JIM HALL Maniacs

since 2001/12/01


1957年と1993年のトリオを聴き比べてみる。

 1957年、J.Hの初リーダー・アルバム"Jazz Guiter"が発売される。当時J.Hは27歳。オリジナルは、 レッド・ミッチェルのベースと、カール・パーキンスのピアノによるドラムレスの トリオであり、現在入手可能なものも、これに準拠している。ところが、このアルバムは、過去に ラリー・バンカーのドラムスを、オーバー・ダブして "The Jim Hall Quartet"として流通していたことが あったらしい。この件に関して、J.Hは1996年のString jazz magazineでのChris Burden氏のインタビュウー に下の様に答えている。

CB--- On one of your early albums, "The Jim Hall Quartet", I think it was initially a trio album, was later dubbed with the addition of drums. Did you agree with this or have any say in the matter. Do you think it came out better with the drums or without and why?

JH--- I had nothing to say about that and I was really annoyed when I heard it I felt sorry for Larry Bunker, the drummer who was dubbed in. It wasn't Larry's fault but I think that the album was fine without drums. The explanation that Dick Bock from Pacific Jazz gave me was that he was trying to update the feeling of the record. I thought it was stupid and it's since been reissued as a trio. Another thing that happened with the quartet version was I think that some of Red Mitchell's solos were cut out or reduced. In any case, that was embarrassing to me and I did not like that at all.

 この、トリオ・フォーマットは既に既成のものと認められていた。タル・ファローやオスカー・ピーターソン もドラムレス・ギタープラスでやっている。室内楽的な良さと、当時のギター・アンプの性能の悪さ、 当然ベースは生音、そして演奏場所の広さなどの関係から、自然発生的に出てきたフォーマットではないかと、妄想する。

 ところで、JazzGuiter/Jim Hall Trioであるが、選曲をみてみると、J.Hのオリジナルはなし。Ellington のブルースナンバーThings Ain't What They Used To Be、C.Christianゆかりのナンバー、Stompin' At The Savoy、 Seven Come Eleven、その他スタンダード曲で構成されている。ちょっとスイングっぽく、アイドルのクリスチャン を意識しつつ、クールでオーバー・ドライヴしない品のいいスタイルが、提示されている。 この後Good Friday Blues: The MJT Plus Threeというアルバムが1960年に、同じトリオ・フォーマットでピアノがレッド・ケリー にかわって録音されているが、正式にはJ.H名義ではない。

 さて、時を経ること36年、J.H63歳の時に、初リーダー・アルバムと同じトリオ・フォーマットで 1993年に"Something Special"を発表します。ベースはステーヴ・ラスピナ、ピアノはラリー・ゴールディング です。選曲は、10曲中6曲がJ.Hのオリジナル、ステーヴ・ラスピナが1曲、ラリー・ゴールディングが1曲、 そして、驚く事なかれ、"Jazz Guiter"でも演奏していた"Deep In A Dream"という曲をSoloで演奏しています。 これは、偶然ではなく、間違いなくJ.Hの恣意によるものであると、ほぼ確信に近い妄想を抱いております。

 この、同じトリオ・フォーマットで36年の歳月を経て作られたアルバムに、初リダー・アルバムと 同じ曲を演奏することで、初心に戻るというか、仕切り直す、というか何らかの意識が働いていたのではと 感じています。それは、その後の、テラックでの労作に反映されているように、思います。一度J.Hに真偽 を確認取ってみたい様な気になってきました。

 "Steps"は、フリー・インプロビゼーションで後半ベースが高音でアルコしている中、J.Hが間違いなく 6弦を緩めながら撥音しているのが、確認できます。ホントニ・本当によくやる、いや頭が下がります。 "When Little Girls Play"は、ステーヴ・ラスピナのちょっとジャズらしからぬ曲ですが、J.Hはここで Jack In The Box(びっくり箱)を想起させるようなフレーズ(ソソミラソーミ・階名です。)を、使用し しかも、ハーモナイザーでクローズなヴォイッシング攻撃に転じ、びっくりさせていただきました。

 内容的に、手法的にも、歳月を経て表面的な変化はありますが、"Deep In A Dream"があることで 本質的には、変わってないんだょ、初リーダー・アルバムに通低しているんだょ、というメッセージなっているような気がします。温故知新、不易流行、君子豹変す!

 さて、"Something Special"の4年前に、Concordの契約終了作"All Across the City"を録音しています。 KeyboardのGil Goldsteinの効果が、非常に有効に成果を挙げています。肩から力がスポーンと抜けたような浮遊感があり、 全体として、よくまとまったアルバムであると思います。Ellingtonにトリビュートした"Prelude To A Kiss"、 NYの明け方をイメージした"All Across The City"(初出 Two Jims & Zoot/1964)、リハーモナイズによって 幻想的に仕上がった"Big Blues"、リメイクされた"Young One For Debra"、奥さんの名前そのものの、"Jane"等。

 ところで、このQuartet(Gt,Bs,Ds,Kb or Pf)編成のアルバムは、前出のWhere Would I Be (1971) と2枚しか、他に見当たりません。アルバムで、部分的にQuartet(Gt,Bs,Ds,Kb or Pf)編成になる場合は あっても、1枚のアルバムがこのフォーマットで仕上がっているのは、この2枚のみと思われます。 そして、このアルバムは、前出の"JH リーダーアルバム2,3作目"と、不思議に通低しているのではないかと 妄想しています。又、"All Across the City"では、新作が少なく、過去のリメイクであったり、集大成 的なまとまりがあり、眼差しが後方を向いており、"Something Special"は意欲的な新作があり、ややアグレッシブ、で前方 に眼差しがあるのと、対照的に思われます。

 実をいえば、小生はこのアルバムを聴いた時に、直感的に「あっ!これで終わりだな。」と、リタイア するに違いないと思ってしまいました。杞憂で済みましたが、何故か、このアルバムを聴くたびにその事、 を思い出します。これで、やる事は、全部出尽くしたのではないか?と思ってしまったのです。その後の活躍で、 嬉しい誤算である事がわかりましたが!

(2002,07,13.)