳内の”Do It Again”ボタンが今までに何回押されたのだろう。アドリブも 事前に作ったのではないかと思われるほど、よく、まとまっている。極めつけは、エンディング のAirto Moreiraのパーカッションである。

 3曲目の”Careful”は、Airto Moreiraのパーカッションで、エスニックでエキセントリックな 仕上がりになっている。このアルバムも、ストーリー性があり、よく、まとまっている。また、ボサ、 サンバ等の他は、スタンダードを無伴奏でやったり、In Twoにはなるが、ベースが4ビートになる場所がない のだ。これも、これで、変わっているぞ!

 この、2枚は、何回聴いてもあきがこない。いわゆる愛聴盤なのだが、それがどうしてなのか よく説明が出来ない。好きだからとしか言いようがない。これからも脳内の”Do It Again”ボタンを何回押すのだろう。

 それにしても、 Where Would I Be?とは哲学的で意味深ではありませんか?ジャケ写も意味不明。

[追記] Duke Ellington : 1969 All Star Tribute To Duke Ellingtonについて

 J.Hは1998年、デンマークにてJAZZPAR Prizeを受賞。その際のライヴ録音  JIM HALL "JAZZPAR QUARTET+4" (Storyville STCD 4230 /1998)の中で、J.Hは演奏曲目に自らコメントを つけている。In A Sentimental Mood (Duke Ellington)については、

This tune I actually played at Duke's 70th Birthday Party-with some glaring mistakes. I'll keep playing it 'till I get it right-besides,I love it.

 と書いてあった。フーンと思っていたら、2002年になって、この時の音源が発掘されてCD化されてしまった。 Duke's 70th Birthday Partyは4月29日にニクソン大統領の時のホワイトハウスで、 It's Nice To Be With Youの録音は6月27日28日で、 ”Jim Hallの足跡を大雑把に3期に分けてみる”の開花修練期の初めにあたります。

 この発掘された音源は、基本的にレコード化するつもりではなく、USから海外に向けての、PR用の映像にあてがわれる 音源であったらしい。内容は、Ellingtonの作曲作品を中心とした、メドレーが3グループに分かれて 入っている。テーマが中心でアドリブ部分は少ない、が全くない訳でもない。1曲が1分から、2分程度で 28トラック入っており、その中で、J.Hは、In A Sentimental Mood をサビの部分のみMilt Hinton(b)が 加わるが、ほとんど、Soloで1分55秒の演奏をしている。他にも半コーラスのアドリブ、エンディングのオブリガード、 ボーカルのバックでのコード弾き、バックリフ、等で数箇所確認できたが、全面に出てくるのは、In A Sentimental Mood の1分55秒のみです。

 この、パフォーマンス以降、J.Hの演奏曲に、Ellingtonの作曲した曲が、好んで散見するようになる。 ”Prelude To A Kiss””In A Sentimental Mood”エンディングのコラージュとして”Mood Indigo” を使ったり。Ellingtonが好んで演奏していたビリー・スレイトンのチェルシー・ブリッジも散見するようになる。

 さて、それでは、JHMとしてこのアルバムは、買なのかどうか?といわれた時に、ちょっと考えてしまいます。 小生としては、Duke's 70th Birthday PartyでのJ.HのIn A Sentimental Moodの演奏が聴けるだけで、 満足なのですが、人に推薦できる楽しめる名盤かどうかといわれたら、んーと言ってしまいます。 結論はマニア・アイテムではないかと、思います。内容は決して悪くはないのですが、それぞれの参加ミュージシャン のパフォーマンスは必ずしもこのアルバムでないと聴けないと言う事はありません。期待していたHall-Desmondのコラボレーション なんかもありません。んー、どうしたらいいんだろうね!

(2002,06,01.)