JIM HALL Maniacs

since 2001/12/01


Jack Montrose と JH。

 Jack Montroseって、テナー・サックス奏者をご存知のJHMな方は、どの位いらっしゃるのでしょう? 実は、小生も全く知りませんでした。このJack Montroseの1956年録音のリーダー・アルバム2枚に JHが参加しているのです。

・Jack Montrose Quintet/Blues and Vanilla/1956/RCA

 クリーブランドに住んでいたJHが、Guitarで生計を立てようと発心して、最初に目指した先が 何故NYでなくて西海岸だったのだろう?と長いこと疑問でした。昨年の来日時(2004年6月)に、 「インタビューをしますので、何か聴きたい事があったら連絡ください。」とクラフトーンの K氏から連絡を頂いていたので、上の疑問を含めていくつかの質問を纏めて、連絡してました。 上の疑問が採用され、Jazz Guitar Book Vol.3(シンコーミュージック)のJHへのインタビューに 下の様に掲載されています。

Q:クリーブランドをあとにしてカルフォル二アへ行った訳ですが、何故ニューヨークでなく 西海岸だったのでしょうか?
JH:いきなりニューヨークへ行くのはちょっと気が引けたっていうのもあったし・・・・

 他にも友人、縁故の方が、西海岸に住んでいたって理由もあるのですが、一番大きな理由は 「気が引けた」と言う事でしょう。1955年には既に、ジミー・レイニーやタル・ファローが NYでバリバリ活躍してましたからね。「ハハハ、やっぱ、そうか!」と思いましたね。JHらしい。 永年の疑問が氷解して、ひとつスッキリした気分ですね。もし西海岸に行ってなかったら、 チコ・ハミルトンのグループにも、採用されてないし、ジミー・ジェフリーとも遭遇してないし、 このアルバムも陽の目も見てないわけですね。

 ところで、Jack Montrose氏のことですが、Clifford Brownの「Jazz Immortal(1954)」の編曲 や、Chet Bakerの1950年代中期の頃のアルバムの編曲もやってまして、アレンジャーとしての資質も 充分持ち合わせたサックスプレーヤーなんです。 60年代は、スタジオ・ワークやネバダでのショー・バンドでしのぎを削っていた為にJazzのアルバム には、足跡がほとんど残ってません。ミンガスの「直立猿人」に参加したり、BlueNoteにリーダー アルバムを残しているJ.R.Montroseとは別人なので、ご注意!

 この、アルバムの6トラックの内、5トラックにJHは参加、小洒落たアレンジの中で、 Jack Montrose、JH、Red Norvo(Vib)のアドリブが交換され、完成度の高いウエスト・コースト・ジャズが堪能できます。JHも出番が多いです。 ジャケ写の、大きなバニラ・アイスクリームを舐めているのはRed Norvoです。 昨年、ヨーロッパで再発されたのですが、制作枚数が少なかったのでしょうか、なかなか、入手するのが困難でした。ふ〜〜。

 こちらが、もう1枚のアルバムです。

・The Horn's Full/Jack Montrose and All-Stars/1957/RCA

 こちらは、11トラック中3トラックにJHは参加。Jack Montrose、Red NorvoにJH、DrumsとBassの編成。 All-Starsとはちょっと大袈裟な気もしますが・・・・・・。1994年にヨーロッパで再発されたCDで、中古盤を 運良く入手できました、ラッキー!。まだまだ、他にも未聴の、入手困難盤があるのですが、まあ気長に、楽しみを 取って置きましょう。出会わないかも知れませんが・・・・・・。

 こちらの、アルバムも、小洒落たアレンジのウエスト・コースト・ジャズが楽しめます。 ちなみにJHが非参加の他のトラックのGuitarはバーニー・ケッセルです。 ジャケ写が、今から見て見ると、すご〜くレトロですね、サックスのコーンからブロンド美女が ニョッキリと出てきています。深く考えると意味シンですね?いや、考え過ぎ?ハハハ・・・・・・。

 NYマンハッタン島の南西部「グリニッジ・ビレッジ」に、画家写真家David X. Youngのロフト(作業場)が あったそうな。David X.自身が、自らの創作のインスピレーション源として、 Jazzの即興演奏に深い共鳴を寄せていたことから、ロフトをGigの終わったジャズ・ミュージシャンに解放したそうな。 深夜、周辺に住民が少ない事もあり、50〜60年代には夜な夜なJam Settionが朝まで繰り広げられていたそうな。

・David X. Young's JAZZ LOFT/1957-1965/Jazz Magnet

 その模様をDavid X.は録音、2000年にブックレット付きの2CDにて私家盤的な装いで発表されました。 Jamの常連は、ズート・シムス、ボブ・ブルックマイヤー、ジミー・レイニー他にもセロニアス・モンク、 マイルス・デイビス、ビル・エバンスらの大物も顔を覗かせてました。で、この2CDの中の3トラックに JHが参加しています。Bob Brookmeyer、Hall Overton(P)、Jimmy Raney、Bill Crow(b)、Dick Scott(Ds)と JHで1957年クレジットの「There will never be another you (15:42)」「Wildwood (8:38)」と、 PianoがDave McKennaに変わりDrumsが不明の1965年4月クレジットの「Supuds (11:30)」です。 他のトラックには、すべてにズート・シムスが絡んでいます。

 1957年録音の「Street Swingers/Bob Brookmeyer with Jim Hall and Jimmy Raney/World Pacific」、 1964年録音の「Two Jims And Zoot/Jimmy Raney/Mainstream」は、このロフトで アイデアが練られたのは、ほぼ間違いないと確信します。但し収録されているトラックは、 模索しながらのロングアドリブで、やや冗長であります。素晴らしい名演ではありませんが、 マニアにとっての記録的な価値はあるのでしょう。特にはお薦め致しませんが、「う〜ん、聴いてみたい」という方は 宜しければどうぞ!入手困難ですぞ!

 2年前にNYの「バードランド」でMarian McPartlandという女流ピアニストの85歳の誕生パーティが、 盛況にて催行されました。その模様が、2CDになって今年の3月に発売されました。

・85 Candles/Marian McPartland & Friends/Concord/2003

 で、このアルバムの中にJH参加のトラックが2トラック収録されています。いつもながら、 情報を頂きましたのは、p-tanさんです。有難う御座いました。 ひとつのトラックは、Regina Caterというバイオリン奏者を含むクインテットの演奏で 、JHはやや硬めのクリーントーンでアドリブを展開しています。

 で、もうひとつのトラック「Free Piece」についてMcPartlandは、
"Well,We certainly didn't rehearse that before. But neither did anyone else. We Improvised everything. That's the only way to do it; that's just a part of me."
と言ってます。んんん、早い話がフリー・インプロビゼーションをやっている訳です。 間違いなくJHが唆したのでありましょう。 またまたJHは、6弦を緩めながら、インプロビゼーションをやってるんですね。 いやぁ、本当に脱帽です。こんな所で、こんな事をしていたなんて。アルバムのトラックに採用されて なかったら、その場に居合わせた聴衆しか承知できないことが、証拠としてCDに残っちゃいましたね。 プログレ癖は、終生直らないんでしょう。そういえば、今年、ビレッジ・バンガードの70周年で JHとGuitar Duoをやった井上智氏は、JHの感想を「Wild!」とサイトのBBSに書いてました。 恐るべしJH。

 この2CDのアルバムは、他にゲストが、フィル・ウッズ、ビリー・テイラー、ジョン・ファデス、 クラーク・テリー、クリス・ポッター、ラヴィ・コルトレーン、デイブ・ダグラス、ビル・クロウ、 ロイ・ハイグローブ、ノラ・ジョーンズ、ビル・チャラップなどが参加しており、 バラエティに富んだ組み合わせのギグが収録されています。McPartlandのキャリアの長さと ミュージシャンシップが、自ずと物語られている様に思います。お薦めします。

(2005.05.01)