JIM HALL Maniacs

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「Concierto」。

 Jim Hallの出世作、そして現在でもロングセラーであるアルバムが、

・CONCIERTO/Jim Hall/CTI/1975

です。スペインの盲目の作曲家のホアキン・ロドリーゴが1939年に作曲した、 ギターと管弦楽のための協奏曲「アランフェス協奏曲」を目玉としてCTI路線で制作されたアルバムであります。 この時、Jim Hall御歳44歳です。インプロヴァイザーとして脂の乗りきった時期の録音で Creed Taylorの企画、Rudy Van Gelderの録音技術と相俟って世界的にブレークし、 JHの名前を一躍ポピュラーなものにした記念碑的名盤であると思います。

 「アランフェス協奏曲」は、Miles Davis/Gil Evansのコラボレーションで「Sketches of Spain」(CBS 1959) が既に上梓されていた訳ですが、JH盤はDon SebeskyのアレンジでよりポピュラーにRock寄りの味付け になっています。一般的には「アランフェス協奏曲」に焦点があったと思うのだが、A面の3曲出来栄えの 素晴らしさでJHに入門され、JHMになられた方も多いのではないかと思われます。 Ron CarterとSteve Gadd(発売当時ミスマッチかジャストマッチかの議論があったように記憶する。)の 醸し出す不思議なビート感、Chet Baker、Paul Desmondの好演による「You'd Be So Nice to Come Home To」は ヴィヴィッドでアグレッシブでいながらクールで気品が漂っているトラックであると思います。

 発売当初は、A面が「You'd Be So Nice to Come Home To」「Two's Blues」「The Answer Is Yes」の3曲、 B面が「Concierto de Aranjuez」の計4曲であった訳ですが、1990年のCD化の際に「The Answer Is Yes」の Alternate takeと未発表曲のEllingtonの「Rock Skippin'」が付加されます。「Rock Skippin'」は、なかなかユーモラスな かわいい曲で「もーかったわい」と思っていたら、1997年のCD化の時に更に未発表曲「Unfinished Business」 と「You'd Be So Nice to Come Home To」(Alternate take)が付加され暫く購入を見合わせていましたが、 結局買う羽目になりました。(泣) この「Unfinished Business」という曲は、「Jim Hall and Red Mitchell」 の中の「Blue Dove」という曲と同一曲なのですね!両方お手持ちの方聴いてみて下さい。ね!そうでしょ!

 ところで、「You'd Be So Nice to Come Home To」のRon CarterのアドリヴからJHがシンコペ気味に 絡んで帰りテーマに戻るところを一寸注意して聴き返してみてください。何か可笑しいと思いませんか? 実はJHが、2拍遅れでテーマに戻ってRon Carterが帳尻を合わせています。「Late Lament/Paul Desmond」 (RCA・1987)というコンピレーションのアルバムのブックレットの中で、Will Thornburyのインタビューに JHが次のように述懐しています。

 「僕たちはアランフェス協奏曲というアルバムを一緒に録ったんだけれど、1曲で、拍がずれてるんじゃ ないかと思われる疑問箇所があって、それをチェックするので、家へテープを持って帰ってスピード を遅くして聴いたところが、ポールがまるでレスター・ヤングなんだ。それを本人に言ったら、 驚喜してたけども。」だって。採用テイクは、拍ズレがあってもそれを由として踏み切った確信犯なのか、 後から判明した事なのか、一回本人に聞いてみたいもんです。Alternate takeよりも採用テイクの方が 拍ズレがあっても、やっぱ出来がいいみたいです。(笑)

 「柳の下に泥鰌が二匹」と言う訳でもありますまいが

・Concerto de Aranjuez/Jim Hall with David Matthews Orchestra/KING/1981

 実は、このアルバムを購入するのに随分躊躇した。発売当時、諸般事情があってJazzとは無縁の 生活をしていたのだが、サイトを立ち上げてアルバムの存在を承知した後でも、なんとも胡散臭くて、 入手可能であるにもかかわらず手が出なかった。小生の手持ちは、1992年の Evidence盤なのですが、オリジナルの企画は、日本みたいです。「Red Dragon Fly」(赤とんぼ・山田耕作) が入っていたり、「El Condor Pasa」(コンドルは飛んでゆく)が入っていたり……。

 ところが、聴いてみるとなかなか良いではないですか!特に「Concerto de Aranjuez」の ダキストの生ギターがCTI盤とは違う味わいがあって宜しいです、ハイ!。とはいっても ベースがエレベであったり、音全体がソリッドで堅めに仕上がっているのは何だかなぁ!とは思っていますが。 それに、ジャケ写をよく見ると、トーンはブルーで一緒なのですが、如何見ても髭剃りにしか見えないのですが、どういった関係が あるんじゃろと不思議に思ってしまいます。最近奥の細道に嵌って、出番の少ないのやら、クレジット されていてもほとんど出てこないものやらを聴いていたので、一服の清涼剤になりました。

 「Concerto de Aranjuez」は、同一アーチストの録音は最低5年、間をあけるというような縛りが あるそうで、解禁してすぐの制作だったのでしょう。「Live in Tokyo」にも発売当時は 「Concerto de Aranjuez」はカップリングされておりませんでしたが、その後完全版ということで 収録された経緯がありました。

 こちらは、本家本元CTIの「柳の下に泥鰌が二匹」。

・Studio Trieste/Chet Baker,Jim Hall,Hubert Laws/CTI/1982

 Creed Taylorの企画、Rudy Van Gelderの録音技術、Don Sebeskyのアレンジで Chet Baker、Jim Hall、そしてPaul Desmondと連ねたかったのですが5年前に逝去されてましたので Hubert Laws、Steve Gadd。収録曲は「白鳥の湖」「マラゲーニャ」といったクラシック素材の Jazz版と、ジャズ・スタンダード「オール・ブルース」「ジャンゴ」の4曲。 時代の流れでフェンダー・ローズ(エレクトリック・ピアノ)が採用されてます。 JHは、90年代に再度拘わるKenny BarronやGeorge Mrazと遭遇しています。録音はマルチ・トラックで録られていて ベース・トラックの上に被せていく手法ですので、実際にはGeorge Mrazとはリアルタイムで 演奏したのではなかったらしいのですが。

 1988年、Chet Bakerがアムステルダムでホテルから転落死。追悼の意味合いを含めて、

・Youkali/Jim Hall/CTI/1982,1992

 Studio Triesteに未収録であったらしい「Skylark」でChet Bakerの優美なSoloが聴かれます。 「オール・ブルース」「マラゲーニャ」は、マルチ・トラックで録られていたものをリメイク、 Grover Washington,JRやDonald HarrisonにSolistが切り替わっています。「ジャンゴ」は Studio Trieste版とほぼ同様。そして新録の「ユーカリ」と「All Across The City」が追加されています。 今度のジャケ写は、アフリカの仮面でしょうか?実は、このアルバム購入して1,2回聴いて 長い間奥積みになっておりました。かろうじてリサイクルには回しておりませんでした。 確かにJHであるし、演奏内容も悪くはないです。 本人の意思で承知の上で、企画にのってやったのでしょうが、何だかなぁ! と思う今日この頃です。又、奥積みになりそうです。

 私見ですが、Jazz musicianは女誑しであろうが、穀潰しであろうが、薬中であろうが、 凶状持ちであろうが、演奏が素晴らしければそれで良いのではないかと不謹慎ながら思ってしまいます。 実生活の振幅の幅が広く破天荒な度合いに比例して、音楽表現の幅が豊かで感動をもたらして くれるような気がします。多分取り巻きの方は大変なんでしょうけど。Chet Baker氏のご冥福をお祈り 致します。

(2003.08.16)