「オタク」はどういう意味?

小矢野哲夫

 「お宅」は話し言葉で使われる二人称代名詞で「自分と同等で、あまり親しくない相手に軽い敬意をもっていうことば」(『角川必携国語辞典』)である。俗語と注記する辞書もある。これが「オタク」「おたく」とかな書きされると「特定の趣味にのめりこんでいる(内向的な)マニア」(『三省堂国語辞典(第五版)』二〇〇一年)という意味に変わる。
 この新用法は一九八三年に中森明夫が雑誌『漫画ブリッコ』(白夜書房)六月号のコラム「『おたく』の研究1 街には『おたく』がいっぱい」で命名したことによる。マニアだとか熱狂的なファンだとかネクラ族といった用語ではしっくりこないことから命名したそうだ。(注)
 中野収『新人類語』(一九八六年、ごま書房)に「ケンカを売らずに、情報交換するクールな新人類」と紹介されている。新語・流行語をいち早く登録することで知られる『現代用語の基礎知識』(自由国民社)がこの語を初めて登録したのは六年後の一九九〇年版の「おたく族」である。八八年から八九年に発生した連続幼女誘拐殺人事件で八九年に逮捕された容疑者の性癖とこの「おたく」との類似性が話題になったことが要因で、この年の登録になったと考えられる。九一年版『現代用語の基礎知識』「マンガ文化用語の解説」(米沢嘉博)の「おたく」の以下の説明が「おたく」像の共通認識であろう。

 本来、マンガ、アニメ、SF、特撮などのファンの中で、つき合いたくないタイプを表す言葉(中略)。排他的であり、マニアックにこだわり、うまく人とのコミュニケーションがとれない、などの特徴があり、長髪にTシャツ、Gパン、小太りといったスタイル(中略)。相手に呼びかける時『おたくは…』という言い方をすることからきた言葉である。

 中森の命名に対して大塚英志がその差別性に激怒したそうだが、「マンガおたく」「アニメおたく」から「ウルトラマンおたく」などとも言うようになり、自嘲気味ではあるが自己言及用法も現れ、差別性は薄まったと言えよう。筆者なら、さしずめ「ことばおたく」「日本語おたく」である。


「日本国語大辞典第二版オフィシャルサイト」
http://www.nikkoku.net/tomonokai/toukou_card.html?snum=148

(『日本語学』2002年11月臨時増刊号)

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