JIM HALL Maniacs

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「Careful」の足跡。

 J.Hの作曲した曲に「Careful」というのがある。Jimmy Giuffre 3に在籍中に作った曲で、 初出は「The Easy Way」(Verve 1959)というアルバムです。ところが、このアルバムは、現在入手不能で チェックできないと思っていたら、

・Jimmy Giuffre with Jim Hall trio&Quartet/Giants of Jazz/1995

というコンピレーション・アルバムに入っていた。このアルバムは、The Jimmy Giuffre 3 / Atlantic / 1956 から9曲全曲と、他のアルバムからのa single reed instrument, one guiter and one double bassのフォーメーションの コンピレーションである。「Careful」は、Jimmy GiuffreとRay BrownとJ.Hとでパフォーマンスされている。

 前にも紹介しましたが、「Careful」という曲はdouble-diminished scaleに基づいたちょっとエキセントリックな曲です。 トニック4小節、サブドミナント4小節、トニック4小節、ドミナント2小節、トニック2小節の合計16小節の曲で、 12小節のブルースに似ていて、間違わないように"Careful"というタイトルにしたそうです。 "Soft Winds"という曲をご存知の方は、"Soft Winds"のコード進行のコード・スケールを double-diminished scale にしたものという把握の仕方もあります。

 double-diminished scaleは、非常にメカニカルなスケールで、幾何学的な構造を持っているのですが、 一部ブルーノート・スケールとも共通音を有する事から、その構造をうまく工夫してアドリブ・ライン を作れば、面白い仕上がりになるのです。少々インテレクチュアルなアタックをしないと、メカニカル・ フレーズやスケールしか紡ぎ出せない難曲ともいえます。

 この「The Easy Way」ヴァージョンで、この難曲の構造を理解して一番上手にアドリブをやっているのが Ray Brownだと思うのですが、如何でしょう?J.Hは作曲者であるのですが、曲を素材としてまだ充分に 展開できていないような気がします。

 次に、「Careful」が出没するのがヴァイブ奏者のゲーリー・バートンの「Something's Coming」(1963・RCA) というJ.Hが参加したアルバムなのですが、現在入手不能、1992年にフランスで再発CD化されたらしいのだが! 情報をお持ちの方、連絡いただければ幸甚に思います。

 1967年11月5日にベルリン・ジャズ・フェステヴァルのスペシャル・プログラムとして、「ギター・ワーク・ ショップ」が催行された。

・Berlin Festival Guiter workshop/MPS/1967

 この時のライヴ音源が上のアルバムで、J.HはSteve Swallow(b)とBobby Moses(ds)とのTrioで「Careful」 をパフォーマンスしている。「Something's Coming」をチェックしていないので、「The Easy Way」ヴァージョン から8年経っているのだが、較べてみると変化が顕著である。リズムの乗り方、フレージング、50年代と 60年代の時代背景の違いや、奏法、方法上の変化が感じられる。このパフォーマンスが、気に入られ翌年の セカンド・リーダー・アルバムがMPSから発売される事になる。

 その次に、出現するのが「Where Would I Be?/Jim Hall」(Milestone 1971)で、 Airto Moreiraのパーカッションで、エスニックでエキセントリックな仕上がりになっている。 うーん、なかなか良くなってきたぞ!

 1975年の"Concieto"のブレークの後、1976年にJ.Hは来日している。

・Jazz Impressions of Japan/Jim Hall/King/1976

 この来日の際、上のアルバムを録音、Don Thompson(b)とTerry Clarke(ds)のTrioで 「Careful」が又、出現してきた。もう、こっちのもんです。「Careful」は、成熟してしまった。

 このアルバムは、当初ダイレクト・カッテイング盤「無言歌」として、「Careful」を含む3曲は LP制作の制約上発表されていなかった。「Careful」を含む完全版は、1980年の来日の時に初めて 公開されたと言うことである。最近「無言歌」と「Live in Tokyo」がTwo in ferで発売されているが、 「Jazz Impressions of Japan」の全曲はカバーされていない。どーいうことなのかよく理解できない。

 さて左のアルバムは、

・Times Square/Gary Burton/ECM/1978

です。J.Hは参加しておらず、Steve Swallow(eb)、Roy Haynes(ds)、そしてタイガー大越(tp) のカルテットです。なんで、ここに紹介してあるかというと、J.Hの「Careful」をカバーしているからなのです。 Gary BurtonがJ.Hと「Something's Coming」で「Careful」の共演をしてから15年経過、 一体いかなる理由があってここで取り上げたんだろう。本人に聞いてみないと分からない。 小生の妄想によると、1975年の"Concieto"のブレークで、おおそうだった!デビュウー仕立ての頃 J.Hと一緒にやっていたではないか、「Careful」というエキセントリックな曲を提供してもらっていたなぁ! そうだ、「Careful」をカバーしよう!てなことではなかろうか?

 さて、この後、「Careful」は”PianoとのDuoコラボレーション”で紹介しているように、 George ShearingとのDuo(1981)、Michel PetruccianiとのDuo(1986)でインター・アクションにより 更に過激・爛熟する。最終的に、1990年6月JVC Jazz Jazz FestivalのGary Burton を含む 若手・中堅ギタリストらとの大合奏になっている。その後、録音はされてないのだが、来日時のLive でも「Careful」をお披露目している。J.Hのある意味でKeyとなる曲であります。 1959、1963、1967、1971、1976、1981、1986、1990にスタジオ録音やLiveでほぼ4〜5年周期で 登場しているのである。

 Gary Burtonは、自己のグループに好んでギタリストを起用する。その初期のギタリストがJ.Hであった 訳です。(初代は、カントリー・ギターのハンク・ガーランド)。ぜひとも、「Something's Coming」をチェックしてみたいのですが、暫く待ってみよう。

・Gary Burton & Friends/Six Pack/GRP/1992

 Gary Burtonが1992年に同窓会的に作ったアルバムがある。このアルバムにJ.Hが3曲客演している。 初期のギタリストということでのオファーなのだろうか?J.Hはコーラスを少々深めにかけてライトな 演奏を披露している。ちなみに、他のセットのメンバーは、B.Bキング、ジョン・スコフィールド、 ラルフ・タウナー、ケビン・ユーバンクス、カート・ローゼンウィックルがギター、マルグュルー・ミラー、 デジョネット、ボブ・バーグらである。アルバム自体は、ショウ・ケース的で少々散漫です。 まあ、「Careful」の足跡をたどっていると、いつのまにかGary BurtonとJ.Hの赤い糸が見えてきた みたいですね!

(2002,12,21.)