JIM HALL Maniacs

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2005年新譜 PianoとのDuo 2枚。

 2005年秋、それから初冬にJHの新譜が上梓された。奇しくも2枚とも変態的編成の PianoとのDuoである。

・Duologues/Jim Hall Enrico Pieranunzi/CAM Jazz/2004

 JHのPianoとのDuo盤といえば、Evansとの「Undercurrent/1962」「Intermodulation/1966」、 George Shearingとの「First Edition/1982」の3枚があげられる。 Michel Petruccianiとの「Power Of Three/1986」でも、PetruccianiとのDuoでの絶妙のコラボが Live盤で数トラック紹介されている。  しかしながら、スタジオ録音でレコードもしくはCD1枚を創るというコンセプト であれば、PianoとのDuo盤は上の3枚に限定されると言ってよいのではなかろうか? CDに記載のPieranunziのコメントに、

"I am the third pianist after Bill Evans and George Shearing to have recorded a duo CD with him(JH)."

とあり、23年振りのDuo CDに3番目のpianistとして参画した自負と喜びがこめられている様に思う。 Enrico Pieranunziは、1949年生まれ、5歳からPianoを始め、Jazzが好きでギターも弾く親父の 影響もあり、19歳でプロになる。Bill EvansやMcCoy Tynerの影響から、徐々に脱し、 独自のスタイルに到達し、イタリアを代表するジャズ・ピアニストと言えよう。 又、一時期大学の音楽教授であったり、クラシック・ピアノの演奏家であったり、 現代音楽 Improvisationにも通達している端正な抒情派。

 JHは、年に1回程度欧州ツアーで渡欧しているが、二人の親交がいつごろからなのかは、定かではない。 しかし、CDに記載のJHのコメントに、

"What a Pleasure to finally record with Enrico."

と、「念願の録音」なのであるからして、どちらが言出したかは定かではないが、 「そのうち、Duoでアルバムを創りたいねぇ!」「う〜ん、そうだねぇ。」と口約束を してから実現までに、少なからずの時間の経過があったように思うが如何なものだろう? このアルバムは、昨年の9月13日〜10月2日 Enricco Pieranunzi(p)とのDuoを中心に 欧州ツアーをした時の間隙の、9月16〜18日の3日間にミラノで収録されたものである。

 さて、アルバムの内容であるが、全10曲中 Duologuesという即興演奏と思しきトラック が3曲。Bill Evansへの追慕?として「Our Valentines」。George Shearingへの敬意からか 「Careful」(First EditionのJHとShearingの"Careful"を未聴の方は是非チェックを!)。 Pieranunziの三拍子での持込曲「From E. to C.」は、リリカル、う〜ん、やっぱ、Evans派だな。 「The Point at Issue」は、Pieranunziの別の持ち込み曲、エキセントリックなテーマで あるが、中身はブルース形式の曲。JHの奥さんの曲「Something tells me」、こちらもリリカル、 終始インテンポにならずにルバート。…などなど。Duologues1〜3の即興演奏も 一聴目は、これは無調(アトーナル)の現代音楽じゃわいと、思い込んでいたが、 リズムのパターンがあったり、結構、トーナルセンターがあったりして聴き易い。 全体の配曲、選曲も充分に配慮がされ、アルバムとしてよく纏まっている様に思う。

 さて、もう1枚の方がこれ、当初9月30日にUSを発送予定であったが、実際には11月30日の発送であった。

・Free Association/Jim Hall Geoffrey Keezer/Artist Share/2005

 Free Association:「自由な連合」 ジングムント・フロイトの提唱する心理学用語? クラフツマンの政治用語?USには「Free Association」というカードゲームもあり。 そういったこととは関係なく、2人の収録トラック「Free Association」からの転用なのか? 深読みしてもしょうがないのだが、凄く意味深長なアルバム・タイトルである。(笑)

 Brian Camerio氏の主宰するArtist Shareから上梓されたJHのNet販売限定の2枚目のアルバムです。 JHとGeoffrey Keezerは、昨年の10月にVillage Vanguardで、今年の1月は日本のBlue Noteの クラブ・サーキット(OsakaBNのレポート及びGKの略歴は、 ”2005年1月、JHを見にBN Osakaに行ってみた。”を 参照下さい。)、6月始めにBirdland NYでGigを重ねた上で、6月13〜14日に 録音されたのが、このアルバムです。あ、「Furnished Flats」のみは直前のBirdlandでのGigの Live音源です。

 昨年の秋は、GKを含めたカルテットで欧州ツアー。 今月の初めにも、楽日をJHの75歳の誕生日12月4日にあわせて、というか、Village Vanguardは 日曜日が楽日になり、その日がちょうどJHの75歳の誕生日なので、スケジューリングを事前に 周到に押さえたというか、Gigってます。来年の2月には、やはり2人で、来日、 BNのクラブ・サーキットです。DownBeat.comのJHのGKに対するコメントを引用すると、

“Keezer has an incredible sense of swing, listens well, and reacts uniquely,”
“He’s an outstanding improviser.”

と大変、お気に入りみたいです。

 CDを一聴して、第一印象は、GKのピアノの鳴らし方が天才的にうまいなぁ!と改めて感心した。 1月の生GKの際には、Pianoの八十八鍵の最高音部に右手があり、最低音部に左手があるという 不思議なパフォーマンスを見た。「視た」のと「聴く」のは大違いで、こうやってCDで検証してみると、 なるほどなぁと、ほんとに感心する。また、JHが”listens well, and reacts uniquely”と言うように、 Jazzだけにに囚われてないLineやリズムでの、JHへの反応がすこぶる新鮮である。 2枚のDuo盤でJH自体のPlayや反応は微妙に違うかもしれないが、JHはJH、2枚のアルバムの印象が 世代が違い資質も違うPianistの差で大層、異なって感じられる。

 録音や選曲、配曲の違いもあるのかもしれない。坂本龍一の「美貌の青空」はGKの持込曲、 1月の来日時も演奏していた。残りは、JHの持ち込み曲と、即興演奏の共作「Free Association」 「Counter Transference」。 最後のトラックは、JHの「October Song」をGuitar Solo、コード・プレイはほとんどなく 旋律のみ単音弾き、シンプルでミニマムで深い。

 JH氏、1990年代から2000年代初めにかけて、Telarcというレーベルの専属であり、 制作予算もあったのか、作曲家・編曲家としての仕事に注力していたように見えた。 しかしながら、その中で、ツアー、コンサート、クラブ・サーキットという、演奏家としての 現場の仕事は、高齢ながらも、止めた訳ではなかった。諸般事情で、日本には、5年間ほど 縁がなかったが…。このPianoとのDuo盤2枚に、生涯現役現場主義の即興演奏家である 尖がったJHが垣間見られて、大変嬉しい。来年2月には、来日です。う〜ん、楽しみじゃわい!

(2005.12.11)