JIM HALL Maniacs

since 2001/12/01


John LewisとJ.H。

 J.Hの1950年代は、Chico HamiltonやJimmy Giuffreのグループに在籍して、その後の基礎を 培ったのですが、もう一人J.HにとってキーマンとなるJohn Lewisという存在がいたのです。

・The John Lewis Piano/John Lewis/Atlantic/1956-1957

 "Chico HamiltonとJ.H。"の処で、「Grand Encounter/1956」のアルバムが創られた経緯について 言及しておいた。この時に、J.Hに対して好印象を持ったのであろう。 そのすぐ後、John Lewisのリーダー・アルバムに、J.Hが1曲であるが参加している。 「Two Lyric Pieces :a)Pierrot :b)Colombine」という多少クラシカルなニュアンスのある 小品で、なんとPianoとGuitarのDuo、変態的編成でのパフォーマンスである。"はじめに・年表"の処で Undercurrent (1962)のことを「Piano /GuiterのDuoのレコード発売はJazz史初めて?」と書いてしまったが 「アルバム全体がPiano /GuiterのDuoのレコード発売はJazz史初めて?」と訂正しておくべきであろう。 このアルバムには、他にもBarry Galbraith(g)とLewisのDuoが3曲(この3曲がなかなか良いです。)、Connie Kay(ds)とLewisのDuoが1曲 収められている。落ち着いていて、控えめで、少々エキセントリックなアルバムである。

 John Lewisは、1920年生まれ、J.Hより10歳年上である。MJQの実質的リーダーとして1952年から1974年 迄、グループを牽引してきた。惜しくも、2001年3月鬼籍に入られた。このアルバムのピアノとギターのDuoの発案は John Lewisであったのであろう。この時のJ.Hの経験が、1962年のUndercurrentを生み出したのではないかと 妄想する今日この頃である。1962年Bill EvansはRiversideに専属しており、J.Hは他の仕事の絡みもあり United Artistsからアルバムを作らないかと提案されたのではないか?それでは、Bill EvansとのDuo にしようてな具合ではないか?真相は如何!

 J.HがJimmy Giuffre 3に在籍中に、MJQと合体した演奏がある。

・Third Stream Music/The Modern Jazz Quartet&Guest/World Pacific/1957

 JazzとClassicが合体した音楽を、Third Stream Musicと言う。ところが、英文の定義によれば、 「a music that is neither jazz nor classical」となっており、JazzでもなくClassicでもない音楽 ということである。結果的には、同じ事ではないかと思われるが、微妙に違うのかもしれない、そうでないかもしれない。 1960年前後には、そういったムーブメントがあった、Gunther Schuller、George Russell、John Lewis らの一部の作品がそうであるそうだ。

 このアルバムに、Jimmy Giuffre 3の初代メンバー(Jimmy Giuffre、Jim Hall、Ralph Pena)プラス MJQ(Milt Jackson、John Lewis、Percy Heath、Connie Kay)が合体し2曲を演奏したトラックがある。 Jimmy GiuffreのFolk Jazz的な部分と、Milt Jacksonのブルージーな部分が「一粒で2度おいしい」 的なつくりになっていて、なかなか風変わりで面白い。

 Jimmy Giuffre 3は、ツアーでNYに行く事もあり、John LewisはJ.Hに「NYに滞在している時は、 僕のアパートに居候してもかまわないからね。」という親交があったらしい。「やっぱ、Jazzをやるなら NYに来なくっちゃ。」と、1960年にJ.HがN.Yに居を構える事を決意したのも、John Lewisの提案であったらしい。 音楽的な方法論の共感や、各々の人間性を認め合い、そこには白人や黒人と言った垣根などない友情が あったのではないかと妄想する。1959年にJohn Lewisを主体に、Jazzのセミナーが開催された。 その中に、J.HやBill Evansも教鞭をとったと「ジャズ・ギターの探検」に述懐してあった。 John Lewisは、J.Hを信頼に値する人物であると認め、色んな形でプッシュ、サポートしたに違いない。

 J.HがNYに居を移した後か先かは、不明であるが、1960年6月と9月に録音されたJohn Lewisのリーダー・ アルバムにJ.Hがフューチャーされている。

・Wonderful World of Jazz/John Lewis/Atlantic/1960

 このアルバムの1曲目、ミディアム・スローの「Body and Soul」(15分24秒)の中で、J.Hは テナー・サックスのPaul Gonsalvesの後で、2コーラスのアドリブを披露する。アナログ盤の片面は ほぼ20分、そのうち15分強を「Body and Soul」にあてがっているのである。しかも、John Lewis は、イントロとバッキングのみで、アドリブがないのだ。何たる奥ゆかしさ!John Lewisのこの 人間性は、J.Hの奥ゆかしさの上をいっているのではないか?

 アナログ盤のB面の頭にくる曲が、「Two degrees East,Three degrees West」で、ここでは J.Hを含むカルテットの演奏である。このアルバム全体にJ.Hがよくフューチャーされている。 又、J.Hも何故かリラックスして気取りがなくノビノビと演奏している様に思えてならない。 J.HがNYに居を移転する事に対する、John Lewisのセリブレーションでは、ないかと妄想する。 お薦めですよ!

 1962年ボサノバがUSで流行し出したとき、多忙なJ.Hを引っ張り出して、John Lewisはアルバムを制作する。

・Essence/John Lewis & Gary McFarland/Atlantic/1962

 すべてJohn Lewisの作曲、Gary McFarlandの編曲の中編成のオーケストラで、J.Hは3曲に参加している。 ここでも、J.Hは多目のソロ・スペースを与えられている。「Tillamook Two」は、アドリブになると 12小節のブルース形式の曲でインター・ルードと4コーラスのアドリブを割り付けられている。 ヴィヴィッドでややアグレッシブでノビノビとアドリブを楽しんでいる様子が伝わってくる。 「Night Float」では、ミディアム・ファーストの曲を、快調に突き進んでいくJ.Hが楽しめます。 中編成のオーケストラの中でJ.Hの長めのソロ・スペースがあって、なかなかお薦めですよ。

 ところで、左のアルバムの写真はEric Dolphyなのです。エッなんで?ここにもJ.Hが絡んでいるのです。

・Vintage Dolphy/Eric Dolphy/GM/1963(J.H参加のトラック)

 "アバンギャルドなJ.H。"のなかで、JAZZ ABSTRACTIONS/Atlantic/1960というアルバムの中で Eric DolphyとJ.Hが一緒のトラックで共演している事を紹介していましたが、実は、上記の2枚のアルバム (Wonderful World of JazzとEssence)にもDolphyが参加しており、共演しています。 Eric Dolphyも、John Lewisの御贔屓ミュージシャンであるのです。 ここで、J.Hは「Abstraction」(1963,03,14 Live in Carnegie Hall)と、「Donna Lee」 (1963,04,18 Live in Carnegie Hall)に参加しています。「Abstraction」はGunther Schullerの 作曲の十二音セリーに基づいた現代音楽、1960年のスタジオ録音の時は、オーネット・コールマン がパフォーマンスしていた部分をEric Dolphyがカーネギー・ホールでLiveでやっているものです。 「Donna Lee」は、パーカーの曲、こちらもカーネギー・ホールでのLive録音、J.Hもアドリブを 取っています。興味のある方、自己責任でどうぞ!

(2003.3.23)