JIM HALL Maniacs

since 2001/12/01


Telarcの8枚 その1。

 2002年の時点で、J.HのアルバムはTelarcに8枚が発表されている。その最初の1枚が、

 Dedications & Inspirations /Jim Hall/Telarc 1994

である。"Something Special"と初リーダー・アルバム"Jazz Guiter"が、どこかで通低していると妄想 したが、”Dedications & Inspirations”は、”It's Nice To Be With You/Jim Hall In Berlin ”の 多重録音の部分に通低しているのではないか?と妄想している。何時だか書いてないが、Festival in Rio de Janeiroで、フュージョンをやっていた頃のChick Crea とニュー・エイジのPhillip Glass (ミニマル・ミュージック?)の間に、J.HのSoloのセットが演られ、数千人の聴衆を魅了したと 奥さんのJaneさんが述懐している。

 Jazz Standardの「Body And Soul」のコード・プログレッションにのっとってSoloとOver Dubが 入り混じる、Coleman Hawkinsに捧げられた「Hawk」。非調性部分と調性部分が不思議に交錯する アルゼンチンの友人たちに捧げられた「Canto Nostalgico」。Joao GilbertoやJobinやボサノバ を供与してもらったすべてのブラジルの人々に捧げた「Joao」。日本文化や哲学には、長い事魅了されているとJ.H、 日本の友人達に捧げられた「せせらぎ」、写真家の安部克自氏も入っているに違いない。 画家のミロ、モネ、マチスの絵画からインスパイァされた小品3曲、Free Improvisationか? Charlie Christianに捧げられたブルースの歴史と銘打った「Bluesography」。IntroとPart4に分かれ 段々複雑に変化してゆく、Part3にはCharlie Christianの「Grand Slam」のSoloが含まれている。 Ellingtonに捧げられた「In A Sentimental Mood」、Rollinsに捧げられた「Street Dance」。

 原盤のライナーには、J.H自身そして奥さんのJaneさん、解説は娘のDevraさんが執筆しており、 ”It's Nice To Be With You/Jim Hall In Berlin ”の時の様にJ.Hファミリーが集結しております。 しかもRecording Producersは、再発されない2枚のアルバムのキー・マンと思われるJohn Snyder氏が クレジットされています。じっくり腰を据えて何回も対峙してみてください、なかなか奥深い楽しみが 湧いてきますよ、サラッとイージーに聴くには不向きです。

 さて2枚目は、Bill Fresell、Gil Goldstein、Tom Harrell、Joe Lovano、Mike Sternの5人と セットの編成を変化させ、色んなヴァリエーションを提示した、

 Dialogues /Jim Hall/Telarc 1995

 ところで、J.Hはいつからジャズ・ギターの巨匠になったのかと、ふと考えてみました。小生の妄想では、 1990年の6月に開催されたJVCジャズ・フェステバルの司会・進行役パット・メセニーが、J.Hをステージに 呼び出す際に、「世界のジャズ・ギター・シーンを動かした人、彼のような素晴らしいギタリストがいなかったら 、いま果たして僕がギターを弾いていられるか疑問です。彼が数多くの素晴らしい演奏を残し、なおかつ、 今も僕たちの精神的支柱として活躍してくれています。ワン・アンド・オンリーの音楽家、ジム・ホール です。」と讃えてからではないかと思っています。

 J.Hは1990年より少し前から、New SchoolというところでJazz ensembleの教鞭に立ち、 それも含め後進の若いミュージシャン達との交流が始まりまったのではないかと思っています。 1980年の後半には、Bill Fresellとのセットや、パット・メセニーとのDuoが演られていたそうです。 1980年後半のアルバムだけでは、そこら辺の事情が充分に分からずに、少々煮詰り気味かなぁと思っていました。

 というわけで、Bill Fresellとのセットがここで初めて陽の目を見たのです。個人的には、はっきり いってBill Fresellは、他の諸作もチェックしたのですが、どうも好きくありません。このアルバムでは、Gil Goldstein との「Snowbound」が非ジャズ的ですが、雰囲気があって好きです。Tom Harrellとの「Skaylark」も美しい。

 3枚目は、全曲J.Hの作編曲になるアルバムで、同趣向のアルバムはいままでJ.Hにはなく新境地です。

 Textures /Jim Hall/Telarc 1997

 Devraさんによると、My Dadは世界中によく知られているJazz Guiteristで、あちこちのツアーにも 同行したし、レコーデングも同席してきた。But I never before realized that my dad is also a Composer だそうです。そして又も、いや失礼、Textures concept for this recording was my mother's ideaだそうです。 DevraさんのMy DadはJ.H、My MotherはJaneさんです。クリーブランド音楽学院で作曲を勉強して、ゆくゆくは 作曲もして音楽の教鞭を取ろうかいなと思っていたが、やっぱギタリストになるぞーとセドリックに乗って 西海岸に向かったのが、40年前。長い迂回路ではあったが、いずれも結果的に実現してしまったではありませんか!

 「Ragman」は、ストリングスも入って、少々エキゾチックなエキセントリックな曲。「Quadrologue」は 小編成の弦楽4重奏で、ギターのクロマチック・ラインから入る小品。「さざなみ」は、Steel drum をフューチャーしたカリプソ・ナンバー。日本の写真家安部克自氏に捧げられている。「Circus Dance」 は、サーカスを思い起こさせるジンタ風の少々ユーモラスな作品。全体的にJazzやAdlibを期待しても 無理がありますが、J.Hの独特の音世界は体現されていますよ!それにしてもTelarcはえらい!本当に偉い とこれをタイプしながら再認識しています。

 4枚目は、Village VanguardでのLive盤で、Guiter Trioに、Kenny Barron(Pf)、 Art Farmer(Flugelhorn)、Slide Hampton(Tb)、Geoff Keezer(Pf)、Greg Osby(As)が客演している。

 Panorama /Jim Hall/Telarc 1997

 J.HはVillage Vanguardに、深い思い入れがあるようだ、それはライナーの以下の言説によく表われている。
"The Vanguard has a sort of magic that no other club has ever had, The old Birdland had a reputation, but it didn't have the same wamth. And while some clubs only went for the 'money' acts, the Vanguard has always cared about art."

 また、Liveについては、
"Recording in a studio is an unnatural act, Music involves communicating with live people, so having an audience is a big help. You can only react spontaneously one time."

 ということで、Texturesの録音3ヶ月後に、Live at the Village Vanguardが録音されることになった。 Art Farmerの「Little Blues」が、観客から賞賛の反応が上がっている。Geoff Keezer、Greg Osbyらの 若手Outside系のプレイにも同居しているJ.Hの異能ぶり。日本の侘び寂びに通じる「フラジャイル・ビュウティ」 が感じられるKenny BarronとのDuo「Something To Wish For」。Concordの時とは、何かアルバム制作に対して 違うアプローチがしてあるような気がする。4枚のいずれのアルバムにもProducersにJohn Snyder氏がかんでいるからだろう。 蛇足ながら、いずれのライナーノーツもDevraさんです。そして意味深なタイトルのラスト・ナンバー 「Here comes Jane」。

(2002,08,17.)