アミタケ胞子の発芽と菌根形成


1.  

 1999年の林学会では、19968月に広島県加計町内のアカマツ天然林において行なった除伐や地がきといった、林内施業後のアミタケ子実体の発生位置を調査し、子実体から分離した菌株を用いて対峙培養およびDNA分析を行なった結果について報告した。

 1999年も引き続き調査を行ない、過去4年間の発生位置の変化をまとめた結果を図1に示した。マツタケでは発生位置が同心円上に年々拡大し、シロを形成することが多くの研究で明らかにされているが、アミタケの発生位置の変化にはそのような傾向は認められず、アミタケはシロを形成しない種であると考えられた。

 1998年に分離した菌株から抽出したDNAを用いたISSR多型解析の結果、遺伝的に同一であると判定されたグループ(以下、GIG: genetically identical group)は、施業区においては4つ、対照区においては2つ存在し、これらは対峙培養の結果とほぼ対応していた。1998年に採取・分離した菌株の結果とあわせると、土壌中のアミタケ菌糸の伸長速度は年間20cmとされているが、それよりはるかに離れた、過去2年間には発生が見られず、アミタケが存在していなかったことがほぼ確実な位置に発生した子実体でも同一のGIGに属する例が多数みられた。これらのことから、アミタケは主に胞子散布によって繁殖を行ない、種を維持していることが示唆された。

これまでの研究から導かれた推論を実験的に検証するためには、アミタケ胞子を用いた室内での実験が不可欠である。しかし一般的に、人工条件下での外生菌根菌の胞子の発芽率は極端に低く、このことが外生菌根菌の胞子を用いた研究を進める上での障害となっている。



テキスト ボックス: 図1.アミタケ発生位置の経年変化 (左:施業区、右:対照区)
(1996年には施業区においてアミタケの発生は見られなかった)


 人工条件下で胞子発芽を行なう際,支持体として寒天が最もよく用いられるが、寒天をオートクレーブすることにより、胞子の発芽を阻害する物質が生成すること、また、その阻害物質を除くには活性炭による吸着が有効であることが報告されている。また、培地上にマツの無菌苗を置くことで発芽率が向上すること、根の抽出物の分析からアビエチン酸がSuillus属に特異的な胞子発芽促進物質であることが報告されているが、これらの効果について定量的に比較した研究は報告されていない。

 そこで本研究では、これまでに報告された手法の組み合わせによるアミタケ胞子の発芽率を比較した。また、角型シャーレに植え付けたアカマツ無菌苗に胞子懸濁液を接種し、その後の根系の観察を行なった。

 

2. 材料と方法

 胞子の採取

 成熟したアミタケ子実体を採取し、滅菌済シャーレの蓋に張り付け、胞子を落下させることで胞子紋を得た。シャーレは使用時まで4℃で保存した。

 胞子発芽率

 1%寒天を活性炭処理したものと無処理の2種類作成した。これと、アカマツ無菌苗を加えるもの、アビエチン酸を添加するもの、対照、の3通りを組み合わせた計6通りの処理方法について検討した。

 胞子懸濁液を加えて23℃のインキュベーターに入れ、その後の発芽率を定期的に測定した。

 胞子接種による菌根形成実験

 アカマツ種子を表面殺菌して無菌下で発芽させ、オートクレーブ滅菌した赤玉土を支持体として入れた角シャーレに植え付けた。その後胞子懸濁液を接種し、根系の様子を定期的に観察した。

 

3. 結果と考察

 予備実験でアミタケ胞子の発芽が見られたのは、活性炭処理をしてアカマツ無菌苗を置いた処理のみであった。菌根形成実験では、接種後56週目にアカマツの細根を菌糸が覆っている様子が肉眼でも確認できた。 このように、胞子接種で容易に菌根形成が観察できたことから、アミタケが胞子散布だけでも繁殖を行なえる可能性が示された。