1999年4月号 第5巻第4号(通巻47号)

■発行人:小矢野哲夫 ■発行所:こやの研究室

毎月1日発行(1999年4月1日発行)

記事中の〔 〕内、※以下は小矢野の注記。新聞は大阪本社版に基づく。

【INDEX】

◆今月号登録件数(4) 見出し語の数字は1999年分の登録件数の通し番号を示す。つめかっこは””で代用した。

ブレークする ○夫婦のタイプ ○ナースウオッチ ○読顔術

◆「けとば言うたろカード」(「影踏み」について

◆「気が付いたけとば」(「"you are welcome"は米東海岸で今」について 「ボコる」について 「ヴ」のこと 「にしても」 「女性警官」 「外メーク」 「マイ箸」

◆「雑感」……かるがもまちこ「長女の旅立ち

\(^o^)/投稿大歓迎【ご投稿のメール】は「件名」に「けとば言うたろカードへ」「気が付いたけとばへ」「雑感へ」と書いてE-mailでお送りください。ペンネームO.K.


■990009 ブレークする

 ブレークする 「壊す」という意味の「break」に「する」をつけ、新人歌手らが「一躍、人気が出る」という意味で使われる。(『朝日新聞』19999年2月4日朝刊24面「ことば」欄 校閲部・越智健二記者)※越智記者からの私信によると、発生年は1996年だとのことです。電子メールでお寄せいただきた情報を今月号で紹介しようと思っていましたが、諸般の事情でできませんでした。いずれ、まとめて報告します。

 

■990010 夫婦のタイプ

 〔サントリー不易流行研究所が昨年4月に行った、団塊世代を中心とするミドル世代(45歳から54歳)夫婦の生活意識調査の結果から。比較のために30歳代後半の夫婦も調査。〕

 ミドル夫婦の約三割が「友だち夫婦」と答え、ついで「なれ合い夫婦」「亭主関白型」「妻主導型」の順。三十代夫婦では半数近くが「友だち夫婦」で、「なれ合い」「妻主導」「亭主関白」の順だった。(『朝日新聞』1999年2月18日朝刊21面)

 

■990011 ナースウオッチ

 ナースウオッチは看護婦が腕時計代わりに胸につける時計で、表示は天地が逆になる。残念ながら、わが国での普及度はまだまだ低い。

 (中略)

 ナースウオッチが必要なわけは? 腕時計をしたまま診療している医師や看護婦は「私はきちんと手洗いをしていません」といっているのに近い。なぜなら、正しい手洗いは手首までが原則だから。(『朝日新聞』1999年2月22日夕刊7面「病理医の目」欄 東海大学助教授・堤寛さん)

 

■990012 読顔術

 「眼鏡を替えたら、相手の話がよく聞こえるようになった」

 そんな経験はないだろうか。眼鏡がぴったり合って「よく見える」のは当たり前だが、「よく聞こえる」のは、映像が声を補い、会話の重要な役割を担っているからだと考えられる。

(中略)「読唇術」ならぬ読『顔』術。私たちは顔でも話をしているのです」と〔ATR人間情報通信研究所のエリック・バティキオティス・〕ベイツンさんは話す。(『朝日新聞』1999年2月22日夕刊7面「顔が語る 7」五十嵐道子記者)


けとば言うたろカード

 

ウウォッチングさんから(19990302)「影踏み」について

 英語圏にも日本の影踏みと同じ遊びがあることが分かりましたのでご紹介いたします。日本語と同様、step on 〜's shadow(影を踏む)と表現しています。辞書によれば「鬼」のことを英語では it と言うそうです。

 

(出典)http://www.corpcomm.net/~gnieboer/xtra_games.htm

Shadow Tag

One player is chosen to be it. The object of the game is for the person who is it to try and tag another player by stepping on his or her shadow. Define boundaries. When the person who is it steps on someone's shadow, he or she shouts "Sun Tag!". The player whose shadow was tagged becomes the next person to be IT, but that player must stand still for three counts before chasing the shadows.

(付記:文中のインターネットアドレスは1999/3/2現在のものです。)


気が付いたけとば

土田滋さんから(19990301)

佐藤和之さんの(19990212)「"you are welcome"は米東海岸で今」の中で、

>もちろんThanksも年輩の人は使わないようです。特に東海岸では[ s(=th)an kyu: ] と、kにストレスをおいています。

とありますが、これは 'Thank you に対する返事として Thank 'you と答える、つまり「いえ、私の方こそ、あなたに、感謝します」の「あなたに」を強調した表現でしょう。どういうコンテキストの中で Thank 'you が聞こえたのかが分かればはっきりするのですが。一般的に言って、日本語では感情を表す終助詞が豊富ですが、英語にはありません。そのかわり、イントネーションを巧みに使って、自分の感情を表します。日本人の話す英語が一本調子で抑揚に乏しいのに対し、英米人の英語は上がり下がりが豊富なのはご存じの通り。これもそのあたりに原因がありますね。Thank you もそうだし、出会ったときの Good 'morning と、分かれるときの'Good morning(さらに上昇調が加わる)もそう。(これに顔の表情も加わりますから、いっそうにぎやか。)

阿部新さんから(19990301)「ボコる」について

 

「ボコる」は、僕も気になっていました。

ごくたまに、電車内での会話で高校生、大学生が使っているのを耳にしたことがあります。

語感などから大体の意味はわかりますが、僕自身は使いません。

僕が実際に聞いたのは、次のような文脈においてです。

 

(ラグビーなどのスポーツ競技の話題、リーグ戦の対戦表を見ながら)

「○○大と××大の試合、○○大はボコられてたよなー」

「でも、うちら、ボコったよなー、××大。」

 

(標準語訳)

「○○大と××大の試合では、○○大は完全に打ちのめされましたね。」

「でも、僕達の大学は××大を完全に打ちのめしましたね。」

 

対話は完全に記憶しているわけではないですが、以上のような内容だったと思います。

とにかく、「ボコる」は『サンデー毎日』中の「リンチする」という、語源に近そうな意味だけではなく、「スポーツなどで完全にやりこめられて負ける」というような意味にも用いられるようです。

受動態(ボコられる)や、アスペクト形式(ボコっていた)のような形式も、意味的には多く使われるのではないでしょうか。

 

ウウォッチングさんから(19990302)「ボコる」について

 

 隠語の解説付きのテキストが見つかりました。

 

(出典)http://www.sopia.or.jp/totmiya/C3Ab.html

 ギャング族の少女ひとみは、山寺に興味ある話をした。

 「Kは、近いうちに、デカイ仕事をするって言ってたわ。あの人日本人じゃないでしょ。顔付きはそっくりだけど。時々、俺のうしろには大者がいるから、なんて言ってたっけ。そうそう、宇田川の連中さ、Kに頭あがんないらしいわ。でも、Kはオール(徹夜)しても、リーマン(サラリーマン)狩りはやらないんだよね。カツる(恐喝)時はテレクラ狩り(テレフォンクラブで客を襲う)だったわ」

 支離滅裂で話が的を得ないが、山寺も以前覚えた言葉を使って問う。

 「でも、ボコる(殴る)とか、S(スピード。覚醒剤)とかはやってたんだろ?」

 「そうね。でも最近は、私服(警官)が多いんで、大っぴらにはやらないわよ。それに、たまん(たむろ)なくても、Kにはウチがあんのよ何んて言ったかな? ミックだっけ? マック? そう、マッキーとか言ってたわ。相棒のこと」

(付記:文中のインターネットアドレスは1999/3/2現在のものです。)

 

よしぼん命さんから(19990309)「『ヴ』のこと」

 先日、東京の都営三田線志村三丁目駅の近くで、新しく建設されるマンションの宣伝を大々的にやっていました(日商岩井・三井物産・長谷工など大手企業の共同事業)。マンションの名前は、アルファベットでは"BIOSGARDEN SHIROYAMA"というのだそうです。小高い城跡に残る木々を生かしながら建設するという趣旨からのネーミングだと思います。ところが、カナ漢字表記は「ヴィオスガーデン城山」となっています。普通「ヴ」を使うのは[v]に対してだと思うのですが(なぜ「ヴァイオス(バイオス)−」でないのかというところも気になります)。ちなみに、現在私の住んでいる巣鴨でも、駅近くの喫茶店が"Banff"というのですが、以前は「ヴァンフ」という表記を併記していました(現在は「バンフ」と表記)。「ヴ」のほうが印象が強いからなのでしょうか。

 

■小矢野哲夫(19990312)から 「にしても」

 けさの『朝日新聞』朝刊に接続詞化しかかった「にしても」(「それ」なし)が登場した。

 「石原裕次郎の兄であります」が第一声だった慎太郎氏をしんがりに、東京都知事選の立候補予定者が事実上、出そろった。百花繚乱、いずれアヤメかカキツバタ。いえ、ドングリの背比べとの声もあるが、ともかく空前の乱戦模様▼にしても、これほど有名人が顔を並べるとは、都知事の座には格別の引力があるらしい。

(『朝日新聞』1999年3月12日朝刊1面「天声人語」欄)

 指示語「それ」を抜いて「は、ないですね」(Yeemarさん)、「では」「らしい」「みたいだ」などと表現することがあります。これに、新たに(?)、「にしても」が登場した模様です。ちょっと座りがよくないみたいですが、「それ」なしでも使えそうです。

Yeemarさんの「ことばをめぐるひとりごと」へ

 

小矢野哲夫(19990317)「女性警官」

 拙著『ワードウオッチング』で「『婦人』から『女性』へ」という項目を設けています(pp.118-121)。このなかで、東京都が1992年4月から「婦人」の用語を排ししたなかで、「婦人警察官」が残ることになったと記しました。ところが、今朝の朝刊で事態の変更を知りました。

 

女性警察官」がんばる 近畿の府県警

全員に38口径 現場指揮も

「ママさん」増加

同僚男性も脱帽

男女の区別やめた

優遇措置が充実

 

以上は『朝日新聞』1999年3月17日付朝刊31面の見出しです。本文からいきさつを引用します。

 警察の第一線で、女性パワーが着実に浸透している。四月から施行される改正男女雇用機会均等法をにらんで、長年親しまれた「婦人警察官」の呼び方をやめ、一部しか所持していなかった短銃を全員に貸与するなど、「平等化」への動きも加速してきた。(リード部分)

 「婦人警察官」の呼称をめぐって大阪府警の幹部は昨秋、議論を交わした。「婦人には年配のイメージがある」「いや、市民には定着している」

 その後、警察庁などに合わせて「女性警察官」に表記を統一。京都府警も昨年夏、「あえて男女の区別をしない」と、「婦警」の呼び方をやめた。四月時点で「女性警察官」の呼称を採用するのは、全国で二十五府県警になる。

(以上、『朝日新聞』1999年3月17日付朝刊31面)

 「事態の変更を知」った、と書きましたが、「全国で二十五府県警」とあることから、東京都の警視庁は改正男女雇用均等法が施行される4月1日以降も依然として「婦人警察官」を使用しつづける模様です。

 東京都知事選挙の結果、変更の事態に至るのか、そのまま従来の呼称を継続するのか。成りゆきを注目してみたいと思います。

 情報がありましたら、ご一報ください。

 

小矢野哲夫(19990318)から 「外メーク」

 『朝日新聞』1999年3月18日付朝刊32面「ことば」欄に校閲部の国沢利栄記者が「外メーク」について書いていました。この件についてはかつて、越智健二記者からの問い合わせを受けて、Eメールで聞いたことがあります。

 国沢記者は「外メーク」ということばを「電車の中やターミナルで、若い女性がファンデーションに始まり、口紅を塗り、まゆを描いて手早くメーキャップ。戸外での化粧を表す言葉だ。」と説明しています。

 この「外メーク」ということばは、それを行う若者自身が使っているというのではなく、その現象を大人が名付けたものです。当の若者は上記のような状況でのメーキャップをするけれども、とくに名付けているのではありません。

 

小矢野哲夫(19990325)から 「マイ箸」

 けさの新聞で「マイ箸」という言葉を見つけました。

 

 しっかりマイ箸 ぺろり(見出し)

 料理番組で作ったごちそうは、番組収録後どうなるのか。

 (中略)

 収録は午前十一時から午後七時までかかる。スタッフは約三十人いる。全員に、収録日は「おいしい料理で二食分浮く」という考えが浸透しているんだそうだ。みんな「マイ箸(はし)」(自分の箸)を確保し、次々にたいらげてしまう。「油断したら、自分の食べる分はすぐなくなる」とこぼす人もいる。

(『朝日新聞』1999年3月25日朝刊28面)(かっこ内のルビは原文では横ルビ)

 

 「マイ」は外来語ですから、「マイカー」「マイホーム」「マイペース」、最近では「マイブーム」のように、べつの外来語と組み合わせるのがこれまでのやり方です。それを、和語の「箸」と組み合わせるという新趣向です。が、発音はちょっとしにくいと思いませんか?

 

ウウォッチングさんから(19990326)「マイ箸」について

 私もまったく知りませんでしたが、「マイ○○」という言い方が流行しているのでしょうか?インターネットで調べてみると、いろいろなものが出てきます。特に珍しいと感じたものをいくつかご紹介いたします。

 

(出典)http://www.echna.ne.jp/~jasmine/oneman.html

 友人が【マイ湯飲み】と【マイ茶わん】を購入。じゃすみんの家では時折、料理教室になる。彼女とは幼稚園からの付き合いなのでかれこれ 25 年になろうとしている。

 

(出典)http://www.mech.utsunomiya-u.ac.jp/~kana/jaeri9806.html

 野菜にドレッシングをかけるな!!おまえら、冷蔵庫にドレッシングをキープしておくんじゃない!!それは【マイドレッシング】か!!なんだそれは!それでも日本男児か!!男なら塩で食え!!塩で!!!

 

(出典)http://www.aianet.ne.jp/~yurie-11/3/9810.html

 今使ってる【マイデスク】の【マイ椅子】は、どっかの国(忘れた)の健康椅子。ちゃんと使えば、背筋も伸びて腹筋も付いて健康になれるはずなんですが、私は全然使いこなせておらず。

 

(出典)http://www.tonight.co.jp/ryo989.htm

 ちょっと変わった客では、体を洗ってやった後でまた自分で洗い直し、コップはイソジンで消毒してからでないどつかわない徹底ぶり、今度は【マイ歯ブラシ】、【マイタオル】や【マイ石鹸】持参で来るのではないかと思うぐらいの度の超した潔癖ぶりの客だったらしい。

 

(出典)http://www.tcup3.com/351/takanori.html

 けいこ姉は、車をゲットしてから、日々深夜、流してるにょ〜☆ やっぱ、【マイ車】って、よいわぁ〜(^^)そのうち、800 キロ走って、会いに行くじょ〜!

 

(出典)http://www.jaist.ac.jp/~shigeru/diary/d_9804.html

 わーいわーい もう届いてるかな?一旦【マイ家】に戻ってみるかなあ.

(付記:文中のインターネットアドレスは1999/3/25現在のものです。)

 


雑感

 

長女の旅立ち

                 かるがもまちこ

 

 3月31日。長女はひとりで北海道に旅立った。帯広市で浪人生活を送るために。

 去年の夏休み、長女が突然北海道の大学に行きたいと言った。わたしと夫は、もうもう本当にびっくりしてしまった。なんでそんな寒い所で勉強すんねん。家から通える大学はいっぱいあるやんか。と心の中で思ったのだが、長女が望むのなら仕方がないと「がんばってね。」と励ました。

 数カ月たった頃、今度は、「畜産大学へ行きたい」と言い始めた。ハンマーで頭をガツンとやられた気がした。競馬の馬を育てたいと聞いてまたまたびっくりした。競馬場にすら行ったことがないわたしたちなのに、競馬馬を育てたいだなんて……。「やめときよ。」の言葉が喉まで出かかったが、ぐっと飲み込んで、「ねえちゃんの人生やから……。自分の夢をかなえたらええ。」と返事した。

 夢を実現すべく長女は、猛勉強した。わたしができることは、健康管理と励ましの言葉をかけることだけだった。

 小学4年生の社会科の教科書の根室地方の人々のくらしから得た知識を食事時の話題にしたことがある。「酪農がさかんで、人口の6倍もの牛を飼っている。牛に注意と書かれた道路標識がある。」などなど。夫はぽかんと口を開けてわたしの話を聞いていた。相当驚いたようである。が、長女は、「根室と一緒にせんといて。わたしが行くのは帯広よ。育てるのは、馬。」と涼しい顔で言った。それからというもの夫は、長女の志望大学を聞かれる度に、「競馬馬を育てたいと言うんです。牛の数が人の6倍もある所に行きたいと言ってるんですよ。」と説明していた。

 結局長女は、浪人生活を送ることになってしまった。結果が出た日、わたしは、長女に言った。「姉ちゃんには、3つの道がある。大阪にこのままいて来年再挑戦する方法、予備校が多いだろうと予想される札幌で生活する方法、そして、地元の帯広で浪人生活を送る方法。」長女は、3つ目を選んだ。

 住む所は、地元の不動産業者がファックスを送ってくれたものを現地に行って決めてきた。飛行機やホテルの予約も全て長女がひとりでした。引っ越しも誰の力も借りずにやり遂げた。当分会えない鳥取県のおばあちゃんの所へも二女と一緒に泊まりに行った。

 出発前の1週間は、18年の人生の中でおそらく1番ハードであったのではと思うほど長女は、忙しく動き回っていた。

 最後の晩ごはんは、すき焼き。長女と二女が買い物も準備も味付けも全部してくれた。

長女に大ウケした二男の言葉は、「ありさ、飛行機で北海道へいっちゃうよ。」「ぶんぶん(自分のこと)、電車であとからおいかけるからいいもん。」

 「みんなで見送りに来てね。おにぎりを作ってね」との長女の希望通り、家族6人がそろって空港に行った。長女と大の仲良しの長男は、目にいっぱい涙をためて、姉を見送った。「いつ帰ってくるの?」「夏休みに帰ってくるよ。」 そうだ。夏休みを待とう。元気に帰ってくる娘を。 

 長女は、にこにこ笑いながら、おにぎり3つを持って関西国際空港から北海道へ旅立った。「ありがとう」の手紙を残して……。