JIM HALL Maniacs

since 2001/12/01


Telarcの8枚 その2。

 Telarcの8枚の内、5作目は、自作2曲以外Jazz Standardの編曲をやっている、

 By Arrangement/Jim Hall/Telarc 1998

 である。John Lewisの「Django」をPat Methenyと2Guiterで、Evansの「Waltsz for Debby」を The New York Voicesと、Monkの「Ruby My Dear」を、Deamondの「The Wind」を、そしてGolsonの 「Wisper Not」を編曲、ストリングスやブラス・セクションを伴って演奏している。なかでも、Art Farmerに捧げたと思われる自作「Art Song」は Tom harrellと、そしてもう1曲の自作「October Song」は非Jazz的でクラシカルな風合いのリリカル な仕上がりになっている。

 J.Hはライナーで音楽創作のポリシーについて"My Goal is always to have the music stay interesting---for me,for the lisners,and for the other players too."と語っている。その昔、J.Hの創造的進化主義について、小生と同年輩で既に鬼籍に入っている 地方のプロのギタリストと、議論になった事がある。自己の現状と柵を受け入れ、 その生き様がプレイに現れリスナーの同調を得られるのだ、目新しい事のみを追いかけスポイル されるのではなく、「100年のマンネリ」こそがいいのだ。以上のような論点から、J.Hは納得がいかない、 ときたから、小生も若かったのであろう咬みついてしまった。いまでは、その論点も理解できないではない、 そして決してJ.Hは進化主義だけでなく、ルーツをしっかり見定めた上での冒険をしており、 場合によっては、レトロ調に懐古することもあるのだが。「100年のマンネリ」こそがいいのだは 言い過ぎである。しかしながらその節は、大変失礼致しました。といっても 若くして急逝された故人に、この場でご冥福をお祈りするしかないのですが。閑話休題!

 ところで、By Arrangementの録音風景の映像を散りばめながら、J.Hの約半世紀の足跡を映像・インタヴュー ・セルフトーキングを織り交ぜながら作られたビデオが発売されている。

 A Life in Progress/rhapsody films 1999

 国内で発売される見通しは不明、よって字幕なしですが、ヒアリングができなくても充分楽しめます。 10代の頃の写真や(まだ禿げてないぞ!相当美男子です)、Chico Hamiltonのグループの映像(J.Hはレスポール を弾いている)、奥さんのJaneさん娘のDevraさん愛犬Djangoも出てきます。J.H.Mとしては、必見です。 「Django」をPat Methenyと2Guiterで録音している風景が最初と最後にフューチャーされています。 「October Song」のクラシカルな良さも、映像が伴えば更に味わい深いものになりますよ! その他、見所満載、ヒアリングの出来る方、BBSにレポートを提出下さい(笑)。百聞は一見にしかず!

 6枚目はうってかわって、Pat MethenyとのGuiter Duoです。

 Jim Hall&Pat Metheny/Telarc 1999

 スタジオ録音とライヴ録音によって構成され、曲によっては事前に編曲が施されている。Pat Metheny がProduceにかんでおり、どちらかというとP.Mよりのアルバムに仕上がっており、J.Hは横綱相撲に 徹しているのかなぁという感想を持っている。エスニック・フェーバーやフォークロアも含めた ギターミュージックで、非ジャズ的部分も多いがそれはそれとしてギター好きにはたまらないと思います。

 なかでも、3拍子でパフォーマンスされた「All The Things You Are」は、凄いぞ! J.Hの言説の中で、“listening is still the key.”というのがありまして、知己のドラマーで翻訳家の OKB氏によると、『聞くことがやっぱり大切だ』と訳してくれました。このパフォーマンスの中で、 聞く事の凄さが垣間見られています。リズム・チェンジ、フレーズ等の双方の交錯・感応の仕方が尋常ではなく、 素晴らしいパフォーマンスに仕上がっています。

 共通の友人Attila Zollerに捧げられたペンタ・トニック基調のZollerの曲「The Birds and the Bees」、 後半のフーガ部分が印象的なJ.Hの曲「Cold Spring」、Pat Methenyのピカソ・ギター(ハープ弦の張られた42弦ギター) が面白い効果をあげているMethenyの曲「Into the Dream」、Methenyのフレットレス・ギターとの 「Improvisation No.4」、そして最後に「All Across the City」。手を替え、品を替え色んな引き出し を開けてくれました。

 7枚目は、同郷クリーブランドのリード奏者Joe Lovanoとのクアルテットでのライヴ盤。

 Grand Slam/Jim Hall Joe Lovano George Mraz Lewis Nash/Telarc 2000

 このユニットで日本のクラブ・サーキットに来たのだが、見損なってしまった。残念! Joe Lovanoは、80年代後半からJohn Scofieldとの双頭ユニットをやっていて、Freeもこなす中堅 リード奏者。J.Hが4曲、Lovanoが3曲、オーネット・コールマンを匂わすテーマの「Chelsea Rendezous」、 リフ的なテーマの提示の後フリー・タイムになる「Border Crossing」、カリプソ・ナンバーの「Say Hello to Calypso」、エド・ブラックウエルの追悼の為に書かれたフリー・ジャズ・スタイルで始まる「Blaxkwell's Message」 、同一音形の反復とモアレ効果が印象的な「Feel Free」、アルバム全体的にアトーナル(無調)なフリー部分と トーナル(調性)部分の交錯が対照的で面白い効果をあげている。J.Hのユニットとしても、かってない グループ・カラーであり、まだまだ耄碌せずに創造的進化主義が健在です。

 そして、現在(2002/08)のところの近作が、5人のベーシストとのDuoもしくは2BassとのTrioでの

 Jim Hall&Basses/Telarc 2001

 です。Telarcさん偉い!そしてJ.Hの創作意欲に脱帽です。もう一度Telarcさん偉い!さてJazz Artist の大御所を見回してみてください。50年代から活躍していて、この10年にこういう展開で活躍している 人が他にいるでしょうか?大器晩成とはよく言ったものです。まだまだ、活躍してほしいものです。

 アルバムの方ですが、レトロな部分ととんがった部分が交錯していて、J.Hの音楽的手法の多様性が共存 しています。緊張と緩和、前衛と保守、相反するものの同居をそのまま体現しているわけです。Abstractと Jazz StandardとBluesは、J.Hの中では同一の地平にあるわけです。 取っ付き難い部分があるかもしれませんが、J.Hの約半世紀足跡の現在のところ結論でもあるのですから、 心して噛締めて見ようではありませんか?じっくり聴いてみてください、段々味わいが出て来る筈です。

 ところで、1998年にDave HollandとDuoで日本もクラブ・サーキットにきましたが、ワン・ナイト・パフォーマンス であった為に2セットとも見てしまいました。名前は、聞かなかったのですが、やはり1セット目からの居残りでBar で2セット目を待っていた若い方と話すことがありました。「いいものはいいですよね!」と、確か別の日の別の場所 でのパフォーマンスも見たうえで、その場所にも追っかけてきた様子でした。上には上がいるものだわい と思いましたが、なんだか嬉しくなったことを覚えています。J.H.Mは、あちこちに隠れているらしい。

(2002,08,24.)