JIM HALL Maniacs

since 2001/12/01


80年代のTrio他。

 1975年の「Concieto」が、ブレークしてそのほとぼりが醒め、J.Hは1981年よりConcordと契約する事になる。

 Circles /Jim Hall /Concord 1981

 その第一作目がJ.Hが51歳の時、ギター・ベース・ドラムスのトリオ・フォーマットの「Circles」である。 アルバムで部分的にギター・ベース・ドラムスのトリオ・フォーマットになる事はあっても、 基本的にこのフォーマットでアルバムが制作されているものは、数えてみると思いのほか案外少ない。

 It's Nice to Be with You (1969)、Jim Hall/Live! (1975)、Live in Tokyo (1976) Jazz Impressinos of Japan (1976)、Circles (1981)、Jim Hall's Three (1986) の6枚のみである。そして、時期的なこともあるのであろうが、内4枚がDon Thompson(b)Terry Clarke(ds) のサポートである。日常のギグやクラブでのこのトリオ・フォーマットは多数演っているのであろうが、 アルバム・コンセプトとしてここ10数年採用されていない事になる。

 このトリオ・フォーマットのCircles (1981)、Jim Hall's Three (1986)を、じっくり聴き返してみると 完成度が究極のところまで行き着いているように思える。必要最小限の無駄のない音、ミニマルでスマートで クールなのだが温かい。実は、小生この当時暫くJazzを聴く事から遠ざかっていた。70年代のJ.Hから見ると少々、後退 している様に思え、もっとアグレッシブなものを要求していたので、物足りなくて食傷気味になってしまったの かもしれない。この当時のConcordのオーソドックスなJazzというアルバム制作ポリシーもあったのかもしれない。 それでも、地味ではあるがミニマルな音の中にコンテンポラリーな要素が入り込んできており、50年代 60年代では考えられないようなフレーズやサウンドが採用されている。

 Don Thompsonがピアノを弾き、カルテットで1曲目が始まり、全体の流れが単調にならない様にストーリー性にも 充分配慮がなされている。これは、Liveなどの曲順や構成などにも単調にならない配慮をするJ.Hの特性とも 言える物で、ラフでアバウトだがゴリゴリと押してくるインプロバイザーとの相違でもある。 ラフでアバウトだがゴリゴリと押してくるインプロバイザーが駄目だとか、嫌いであると言う事ではないので 誤解のないように!アルバム・タイトルの「Circles」は、J.HとDon ThompsonのピアノのDuoで「フラジャイル・ビューティ」 にあふれた、リリカルな好曲です。「Love Letter」「I can't Get Started」にみるこのトリオ・フォーマット でのJ.H流スタンダード解釈は、他のギタリストには真似の出来ないワン・アンド・オンリーの境地であると妄想する。

 Concordのもう一枚のギター・ベース・ドラムスによるトリオのアルバムが、

 Jim Hall's Three /Concord /1986

 リズム隊は、Steve Laspina(b)Akira Tana(ds)に変わっている。「Hide And Seek」(かくれんぼ) というJ.H作のSteve Laspinaをフューチャーしたリズミックな曲から入り、やはりアルバムのストーリー性 に充分配慮されたつくりになっている。「Skylark」「All The Things You Are」のJ.H流スタンダード解釈も ちゃんと配列されている。J.Hのギター・トリオでのスタンダードは、ほんとにワン・アンド・オンリー だよなぁとつくづく感心するのだが、アルバム全部がこれで埋め尽くされていたら如何なんだろう?と思って 自作コンピレーションを作ったことがあるのだが、失敗でありました。色んな引き出しが在って、適度な 配列になっていた方が単調にならないと言う事を、当然ながらご存知熟知されているのです。

 「Bottlenose Blues」では、12弦ギターのソロ・パフォーマンスを披露しています。12弦ギターは その後出てこないのだが、どうなったのでありましょうか?90年代のハーモナイザーの使用は、12弦ギター の使用で思い立ったのかもしれないと少しだけ妄想しました。不思議なコード・ワークとサウンドが提示されています。 Bottlenoseとは、イルカのこと、どこかの環境団体と接触でもあったのでしょうか?何故イルカなのでしょう? 本人に聞いてみないとわかりません。「Poor Butterfly」はSoloで、非常に美しい。

 All Across the City (1989)がConcordの最後のアルバムになるが、80年代にConcord以外にもリーダー録音をしている。

  These Rooms /Jim Hall Trio featuring Tom Harrell /Denon /1988

 J.Hは58歳、録音地は日本で、音質はすこぶる良い。音質が良すぎて、最初少し冷ややかな印象を持ってしまい、 取っ付き難い耽美的なイメージを持ってしまった。CD時代に入り、1曲の時間に制約がなくなった事から、 1曲1曲が長尺になり、曲数も多くなった。LP時代のA,B面2分割、合計40分程度という制約が取っ払われて 1面70分になった。LP時代からのリスナーは、一長一短を感じていると思う。LP時代のA,B面2分割、片面が20分程度という制約は、 ある意味で、聴く側の集中力と、演奏者側の演奏の濃縮具合との丁度いい塩梅だったかもしれない。 反対に時間の制約が取れたミュージシャン側は、Liveに近いパフォーマンスが可能になったと思う。

 「Bimini」は、Power Of Three (1986)でも演られていたカリプソ・ナンバー、途中でJ.Hが裸(無伴奏)に なり、尋常でないコード・ワークを披露する。「All Too Soon」は、Soloでのパフォーマンス。「Darn That Dream」 は、Steve Laspina(b)とのDuo、「My Funny Valentine」はTom Harrell抜きのギター・トリオでの演奏。 カウント・ベイシー楽団のリズム・ギターフレディ・グリーンに捧げたJ.Hの「Where Or When」、 Tom Harrellの「From Now On」。Art Farmerとの双頭バンドと同じ楽器構成であるが、60年代と80年代との 時代の差があるのか、もしくはJ.Hの引き出しの数が増えたからか、受けるサウンドのイメージが相当 違うと思う。聴き比べて見て下さい。

 1990年6月JVC Jazz Jazz Festivalで「The Jim Hall Invitational」という企画が、催された。

 Jim Hall And Friends Live At Town Hall /Music Master /1990

 その時のLive録音がこの2枚組アルバムである。その辺の流れについては、前出であるので省略する。 1枚目には、Ron Carter、Bob Brookmeyer、Gerry MuliganとのそれぞれDuoパフォーマンスが2曲ずつ 収録されている。また、Don Thompsonがピアノを弾き弦楽器のアレンジをやっている曲等が収録されている。 パット・メセニーとのDuoもあったらしいが、レコード会社の契約の関係で収録されていない。

 2枚目は、Gil Goldstein,Peter Bernstein,John Scofield,Mick Goodrick,John Abercrombie,Gary Burton が参集して、様様なセットと「Careful」の大合奏となっている。80年代後半から、J.HはNew Schoolで Jazz Ansembleの講義を持つことになる。その時の生徒に、Peter Bernstein,Larry Goldings,井上智らがいる。 Bill FrezelとのDuoやPat MethenyとのDuoも80年代後半に実現されていた。世代交代と若手らとの接触に よってConcordで完成形まで行き着いた先を、見据えようとしていた時期であったのであろう、「The Jim Hall Invitational」 が開催された頃が。

 Concordの契約切れと、「The Jim Hall Invitational」の録音・発売をMusic Masterが請け負った事で、 Music Masterの2作目が出た。

 Subsequently /Jim Hall /Music Master /1990

 内容的には、レトロな部分と先鋭的な部分が交錯した、アルバムとしてのストーリー性は少々欠けている のだが、何か模索中だよ!という部分が感じられて、好感の持てるアルバムです。ステレオタイプに陥らない、 実験的な事を試みる、「創造的進化主義」が還暦になっても健在している、素晴らしい事ですよ。

 この録音時、Larry Goldings(p,Hammond)は弱冠23歳です。ハーモナイザーを使用した、 どちらかと言えばPop Tuneに近いタイトル曲の「Subsequently」、Concordであれば自己規制して 収録しないであろう不思議なエキセントリックな非ジャズ曲「Pancho」、Toots Thielemansとの レトロなスイング風の「Waltz for Sonny」「More Than You Know」、古いスタンダードが J.H流スタンダード解釈で息を吹き返す「I'm In The Mood For Love」。

 この後、Music Masterの3作目、初リーダー・アルバムと同じトリオ・フォーマットで 「Something Special」 (1993)を録音、創作意欲を満々にして、Telarcでの8枚へと続くのであります。 それにしても、このアルバムの「I'm In The Mood For Love」が大好きなのであります。 1992年9月(With Larry Goldings,Terry Clerk,Scot Coly?) の来日の時のクラブ・サーキットでも 演っていました。又、来日しないかなぁ!

(2002,10,06.)