ちょっとコーヒーでも 〜その1〜 漂流旅記


 
・旅に出よう
2001年もいろいろなことがあった。
思い起こすと、………遊んでばっかりだったな。
ま、正月早々雪遊びもしたし、夏にはロケットの打ち上げも見に行ったし、もう正確な数は数えてないが、おそらく十数回は夜行列車で夜を過ごすことができたし。

でも、ちょっと心残りがないこともない。
ということで、その心残りを解消すべく旅に出ることにした。幸いカレンダーがうまくつながったこともあり、仕事は9連休。ちょっと遠出するにはいい休みだ。
 

・出発2日前まで
さて、「心残りの解消」にはちょっとばかり準備が要る。
車の整備と装備の準備だ。

まず、車の準備である。
今回はランドローバーディフェンダーにするか、ジムニー8にするか悩んだ(ジムニーSJ10という選択肢も面白そうではあるがあまりにリスクが…)が、極限での走破能力では8に分がありそうなものの、積載能力と居住性の点から、ディフェンダーにすることにした。なにしろ目的地はずいぶん遠くである。

旅立ちに先駆けディフェンダーの改造を行う。
と、言っても、もともとそれなりの性能を持つ車である。それほどの改造は必要ない。
まずは、航続距離の延長工事である。じつはディフェンダーは大ガス食いである。燃費は5km/L程度である。ま、この位はかつて乗っていたランクルとさして変わらないので取り立てて文句を言うべきことではない。問題は燃料タンクの大きさである。ランクルは90Lタンクだったのに対し、ディフェンダーは70Lタンク。最大航続距離がランクルの450kmに対しディフェンダーは350kmとなってしまう。実質的には250kmを超えるとガソリンスタンドの有無が気になり始める。行き先は人口希薄地帯が多く、しかも年末年始で休業しているスタンドも多いだろう。
そこで、リアのスペアタイヤキャリアを改造して、20L携行缶のホルダーの取り付けて、実質的に90Lの燃料を確保できるように改造したのである。
もともとタイヤキャリアがついていたので、そう難しくはないだろうとタカをくくっていたが、実際には匠ファクトリー塚本氏やら、羅須の豊野氏などの手助けを受け、大掛かりな工事になってしまった。しかし構造的にも強度的にもばっちりなキャリアとなった。
豊野氏曰く「キャリアが取れるより先にドア(キャリアはリアドアの構造材にボルト締め)が外れるよ」

次にヒーターの強化である。
これまた意外に思われるかもしれないが、実はディフェンダーは「寒い」のである。ヒーター容量はそれほど小さくはないのだが、その配管がデフロスター方向に太く、室内方向には細く、しかも噴出し位置が悪く、足元が寒いのである。
今回、M菱自工のU山氏よりなぜかロ○ザ(M菱自工のマイクロバス)の室内用ヒーターユニットを入手、運転席の足元に設置した。
これも1日仕事で七転八倒しながらの作業となった。ン百万円の車にばりばりとドリルで穴を開け、サンダーでがりがり削る姿を見て絶句していた友人もいたが、自分のものだ、どうしようと自分の勝手である。
取り付け用の大穴があき、運転席の足元にはアルミの削りカスが散乱したときには、さすがに大丈夫かなとも思わないでもなかったが、取り付けてみるとあら不思議、まるで純正部品のようにぴったりと落ちつくではないか。これで寒い冬もドンとこいである。

この他、ハイリフトジャッキの小改造やチルホール(ハンドウインチ)の搭載など、着々と改造は進んでいったのであった。
 

・出発前日
出発前日
生活物資その他の買出しにディフェンダーを走らせる。
すでに明日の出発に備え、タイヤもスタッドレスタイヤに履き替え済みである。
足りない工具や補給用オイルなどを買い込み、家路に向かいつつあると、突然乗り心地が変わった。お尻の下でなんだかゴリゴリ言っているのである。
何事かとバックミラーを見ると右の後タイヤがぺちゃんこである。
「げ、パンクだ!」
交通量の多い4車線の幹線道路であったが、すぐに車を手近にあったファミリーレストランの駐車場にぶち込み、状況を確認する。
見たところタイヤそのものには大きな外傷はなさそうである。が、パンクしてからこの駐車場までの2〜300メーターの間についたと思われるこすれた後がサイドウォールに痛々しい。
しかたなくスペアの夏タイヤに交換することにする。がちゃがちゃとジャッキアップするわたしを物珍しそうに覗き込んでいく家族連れ。そう、時間はちょうどお昼時。晒し者になりつつタイヤ交換を済ます…。
 
・パンク修理
幸いそこから数百メートル先にカー用品店があった。タイヤも数多く並んでいる。そこでパンクの修理を依頼することにしよう。
タイヤ自体が裂けてしまっているとかではない限り、チューブに穴があいただけであろう。それほど重大なパンクではあるまい。年末で混んではいるが、明日の出発までには何とかなるであろう…。

数多くのスタッドレスタイヤが並ぶ受付カウンターでパンク修理を依頼する。
「え、パンク修理ですか?」
若い店員からは明らかに歓迎されざる反応を返される。そりゃそうだ。4本でン万円から十ン万円の買い物の相手をしている者にとって、パンク修理という数千円の小さな商売は手間もかかるしやりたくないというのが正直なところであろう。
「お時間かかりますけどよろしいですか?」
こちらは明日までにできればよいので依頼をする。
「ではお名前と車種、タイヤのサイズを…」
申し込み用紙に記入していると、店員が恐る恐る聞いてくる。
「チューブレスタイヤですよねぇ」
自慢じゃないがディフェンダーの純正鉄チンホイールを使用している。チューブレスなど履けるわけがない。
「いや、チューブタイヤですけど」
「あ、申し訳ございません。当店ではチューブタイヤの修理は承っていないんです」
店員がすまなそうに頭を下げる。

かつてはこういう店でもVベルトやら、普通のプラグやらが並んでいた。しかしいつしかそれらも消え去ったと思ったら、なんともはやチューブタイヤも過去の遺物となってしまったようだ。
仕方がない、他をあたろう。

しかたなく、メーカー直営のタイヤ専門の店に向かう。
昨年、このスタッドレスタイヤを買った店でもある。ここはこのメーカーの工場の敷地内にあり、それなりにサービスもよかろうと判断してのことであった。

受付のおねえさんにパンク修理の依頼をしてみる。
「チューブタイヤですが大丈夫でしょうか?」
恐る恐る聞いてみると、できるとのこと。さっそくタイヤを見てもらう。
「こちらのタイヤなんですけど…」
ディフェンダーのリアゲートから転がり出てきたタイヤを見て、おねえさん一言。
「…あ、トラック用だ」
しばしの沈黙の後、
「すいません、店長呼んできますっ!」
…なんかヤバいタイヤなのか?

車の横で待つことしばし、店長とおぼしき方がやってくる。
さすがにさっきのおねえさんよりは経験豊富のようで、てきぱきとタイヤを工場のほうに運ぶ。
「それじゃ、修理しておきますんで」
明日とりにくる旨を告げ、タイヤを預けて帰る。
ああ、よかった。もしも修理できなければ、出発そのものが危ぶまれるところであったが、なんとか明日の出発は変更しなくてすみそうだ。
パンク修理でこれだけあせったのはひさしぶりだ。

その後、夕方から親しい友人たちとの忘年会に臨み、楽しいときを過ごした。
そのころ自宅に悲しい知らせが入っているとも知らずに…。

 

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漂流旅記
2001.12.31 (c)おりじゃ