"StockhausenMusicInformations" Sorry!OnlyinJapanese.

Since22August1999

2018年07月10日最終更新

シュトックハウゼン音楽情報

インデックスニュースコンサートスコアCD┃テキスト┃オーダーメールリンク

テキスト:シュトックハウゼン全集・ライナーノート:CD66

水曜日の迎え <1998>

「光の水曜日」の電子音楽

アントニオ・ペレツ・アベリャン(シンセサイザー)、K.シュトックハウゼン(サウンド・プロジェクション)

1. 7秒:冒頭の静寂+38,7”のフェードイン [0’46]
2. モメント1-77(スコアの経過時間0‘00”-51’53”)+終わりの静寂 [53’14]

「水曜日の迎え」の上演時間
0’46+51’53”+1,21”=[54’00]


作品の成り立ち

本作品「水曜日の迎え」は、合唱、短波受信機を持ったバス/フルート、バセットホルン、トランペット、トロンボーン/シンセサイザー奏者、テープ/ダンサー2名/サウンド・プロジェクショニストのためのオペラ「光の水曜日」の第4場面、「ミヒャエリオン」の電子音楽から生まれました。シンセサイザー奏者は、スコアの各ページ上部に3段譜で書かれた音の高さや音色を「ライヴ」で演奏します。音高や音色はE音(エーファのフォルメル)、M音(ミヒャエルのフォルメル)、L音(ルツィファーのフォルメル)としてシンセサイザーに保存され、ダイナミクスが調整されています。

シンセサイザーの第Iチャンネル、第IIチャンネル、第IIIチャンネルがホール内のミキシング・コンソールに出力され、ミキシング・コンソールにはジョイスティック3機もしくは他の機器が接続され、ホール内の音色を調整します。ジョイスティックや他の機器はサウンド・プロジェクショニストやアシスタント3名の隣に三脚で固定されます。「ジョイスティック」は4チャンネル分配器と接続しており、この分配器の3x4出力は3x4フェーダーが付属した外部ミキシング・コンソールと接続します。外部ミキシング・コンソールでフェーダー1-5-9はSumme1、フェーダー2-6-10はSumme2、フェーダー3-7-11はSumme3、フェーダー4-8-12はSumme4にミキシングされます。

Summe1から4のフェーダーは、ホール内ミキシング・コンソールの4チャンネル、さらにそこからホールの四隅に設置された4台のスピーカー(群)へと切り替わります。

「ミヒャエリオン」の初演は1998年7月26日、ミュンヘンのプリンツレゲンテン劇場で行われました。アントニオ・ペレツ・アベリャンがシンセサイザーを演奏し、私がジョイスティック3機でシンセサイザーの第I、第II、第IIIチャンネルそれぞれの方向、回転、斜めの動きを即興しました。
2003年に「水曜日の迎え」のトラックテープ4本を製作して以来、すべての動きはスコアに記載されています。この動きは「ミヒャエリオン」を演奏する際に再現されなくてはなりません。
「ミヒャエリオン」では、シンセサイザーは演奏時間のほとんどの間を非常に小さな音で演奏し、他のアンサンブルに自らを投影させることしかできません。


音色

「光」の多くの部分の音色を作る関係で、エーファの音色、ミヒャエルの音色、ルツィファーの音色という概念を用いました。アントニオ・ペレツ・アベリャンは「光」の音楽を熟知しているため、彼とともに幾度もケルン電子音楽スタジオ(西ドイツ放送ケルン局内)で、シンセサイザーを用いた数多くの作曲のために音色を作りました。「ミヒャエリオン」のための、つまり「水曜日の迎え」のための音色は1998年2月から4月にかけての共同作業で生まれました。

使用楽器はシンセサイザーKURZWEIL K2500XとサンプラーAKAI S-2000です。

シンセサイザーの音色はすべてスコアに番号で記載されています。
E0-E77=エーファの音色はチャンネルI、
M0-M77=ミヒャエルの音色はチャンネルII、
L0-L77=ルツィファーの音色はチャンネルIIIとなります。

音色の中には29(M26)の「馬のいななき」のように、電気的に作られたが「本物」に聞こえるものがあります。他の音色はマイク録音されました。E37の鈴の音、女性の声(女性の声はいつもカティンカ・パスフェーアのものです)、L38で男性が発音するスペイン語の7つの色の名前と、L66c以降で「dreizehn」(ドイツ語で「13」)からカウントダウンされていく数字(どちらもアントニオ・ペレツ・アベリャンの声)、E47のモールス信号音などがマイク録音によるものです。

ミヒャエルの音色とルツィファーの音色は、雑音を合成して作られました(<図>で記す)。

タイムコード付きテープ(Tascam DA-88もしくは98)を用いると、このトラックのコピーを聞いて研究できます。


スタジオプロダクション

アントニオ・ペレツ・アベリャンがシンセサイザー奏者、私自身がサウンド・プロジェクショニストを務めたこのシンセサイザーパートのスタジオ製作は、「水曜日の迎え」というタイトルを持ちます(上演時間52分32秒)。12トラックもしくは4トラック録音として、「光の水曜日」の舞台上演、すなわち演奏会形式での上演において、第一場面「ヴェルト・パーラメント(世界会議) 」上演前の約54分間、会場のロビーや講堂で、4グループのスピーカー群を介し、小さな音量で再生されます。「水曜日の迎え」は4トラックで単独での上演が可能です。4トラックの音源は、シュトックハウゼン出版にて販売しています。


「水曜日の迎え」のスコアは、学習用スコアです。フェードインで始まり、その後は1から77までのモメント(瞬間)が記録されています。50以降はさらに細かく分かれている番号も多くあります。


時間経過は0’21,1分というように、秒、ミリ秒で記載されていますが、フォルム・シェーマの時間は上の段、実際に上演する経過時間は(0‘21‘‘)というように、下の段にカッコで記されています。各断片の時間は大括弧で記しました。 <例>略(管理人)


ミヒャエリオンで時間に制約されていないモメント(モメント50x、スコア63ページ)が存在するため、51aの[オペレータ]のサブシーンは経過時間が0’00,0”に振り直されます。「水曜日の迎え」のスコアでは、時間に制約されていないこのモメント(スコア13-14ページ)は23’00, 0”までとしており、その後再び0’00,0”から25’16”まで時間が記載されていますが、同時に23’00,0から51’53”とも記されています(フェードアウトの終わり)。

「水曜日の迎え」は4トラックテープや2トラックCDで51’53”にフェードインの0’38,7”を足し、合計の収録時間が[52’31,7”]となります。


空間投射

「水曜日の迎え」でこれまで以上に大切なのが、3つの層の空間投射です。ステレオ・バージョンでそれぞれの動きを長時間にかけて追うことができ、何度も聴くと層ごとの動き、特に速度のゆるみや加速、方向転換に意識を向けることができます。

それぞれのモメントのために、譜表の下に4チャンネル方式の動きを表す四角形を描きました。ホール四隅に配置したスピーカーにテープのトラックを分配する方法を記したものです。<図>

空間運動図形は29図あり、スコアに詳細に書き込まれています(ライナーノーツの表紙を参照)。ここでいくつか例を紹介します。

<図>= 右側の半円で、時計回り。点と点の間で弧を描く角度は様々だ。
<図>= 前方の半円で、反時計回り
<図>= 左側の半円で、時計回り。
<図>= 左側後方の三角形で、反時計回り
<図>= 右側前方の三角形で、反時計回り
<図>= 前方から後方に向かう交差型で、反時計回り
<図>= 左側から右側に向かう交差型で、時計回り
<図>= 時計回り
<図>= 反時計回り
<図>= 規則的に波を描いた回転。
<図>= 中心に向かった時計回りのスパイラル。
<図>= 外側に向かった時計回りのスパイラル
等があります

スコアに記載された4チャンネル方式の動きは、2003年2月22日にサウンドスタジオN(ケルン)で、ソニーのミキシング・コンソールDMX100に搭載されたバーチャルサラウンドポテンショメーターを使用して定め、動きのひとつひとつをグラフィック・タブレットペンでタッチスクリーンの四角形に描きました。スクリーンの上を移動するペンの動きが短時間、光の足跡を残しました。それぞれの型を自由に修正することもできました。四角形の四隅は部屋の四隅に置かれたスピーカーと同期しています。このようにして、それぞれの動きをすぐに聞いて確認できました。ひとつの型の反復回数や、時には速度の違いについてもスコアに記しました。例えばエーファのレイヤー(2)<図>は38,7”でこの動きを2回、(3 1/2)<図>は63,1”でこの動きを3と1/2回といった具合にです。

「ミヒャエリオン」の上演においてこのスコアを用いてホールの動きを操作する場合、記載されている反復回数は厳守しなくとも良いです。

この動きは非常に自由で、モメント(瞬間)より生みだされました。まずシンセサイザーの3トラックがタイムコードによってフェアライト・コンピュータに記録されました。その後、シンセサイザー・トラックIのエーファの音色のために、すべての動きをひとつずつ、フェアライト・コンピュータの1-4トラックに録音しました。つまり、E0<図>、E1<図>、E4<図>というような作業を行いました。
続いて、シンセサイザー・トラックIIのミヒャエルの音色のために、5-8トラックに以下の動きを録音しました。
M0<図>、M2<図>、M4<図>
同じく、シンセサイザー・トラックIIIのルツィファーの音色のために、9-12トラックに以下の動きを録音しました。
L0<図>、L3 <図>、L5<図>
といった作業が続きました。


ダイナミック・バランス − ミキシング

2003年2月22日に1-4/5-8/9-12それぞれのチャンネルの3グループの調整器を使い、12トラックのダイナミック・バランスを定め、4チャンネルごとのそれぞれのグループのために、音量を不規則に上げ下げしました。

結果は2台の録音機をシンクロさせることで8トラックテープに12トラックをコピーし、同時に3台目の8トラックテープにも、ミックスダウンした4トラックをコピーしています(Tascam Da-98を使用)。この4トラックの音源を、今後も上演のための4トラック音源のオリジナルとします。

トラック1-5-9はパノラマの最も左、2-6-10が左から2番目、 3-7-11が右から2番目、 4-8-12が最も右の位置から聞こえるよう、4×3トラックを2チャンネルのステレオ・バージョンにミキシングしました。<図>

ミキシングの作業中にも、4つの方向のバランスがとれるようにダイナミクスを調整した箇所がいくつかあります。

12トラックと4トラックのミックスダウン音源は、8トラックテープとしてシュトックハウゼン出版で販売しています。

ステレオ用のミックスダウンは、4トラック音源が収録されている8トラックテープの7と8トラック部分に収録しました。出版されたこのCD66はこの7-8トラックの音源を使用しています。

スコアやCDには、CDのトラック番号[1]、[2]が振られています。つまり、トラック[2]からスコアの経過時間を追いながら音楽を聴いていくことができます。


ファンタジー

ミヒャエリオンの音色のレイヤーを上演する上において、合唱や楽器との兼ね合いで、非常に小さな音でしか演奏できないことを意識していました。しかしレイヤーは当然のことながら「水曜日の迎え」として使用することを考えると、3つに分かれて配置されたスピーカーで再生され、動きがなかったのにもかかわらず、大きく聞こえもしました。「水曜日の迎え」を製作しているうちに、このレイヤーは未知で神秘的、宇宙的な、まったく独立した音色のファンタジーへと発展していったのです。
「水曜日の迎え」を「光の水曜日」の舞台上演前に聴いても、聴衆や再生される際の音の小ささ、ロビーの舞台美術のせいで内容に集中できません。現世のことを忘れさせ、ファンタジーの宇宙を呼び覚ましてくれるこの音楽を深く体験するには、4トラック音源を暗いホール(満月が小さく映写されている)で再生し、暗闇の中で目を閉じ、邪魔されない状態で聞くことが必要条件です。
この条件は、自宅でこのCDを再生する際にも、上演や放送の際も同様です。

[翻訳:小林雄紀]

このホームページに関するお問い合わせは山下修司まで