モニターのガンマとは ?
- はじめに -
写真のホームページを作っていて時々気になるのが、良かれと思って載せている写真が果たしてここを訪れるビジターにとっても
自分が見るのと同じように見えているのかどうかということである。 パソコンのモニターは製品によって再現できる色の範囲や入力
に対する輝度の特性が異なっており、輝度やコントラストの設定も人様々である。 この設定や特性が標準から大きく外れている場
合は折角の画像がHPを訪れたビジターから見ると、明るすぎたり、逆に暗すぎたりすることが起こり得るので注意が必要である。
今回はモニターの輝度再現特性を言い表す上で重要な “モニターのガンマ” について説明したい。
- 予備知識として -
まず、モニターのガンマとは一体何かということであるがそれを理解するための予備知識として、画像を表示するためのモニターに
はカラーを表現するためには基本的にRed、Green、Blueの3つのカラー信号が必要であり、それぞれの明るさを表現するためのデ
ジタルデータは通常は 8bit=256階調 であるということを知っておく必要がある。 従って「24bit TRUE COLOR」というのは (R)256 X
(G)256 X (B)256 = 16777216 (色)ということになる訳である。 これに対して「16bit HIGH COLOR」など他にも様々な設定が用意
されているが、パソコン上で写真画像を扱うためには少なくとも R, G, B が各 8bit の計24bit 以上が望ましく、これから先の話も「24bit
TRUE COLOR」が前提になる。
本題に進みたいがなおも前置きが必要である。 先にも述べたように我々がモニターで見ている全ての色はR,G,B
という3原色においてそれぞれが256段階に変化する輝度の強弱によって表現されている。 そして R,G,Bそれぞれが取り得る値
は 0〜255 の中のどれかであり、R,G,Bが皆同じ値である場合はモニター上に表現される色が無彩色になる。 例えば R = G = B
= 0 のときは最低輝度値としての黒(全黒)、 R = G = B = 255 のときは最高輝度値としての白(全白)になる。 従って画像データ
において R,G,B の値を意識的に同じにした場合はモノクロ写真と同じ感じのグレースケールとして表現される。 ガンマの説明を
行う上で色の話が絡むとややっこしくなり、本質的なことではないのでここでは特に断らない限り R = G = B と仮定した一般的な考
え方で説明する。 厳密に言うならモニターは R,G,B それぞれに個別のガンマというのがあり、各々の特性が違っているとカラー
バランスが崩れたりするのであるが、以降で説明することは上記個別のガンマに対しても同じ考え方と捉えてよい。 尚、ガンマとい
う用語はモニターに限って使われるわけではなく、カメラやスキャナーにおける CCD の特性とかプリンタの濃度再現上においても用
いられるので一般的には「何々のガンマ」という言い方が正しい。
- モニターのガンマとは何か -
繰り返しになるが R = G = B = 0 のときにモニターの画面は全黒を表し、 R = G = B = 255 のときは全白を表す。 ならば 0 〜 255
の中間値である R = G = B = 127 のときはどうか? 答えは先のとおりグレーである。 しかしグレーといっても明るいグレーから暗い
グレーまで様々であり、アナログRGBのモニターであればそれを無段階に表現できる。 はたして入力値127が明るさ(輝度)として正
確に全黒と全白の中間の輝度を表しているか? この答えはノーである。
左のグラフを見ていただきたい。 γ=2.2 と記されてい
るマゼンタの曲線が今日最も標準的とされるモニターの入力値に対する出力、即ち輝度の特性である。 輝度の中間点と考えがちな
127 という入力値が実は思った以上に暗く表現されることが判るであろう。 明るさが全白と全黒との間で直線的に変化すると考えて
データ値だけを見ながら作った画像は実は暗く出てしまうのである。 この曲線特性をモニターのガンマと呼び、製品によって γ=2.2
以外にも γ=2.0 とか γ=2.5 など様々な特性があって統一されてはいない。 どのようなモニターであってもこの曲線は下に膨ら
む傾向を持っていてガンマの値が大きくなるに従って膨らみの度合いも大きくなる。 計算上は γ=1.0 のときに黒で示した直線にな
るがそのようなガンマを持ったモニターは単独では存在しない。 様々な値を持つガンマ曲線を描くには Excel が便利であるが、ここ
では 2.2 と 1.8 とがあれば事足りると思う。
その γ=1.8 の曲線とは Mac のOSが標準としてサポートしているシステムガンマである。 よく Windos と Mac とではモニターのガ
ンマの違いからくる画像の見え方が話題にされる。 モニターはそれ自体で個々のガンマ特性を持っていて Windows 用とか Mac 用
とか区別されている訳ではない。 にも拘らず Mac は何故 1.8 とされるのかといった疑問が沸いてくると思うのでそこのところを説明
する。
- システム・ガンマとは -
ここからはガンマをPC本体とそれに繋がれたモニターを一つの画像表示システムの特性として考えることにしよう。 今まで述
べてきたPCモニターのガンマとは次に説明する2通りの考え方がある。 まず一つめのケースはモニターの輝度再現特性がシステム
としてのガンマそのものとなり、その特性に関してPC側では何ら関与していない場合である。
残るもう一つのケースはモニターにPCのドライバーを含めたディスプレーシステムとして見たときのガンマである。 この場合はモニタ
ーが見かけ上、ある定められたガンマ特性を持つようにモニター単独のガンマを加味しながら出力カラー信号に補正が加えられている。
この補正はOSやアプリケーションがシステムからカラーの変換ファイル(カラー・プロファイル)を呼び出して、ディスプレーボード内で変
換が行われるのが一般的であり、このようにして補正(変換)されたPCとしてのトータルな輝度再現特性をシステムガンマと呼ぶ。
Mac の場合は後者のケースであり、その値として γ=1.8 が標準になっている。 勿論、その補正は外すこともできるであろうし γ
=1.8 だけではなく他の値も自由に設定できるようであるから全ての Mac ユーザのガンマが 1.8 であると決め付けることはできない。
Windows の場合、基本的にOSによるガンマの補正はサポートされていない。 従ってモニター自体のガンマがシステムガンマになって
いるというケースが多い。 そして現存するモニターは γ=2.2 の特性に沿ったものが最も多く事実上の標準、つまりデファクトスタンダ
ードとなっていることから使っているモニターが γ=2.2 である限りはシステムによる付加的な補正を必要とするケースも少ないという
ことである。 蛇足ながら、上に述べたガンマの変換機能をモニター本体に内蔵していて γ=2.2 などワンタッチで好みのガンマに切り
替えることが出来るといった優れものも見られる。
- Windows のシステム・ガンマを変えるには -
それならば Windows に例えば γ=2.5 のモニターが繋がれた場合の輝度再現性はどうなるのか? 残念ながらそのままではグレー
ゾーンが普通より暗く見えてしまう。 しかし心配には及ばない。 Windows のシステムガンマはOSではなくアプリケーションから変える
ことが前提になっているので、そのようなソフトを捜せばよい。 例えば、Photoshop(L.Eについては未確認)にはガンマ・ユーティリテ
ィーというモニターの調整ソフトが組み込まれていて、それを使ってシステムガンマを好みの値に設定することができる。 例えばモニ
ター自体のガンマが 2.5 であったとしてもシステムの補正によって 2.2 とか 1.8 に変えることが出来るということであり、モニターのキ
ャリブレーションとはこのことを言う。 キャリブレーションを終えると変換(補正)用のカラープロファイル(XXXX.icm、XXXX.icc)が作成
される。 こうしたプロファイルは「画面のプロパティ」->「設定」->「詳細設定」->「色の管理」->カラープロファイルの「追加」によってシ
ステムに関連付けることができる。 しかし最後にここで 「規定値に設定」 しても未だシステムには反映されない。 関連付けられたプ
ロファイルを有効にするためには何らかのアプリケーションによってそのプロファイルを呼び出してディスプレーに反映させる必要が
ある。 Photoshop のガンマユーティリティーは Windows 起動の度にプロファイルを呼び出すのでその後における Windows 操作上で
常時、有効になる。 他には市販されている汎用のモニターキャリブレーションソフトなどによってもこの辺りの設定は可能と思われる。
ついでに、モニターの輝度再現性は部屋の明るさや長年使ったことによる経時変化によっても変わってくることから、例えガンマが
2.2 であってそれ以外を必要としない場合であってもモニターのキャリブレーションは定期的に行っておくことが望ましい。
- ガンマの違いによって何故互換性が問題になるのか -
次に出力デバイスであるディスプレーシステムのガンマが違うことによって何故ファイルの互換性が問題になるのかを説明する。
今ここに、システムガンマが 2.2 の WindowsPC と 1.8 の Mac があり、それぞれのモニターが2台並べて置かれていることを想定
する。 そしてこのモニターを見ながら何らかのアプリケーションソフトによってそれぞれ同じ画像を作成することを考えてみる。 作成す
る画像はアニメであってもよいしグラフィックスであってもイラストであってもよい。 更に、フォトレタッチによる写真画像の編集であって
も画像を作成することと同じと考えてよい。 とにかく2台のモニターを見比べながらそれぞれのPCを使って同じような画像を同じような
明るさに仕上がるように作成する。 次に画像が完成したらそれぞれの画像を交換し、互いのPCで開いてみる。
結果は Windows で作成した画像を Mac で見た場合、全体的にやや明るく見え、
Mac によって作成した画像を Windows で見た場合は全体的にやや暗く見えるはずである。 逆に言うなら、Mac ではやや明るめに
作った画像が Windows では丁度良く見え、Windows ではやや暗めに作った画像が Mac 上では丁度よく見えるということである。
これは Windows も Mac も画面で見る限りは同じような明るさと思いながら作った画像が実は出来上がった画像のデータ値に違い
が生じているからである。 全黒と全白においてはどちらにも違いは表れないが、それ以外の中間値では違いが出てくる。 もう一度グ
ラフで示したカーブを見てみよう。 γ=2.2 の場合、全黒・全白の丁度中間の明るさを表すには入力値として 190 近い値が必要にな
る。 それに対してγ=1.8 の場合は 175 近辺で同じ明るさが得られることが判る。 逆に 190 という値を γ=1.8 のモニターで見た
場合はやや明るく見え、175 の値を γ=2.2 のモニターで見た場合はやや暗く見えることも判る。
作成時と同じPCで再現したときの画像の明るさを黒で表わされている γ=1.0 の直線であると仮定した場合、茶色の 2.2->1.8 と記
した曲線は γ=2.2 の Windows で作成した画像を γ=1.8 の Mac で見たときの画像の明るさであり、グリーンの 1.8->2.2 と記した
曲線はその逆のケースにおける画像の明るさを示している。 原因はつまり、画像の作成・編集においてはその画像をモニターで見な
がら作業を行うので、これでよしとしたときの画像データの値が既に γ=2.2 と γ=1.8 のシステムでは違っているということであり、
その結果として同じ調子に作成したつもりの画像であっても中身としてのデータを見た場合は中間値の偏り方に違いが出ているという
ことである。
- ICCプロファイルについて簡単に -
こうしたシステム特性の違いから生じる画像の見え方の違いをなくしてし、異なるシステム間でも画像ファイルに互換性を持たせようと
することはずいぶん以前から検討されている。 画像ファイルのカラーや輝度再現における互換性は印刷・出版の世界においては特に
重要であり、Jpeg を始めとして今日の代表的な画像ファイルはヘッダーに「ICCプロファイル」というものを埋め込むことができるようにな
っている。 「ICCプロファイル」とは、「この画像はこういうカラー特性を持ったデバイスによって作成されてますよ」という画像作成時の
色空間情報であり、受け取った側はその情報を基に画像情報を一旦、機器に依存しない色空間である L*a*b とか XYZ と言った表示
系によって表される絶対色空間情報(Device Independent Color)に変換し、その後、モニターなどの出力機器に合わるせために例えば
sRGB のような色空間に再び変換する、といった具合に実にまどろっこしい操作が行われる。 ICCプロファイルは埋め込むことによって
ファイルサイズが増えてしまうというマイナス面を持つが、異なる機器間で画像をやり取りして厳密なカラーを再現する上で欠かせない
ものとなっている。
- sRGBについて -
それに対してプロファイルの埋め込みを必要としない「sRGB」という規格があり、インターネット上での画像のやり取りにおいては事実
上の標準となっている。 sRGB(standerd RGB)とは簡単に言うならPCのモニターとして最も標準的とされる γ=2.2 を想定し、作成す
る画像をそれに合わせてしまおうというものであり、見ようとしているモニター、あるいはモニターを含むシステムのガンマが 2.2 であれ
ば特に何もしなくともほぼ作者が意図したとおりのカラー(輝度も含めた)が再現できるというメリットがある。 ちなみにこのHPに掲載し
ている写真の色空間は全て sRGB である。 ただし sRGB は色の再現範囲がやや狭いことから僅かな差ではあるが高性能なモニター
やプリンタではその性能を 100% 活かしきれないという点を知っておく必要がある。 また、ガンマを表す式は入力値によって2つに分割
されており、これも今回グラフで示した γ=2.2 のカーブとは僅かに違っている。
- 最後に -
後の方で輝度とカラーの切り分けが曖昧になってしまい読む人を混乱させるかもしれないが、モニターやプリンタが再現できる色の範
囲 “色域”とか“色空間”(Color Spac) といったことについてはまたいつか別の機会に説明しようと思う。
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