前回に引き続き、親友のMさんに語って頂きます。

物事件から数日後、カナダ・米国東岸での商談などを終え、前回書いた事件 目撃者の社長さま・営業部長さまともお別れをして、やれやれ。 緊張感も失 せ、疲労感を体一杯に感じつつ、バージニア州リッチモンドからニューヨークのホ テルに到着したのは熱い夏の夕刻。 (夕刻とは言え、ニューヨークの夏、まだま だ太陽は燦々と輝いていました)

ホテルは、昭和天皇も泊まられたという超一流ホテル「ウォルドーフ アストリ ア」。 (会議等で利用したことはあっても、我が身分では泊まれぬ筈のところ、 夏季特別割引料金で一流半並みのお値段のため予約)

一人汗だくで・・・背広を抱えた左手ではアタッシュケースを、右手では漬 物の匂いが気になる車輪付のトランクを曳き、薄暗く広いロビー空間の奥にある チェックインカウンタへ向かいました。

閑散としている筈のカウンターには、その時長い列が出来ていたので、大男の ベルキャプボーイにトランクの面倒を頼み、比較的に列の短い(6つ程ある受付 カウンターの)左から2つ目の列に加わりました。

15分程経過したのでしょうか、1列6〜7人並んでいた列も多少短くなり、あ と3人で自分の番という時に、15名位の中南米人の子連れの団体がガヤガヤと 到着。 割引があるからとは言え、こんな連中まで泊めるのか、何が超一流ホテル かなどと思っていました。 小学生低学年の子供が5名位であとは髭を蓄えた(駐 在経験のあるベネズェラで辟易した)顔顔顔・・。

整然としていた列も次第に乱れて、自分の順番が乱されないよう睨みを利かせ ざるを得ません。 右も左もこのご一行様状態でしかもやかましい・・・

やっと我が番になりましたが、カウンターがものすごく高いのですよね。 私 にはあごがやっと届く不愉快な高さです。  アタッシュケースを両足の甲の上にブリッジ状に乗せて、ホテルスタッフに予約 を入れてあること、名前はXXXで、スペルはエム、アイ、エム・・・・と説明し 始めたところ・・・

アッ、足の甲にあるアタッシュケースの重みが突如なくなりました。見ると薄 暗い中、ケースは空中遊泳状態で、右にいる中南米人連中の足の間を泳いでいるで はないですか??? 次ぎの瞬間、ケースは足の林の向こうへと消えてしまいまし た。 

あれれ・・・・という間の出来事でとっさには何が起きたか分かりません。  2〜3秒後にヤバイと・・・・ケースの消えた方向へ人ごみを分けて飛び出しま した。 すると子供が「A fat man run away」と出入口に向かい左側を指差しま す。 ケースが奪われたと大声を出し、子供の指差した方向へ走りました。 先程ト ランクを預けたベルボーイも動いてくれましたが・・・。 それらしき人影は見え ず数分後、どうした顔の受付スタッフの所へとぼとぼと戻らざるを得ませんでし た。

 事件はここまでですが、後がまた大変でした。(今では笑い話ですが)

<レセプションカウンタ>

長2メーター程のレセプショニストは、客である私を見下しながら、何事か ? と聴きますので、盗られた! と言いますと、財布はどうした? 金は大丈夫か ? と聴きます。 全部、アタッシュケースの中に入れてあった、と応えると、金が ないなら泊められない・・・と事務的に無表情でこう来ましたよ。

私は、パスポートと航空券は必ず身に付け、パスポートのビニールカバーのポ ケットには数ドルの現金とクレジットカードを忍ばせていましたので、クレジッ トカードをカウンタにバッチンと音を立てて置きました。  すると、Yes Sir ・・・・ で手のひらをモミモミ状態、スマイル顔で チェックイン。   やっとルームキイを手にしたとき、入り口から差し込む西日が眼にしみまし た。  (中南米人の団体はいつの間にか消えていました)

<ニューヨーク警察>

んで泣いてたまるかと、ホテルから賠償金なり見舞金を召し上げようと、疲れも忘れて交渉し、一方、盗られたトラベラーズチェック(TC)の失効,再発行依頼などそれなりにやりましたが、この話はスペースの関係で省略します。

この盗難事件で、TCの再発行手続きや保険求償には、警察証明が必ず必要なこ とを始めて理解しました。 翌日午後に出向いたニューヨーク市警察は汚らしく、盗難係りの窓口には20 歳くらいの黒人女。 三つ編みどころか50編みで、髪は半年位は洗髪していない のか、蝿が群がる不潔さ。 チューインガムをクチャクチャと噛みながらの不真面 目な対応。 

5番目に並んだものの、ひとりの対応に30分もかかる始末、(被害者の話をい やいや聞いて、面倒くさそうにタイプに向かい、トイレに行き、上司と相談。  やっとタイプが完成し、自分のサインをしたと思ったら、その内にあの上司がト イレに行き・・・といった具合)。

この間、どちらが犯人かわからない人相の悪い警官、刑事、犯人の何組かが銃 や手錠とともに目の前を通り、実に不安な時間を過ごしました。 <日本でも海外 でも警察の厄介にはならない方が宜しいですよ>

結局、証明書を入手したのは銀行業務時間が終了した遥かに後でした。 この旅 行には東京銀行(現在の東京三菱銀行:BOTM)のTCを携行したのですが、東京銀 行ニューヨーク支店では邦人社員が優しく対応してくれ、夜の8時にTCを届けて くれました。 アメリカの銀行のTCですとこのようなサービスは全く期待出来ませ ん。(BOTMの宣伝ですが地獄に仏でした。感謝!)

<理想的なチェックインの仕方・・・アタッシュケースの取扱い>

ューヨークには2泊しましたので、また、犯人グループが現れるかとチェッ クインカウンターの前を何度となくぶらつきました。  白人は皆、チェックインカウンターの上にアタッシュケースを乗せてそれに肘 をついてレセップショニストと話をしていました。 しかし、私の参考には全くな りませんでした。 (何故なら、前述したようにこのホテルのカウンターは非常に 高く、私は背伸びをしてやっと顎が乗るほどで、アタッシュケースを乗せたら相 手が見えないのですから・・)

なお、その後の出張の際には、幸い左程に高いカウンターには遭遇せず、白人 に見習って行動をしているため、盗難に遭っていません。

ところでその後も、ラテン系の小学校低学年の男の子2〜3人がそれぞれア タッシュケースをぶら下げてホテル街をかっぽしている姿を2度程見ました。  私のケースではありませんでしたが、大人と子供が組みで動き、収穫は子供に運 ばせているものと断定しました。 きっとホテルで ”A fat man run away”と叫 んだ子供は一味のひとりで、その指差しとは全く逆の方向に犯人は走り去ったの でしょう。 また、犯人は太っているのではなく、きっとみすぼらしく痩せた男に 違いないと思いました。 ニューヨークは危ない場所であることを良くご認識ください。

<帰りの飛行機>

外出張で何も持たずに航空機に乗りこんだことってありますか? 私は行きも、帰りもお土産などで両手に荷物のことが少なくありません。  が、この時ばかりは土産を買う時間もなく、トランクを空港カウンターで預け た後は、何一つ持ち物がない状態でした。 こんなに落ち着かない気持ちはありま せん。 そこで、空港の免税ショップで酒だ、煙草だと買い物をしたのですが、 預り証をくれ、成田で現物を渡すと言うではありませんか? 結局、何も持たずに 機内に入ったときスチュアーデスに怪訝な目つきで眺められてしまいました。

私はいつも座る座席番号を決めているのですが、この時隣りにはインド人のお じさんが荷物を山ほど抱えて乗りこんで来ました。 満席でしかも最後に搭乗して きたおじさんですので、なかなか荷物が収納できません。 そこで、いつも私がア タッシュケースを置く前席椅子下のスペースに荷物のひとつを預かってあげまし た。 当然大変感謝されました。(インド人独特のイングリッシュで)

成田に到着して、更にまた、おじさんに感謝されました。 何故ならおじさん は、搭乗時に、自分の座席に到達する遥か手前で他にも手荷物をスチュアーデス に預けていたからです。 私は、手ぶらで飛行機を降りるのも・・・と思い、お じさんの荷物を両手一杯に持ってあげました。 搭乗した時に怪訝な目つきで迎え てくれたあのスチュアーデスが、今度は余りの荷物の多さに怪訝な顔で見送って くれました。

おじさんに中身は何かと聞いたところ商品だとウィンクされました。 ターミナ ルビルの向こうに麻薬検査犬が見えたところでおじさんに荷物を渡してバイバイ しました。 振り向くとおじさんは係り員に別室に案内されていました。


有り難うMさん、お陰様で今月もクリアー。良ーい薬です、じゃなかった良ーい友達です。
とーるくん