たびのどうぐ
  またまた買ってしまった…
漂流旅記


 
・じゃじゃ〜ん
去年の秋、わたしは1台の車を買った。そしてちょうど7ヶ月経った今日、わたしはまたまた車を買ってしまった。
それがこの「スズキジムニーSJ20F-2、通称ジムニーエイト」である。
この車はわたしが10年来探していた車だった。理由は後述するが、入手は非常に困難で、半ばあきらめていた車でもあった。それがとうとう我が手に…。

5月半ばのある日、出張帰りの新幹線の中で、わたしはとある自動車専門誌を読んでいた。そして後半のとある店の広告に目が止まった。そこには「特選中古車」と書かれた文字の下にいくつかの車の写真が並んでいた。そこにこのSJ20が載っていたのだった。しかも驚くほど安い値段で。

7ヶ月前に買ったランドローバーディフェンダー110はれっきとした新車であり2000年モデルであるが、今回のジムニーは昭和55年(1980年)型、そう、もう21年も前の車である。もちろんエアコンどころかクーラーもパワステもない屋根もドアも幌だから、サンルーフもパワーウインドウもあるわけが無い。21年も前の車には普通値段はつかない。しかし、このSJ20はおそらく普通の人が聞いたら驚くようなけっこういい値段がついていた。しかしそれは裏を返すとそれでも売れるだけの価値を持った車なのである。そしてわたしにとってもそれは安いと感じたのであった。

しかし。
「本当に買っていいのか? 車ならもう3台(うち1台不動産)も持ってるのに。それにおまえはついこの間車を買ったばかりで、もうお金が無いんじゃないのか?」頭の中に「常識派」のわたしが現れる。その一方で「いいのか? 10年来探していた車が手に入るチャンスなのかもしれないぞ! これを逃すともう絶対に手に入らないぞ!」と「物欲派」のわたしも負けてはいない。
たしかにわたしはすでにスズキジムニーSJ10Fというほとんど同じような車もすでに持っている。しかも、その他の車も全部クロカンタイプの四輪駆動車ばかりである。その上、また同じような車を買おうとするのは常識ある人間の行動ではない。わたしのモットーは「常識的なつまらない生活より非常識な面白い暮らし!」と言うものであるが、それでも一応常識にも配慮しているのだ。…そこ、そうは見えないとか言わないよーに。
苦悩するわたしは彼らにこう提案した。「とりあえず電話してみよう。きっとこういう車だからもう売れてしまっているかもしれない。そのときは諦めよう。もしあったとしても、状態がよいかどうかわからない。まずは一度じっくり見てからだ」

たまたまその日が定休日であったため、次の朝、さっそく電話を入れる。もう売れてしまっているのではないかとびくびくしながら。
電話の結果は「問い合わせは何件かあったが、まだ売れてはいない」とのことだった。夜10時頃までやっていると言う親父の言葉に誘われ、その日のうちに現物確認のため店に向かった。

会社を定時で抜け出し、夜8時、その店に入る。さっそく各部のチェック。服の汚れも気にせずエンジンルーム、ボディ、下回りをチェックしていく……、すばらしい! けちのつけようが無い! エンジンは軽やかに回り、ボディにはさびなどはまったく見当たらない下回りもオフロードでぶつけそうなところにもまったく傷は無い。もちろん一部気になる点もあったが、本質的な問題ではない。その上、幌が新品同様! もう文句の付け所は無い。

…30分後、契約書にサインするわたしの姿があった(笑)

 

・SJ20とは
左の画像をご覧いただきたい。右側の水色の車が以前から所有しているスズキジムニーSJ10、そして左側が今回入手したスズキジムニーSJ20である。皆さんには違いがおわかりになるだろうか。
色が違う? おお、そのとおりなのである。もちろんボディーカラーの話ではなく、ナンバープレートの色である。SJ10は黄色ナンバー、つまり軽自動車、SJ20は白ナンバー、つまり小型自動車という違いがあるのである。逆にいうと外見上では、色以外には違いが無いのである!

表にしてみると次のとおり
(太字はSJ10と異なる項目)

SJ10 SJ20
全長 3,170mm 3,170mm
全幅 1,395mm 1,395mm
全高
1,845mm
1,845mm
ホイールベース
1,930mm
1,930mm
トレッド(前/後)
1,190mm/1,200mm
1,190mm/1,200mm
最低地上高
240mm
240mm
車両重量
680kg
715kg
最大積載量
250kg(0kg)
250kg(0kg)
定員
2人(4人)
2人(4人)
エンジン形式
LJ50型
2サイクル水冷3気筒
F8A型
4サイクル水冷4気筒
エンジン排気量
539cc
797cc
最高出力
26ps/4,500rpm
41ps/5,500rpm
最大トルク
5.3kg-m/3,000rpm
6.1kg-m/3,500rpm
トランスミッション
前進4速後進1速
前進4速後進1速
1速
2速
3速
4速
後進
3.835
2.359
1.543
1.000
4.026
3.835
2.359
1.543
1.000
4.026
トランスファー
(高速/低速)
1.714/3.012
1.714/3.012
最終減速比
4.875
4.556
タイヤ
6.00-16
6.00-16

ということで、重量、エンジンそしてギア比以外はまったく同じなのである。そりゃナンバープレート以外、外見が同じになるよな。
軽自動車の車体に一回り大きなエンジンを搭載しているので、これがまたよく走る。もちろん軽自動車のSJ10と比較しての話ではあるが、SJ10自体がオフロードで非常によく走るのである。SJ20が走らないわけが無い。

ところで、このSJ20、なんでこんなにありがたがるのか、と思われる方もいらしゃるだろう。SJ10は「軽自動車」であり、税金も安い。車検も2年おき。これに比べてSJ20は積載量が多いわけでもないのに、「小型自動車」に分類され、税金も高く、車検は毎年あり、維持費はジープ・ランドクルーザーなどの大型四輪駆動車と大して変わらなくなる。普通に考えれば個人ユーザーはSJ10を選ぶであろう。また、法人であればジープ、ランドクルーザーなど普通自動車の四輪駆動車があるのに、わざわざ軽自動車サイズのSJ20を買うことは考えにくい。
結果として、SJ10は約50,000台が販売されたのに対し、SJ20はたったの2,301台(国内登録台数)しか売れなかったのである。しかもSJ20を買っていった人は、「そのような不利な点を承知の上で」わざわざ買った奇特な人たち、つまりマニアばかりだったのである。彼らはそうそう手放さない。また、その多くは「オフロードでよく走る」という特徴のため、オフロードで酷使され、改造されてしまうものも少なくなかった。もともとの数も少なく、しかもオーナーは手放さず、しかも消耗も激しいという悪条件が揃い、中古車市場にSJ20が出てくることはまったくと言っていいほどなかったのである。
そしていつしか四輪駆動車を知るものの間では「エイト(SJ20の愛称)はよく走った。しかし今ではめったに見ることはなく、状態のいいものはオーナーが手放さないので、入手もほぼ不可能である」という伝説が語られるようになったのであった。

そんなわけでSJ10に心酔しているわたしは、なんとしてでもSJ20に乗ってみたかった。そしてできれば所有したかったのである。かつて、SJ10に乗り始めてまだ間もない頃、先輩の家に「他人から預かっているSJ20」があったことがあった。
しかし預かり物ということもあり、運転することは叶わず、憧れが増大したのみであった…。


SJ20の要 F8A水冷4気筒エンジン

 

・運転初日
さて、本来であれば3日も前に名義変更も終わり、いつでも納車される段取りは出来ていたのだが、いかんせん仕事が立てこんでいて休みが取れなかった。精神衛生上非常に悪い3日間を過ごし、そして今日、むりやり休みを取ることに成功した。土曜日まで待っても、という考えも頭をよぎったが、SJ20に乗れるという誘惑の前にはなんの効果も無かった。
昼前にお店に向かう。ときおり雨がぱらつく不安定な天気である。
最寄の駅に迎えにきてくれたお兄さんと店までの道すがら四駆談義に花を咲かす。聞くとこのお兄さんはディスコ(ランドローバーディスカバリー)、ブリザード、ゴッパー(三菱ジープJ58)、CJ3B、ジムニーLJ20(ただし不動産・2ストローク水冷360ccのジムニー)を持っていると言う。わたしなどまだまだだなと、ほっとした

挨拶もそこそこにかぎを受け取りシートに座る。エンジンは軽やかに回りだした。わたしはオーナーとしてSJ20で道路に乗り出した。雨は止み青空さえ見え始めていた…。
時刻は午後1時前。このまま帰宅してしまったら何のために休暇を取ったのかわからない。途中のホームセンターで、車載工具を揃える。ついでにエンジンオイルとフィルターも買い、さっそくオクタマ基地へと向かう。

わたしが買ったSJ20には多少問題があると述べた。まず、スペアタイヤ、そしてそのキャリア(積載装置)が無い。またロールバーがついているためか、リアシートも無いのである。おそらく前のオーナーは用途を限定し、ロールバーをつける代わりにスペアタイヤもリアシートも外してしまったのであろう。すでにリアシートはメーカーにも部品が無い。一時はリアシートなしも考えた。しかし、なんと多くの人たちの好意により、先日リアシートを入手することに成功してしまったのである。また、スペアタイヤキャリアも「余っている」という方が現れた。なんとツイているのだろう! 
さっそくロールバーを外し、リアシートを取り付ける。スペアタイヤキャリアはまだないので、とりあえず学生時代に乗っていた初代SJ10タイヤをスペアとして1本積んでおく。その間に、冷却水を追加し、エンジンオイルも交換しておく。エンジンのヘッドを見ると、「平成5年56,000km、タイミングベルト交換」というシールを見つけた。現在の走行距離は70,000km。前のオーナーはきちんと整備をしていたらしい。

午後3時、曇り空のオクタマ基地を出発、近所の林道をうろうろする。
普段SJ10に乗っている感覚からするとまるで別世界である。少々の坂道でも2速で発進できる。しかも加速がいいっ! トルク感としてはSJ10の1速がSJ20の2速、2速が3速、3速が4速といった具合で、トルクフルな走りが楽しめるのである。しかもそれぞれのギアでエンジンはスムーズに吹けあがる。また、当然と言えば当然であるが、エンジンブレーキもよく効くのである。車重はSJ10と大して変わらないのに、エンジンの排気量は5割増、しかも4サイクル。そのうえ最終減速比が低いせいもあり、最高速度はSJ10の90km/hに対して110km/hほどは出るようだ。シフトレバーを操る喜びについつい頬が緩む
4速のシンクロが弱っているようで、ときおりギア鳴りがする。しかしゆっくりシフトするかダブルクラッチを踏めば問題ない。近いうちにミッションのオーバーホールをしよう、などと考えつつ、林道を走り回る。

仕上げに霧に煙る峠越えの林道を抜け、リアシートの時にお世話になり、スペアタイヤキャリアも譲ってくれるという人のお宅に寄り、お礼の品を置きつつ、家路に向かう。…これで北海道に行ったらおもしろそうだなぁ。悪いたくらみが頭をよぎるのを振り切りつつ。

 

霧の峠道にて

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漂流旅記
2001.05.31 (c)おりじゃ