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2018年07月10日最終更新

シュトックハウゼン音楽情報

インデックスニュースコンサートスコアCD┃テキスト┃オーダーメールリンク

テキスト:シュトックハウゼン全集・ライナーノート:CD12A-B (監修済)

シュティムング(調律)<1968>

6ボーカリストのための

作品について

(1969年8月21日に書いたプログラム・ノート、1992年に補遺)

6ボーカリストのための『シュティムング』はラインランド音楽院のアンサンブル、コレギウム・ボカーレ・ケルンのためにケルン市からの委嘱によって着想されました。楽譜は1968年2月から3月の間に、私が妻のマリー・バウアーマイスターと二人の子供ユリカとジモンとともに二ヶ月間住んでいた、コネチカット州(アメリカ合衆国)マディソンのロング・アイランド・サウンドの家で書かれました。ユリカは当時二歳で、ジモンはちょうど八ヶ月になったばかりでした。ハワイとメキシコの暑い気候のなかでの長い講演とコンサートの旅のあとに、私が到着したのはこの雪に囲まれた家でした。
 作業机の窓から、私は水平線まで雪でおおわれて凍りついた湖面を眺めました。私はコレギウム・ボカーレ・ケルンのためのボーカル6重奏の作曲を始めて ---声楽曲を作曲するときにいつもするように---夜遅くまで書きながら声を出して歌いました。ときどきマリーが部屋にやってきて子供たちが寝なければならないことを合図しました。そういうとき私はハミングで歌い、そしてそのプロセスでとても奇妙な発見をしました:いくつかの母音を持続しているときに、私は喉と口、鼻腔、前頭洞が振動しているのを感じ、そして各母音で特定の倍音を大きくかつはっきりと聴き取れるようにすることができることを発見したのです。
 この、倍音の精確な強調はとても強く私を魅了したので、私は続けて何時間も倍音歌唱を練習し、母音のリストをそれに相当する倍音とともに書き出し、[u]から[a]と[i]と[oe]を経て[u]に戻る倍音の円を作成し、暗いから明るいから暗いへの倍音のグリサンドを試み、そして私はこの新しく発見された母音の性質に徹底的に没頭してしまったので、取りかかっていた音高による声楽を放棄して、そして初めからスケッチと作曲をやりなおすことにしました。

 『シュティムング』はこうして生まれました。そこには言葉の普通の意味でのメロディーは存在せず、むしろ六つの基音の倍音スペクトルの範囲内での倍音メロディーが存在します。6つの基音もまた、低音B♭の上のたった一つの倍音列の倍音関係にあり、そのインターバル比は2:3:4:5:7:9です。私は51個の「モデル」を作曲し、各々の「モデル」において特定の母音の、つまりそれに対応する倍音の組み合わせに集中しました。ときたま意味のある音節や言葉が現れるとしても、倍音メロディーの中へのそれらの挿入は主に母音の特質によるものです。それらの意味はそのとき精神的・宗教的(アウム、ネメシス・アルテミス、フェニックス、など)またはユーモラス(ヒピ、ギ・ゲ・ガ・ゴ、ゴット・ノホ・アインマル(=そらもう一度だ!)など)です。
 ある箇所では、私が恋におちていた1967年4月の日々に、サンフランシスコ近郊のサウサリトとサンフランシスコとキャーメルの間のビーチで書いた詩を使用しました。加えて、メキシコで学んできたばかりのトルテックとアステカの神々の名前を使用しました。友人のアメリカ人人類学者のナンシー・ワイルに手紙を書いてあらゆる文化の神々の名前を私のために収集してくれるよう頼みました。そして、作曲し終わったモデルにつけ加えて、6声のそれぞれに11の「マジック・ネーム」を割り当て、すなわち6x11=66のマジック・ネームを楽譜に挿入しました。
 音楽を完全に記譜してしまってから、私は色々な意味にとれる『シュティムング』を題名に選びました:それは「純正調律」を意味し、そこではボーカリストは低いB♭を基音とする第二、第三、第四、第五、第七、そして第九倍音を歌います。調律が不純になったときはいつも、歌手は常にこの倍音スペクトルに戻らなければなりません(歌手の傍のテープ・レコーダーからとても小さな音で再生される純粋な倍音の和音の助けによって)。『シュティムング』には、ボーカリストが新しい「サウンド・モデル」を音楽的コンテクストの中へ導入するたびに始める「調音」の意味もあります;あるいはコンテクストの中へ自由に呼び入れられる「マジック・ネーム」の融合の際の、リズム的、強弱的、音色的な調音も意味します。さらに ---なによりもまず---ドイツ語の『シュティムング』には、雰囲気、オーラ、心の状態や気分という意味があります(例えば、「良いシュティムング」や「悪いシュティムング」と言うときには、人間と周囲の状況がより良く・より悪く調和しあっているということです);また『シュティムングStimmung』という語のなかには「シュティメStimme」(=声)が隠れています。

 何ヶ月もかけて、歌手たちはまったく新しい声のテクニックを学びました:声の音はできるだけ弱く、そして特定の倍音--- 2から24までの数字のセリーと発音記号の母音のセリーによって示される---は可能な限り優勢に歌われる必要があります。ビブラートを用いないで、前頭洞ならびにその他の頭部の空洞だけで倍音を共鳴させます;呼吸は長く、穏やかに、そして均等にします。あらゆるニュアンスを聴き取れるようにするために、声はそれぞれに個別のマイクとスピーカーで増幅されます。

 3人の女声はそれぞれ八つの「モデル」をもち、3人の男声にはそれぞれ九つのモデルがあって、そしてそれぞれの声部は11のマジック・ネームをもちます。歌手はマジックネームを---フォルム・シェーマに従って---前後関係に応じて自由に演奏にとりいれるができ、それに反応して他の声は、変換、変化に富んだ逸脱、うなり、そして一致によって反応します。

 指揮はされません。ある与えられた声の組合せのなかでは、そのつどの「モデル」歌手が導き、そして正しい瞬間に到達したと感じたときに、主導権を次のモデル歌手に引渡します。
 歌手の一人がマジック・ネームを呼び掛けると、マジックネームは「モデル」のテンポで、そして「モデル」と同じような発音で、つぎの新しい「一致」に再び到着するまで周期的に反復され、そのつど支配的な「モデル」に統合されます。モデルの唇と口のポジションは可能な限り保持され、それによって名前は多かれ少なかれデフォルメされて響きます。マジック・ネームへの反応が、ムードの変化をはっきりと知覚できるものにします。それは名前の特徴と意味によって喚起されるものです。

3人の男性はそれぞれが前後関係において彼らのモデルの一つで「詩」を朗唱し("MeineHa"nde..."(私の手は…)、"Langsamen..."(ゆっくりと)、"difffff-dafffff...")、女性のうち一人が詩"ruseralkrusel"を朗唱します。これらの詩はマジック・ネームが統合されたのと同じ方法で音楽の流れへ統合されます。

『シュティムング』は本当に瞑想的な音楽です。時間は停止します。音響の内部、和声的スペクトルの内部、母音の内部、「内なるもの」に耳を傾けます。最も微妙な波動 ---まれな爆発---、あらゆる感覚が敏感で穏やかです。官能的な美のなかで永遠の美が輝きます。

『シュティムング』はマリー・バウアーマイスターに献呈されています。

コレギウム・ボカーレ・ケルンのボーカリスト6人全員が、1968年にはとても若くて、そのうち3人はまだ音楽学生でした。世界初演を歌った6人のボーカリストはダグマー・アペル、ソプラノ1;ギャビー・ローデンス、ソプラノ2;ヘルガ・アルブレヒト、アルト(メゾソプラノ);ウォルフガング・フロメ、テナー;ゲオルク・スタインホフ、バリトン;ハンス=アルデリヒ・ビリヒ、バスでした。
 1968年3月から12月にかけて、私たちは定期的に『シュティムング』のリハーサルをしました。世界初演の一週間前に、グループは隔離状態で毎日一日中リハーサルをしました。世界初演と二度目の上演が1968年12月9日と10日にパリのMaison delaRadio,FoyerB、ORTFにて行われました。コンサートはドイツ文化センター(ゲーテ協会)とパリORTF音楽研究グループの共同企画でした。
 マックス・エルンストは彼のご婦人方とともに最前列に、ピエール・スヴチンスキーとその妻マリアンヌ(旧姓スクリャービン)は7番目に座るなど、とにかく両夜とも著名人でホールは一杯でした。おそらく聴衆に囲まれた演奏台の床のうえに、輪になって、足を組んで座った歌手たちのカラフルなシャツ、刺繍されたスカートと素足のためでしょうか、演奏はマスコミによって「ヒッピーのキャンプファイヤー」と評されました。歌手たちは75分間にわたってほとんど動かず、音楽に沈潜し、中心には小さなランプを置いて、各自マイクを持って歌いました。振動膜が天井の方へ斜めに向けられた、六つの球状スピーカーが彼らを囲んでいました。
 世界初演と数多くの上演の後で、とてもゆっくりとですが、意識的な倍音歌唱への一般的関心が高まっていきました。私の作品『シュテルンクラング』(1971年)は『シュティムング』で使用されたテクニックを20人の歌手と器楽奏者に移して拡張しました。それ以来、私は作品で数多くの新しいタイプの倍音歌唱を作曲してきました。

 1969年10月30日と31日に、コレギウム・ボカーレ・ケルンは、私を録音監督として、『シュティムング』の最初のラジオ録音を作成しました。WDRケルンは三つのバージョンを録音し、それぞれが中断なしで録音されました。私たちは三番目のバージョンを---わずかな変更もしないで---放送用に選びました。この録音は演奏時間が約75分で全集CD12Aに収録されています。

 1968年から1982年の終わりまでに、コレギウム・ボカーレ・ケルンは『シュティムング』を約300回歌い、そのうち72回の上演は1970年3月13日から9月13日までの大阪万博のドイツ館の球状オーディトリウムで行われました。

 『シュティムング』の新しい録音は1982年9月13日から15日にWDRケルンで作成され、そして全集CD12Bに収録されています。歌手たちは1974年からグループに参加したテナー2、ヘルムート・クレメンスを除いて、世界初演と同じです:ダグマー・フォン・ビール、ソプラノ1−ギャビー・オルトマン=ローデンス、ソプラノ2−ヘルガ・ハム=アルブレヒト、アルト(メゾソプラノ)−ウォルフガング・フロム、テナー1−ヘルムート・クレメンス、テナー2−ハンス=アルデリヒ・ビリヒ、バス。

 音楽監督:ウォルフガング・フロメ(コレギウム・ボカーレ・ケルンのリーダー)とカールハインツ・シュトックハウゼン。サウンド・プロジェクションと録音監督:カールハインツ・シュトックハウゼン。コレギウム・ボカーレ・ケルンによる『シュティムング』の二番目の録音(1982年)は1969年に録音されたものと同じバージョンですが、しかしながら、短かめで、演奏時間は63分間です。

楽譜

『シュティムング』の楽譜はウイーンのユニバーサル・エディション社から出版されています(楽譜番号UE14805)。1969年の最初の録音(全集CD12Aに収録)の後で、私は世界初演で歌われたバージョンをパリ・バージョン(1968年)と称し、この副題で『シュティムング』の二番目の楽譜としてユニバーサル・エディション社から出版しました(UE14737)。この二番目の楽譜では、あらゆるディテール、持続、セクションの順序が1969年の録音の通りに記譜されています。
 6ボーカリストのための『シュティムング』のオリジナル楽譜は6声のそれぞれに、解説、フォルム・シェーマ、そして八つないし九つのモデルのページとマジック・ネームのページからできています。歌手はそれぞれ彼のモデルとマジック・ネームのページを切り離します。モデルの順序は自由です。

3人の男声のうち一人のモデルのページ

<譜例>略

これらのモデルを歌うのはパリ・バージョンでは、バスです。

各モデルと各マジック・ネームは一回の上演において一度だけ使用されます。

<譜例>略

パリ・バージョンのために、コレギウム・ボカーレ・ケルンと作曲家は、51のモデルとマジック・ネームの順序を一緒に決めました。それ以来、この順序は保持され、ほとんど変更されていませんが、しかし時間の経過にともなって、オリジナルよりも多くのマジック・ネームが使用されました。

『シュティムング』のフォルム・シェーマ(1968年)

<譜例>略

フォルム・シェーマの解説

1.フォルム・シェーマでは、51の声の「組合せ」が1から51まで番号付けられています。それぞれの組合せにおいて、6人の歌手のうち一人が太い線の音高をもっています。彼または彼女は自分のモデルの一つを選んでそれをこの音高で歌い、モデルのひとまとめになっている部分〔::〕(この部分はモデルの「ピリオド」と呼ばれます)を絶えず規則的に反復します。

2.細い線の音高は以下のように解釈します:

a)もしそれが休止の後または複縦線の後で始まり、そしてモデルの音高と異なっているならば、そのときはモデルの音高に対し完璧に同調して---倍音として---歌います;テンポ、リズム、音色とエンベロープ(アクセントの配分)は可能な限りすみやかにモデルと一致させます。
(パリ・バージョンではsynの指示)

b)もしも小節線なしで、次の組合せにおいて、同じまたは別な音高の細い線とともに続いているならば、そのときは同じテンポ、リズム、音色とエンベロープで、周期性を変えることなく、先行の組合せのまま歌い続けます。
(パリ・バージョン:〔::〕→)

c)もしも小節線の後で、次の組合せにおいて、同じまたは別な音高の細い線とともに続いているならば、そのときは先行モデルのテンポ、リズム、音色とエンベロープを、任意の順序で、新しいモデルのそれらへと徐々に変換し、やがて完全に一致させます。
これらの音高は丸で囲まれたTで印されています。(パリ・バージョン:□trans.)変換は一人一人が行い、連続的でなければなりません。すなわち、新しいピリオドの長さに合わせるためのリタルダンドまたはアッチェレランド(シンコペーションの漸進的な排も);母音の正方形図(声のテクニックを参照)の配列にしたがった母音の移行と単一母音の漸進的な交換による音素の変換;エンベロープのアクセントの漸進的な移行。

d)もしもそれが小節線の少し手前で始まるならば、そのときは先行モデルの最後の数ピリオドはモデル歌手と同様に歌い、小節線の後からは、2c)に示されたように変換をはじめます。(パリ・バージョン:letzte Per.)

<譜例>略

3.フォルム・シェーマの六つの括弧でくくられたセクション<記号:略>では、それぞれの組合せにおいて様々な声部が同じ音高で歌いますが、休止の次に細い線の音高をもつすべての声部は、一人一人、音高、テンポ、リズム(シンコペーションの導入)、音色(例えば、つぶれた声---声門音---鼻音などによって)そしてエンベロープを、ヴァリエーションをつけつつ逸脱させて歌ってください。モデルからの逸脱とモデルへの回帰は、連続的に行われねばなりません。各声部は一度に一つのパラメーターだけで逸脱して、他のパラメーターはモデルと同一に保つこと。ただし音高と音色のグリサンドは、同時でもかまいません。
(パリ・バージョン:<記号:略>)
モデルの歌手は合図を与えてその「組合せ」の終わりを知らせます。他の歌手はそのときユニゾンに至るまで調音して、彼の音高に完璧に合わせますが、音高以外のパラメーターにおける最後の逸脱を周期的に反復することもできます。

4.あらゆる組合せにおいて、モデルの歌手は、全員が彼とまったく同一になったと感じるまで、自分のピリオドを反復します。そうなったら、ピリオドをあと何回か(アドリブ)反復して、そして次のモデル音の入りを合図します(フォルム・シェーマの点線矢印を参照)。

5.<N>の記号をもつ組合せにおいては、「一致」に到達した後で、他の声部の一人(たとえこの組合せのあいだ休止であっても)が自分のマジック・ネームの一つを呼び掛けることができます。マジック・ネームは、それぞれ非常に明瞭に発声しなければなりません。強調するために一つの名前を数回呼び掛けることもできます。一致している声部は、そしてこれらの声部だけが、呼びかけにつづいてすぐに(しかし全員が同時にではなく)、同じ音高とテンポで、そして「モデル」とほとんど発声・発音で、マジック・ネームを周期的に反復し、このようにしてマジック・ネームをモデルに融合させます。それゆえモデルの唇と口のポジションは、マジック・ネームが多かれ少なかれデフォルメされて響くように、保持されなければなりません。マジック・ネームの母音とモデルの母音配列は互いにできる限り順応させます。マジック・ネームへの反応が、マジック・ネームの特性と意味によって喚起されるムードの変化を、はっきりと知覚できるようにします。一つの組合せにおいて六つまでのマジック・ネームが登場できます。

2c)による変換は、組合せ<N>ののち、まず最後に融合されたマジック・ネームでピリオドを続け、そしてそれを徐々に新しいモデルのピリオドへと変換します。一回の上演ですべてのマジック・ネームを使用する必要はありません。

マジック・ネームの融合の二つの例(パリ・バージョン)

<譜例>略

五つのモデルでは、マジック・ネームがすでに組み込まれて作曲されています。パリ・バージョンでは、組み合わせ27[<発音記号:略>](ウジ=アフー)、32[<発音記号:略>](ハートールルル)、35[<発音記号:略>](ムルグ)と[<発音記号:略>](ウヴォルヴ)、36[<発音記号:略>]"hell"(輝く)と組み合わせた(ヘレナ)、37[<発音記号:略>](ヴィシュヌー)です。
 他のマジック・ネームをどのように融合するかについて、ボーカリストはこれらの作曲例を参照して下さい。

<譜例>略

6.フォルム・シェーマに音高指定のない譜表が現れるところでは、その譜表の声部は(比較的長い休止を伴って)ところどころ、他の誰かの音高(その誰かをも変えつつ)の周囲で、小さく、大体においてゆっくりとグリサンドしつつ、非常に小さな音高差によって生じるビートを利用して歌います;さらに、その当の声部は、彼らのリズム、音色、エンベロープと同一化することになりますが、かならず相応の逸脱を伴わねばなりません(シンコペーション、中間音色、アクセントの増加と減少)。その譜表の次に音高指定のある譜表が来る場合、その譜表は常に複縦線で終わります。

7.指揮はしないこと。「組合わせ」は、あるモデル歌手から次の歌手に与えられる合図を通して、互いに連続的に続いていきます。組合せから組合わせへのその他の合図や変化は個別に行われるもので、正確な同期は必要ありません。括弧でくくられた6つのセクションでは、いくつかの組合せにわたって歌い続ける声部は、モデル音が登場した後のどこかの時点で、音高を変えてもかまいません。

フォルム・シェーマに記譜された51の組合せのなかで生じる音楽的プロセス---例えば変換、ヴァリエーション、「撹乱」、そしてマジック・ネームの融合 ---はパリ・バージョンが上演された最初の年の間に繰り返し検討され改訂されました。私たちは---『シュティムング』のオリジナル楽譜の解説で提案されていたような---モデルとマジック・ネームのランダムな順序に基づいた自由なバージョンを歌う試みを、そのようなバージョンの誤謬性とアンバランスさゆえに、断念しました。

51の音響モデルの順序付けにおいて、私たちは倍音スペクトルへの穏やかな調音を可能にしてくれるようなモデルを始めのモデルに選択しました。

<譜例>:略 パリ・バージョンの組合せ1
<譜例>:略 パリ・バージョンの組合せ2
<譜例>:略 パリ・バージョンの組合せ3

詩の挿入されたモデルは、パリ・バージョンでは不規則な間隔をあけて、組合せ16-27-32-43に分配され、これによって大形式での和声的区分が生じます。

<譜例>:略 パリ・バージョンの組合せ16
<譜例>:略 パリ・バージョンの組合せ27
<譜例>:略 パリ・バージョンの組合せ32

"Langsamen..."の融合の例

<譜例>:略
<譜例>:略 パリ・バージョンの組合せ43

パリ・バージョンの編曲では、個々の組合せが様々な持続をもつように注意しました。極端に長い・短い組合せが、単調な持続を防ぐのです。

最後のモデルはアクセントづけられた呼吸へ移行し、ますますゆっくりになり、強調はより少なく、そして次第に空間へと消えていきます。

<譜例>:略 パリ・バージョンの組合せ51

『シュティムング』の声のテクニック

『シュティムング』は特別な声のテクニックを必要とします:

ボーカリストが一息で非常に長く歌うことを可能にして、彼自身とモデルの音高(または別の参照する音高)と他の歌手を聴くために、ビブラートなしで最小の音の大きさで歌わなければなりません。歌手は輪になって互いにぴったりと座ってください。
 大セクションの平均強弱レベルは---モデルのグループの主な特徴に応じて--変化をつけなければなりません。

ある母音のなかの特に強調されるべき倍音を示す「数字」とともに、モデルのなかには、音色を記譜するために発音記号が記譜されました。

以下の母音の正方形において、各々の母音には二つの数字がついています。それらはその母音を歌っているとき、可能な限り強く聞こえてくるべき倍音を示します;母音の下の数字は低い男声に適用し(例えば114Hzの音高)、母音の上の数字は高い男声と低い女声に適用します(例えば285Hzの音高)。

モデルに記譜された数字はもちろん相対的なもので、つまり比較的「低い」と「高い」声域だけに適用され、その間には、連続的な推移があります(例えば[u]で、低い男声が、グリサンドで上昇し、第四倍音がゆっくりと第三倍音、第二倍音へと変化し、そして第五、第七と第九倍音のような中間的立場はなくなります)。歌手はそのために、彼らの声音の音域によって、倍音の数を相対化できます(音高が高ければ高いほど、数を少なめにする、つまり規定の母音よりもより少数の母音しか明瞭に表現できないということです)。

充分な練習を積めば、歌う音高は比較的小さく、優位を占める倍音は比較的大きく聞こえるようにすることが出来ます。所与の母音において記譜された倍音を得るためには、練習で常に[u](最も絞ったポジション)から始めることが最良です。[u]は母音で最も閉じて、この場合、口笛を吹くときのように、とがった、しわになった唇で共鳴するようにしなければなりません。喉を大きく開く(喉頭を開く)感じで口により呼吸することを推奨しますが、それによって、口と喉の部分をリラックスして大きく開くことで、頭部の共鳴する空洞も開かれます。柔らかい口蓋もこのようにリラックスして鼻の空洞を共鳴器として開きます(誤解の無いように:一般的に、スイング・ダッシュ~が母音の上に書いてある場合を除いて、歌声が鼻にかかったように響いてはいけません)。
 この共鳴ポジションで、一定の持続音を、静かなビブラートなしの頭声で歌い、きわめて連続的にゆっくりと、一つの倍音から次の倍音へと強調しつつ、[u]から[<発音記号:略>]-[a]-[ε]をへて[i]、あるいは[<発音記号:略>]-[oe]-[Y]をへて[i]と歌い続けます。

[u]から[i]への二つの異なるセリーが習得できたら、母音の正方形型の両方向での逆行も練習しなければなりません。あらゆる母音を可能な限りはっきりと聴こえるようにするために、最初は歌いやすい低い音域から始めるのがよいでしょう。それから、テープに録音した正弦波の和音の助けをかりつつ、楽譜で指示された個々の声部の音高で母音の正方形型を練習します。

経験から言えることですが、長時間にわたる声の倍音をつくるために必要なリラクゼーションに達するためには、バスはD3<譜例:略>を、二人のテナーはD4<譜例:略>とC5<譜例:略>を、ファルセットで歌う必要があります。
Ab4<譜例:略>はパリ・バージョンでは除外されています。これらの予備練習の後で、モデルのリハーサルを始めます。

歌手がモデルを始める前に、歌手は--上演のあいだでも--次の音高の持続音を[u]から正確な倍音の位置に達するまで ---それ以降でも何度か続けて---調音し、そして調音ができてからのみ、モデルを始めます。ほとんどすべてのモデルで、絶えず反復されるピリオドに続けて持続音が記譜されていて、これらの持続音は「ときどき個別に」または「全員で」反復のシーケンスのなかに挿入できます。これらの持続音の間に倍音のポジションを訂正できます。

純正調律からの離脱(例えば、長い時間の経過による音高の全般的な降下)はとても漸進的に集団的なグリサンドによって訂正しなければなりません。テープを参照して、歌手の一人が詠唱をチェックすること、そして歌手全員が再び調音できるまで、正弦波の和音の音量を注意深く大きくしなければなりません。

ブレス休符は個別に任意に、ピリオドの終わりだけでなくとも、行なって構いません。しかしながら、再び歌い出すとき他の歌手にすぐに同期できるように、ブレス休符のあいだも同じテンポで、あるいは他の歌手について、心の中で歌い続けて下さい。

ピリオドに続けて記譜されている標準的な持続については、そのすべての長さを持続する必要はなく、その代わりにブレス休符として埋め合わせても構いません。歌うことをいったん止めて、モデルの音高あるいは他の歌手がどのように歌っているかを聴くこともできます。

新しい「組合せ」が始まる前に、モデル歌手は徐々に腕を挙げて、現在の組合せが終わりに近付いていることを歌手全員にしらせます。そのとき彼(彼女)は、次のモデルの特徴に応じて、次のモデル歌手に向けて多少ともはっきりとした強拍を与えます。腕を挙げる合図は、次のモデル歌手が調音するのに充分な時間がとれるように、早めに行わなければなりません。

『シュティムング』のテンポ

倍音歌唱の新しい声のテクニックは、音高と倍音と同じようにテンポと拍子を正確歌う能力と一致します。『シュティムング』では、テンポと拍子は音高と倍音と同じ割合を使用して作曲されています。
 9つのテンポの6つのセリーはそれぞれが基礎テンポ3に基づいていますが、基礎テンポ3自体は使用されていません。2-3-4-5-7-9による基礎テンポの乗算により、6つの基本テンポ6-9-12-15-21-27ができます。この6つの基本テンポのそれぞれが、1-2-3-4-5-6-7-8-9の乗算による9つのフォルマント・テンポのベースとなっています。こうして、6x9=54のテンポが帰結します。

<表>略

51モデルのそれぞれにこれらのテンポの一つが割り当てられています。しかしながら、最上段のセリーのテンポ135(5x27)はテンポ45(5x9)をもつモデル(パリ・バージョン[11]バス)へと統合され(第二ピリオドとして)、そしてテンポ75(5x15)はテンポ60をもつモデル(パリ・バージョン[38]テナー2)に統合されています(第二ピリオドとして)。テンポ30(2x15)はテンポの数をモデルの数に一致させるために、除外されました。

51のモデルのリズムは、下記の表に従って作曲されました。

つまり最上段(1番目)のテンポ・セリー(243から27)のモデルはそれぞれ9x1拍を有し、

2番目のセリー(189から21)のモデルはそれぞれ7x2拍を有し、

3番目のセリー(135から15)のモデルはそれぞれ5x3拍を有し、

4番目のセリー(108から12)のモデルはそれぞれ4x4拍を有し、

5番目のセリー(81から9)のモデルはそれぞれ3x5拍を有し、

6番目のセリー(54から6)のモデルはそれぞれ2x6拍を有します。

以下の表に示されるように、各テンポには一つの主要母音が結びつけられています。六つの基本テンポだけが母音の循環全体のなかで移動します。
 それぞれのボックスには、「組合せ」番号がパリ・バージョンのモデル歌手の指示と一緒に記入されています(例えば[16]Bは、組合せ[16]・バスを意味します)。その下はメトロノーム指示と主要母音です(例えば、243[u])。

パリ・バージョン

<表>略

六つの基本テンポは最後のフェルマータ<記号:略>とブレス休止を加えられるようにわずかに速められます。これら最もゆっくりとしたモデルはそれぞれ約20秒続きます。

六つの声部におけるテンポと主要母音は「モデル」によって決定されます。下記の表は各声部のための「速く」から「ゆっくり」までの進行→と↓を示します。

<表>略

曜日

51モデルのうち七つでは、母音が七曜日の名前に結びつけられています。パリ・バージョンでは、それらは以下の組合せに割り当てられています:

 [3][<発音記号:略>](moon'sday:月の日)−=長く、引き延ばす
    [<発音記号:略>](Monday:月曜日)  −=次第に推移
    [<発音記号:略>](Montag:ドイツ語−月曜日)

[15][<発音記号:略>](Friday:金曜日)
    [<発音記号:略>](Frigga-Tag:ドイツ語−フリッガの日)
    [<発音記号:略>](Freitag:ドイツ語−金曜日)

[29][<発音記号:略>](Wotan'sday:ヴォータンの日)
    "Mittwoch"(ドイツ語−水曜日)
    [<発音記号:略>]
    "Wednesday"(水曜日)

[38][hYieYieヨヨヨ]のピリオドはときどき[nY:]へと導き、そして一つの声が"comple`tement nu"(フランス語−オール・ヌード)と話します。
    仄めかされたこの裸と土曜日が結びつけられます。
    [<発音記号:略>](Saturn'sday:土星の日)
    [<発音記号:略>](Saturns-Tag:ドイツ語−土星の日)
    "Samstag"(ドイツ語−土曜日)

[39][<発音記号:略>]"Sonn-tag"(ドイツ語−日曜日)/[<発音記号:略>]
"Sun-day"(日曜日)

[47][<発音記号:略>]/[<発音記号:略>]/[<発音記号:略>]/"Dienstag"(ドイツ語−火曜日)
    [<発音記号:略>](Tuesday:火曜日)

[49][<発音記号:略>](Thursday:木曜日)/[<発音記号:略>]("Thorstag")/[<発音記号:略>]("Donnerstag":ドイツ語−木曜日)。

そして終わり近くに、Freitag(金曜日)からMittwoch(水曜日)までの曜日がモデル歌手によって素早く連続して呼びかけられ、そして「Donnerstag(木曜日)」が全員同時に歌われます。

<譜例>略

暗示

パリ・バージョンの組合せ[9]で、神聖な言葉[a→um](AUM:アウム)が[kala](インド語:母なる大地)と連合され、そこへバスがユーモラスな韻文「Nimm dichinacht(気をつけろ)」を付け加えます:

<譜例>略

エロティックな暗示を伴うモデルは、パリ・バージョンでは組合せ[42]に見い出されます:ゆっくりと反復される母音のグリサンド[<発音記号:略>]は流れる水のようで、各ピリオドでyoni(インド語:女性原理、始源のエネルギー、あらゆるものの源としての子宮、宇宙の力の象徴)の中に流れこみます。そこへ、「一致」においてテナー2が"Piperipipi"の詩をユーモラスに朗唱します。

<譜例>略

パリ・バージョン(1969年)の録音で出てくる順番でのマジック・ネームの起源と意味(全集CD12A):

組合せ
 [2]ヴィシュヌ             インド:創造主、光に満ちた神
 [3]タンガロア             ポリネシアのマオリ:創造主、海の神
 [4]ウシ=アフ             インドネシアのチモール:大地の神
 [5]ウラノス              ギリシャ:巨人の神、天上の神
 [8]ウヴォルヴゥ            アフリカのアクポソス:天国の創造主
[11]ヘーラー              ギリシャ:神々の母、結婚の守護神
[12]レア                ギリシャ:ゼウスの母
[13]エロヒム              ヒッタイト:神
[14]ムンガナガナ            オーストラリア:風の神
[15]アフラ=マズダ           ペルシャ:知恵の神、崇高な神
[19]ウシ=ネノ             インドネシアのチモール:太陽の神
    アイオルス             ギリシャ:風の神
    アバシ=アブモ           アフリカのイビビオス:天上の創造主
    ゲブ                エジプト:大地の神
    ヒナ=ア=テュアテュア=ア=カカイ ポリネシアのハワイ:伝説的な月光の神
[24]タモイ               南アメリカのグアラニ:天上の祖先
[25]イシス               エジプト:オシリスの妹で妻
[26]エリオン              ヒッタイト:嵐の神(高貴な姿)
[28]ヌート               エジプト:天上の女神
[29]ヴィラコチャ            ペルーのケチュア:文明の神
[33]グロゴラガリー           オーストラリア:太陽の神
[34]タモセイ              南アメリカのテュピ:天上の祖先
[35]アトゥン=ラ            エジプト:始源の神−太陽の神
[36]ランギ               ポリネシアのマオリ:天上の神
    ウイツイロポチトリ         アステカ:太陽の神、戦士
    ヤーウェ              ヒッタイト:嵐の神
[37]ヴァルナ              インド:天と地の創造主
[38]ヴィーナス             ローマ:愛の女神
[39]ムルグ               アフリカのアキクユス:天上の創造主
[41]トラロク              アステカ:雨の神
[46]スシスティナコ           アメリカ・インディアンのシア:天上の神
[47]セドナ               エスキモー:海の女神

楽譜の6x11のマジック・ネームのうちで、これら32のマジック・ネームだけがパリ・バージョンで使用されました。

パリ・バージョンでマジック・ネームの数が最も多く含まれる組合せ[19]。

<譜例>略

演奏実践

演奏者は:テナー2−ソプラノ1
      /     \
    アルト    ソプラノ2
      \     /
     テナー1−バス

と強弱バランスを調節するサウンド・プロジェクショニスト

1969年と1982年の録音で、アルトのパートはメゾ・ソプラノが歌い、そして1969年の録音でバリトンがテナー2のパートを歌いました。

周波数が57-114-171-228-285-399-513Hzの七つの正弦波または方形波の和音をテープに録音します。周波数はそれぞれ同じ音の大きさになるようにします。この倍音スペクトルは、歌手たちの平均音域によって、わずかに上下に移調できます;第五倍音(285Hz)を全員が容易に歌えるようにします。
 和音は最初の組合せの開始部分に先立つ調音の間に感知できないほどに弱めます。上演中はずっととても静かに演奏されます。音量は詠唱を修正する間にわずかに上げて、そして詩のとても穏やかなパートの間と最後の組合せの終わりにフェード・アウトします。
 歌手たちの音高は和音の音高と全く同一になるようにします;フォルム・シェーマに記譜された彼らの音高はそれゆえに、共有の基音の第二、第三、第四、第五、第七、そして第九倍音を示す、ただ相対的なものです。詠唱における逸脱(例えば長い時間の経過による音高の全般的な降下)は集団的なグリサンドによってとても漸進的に訂正しなければなりません。
 コレギウム・ボカーレ・ケルンが使用した正弦波の和音はWDRケルンの電子音楽スタジオで作成されました。それはスピーカー組込み式のテープ・レコーダー(9.5cm=3-3/4インチ/秒)かカセット・プレーヤーのどちらかを使用して再生されます。それは歌手の隣に置かれてテナー1がその音量を調節します。
 6人のボーカリストは---6本のマイクを使用して---すべての声が等しく良く聴こえるように、増幅音響が直接音響に良く混ざるような方法で増幅されます。歌手はそれぞれにマイクを、口のわずかに下に、手で持ちます。
 歌手たちは、オーディトリウム中央の演奏台(世界初演と大阪万博での全上演と他の数多くの上演の場合のように)か聴衆の前方のコンサート・ステージ上の伝統的な方法のどちらかで、輪になって座ります。もし歌手たちがオーディトリウムの中央に座るならば、彼らは聴衆によって囲まれ、そして6台のスピーカー(拡散器付き)を演奏台の周囲に設置します。世界初演で使用されたフランス放送局の球状スピーカーは、一方向の振動膜と球状の共鳴箱を備えていました。このようなスピーカーがこの作品に好都合ですが、なぜならそれらはどんな方向にも向けられ、特に上向きに、それによってフィード・バックを避けることのできる最適の位置を見つけることができるからです。
 歌手たちが中央にいる数多くの上演(例えば万博のドイツ館の球形オーディトリウム)では、スピーカーが聴衆を取り囲みました。

『シュティムング』のための回路図

<図>略
この場合は、サウンド・プロジェクショニストは歌手の演奏台の側のミキシング・コンソールに座ります。

後続の上演で、ボーカリストたちが聴衆の中央の演奏台---とくに円形の---の上で演奏するときは、6台のスピーカーを聴衆を取り囲む約4mの高さの台上に設置しました。

<図>略

理想的には、ほぼ正方形で、約500人分の可変的な座席を備え、中央に演奏台(高さ1m、3m四方)を設置できるホールが最適です。聴衆の座席は演奏台を取り囲みます。

もしボーカリストたちが聴衆の前方のコンサート・ステージ上で演奏するならば、そのときは彼らは高くなった演奏台(約4x4mまたは円形、直径3.5m、ステージよりも40cm高い)上に輪になって座らなければなりません。この状況では、スピーカーを約4mの高さに、聴衆を円で囲んで、設置もしくは吊り下げ、そしてミキシング・コンソールとサウンド・プロジェクショニストはそのときオーディトリウムの中央に位置します。

<図>略

演奏中はオーディトリウムを暗くしておきます。歌手の輪の中央の小さなランプだけは、全員が---クッションの上に足を組んで座った---床の上に置いた楽譜が読めるに充分な光を与えるようにします。

演奏日に充分先だって、責任者には、ホールが完全に静かでなければならず(空調がうるさい場合はそれを切ることも含めて)、そして始まった後は誰にも入場を許さないことを、ぜひとも知らせておかねばなりません

ホールが暗くなると、歌手たちはステージ後方から一人づつ---出てくる間隔を変えながら---バス、アルト、テナー2、ソプラノ1、ソプラノ2、テナー1の順番で入場します。全員がしばし不動のまま座った後で、同時にお互いにおじぎをします;テープはとても小さな音でフェード・インし、そしてバスが徐々に調音を始めます。

終わった後で、彼らは再び互いに頭を垂れて礼をします;拍手で、座ったまま聴衆に向かい、一緒に、ゆっくりと間をあけてお辞儀をします。その間に、ホールの照明は次第にフェード・インします。歌手は拍手が終わってしまってから立ち上がります。


<付録:『シュティムング』の詩>

MeineHa¨ndesind...(俺の手は・・・)

俺の手は二つの鐘突き ブリンブルン
おまえの乳房の上でブリンブルンブヨンボロンボヨヨン;
手をひらいた後でも まるみを感じる
乳首の硬さが手のひらのなかで クリンクリングリン。
アヴォカド洋梨オレンジすもも
あぁ違う:おまえの乳房はおまえの乳房、他のなににも似ないおまえの乳房だ。

手で水をすくって飲むとき
俺の頬はおまえの乳房になり
唇は(ピンクブラウン)乳輪
飲むときは口を丸めて「う」の形にするよ
おまえのとがったやつに一晩中キスしていたあの形さ。

すべてのリンゴは、一見無害につかもうとすると
チョキ!-身体を返せ-パチン!おまえの回るごろごろ
ごろりんぐるり押してすすって胸でぴいぴい揉んでひーーーー!

おまえの声が--俺のブロンズ絶叫プレス糸杉のなかへ
------------------------------ チチ、チチチ。

Themaleisbasicallyananymale
男とは基本的にエニイメール(誰でもいいような男)=アニマル(動物)である

nimmDichinacht...(気をつけろ)

気をつけろ
おまえが起きる前に
おまえを俺のムスコが
とろとろにしてるぜ

Piperipipi

ピペリピピ
俺の木の上へ
ゆっくりと動かしてくるがいい
あぁ、なんて熱いんだ!

Langsamen(遅くする、またはLang-Samenで長い精子)

俺の雄鶏は俺の魂
おまえにのしかかるとき。
真ん前の先端で
俺は座っている(本当だ、俺が「俺」といったら、俺のでかいオレだ)
一人乗りトルペードの機首に。

他のことはわからない
ぴかぴかの鞘のなかにいるってこと以外は、
俺の眼は上にあって
--俺は鳥だ--おまえの眼に映る
一番かすかな興奮だって読みとる。
そして俺は舵を取る--離陸コマンド--
おまえの銀色の湖をぬけて。

白い神よ、その迸りからあらゆるものが産まれる、
白い神がドクン、ドクン俺のなかで上昇してくる
俺が撃ち放つまで
そしておまえをゆっくりと長く長々と長く
静かにそっと沈む沈める静かに沈み込ませる。
------------- この静寂。
-------------覚えているのはただ
おまえの鏡が曇ってゆっくりと閉じたこと。

[翻訳:山下修司、訳詩・監修:清水穣]

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