JIM HALL Maniacs

since 2001/12/01


アバンギャルドなJ.H。

 J.Hのアバンギャルドな部分は、90年代になって少しづつ披露されていますが、実はもっと ずーっと前から根の部分は散見されていました。

・JAZZ ABSTRACTIONS/Conposed by Gunther Schuller & Jim Hall/1960/Atlantic
 John Lewis presents contemporary music

 このアルバムは、John Lewisが音楽監督をつとめたジャズとクラシックの融合を試みた「サード・ ストリーム・ミュージック」であります。21世紀の前半は、クラシック音楽では、実験的な作業を あれこれ模索していました。十二音セリー、偶然性の音楽(チャンス・オペレーション)、ミュージック ・コンクレート、図形楽譜の採用等々。John Lewisはこういったクラシック音楽に対して、並々ならぬ 感心を寄せていたと思われます。本人は、ロマン派やバロック的な題材しか取り扱わないのですけど。

 さて、このアルバムですが、1曲目のGunther Schullerの十二音セリー的な手法を取り入れ、 オーネット・コールマンとスコット・ラファロを含むツー・ベースとストリング・カルテットの 「Abstraction」をやり過ごしてしまえば、現在の耳にはさほどアバンギャルドではありません。

 2曲目の「Piece for Guitar & Strings」は、マイナー基調のJ.Hの作曲になる小品。J.Hとスコット・ラファロ 、ストリング・カルテットでのパフォーマンスで、Textures /Jim Hall/Telarc 1997やBy Arrangement/Jim Hall/Telarc 1998 の中に紛れ込んでいたとしても遜色のない出来上がりです。3曲目の「Variants on a Theme of John Lewis (Django)」4曲目の「Variants on a Theme of Thelonious Monk(Criss-Cross)」はGunther Schullerの アレンジ。3曲目では、J.Hとドルフィーのフルート、エディ・コスタのヴィブラホンがフューチャー されています。By ArrangementのDjangoは、この時のJohn Lewisへのお返しではないかと妄想しました。 Quincy JonesのGolden Boy/Mercury/1964でもストリングセッション付きのDjangoを、J.Hをフューチャー してやっていますが。

 4曲目の後半部分で、J.Hが登場、ドルフィーのフルート、エディ・コスタのヴィブラホン、オーネット のアルト・サックスと絡みます。ピアノは、ビル・エバンス、モンク風のバッキングをしています。 メロウでライトでミニマルなJ.Hが好きという方には、あまりお薦めは出来ませんが、面白そうでは ないかという方、是非探してみてください。

 リー・コニッツというアーチストは、レトロな部分もあるのですが、時としてラジカルでアバンギャルド な部分が共存していて大変興味深い人であります。

 The Lee Konits Duets/Lee Konits/1967/Milestone

 上のアルバムは、リー・コニッツの発案で、数人の異なったミュージシャンとデュエットを試みる というフォーマットで作られたものである。デュエットの相手は、Elbin Jones(Ds)、Karl Berger(Vib)、 Eddie Gomez(B)、Dick Kats(P)、Jim Hall(Gt)、Richie Kamuca(Ts)、Ray Nance(Vln)、Marshall Brown(V-tb)、 Joe Henderson(Ts)の9名、2曲ほどカルテットやアンサンブルの演奏が収録されている。

 さて、このアルバムでJ.Hはクリーブランド音楽学院で同級であったドナルド・アーブの名前にちなんだ 曲「ERB」を提供して、コニッツとデュエットのパフォーマンスをしている。Gunther Schullerの ライナー・ノーツには、”a graph containing instructions as to dynamics and range”に基ずく フリー・インプロビゼーションであると記載してある。これは、クラシックの現代音楽の図形楽譜 によるパフォーマンスであると考えられる。強弱と音の範囲が図形的に記載されたものを基に、 リアルタイムに即興されたもので、どうしても無調的な浮遊感のある仕上がりになっている。

 アルバム自体は、はっきりいって辛気臭いです。聴き手を意識した創りではなく、むしろミュージシャン 同士が創造の楽しみで創った感がぬぐえません。但し、人間には多面性があります。J.Hのトータルな 理解の一助になればどうでしょうか?間違いなく、J.Hには、シリアスでラジカルでアバンギャルドな 部分が、柔和で温厚な相好の内に潜んでいることをお忘れなく!

 さて、実はオーネット・コールマンのアルバムにもJ.Hが参加しています。

 The Complete Science Fiction Sessions/Ornette Coleman/1972/Columbia

 上のアルバムは、「Science Fiction/1971」「Broken Shadows/1971−1972」の2CD in Oneの お徳用版でありまして、J.Hは後者の中で2曲、Webster Armstrong(Vo)、Cedar Walton(P) らと客演しています。この2曲の中に、J.Hが参加している意味と必然性がはっきりいってあまり 感じられない。Ornette Colemanとのコラボレーションなど毛頭ない。Ornette Colemanからの オファーだったのか?不明。Columbiaのギャラが良かったのか?謎です。まあ、Ornette Colemanとは、 J.Hの方が上記のJAZZ ABSTRACTIONSを含めて パット・メセニーよりも先にギグをこなしていたと頭に入れて置いてください。

 Ornette Colemanについては、賛否両論あり、決して万人向けという訳ではありませんが、 小生は嫌いではありません。1959年にぽっと出てきたOrnette Colemanは、レナード・バーンスタイン、 ガンサー・シュラー、ジョン・ルイスらの識者から絶賛され、その後のフリー・ジャズの火付け役 の如く扱われています。確かに、従来のジャズから逸脱した方法論を提示したのですが、 よく聴いてみると意外にブルース・フィーリングとエモーションに富んでいて、形式主義、様式主義 に陥って閉塞状況にあったJazzの賦活剤になったのではないかと思っています。 ところで、Broken Shadowsの2曲の録音日は9月8日、Ron Carterとの「Alone Together」の録音日は 8月4日、まだまだしのぎを削るのが大変だったのではと妄想してしまいました。

 さて、こんなところにも、J.Hが登場しています。

 ・That's Right/Nat Adderley and the Big Sax Section/1960/Riverside

 アルバムは、ハード・バップ基調でJulian "Cannonball"Adderley(as)、Yusef Lateef(ts,fl,ob)、 Jimmy Heath,Charlie Rouse(ts)、Tate Houston(bs)の5人のサックス・セクションがサポートする 気楽に楽しめる内容です。J.Hは、3曲に参加、2曲で少しだけ登場します。3曲以外はLes Spann(gt)。

 リズム隊は、Winton Kelly(p)、Sam Jones(b)、Jimmy Cobb(ds)です。Winton KellyとJ.Hが 一緒に演ったアルバムがあったなんて!

(2003.2.9)